健康・予防・両立支援
仕事と治療の両立 2019/11/05

がん治療の最終収支報告~がん経験者が語る「がん治療と仕事の両立」Vol.6~

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
今回は「がん経験者が語る、がん治療の最終収支報告」についてご紹介します。

健康保険で治療費負担は抑えられるとはいえ、休職や仕事時間などの調整による収入の減少や、がん治療・療養、そしてその後も続く通院など、これまでの収入と支出のバランスは大きく変化します。

第6話は、「がん治療と仕事の両立」を実践した、ティーペック社員花木の、がん治療の最終収支について、経験者ならではの本音を交えてお伝えします。
(以下、本人による執筆記事です。)

支出と収入について

今回の約8ヶ月近くに渡った治療・療養の全体収支について、お伝えできる範囲でご紹介したいと思う。

▼領収書の数々。ボリュームがイメージできるよう、130cmの長男に横になってもらった。

まずは支出からだ。
私の受けた治療は、抗がん剤治療(通院8回投与)と放射線治療(通院計35回)。

抗がん剤治療1回あたり約11万円(3割負担)×8回、放射線治療1回あたり約1万円(3割負担)×35回。これだけでも普通なら120万円を超えてしまう。

▼抗がん剤治療の領収書(花木の場合)

▼放射線治療の領収書(花木の場合)

加えて、入院時のさまざまな費用や節目節目の検査代などがかかるのだが、「高額療養費」という制度を使うことによって、これらが月々最大8〜9万円程度に抑えられた。

さらに、私の場合は、健康保険組合からの付加給付があり(加入先により異なる)、最終的には約8ヶ月間で「30万円程度」の治療費で済んだ。

しかし、他にも、書類代や栄養補助食品代、食事が取れないときの栄養剤費、陶板浴(とうばんよく)費用、必要備品などで「約20万円」かかった。

車で通える範囲の好立地にある病院だったので、かなり経費は抑えられたはずだが、それでもこのくらいはかかってしまったというわけだ。

また、差額ベッド代も、私の場合、入院計40日間のうち、かなりの日数で個室(差額費1日1〜2万円)をお願いしたので、その分の費用は保険適用外で全て自分持ち(痛みに悶えていたので、相部屋では他の患者さんの迷惑にもなるため、致し方ない出費だ)。

次に、収入に関して。

収入として、健康保険組合から「傷病手当金」は入ってきたものの、当然月々少しずつ生活費も目減りしていった。

多少なりともあった残業代もなくなり、賞与も休職中は当然対象期間外。

それでも、社会保険料は勤務中と同じように毎月徴収される(所得税だけは免除されていたが)。

最終収支を踏まえての感想

結局、加入していた生命保険の一時金(初めてがんと診断されたときに支払われるもの)と、医療保険の給付金(入院や手術などに対するもの)で上記の支出はなんとか賄えたものの、万一再発となり同じような治療をするとなると、次回は一時金も出なくなるためかなり厳しくなりそうだ。

もちろん、5年間の経過観察のための検査代(年1〜4回程度)も馬鹿にならない。

調べる限り、今後5年間は新たに入れるがん保険もなさそうだし……。

今思えば、健康なうちに「がん保険」に1つくらい入っておけば良かったかなーと思ってしまう。
当時は、 生命保険のがん診断一時金と医療保険の給付金があるし、わざわざがん保険に今入らなくてもいいかな、と高をくくっていた。40代くらいから考えようかなという感じで、完全に甘かったと思う。

とはいえ、私はまだ全然恵まれている方で、人によっては退職してしまって傷病手当金すらもらえないケースもあるだろうし(別途失業保険などはあるだろうが)、保険に全く入っておらず治療費を借り入れるしかない人もいることだろう。

命がまずは最優先ではあるものの、金銭的に苦しむのはやはり辛い。

こうした事態に備えるためにも、保険を見直したり、いざというときの蓄えを持ったりすることに越したことはない、と経験者として痛感する。

最後に。なんと言っても、治療中(今も)、私のサポートの傍ら、それまでと変わらず正社員として働き続けてくれた妻こそが、最大の功労者だ。金銭的にはもちろん、精神的にも大いに救われた。

以上が、ざっくりとではあるが、なんとか赤字にはならずに済みました、という私からの収支報告だ。

【がん経験者が語る~がん治療と仕事の両立~】

・Vol.1 がんとの出会いと会社への告白
https://t-pec.jp/work-work/article/143

・Vol.2 がん宣告を退職の引き金にしてはいけない
https://t-pec.jp/work-work/article/144

・Vol.3 制度だけじゃない、待っててくれる人がいる職場
https://t-pec.jp/work-work/article/145

・Vol.4 社内制度活用で安心して治療を受ける
https://t-pec.jp/work-work/article/146

・Vol.5 8ヶ月にわたる治療と療養
https://t-pec.jp/work-work/article/147

・Vol.7 がん再発の不安を和らげてくれる職場環境
https://t-pec.jp/work-work/article/149

花木 裕介

花木 裕介のプロフィール画像

ティーペック株式会社 サービス企画室 マネージャー。産業カウンセラー。
2017年12月、中咽頭がん告知を受け、標準治療(抗がん剤、放射線)を開始。翌8月に病巣が画像上消滅し、9月より復職。がん判明後より、ブログ『38歳2児の父、まさかの中咽頭がんステージ4体験記! 〜がんチャレンジャーとしての日々〜』を開始し、現在も執筆中。
著書に、『心折れそうな自分を応援する方法 〜現役子育てパパでも夢を諦めない』(セルバ出版)、『青臭さのすすめ ~未来の息子たちへの贈り物~』(はるかぜ書房)など。
国家プロジェクトである「がん対策推進企業アクション」(厚生労働省の委託事業)の認定講師としても活動中。

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提供元:
T-PEC Channel
がん治療の最終収支報告 ~健康保険組合と民間保険に助けられて~ 【ティーペックサービスを使い倒して生還した、あるがん罹患社員の記録6】
https://t-pec.jp/ch/article/361
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※当記事は2019年11月時点のT-PEC Channel(https://t-pec.jp/ch/article/361)で作成されたものを元に、データやイラストのみ一部修正したものです。(2022年4月更新 ※記事内の一部文言修正しました。)
※法制度については作成当時のものを参考に作成しており、最新の制度は変更となっている可能性があります。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事が全てのケースにおいて当てはまるわけではありません。