健康・予防・両立支援
健診・二次健診 2022/11/22

健康診断後で再検査が必要になった従業員への対応方法や結果報告書届出などについて解説

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

この記事では、人事部などで従業員の健康管理を担当している人に向けて、企業で実施する健康診断後の流れを解説します。再検査が必要になった従業員に対しての対応方法や、所轄労働基準監督署長に対する結果報告書の提出有無の条件についても触れています。ぜひ参考にしてください。

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<目次>
企業で実施する健康診断は労働安全衛生法で義務付けられている
企業で実施する健康診断の注意点
健康診断後の流れや注意点
健康診断の再検査(二次健康診断)とは
再検査になった従業員への対応が重要な理由
まとめ

企業で実施する健康診断は労働安全衛生法で義務付けられている

事業者は、労働安全衛生法第66条に基づいて、条件を満たした労働者(常時使用する従業員)に対して医師のもと健康診断を実施しなければなりません。一方で、労働者側にも事業者が実施する健康診断を受ける義務があります。
ただし、後述する再検査については義務ではありません。

出典: e-Gov法令検索『(昭和四十七年法律第五十七号)労働安全衛生法』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000057

健康診断の種類

健康診断には主に以下の種類があります。

・一般健康診断(雇入時の健康診断、定期健康診断、特定業務従事者の健康診断、海外派遣労働者の健康診断、給食従業員の検便)
・特殊健康診断
・じん肺健診
・歯科医師による健診 など

それぞれの健康診断は、種類ごとに対象となる労働者と実施時期が決められています。例えば定期健康診断の場合、「常時使用する労働者(特定業務従事者を除く)に対し1年以内ごとに1回」といった取り決めの条件を満たしている全従業員に対して実施する必要があります。

企業で実施する健康診断の注意点

企業で実施する健康診断にはいくつかの注意点があります。それぞれについて解説します。

実施状況や情報漏洩など違反した場合は罰則が科せられることもあるので注意が必要

企業の健康診断に関する法令に違反した場合は、労働安全衛生法第12章の罰則が科せられることもあります。
例えば、労働安全衛生法第120条では、第10条の総括安全衛生管理者、第11条の安全管理者、第12条の衛生管理者などの規定に違反した者や、第120条1号に該当する者による虚偽表示や報告の怠り、帳簿の保管義務違反など、6つの条件のいずれかに該当すると健康診断実施に関する違反として、50万円以下の罰金が科せられます。

一方、労働安全衛生法第105条では「健康診断等に関する秘密の保持」について、健康診断の過程や結果、面接指導、その他の検査などで知り得た情報を漏洩してはならないと定めています。違反した場合には6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。

健康診断の費用や、健康診断時の賃金についての注意点

企業で健康診断を行う場合の費用や賃金について、厚生労働省のホームページには以下のように記載されています。

「労働安全衛生法等で事業者に義務付けられている健康診断の費用は、法により、事業者に健康診断の実施が義務付けられている以上、当然に事業者が負担すべきものとされています。」

健康診断の受診に際して賃金が支払われるかどうかは、一般健康診断と特殊健康診断で異なります。一般健康診断の場合は労使間の協議で定めますが、円滑な受診のためには事業者が賃金を支払うのが望ましいでしょう。一方、特殊健康診断では賃金の支払いが必要です。

出典:厚生労働省「安全衛生に関するQ&A」健康診断関係
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/faq_index.html

誰が健康診断の結果を閲覧できるか

健康診断の結果を閲覧できるのは、健康診断の実施実務従事者、人事部の担当者などです。ただし、健康診断の結果は、その結果などによって不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要する「要配慮個人情報」とされていますので、法令によって守秘義務を課されていない人が容易に取り扱っていいものではありません。産業医や企業の専任者など、安全衛生委員会における労使間の合意の上で閲覧できる人を限定し、就業規則などで定めておくとよいでしょう。

例外として、2021(令和3)年4月1日に適用された改正「事業場における労働者の健康保持増進のための指針(THP指針)」、通称「コラボヘルス推進」に関わる場面では、健康診断の結果が第三者に情報提供されることがあります。

これは事業者が保険者から、40歳以上の労働者における安衛法に基づく健康診断の結果を求められた場合に、健康診断の結果を提供しなければならないというものです。これには第三者提供に係る本人の同意が不要とされています。

健康診断後の流れや注意点

健康診断後の流れは、すでに触れた労働安全衛生法第66条に規定されています。詳細は条文を参照してください。重要な点のみ解説します。

労働関係に関する重要な書類は、労働基準法第109条によって5年間の保存義務を負います。健康診断の診断結果も該当することから、健康診断個人票という形で保存します。

ただし健診の種類によっては保存期間が異なるため注意しましょう。また、勤続年数の長い従業員のデータが後日必要になるケースもあるため、特別な理由がない場合は、すべての結果を残しておきましょう。

なお再検査となった従業員への対応や費用負担について、また結果報告書届出についての注意点は、以下に詳しく解説します。

出典:e-Gov法令検索『(昭和二十二年法律第四十九号)労働基準法』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

