社内制度活用で安心して治療を受ける~がん経験者が語る「がん治療と仕事の両立」Vol.4~
こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
今回は「がん経験者が語る、社内制度活用で安心して治療を受ける」についてご紹介します。
がんの診断を受けてから治療に臨む間にも、気軽に相談できる体制づくりが求められています。従業員の「働きたい」をかなえるために、病気になっても働きやすい環境を整える支援は必要不可欠です。
社内制度を活用し、納得、そして安心感をもって治療に臨む準備を整えていく、ティーペック社員花木の実体験をご紹介します。
(以下、本人による執筆記事です。)
セカンドオピニオンを受けられる制度の活用
「セカンドオピニオン」。直訳すると「第二の意見」。
つまり、主治医の意見が第一の意見であるのに対し、他の医師の意見を聞くこと。
2017年、がんを告知された私は、社内の担当者に相談し、この制度を使って、主治医以外の医師からも意見を聞くことを予め考えていた。
とはいえ、そんなことやったことないし、主治医の先生の気を悪くしたりしないだろうか。
そんな小さな悩みの数々に対して、看護師資格を持つ社内担当者からさまざまなアドバイスをもらうことができた。
主治医からの紹介状のもらい方から、セカンドオピニオンの予約の取り方、医師への話の聞き方に至るまで、悩みを親身に聞いてもらい、最適なアドバイスをしてもらう。こうした目に見えない対応が、患者である私の心を支えてくれているのだと、実感した。専門家とこうして親身に話せる場があるというのは、一患者としては本当にありがたい。
自分ががん患者になって思うこと。それは、周囲や自分がなんとなく焦り、急ぎ、いつの間にか心の拠り所がなくなってしまっていること。
一息つきたいのにつけない。立ち止まって整理したいのに許されない。さらに私の場合は、進行性ということもあり、遅くなればなるほど転移が進んでしまうかもしれないという目に見えない恐怖と闘っていた。体の部位に少し違和感があるだけで、「まさか……」なんていちいち気になった。
そんな私にとって、セカンドオピニオンを手配してくれた担当者の看護師さんとの安心感のある空間が、どれほど支えになっていたことか。
もちろん、専門的なアドバイスは不可欠だ。これから治療をお願いする病院の信頼性や設備などのことも知りたい。
加えて、「この人の言ってくれることなら信じられるし、家族にも提案できる」という信頼関係があることがとても大きい。
医療情報など、ネットのものも加えれば今やはいて捨てるほど存在する中、最終的にどの情報を選び取るかを決めるのは自分。でも、素人じゃどうやって選べばいいのか分からない。
そんなときこそ、「この人なら」という人を見極め、支えてもらうことが大切なんだと感じる。
こうしたサービスを世の中に提供している自社を、改めて誇りに思う。
セカンドオピニオンを使ってみて
休職した日から、本格治療に向けた、最終的な病院選定を行った。
勤務先で手配してもらったセカンドオピニオン先は、がん領域では国内最高峰の病院。
家から片道2時間という立地条件から、通院ベースの治療はとても難しい(放射線治療に至っては30〜40日通院しなければならない予定)という判断で、今回はあくまでも意見を伺うにとどまったが、病院とは思えないくらい明るく、綺麗だった。
正直なところ、健康そうな人が多く、「えっ、この人たち、何かしらがんに関わってるんだよね!?」と思わず錯覚しそうになるほどだった(もちろん、検査で来院している方や、経過観察の方もいらっしゃるとは思うが…)。
私自身も、自分が宣告される少し前までは、どうしても「がん=死」というイメージが頭にあったものの、この病院に入ったらそんなイメージも一瞬で吹き飛ぶ。
院内には、コンビニはもちろん、レストラン、カフェ、情報コーナー(図書館のようなイメージ)に、至るところに置かれているテレビ、書棚と、まるで商業施設のよう。
本題のセカンドオピニオンでも、その分野の権威の先生に、当時検討していた病院の治療方針に関する後ろ盾をいただき、安心感をもって帰路につくことができた。
来年こそは……
夕方帰る途中、クリスマスツリーやらイルミネーションやらがやたらと目に入ってきた。
毎年同じように彩られているはずが、なんだかその年は、例年になく輝き、愛おしく感じられた。
乗り換えで降りた駅では、仕事帰りのサラリーマンの方々が、これから忘年会と思しき楽しそうな様子で私の横を通り過ぎてゆく。
「早く治して、来年は必ず忘年会にたくさん参加して、酒を飲んでやるんだ!」なんて、自分に発破をかけていたことを思い出す。
【がん経験者が語る~がん治療と仕事の両立~】
・Vol.1 がんとの出会いと会社への告白
https://t-pec.jp/work-work/article/143
・Vol.2 がん宣告を退職の引き金にしてはいけない
https://t-pec.jp/work-work/article/144
・Vol.3 制度だけじゃない、待っててくれる人がいる職場
https://t-pec.jp/work-work/article/145
・Vol.5 8ヶ月にわたる治療と療養
https://t-pec.jp/work-work/article/147
・Vol.6 がん治療の最終収支報告
https://t-pec.jp/work-work/article/148
・Vol.7 がん再発の不安を和らげてくれる職場環境
https://t-pec.jp/work-work/article/149
花木 裕介
ティーペック株式会社 サービス企画室 マネージャー。産業カウンセラー。
2017年12月、中咽頭がん告知を受け、標準治療(抗がん剤、放射線)を開始。翌8月に病巣が画像上消滅し、9月より復職。がん判明後より、ブログ『38歳2児の父、まさかの中咽頭がんステージ4体験記! 〜がんチャレンジャーとしての日々〜』を開始し、現在も執筆中。
著書に、『心折れそうな自分を応援する方法 〜現役子育てパパでも夢を諦めない』(セルバ出版)、『青臭さのすすめ ~未来の息子たちへの贈り物~』(はるかぜ書房)など。
国家プロジェクトである「がん対策推進企業アクション」(厚生労働省の委託事業)の認定講師としても活動中。
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提供元:
T-PEC Channel
【ティーペックサービスを使い倒して生還した、ある30代がん罹患社員の記録4】「セカンドオピニオン手配サービス」がくれた勇気
https://t-pec.jp/ch/article/323
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※当記事は2019年8月時点T-PEC Channel(https://t-pec.jp/ch/article/323で作成されたものを元に、データやイラストのみ一部修正したものです。(2022年4月更新 ※記事内の一部文言修正しました。)
※法制度については作成当時のものを参考に作成しており、最新の制度は変更となっている可能性があります。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事が全てのケースにおいて当てはまるわけではありません。