健康・予防・両立支援
健診・二次健診 2023/02/22

健康診断の実施は会社の義務!従業員が受けないとどうなる?

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

健康診断の実施は会社の義務です。しかし、仕事の忙しさなどを理由に、従業員から受診を拒否されてしまうこともあるのではないでしょうか。

この記事では、企業の人事部などで従業員の健康管理を担当している人に向けて、健康診断を受けない従業員への対応とリスクについて解説いたします。記事内では、健康診断の重要性を伝える動画もご紹介しています。

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<目次>
◆健康診断の実施は会社の義務
◆会社が実施すべき健康診断の種類と費用
◆健康診断の実施率・受診率の状況
◆健康診断を拒否する社員へはどう対応する?
◆【動画】健康診断を受けないとどうなるのか
◆健康診断の結果は5年間保存、報告書を労働基準監督署へ提出する
◆従業員の健康診断のデータを一元管理する健康管理システム

健康診断の実施は会社の義務

労働安全衛生法第66条1項では、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない」と定めています。これに基づき、企業は、労働者に対して、医師による健康診断の実施義務があります。

もし、企業が健康診断を実施しなかった場合、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金が科されます。

また、労働安全衛生法66条5項では「労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない」とあり、労働者も健康診断を受ける必要があります。

仮に健康診断を受けない場合でも、労働者側に法的な罰則はありませんが、「健康診断を受ける義務があること」や「受ける目的」をしっかり伝えるなどして、受診するように働きかけましょう。

*出典: e-Gov法令検索『(昭和四十七年法律第五十七号)労働安全衛生法』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000057

会社が実施すべき健康診断の種類と費用

会社が実施すべき健康診断には、大きく分けて「一般健康診断」と「特殊健康診断」があります。

一般健康診断

「一般健康診断」は、企業が常時使用する労働者の健康状態を把握し、労働時間の短縮など、適切な就業上の配慮を行うことで、脳疾患や心臓疾患、生活習慣病等の防止を図ることなどを目的としています。

「一般健康診断」には以下の5つがあります。

●雇入時の健康診断
 →職種に関係なく、常時使用する労働者を雇入れる際の健康診断

●定期健康診断
 →雇入れ後1年以内ごとに1回、定期的に行う健康診断

検査項目は以下の通りです。

<定期健康診断の検査項目(※1)>
1.既往歴及び業務歴の調査
2.自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3.身長(★)、体重、腹囲(★)、視力及び聴力の検査
4.胸部エックス線検査(★) 及び喀痰(かくたん)検査(★)
5.血圧の測定
6.貧血検査(血色素量及び赤血球数)(★)
7.肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)(★)
8.血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(★)
9.血糖検査(★)
10.尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11.心電図検査(★)

身長や腹囲、貧血検査など(★)がついた検査項目については、それぞれの基準に基づき、自覚症状や他覚症状、既往歴等を勘案し、医師の判断で省略が可能です。

【出典】
※1:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~」をもとにティーペックが作成
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf


●特定業務従事者の健康診断
 →労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務に常時従事する労働者を対象に行う健康診断

●海外派遣労働者の健康診断
 →労働者を6か月以上海外に派遣させる際、または6か月以上海外に派遣した労働者を帰国させ、国内の業務に従事させる際に実施する健康診断

●給食従業員の検便
 →給食業務に従事する労働者を対象に実施


それぞれの健康診断の対象者、実施期間をまとめると、以下の表のようになります。

アルバイト・パートタイム労働者で、以下の(1)(2)の両条件に当てはまる方は、一般健康診断の受診が義務付けられています。

(1)無期契約。または1年以上契約しているか、1年以上契約することを予定している場合。
(2)1週間あたりの労働時間が正社員の4分の3以上の場合。

【出典】
厚生労働省「パートタイム労働者の健康診断を実施しましょう!!」
https://www.lcgjapan.com/pdf/lb09094.pdf?12

(2)にあたらない場合でも、(1)に該当し、1週間あたりの労働時間が正社員の2分の1以上、4分の3未満働くパートタイム労働者については、一般健康診断を実施することが望ましいとされています。

特殊健康診断

「特殊健康診断」とは、法で定められた有害業務に常時従事する労働者が受ける健康診断です。原則として、雇用時や配置替え時、また、6か月以内ごとに1回(じん肺健診は管理区分に応じて1~3年以内ごとに1回)、それぞれ特別の健康診断を実施する必要があります。

健康診断の費用

健康診断の費用については、企業側が支払うことが一般的です。厚生労働省のホームページでは「労働安全衛生法等で事業者に義務付けられている健康診断の費用は、法により、事業者に健康診断の実施が義務付けられている以上、当然に事業者が負担すべき」とされています。

出典:厚生労働省「安全衛生に関するQ&A」健康診断関係
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/faq_index.html

健康診断を受けている間の賃金については「一般健康診断」と「特殊健康診断」で異なります。「業務の遂行に関連しているかどうか」がポイントです。

「一般健康診断」は、一般的な健康確保を目的としており、業務遂行との直接の関連において行われるものではありません。したがって、受診している間の賃金については、労使間の協議によって決められます。ただし、厚生労働省のホームページにも記載がある通り、健康診断の実施をスムーズに進ませるためにも、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいでしょう。