健康診断の再検査(二次健康診断)とは

健康診断の再検査とは、一次検査の診断結果の判定区分の1つです。一例として、5段階評価の健康診断の判定基準を紹介します。

検査機関によって判定基準が違うため、検査結果をよく見る必要があります。再検査が必要かどうかについても記載されていることが多いでしょう。

再検査と精密検査では意味が異なります。再検査とは基本は健康診断と同じ内容の検査を行い、異常な数値が一時的なものか、身体に問題があるのかを調べます。精密検査とは、さらに詳細な検査で、異常値の原因疾患を探り、治療が必要かを確認します。

なお、従業員に再検査を受けさせることは企業の義務ではなく、従業員が再検査を受けないことによる罰則もありません。ただし注意点もあります。以下で詳しく解説します。

再検査が必要になった従業員への対応方法や、再検査の費用負担についての注意点

労働安全衛生法によると、事業者の努力義務として、従業員に対して再検査を受けるように促す(受診勧奨)ことが定められています。

再検査以外の事後措置としては、例えば生活習慣病など病気リスクを負っている場合、保健指導の実施が必要です。また健康診断においてメンタルヘルスに問題が見られた場合などは、就業時間の見直しや配置転換なども行うことがあります。

再検査の費用については原則個人負担ですが、会社負担になるケースもあるので注意が必要です。特殊健康診断の再検査や精密検査、リスク管理の観点から早急に専門医を受診すべき一般健康診断の再検査は会社負担になります。

再検査費用を企業が負担することで、従業員が受診しやすくなるのも事実でしょう。一定の条件を満たした場合は「労災保険二次健康診断等給付」に該当し、再検査費用が無料になることもあります。

また、従業員は再検査の結果に基づき医者による保健指導が受けられます。また、「労災保険二次健康診断等給付」に該当する場合、従業員は年1回までの無料診断が認められていることも従業員に案内しましょう。

結果報告書届出についての注意点

健康診断の結果報告書届出については、労働安全衛生規則第52条によって提出義務が定められています。提出義務があるのは常時50人以上の従業員がいる事業者で、定期健康診断の結果報告書を速やかに所轄の労働基準監督署へ提出する義務があります。

さらに2022(令和4)年10月1日からは、有害な業務に従事する労働者を所属させるすべての事業者に、該当者への歯科健診とその結果報告が義務化されました。合わせて報告書の様式が変更になっています。

有害な業務とは、労働安全衛生法施行令第22条第3項によって「塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんその他歯またはその支持組織に有害な物のガス、蒸気または粉じんを発散する場所における業務」と規定されます。

特殊健診については、健診を行ったすべての事業者が結果報告書を提出しなければなりません。じん肺健康診断に関しては毎年年末(12月31日時点)における実施状況の報告書を、翌年2月末日までに提出することが定められています。

出典:e-Gov法令検索『(昭和四十七年労働省令第三十二号)労働安全衛生規則 』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032

出典:厚生労働省「安全衛生に関するQ&A」報告関係
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/faq_index.html

出典:厚生労働省「健康診断について」2022年10月1日から歯科健診の結果報告がすべての事業場に義務化されます
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei02.html

再検査になった従業員への対応が重要な理由

再検査については企業側に受診勧奨の努力義務がありますが、実施義務も受診義務もないため、従業員が再検査を受けない可能性があります。ただし、企業には安全配慮義務があり、従業員が再検査を受けずに仕事を続けて何らかの病気になってしまった場合は、企業側が責任を問われる可能性も否定できません。

企業が従業員に再検査を強制することはできませんが、企業側で再検査の通知を見過ごしてしまうことのないよう、しっかりと対策する必要があります。

まずは異常の早期発見や早期治療のために、再検査の受診、産業医への相談や保健指導の受講を促し、結果を報告してもらうことが望ましいでしょう。病気によって、経験のある従業員が休職、退職することは、企業にとってマイナスです。適切な健康診断や再検査の実施は優秀な人材の確保にもつながります。

まとめ

企業での健康診断には、報告書の提出、保管などさまざまな義務が伴います。一方で再検査については努力義務に留まり、企業にはアフターケアを行う責任がある反面、受診を強制できない難しい課題を抱えています。

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参考

・厚生労働省「労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう ~労働者の健康確保のために~」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf

・e-Gov法令検索『(昭和四十七年法律第五十七号)労働安全衛生法』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000057

・厚生労働省「安全衛生に関するQ&A」健康診断関係
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/faq_index.html

・e-Gov法令検索『(昭和二十二年法律第四十九号)労働基準法』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

・e-Gov法令検索『(昭和四十七年労働省令第三十二号)労働安全衛生規則 』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032

・厚生労働省「安全衛生に関するQ&A」報告関係
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/faq_index.html

・厚生労働省「健康診断について」2022年10月1日から歯科健診の結果報告がすべての事業場に義務化されます
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei02.html

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※当記事は2022年11月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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