がん再発の不安を和らげてくれる職場環境~がん経験者が語る「がん治療と仕事の両立」Vol.7~
こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
今回は「がん経験者が語る、受動喫煙・三次喫煙の少ない職場環境」についてご紹介します。
皆様もご存知の通り、タバコには多くの発がん性物質が含まれています。喫煙は、がんの発症だけではなく、がん再発のリスクにもなるのです。
喫煙には自分がタバコを吸う「一次喫煙」。喫煙者が吐き出した煙や副流煙を他者が吸い込む「受動(二次)喫煙」。そして、タバコの火を消した後であっても、壁やカーテン等に残留するタバコ成分を吸い込むことで健康被害を受ける「三次喫煙」があります。喫煙は、自分だけではなく、周囲への悪い影響がとても大きいのです。
第7話は、がん経験者だから実感することができた、がん再発への不安を和らげてくれるタバコのない環境の大切さについて、ご紹介します。
(以下、本人による執筆記事です。)
もう一つの両立支援サービスとは
私は現在、勤務先の「がん治療と仕事の両立支援制度」を活用している。
具体的には、治療や検査における特別休暇の取得(有給休暇とは別に取得できる)や、医療情報機関ならではの情報提供を受けられること、また、メンタルヘルスカウンセリングを受けられることなど、さまざまな支援を受けてきた。
そして、復職してみて、もう一つ目に見えない支援を受けていることに気がついた。
それは、「社内で受動喫煙や三次喫煙をする不安がほとんどない」という環境だ。
振り返ってみると、病院で確定診断を受けたときに、当時の主治医に今後治療・療養をしていくにあたって「絶対にやってはいけないこと」として強く言われたのが、「タバコを吸うこと」だった。
ご存知の通り、がんという病気は、非喫煙者に比べて喫煙者の罹患(りかん)率が高いことがすでに証明されているし、それは治療の成否や予後の経過にも影響を与えるということは間違いない。
私の場合はすでに非喫煙者だったので、自分が吸うことに関する不安はなかったものの、副流煙等による受動喫煙や、三次喫煙(タバコを吸った後の息から出ている見えない煙や、服や髪の毛に残るタバコのにおいを吸う等)のリスクは当然残る。
なので、治療中や療養中は、それまで以上に煙の心配のない場所を選んで過ごしてきた。
スモークフリーカンパニーが増えていく世の中に……
しかし、職場となるとそうもいかない。
当然、メンバーの嗜好の問題でもあるので、たとえ分煙等の施策が進んでいたとしても、それ以上は個人としては踏み込めないというのが一般的な考え方だろう。
自分だけで対応できることならまだしも、受動喫煙や三次喫煙は自助努力だけではどうしても限界がある。
がんサバイバーの方の中には、もしかするとそのような不安を抱えながら就業している方もいらっしゃるかもしれない。
ところが、私の場合は、幸いなことに、勤務先(ティーペック)が2015年に喫煙率0%を達成した、いわゆる「スモークフリーカンパニー」であるため、少なくとも就業中は受動喫煙の心配がほとんどない(外部のお客様にも喫煙後45分間は入室をお控えいただいている)。
向こう5年間は経過観察が続くので、こうしたストレスが少ないということは寛解(※)を目指す身としてはとても大きなアドバンテージであり、これも一つの両立支援サービスだなーと、復職してみて改めて気づいたというわけだ。
それ以外にも、私の場合、以下のような支援を知人・友人・周囲の方からいただいており、自分はまさに生かされているんだな、と感謝する毎日を送っている。
■周囲の知人・友人も私と会うときは、前後でタバコを吸うのをやめてくれるなど、さまざまな支援に大変助かっている。
■隣人は、私の病気発覚を機に、禁煙を検討してくれている。(取り急ぎ換気扇の向きを変えることに同意をしてくれ、受動喫煙のない環境を整備してくれた)
東京五輪を迎えるにあたって、行政でもさまざま取り組んでいることもあり、引き続きがん罹患者が過ごしやすい環境が整備されていくことを願ってやまない。
(※)寛解(かんかい):症状が一時的に軽くなったり,消えたりした状態です。このまま治る可能性もあります。場合によっては再発するかもしれません。
<引用元:国立国語研究所「『病院の言葉』を分かりやすくする提案」>
【がん経験者が語る~がん治療と仕事の両立~】
・Vol.1 がんとの出会いと会社への告白
https://t-pec.jp/work-work/article/143
・Vol.2 がん宣告を退職の引き金にしてはいけない
https://t-pec.jp/work-work/article/144
・Vol.3 制度だけじゃない、待っててくれる人がいる職場
https://t-pec.jp/work-work/article/145
・Vol.4 社内制度活用で安心して治療を受ける
https://t-pec.jp/work-work/article/146
・Vol.5 8ヶ月にわたる治療と療養
https://t-pec.jp/work-work/article/147
・Vol.6 がん治療の最終収支報告
https://t-pec.jp/work-work/article/148
花木 裕介
ティーペック株式会社 サービス企画室 マネージャー。産業カウンセラー。
2017年12月、中咽頭がん告知を受け、標準治療(抗がん剤、放射線)を開始。翌8月に病巣が画像上消滅し、9月より復職。がん判明後より、ブログ『38歳2児の父、まさかの中咽頭がんステージ4体験記! 〜がんチャレンジャーとしての日々〜』を開始し、現在も執筆中。
著書に、『心折れそうな自分を応援する方法 〜現役子育てパパでも夢を諦めない』(セルバ出版)、『青臭さのすすめ ~未来の息子たちへの贈り物~』(はるかぜ書房)など。
国家プロジェクトである「がん対策推進企業アクション」(厚生労働省の委託事業)の認定講師としても活動中。
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提供元:
T-PEC Channel
再発の不安を和らげてくれる「禁煙プログラム」【ティーペックサービスを使い倒して生還した、ある30代がん罹患社員の記録7】
https://t-pec.jp/ch/article/388
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※当記事は2020年1月時点のT-PEC Channel(https://t-pec.jp/ch/article/388)で作成されたものを元に、データやイラストのみ一部修正したものです。(2022年4月更新 ※記事内の一部文言修正しました。)
※法制度については作成当時のものを参考に作成しており、最新の制度は変更となっている可能性があります。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事が全てのケースにおいて当てはまるわけではありません。