「特殊健康診断」は、業務の遂行に関して、労働者の健康確保のため実施しなければならないものです。したがって、受診している時間は労働時間とみなされ、賃金の支払いが必要です。

出典:厚生労働省「安全衛生に関するQ&A」健康診断関係
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/faq_index.html

健康診断の実施率・受診率の状況

厚生労働省が平成24年に行った「労働者健康状況調査」の結果を見てみると、100名以上の事業所ではほぼ100%に近い数値で定期健康診断が実施されていることがわかります。しかし、事業規模が少なくなるほど実施率も低下し、29名以下の事業所では実施率が89.4%と、実施が義務付けられているにも関わらず、低い数値になっています。

一方、受診率を見てみると、全体の平均値81.5%とあり、こちらも受診が義務付けられてはいるものの、受診できていない従業員が約20%いることがわかります。

ティーペックが2022年7月に行った、会社員1,000名を対象にした「健康診断に関する調査」でも、『あなたは、健康診断を毎年受けていますか?』という質問に対して「毎年受けている」と回答した人が83.6%、一方「受ける年、受けない年がある」「毎年受けていない」と回答した人が合わせて13.8%という結果となり、依然として受診率の改善は、企業にとっての課題となっています。

ティーペックが実施した「健康診断に関する調査」の詳細はこちら >>

健康診断を拒否する社員へはどう対応する?

従業員に健康診断を拒否された場合の対処法について解説します。
ポイントは以下の3点です。

(1)健康診断を受けたくない理由を把握する

受けたくない理由をしっかり把握したうえで、従業員の気持ちに寄り添う対応を考えましょう。もし「業務が忙しい」といった理由の場合は、受診しやすいように候補日を複数設けたり、繁忙期が部署によって異なる場合は、部署ごとに実施時期を変更したりなど、会社が体制を整えたうえで、働きかけることが大切です。

(2)健康診断を受けるメリットを説明する

もし、健康診断で、業務の遂行に支障をきたす病気がわかれば、仕事内容の変更や勤務時間の調整などが可能になることを伝えましょう。また、健康診断は、様々な病気の早期発見につながったり、自身の生活習慣を見直す良い機会になったりします。従業員の健康維持・促進のためにも有用であることを説明しましょう。

定期健康診断の検査項目と検査でわかることについてはこちら
『何がわかる?健康診断』を読む >>

(3)健康診断は法的義務であることを伝える

先にも述べたように、従業員側にも健康診断を受診する義務があります。従業員の中には「健康診断は任意」と思っている方も少なくないので、法的義務であることをしっかり伝えましょう。

【動画】健康診断を受けないとどうなるのか

健康診断を毎年しっかり受診した場合と、「行くのが面倒…」と受診しなかった場合で、その後の人生にどのような変化が起こるのでしょうか。分かりやすく表現した動画をご紹介します。

健康診断の結果は5年間保存、報告書を労働基準監督署へ提出する

企業は、従業員に健康診断を受けさせた後も、以下の対応をする必要があります。

●健康診断の結果の記録
一般健康診断の場合、企業は「健康診断個人票」を作成し、5年間保存する義務があります。

●健康診断の結果についての医師等からの意見聴取
企業は、健康診断の結果に「再検査」など、異常の所見のある労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師又は歯科医師の意見を聴かなければなりません。

また、「再検査」「要精密検査」が必要な労働者に対して、受診を勧奨し、意見を聞く医師らに、その結果について提出するように働きかけることが適当であるとされています。

●「定期健康診断結果報告書」の提出
常時使用する労働者が50人以上いる事業場の場合は、「定期健康診断結果報告書」「特定業務従事者の健康診断結果」の提出義務があります。提出期限は定められていませんが、「遅滞なく提出すること」とされていますので、できるだけ早く所轄の労働基準監督署に提出するよう対応しましょう。

従業員の健康診断のデータを一元管理する健康管理システム

健康診断は、労働安全衛生法で、事業者には実施の義務が、従業員には受診する義務が定められています。病気の早期発見、予防のためにも健康診断を受けるよう、会社が体制を整えたうえで、受診を促すことが大切です。

一方、従業員がしっかり健康診断を受診しているのに、会社側が、健康データを従来の紙やエクセルのまま管理していると、整理や集計に大幅な時間がかかり、せっかくのデータを活用することができません。

ティーペックの健康管理システムでは、健康診断の結果やストレスチェックの結果など、こころとからだの健康データの一元化・見える化が可能です。

健康管理システムを導入すれば、これ一つで必要なデータがすぐに見つかり、健康課題にも今より踏み込んだフォローが可能になります。詳細を聞いてみたい方はお気軽にお問合わせください。

※当記事は2022年2月に作成されたものです。(2023年9月、一部内容更新)
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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参考:
・e-Gov法令検索『(昭和四十七年法律第五十七号)労働安全衛生法』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000057

・厚生労働省「労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう ~労働者の健康確保のために~」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf

・厚生労働省「安全衛生に関するQ&A 健康診断の費用は労働者と使用者のどちらが負担するものなのでしょうか?」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/1.html

・厚生労働省「安全衛生に関するQ&A 健康診断を受けている間の賃金はどうなるのでしょうか?」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/2.html

・厚生労働省「平成24年 労働者健康状況調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h24-46-50_01.pdf

・森晃爾 編『産業保健ハンドブック 改定20版』労働調査会、2022年
 
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