メンタルヘルス研修の重要性とは~従業員のこころとからだの健康を守る!~
こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
企業がメンタルヘルス研修を実施することで、従業員が早期に自身のメンタルヘルス不調に気づけたり、管理職が部下の異変にいち早く対応できたり、休職や離職の防止、生産性・モチベーションの向上につなげることができます。本記事では、メンタルヘルス研修の重要性や、メンタルヘルス研修を成功させるポイントなどについてお伝えします。(以下、ティーペックの研修講師・傳川さん執筆)
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<目次>
◆メンタルヘルスとは
◆職場でのメンタルヘルス問題の現状
◆メンタルヘルス研修を行う目的
◆メンタルヘルス研修のメリット・効果
◆メンタルヘルス研修を成功させるポイント
◆メンタルヘルス対策の基本となる4つのケア
◆ティーペックのメンタルヘルス研修プログラムをご紹介
◆誰もが生き生きと働ける職場環境づくりを
メンタルヘルスとは
メンタルヘルスとは、こころの健康を意味します。日常生活の中で、「今日は気分がいい」「やる気がわく」という日もあれば「落ち込む」「やる気が起きない」という日もあるでしょう。こころの状態は常に移り変わりますので、アップダウンがあるのは自然なことです。しかし、落ち込んだ状態が長く続くと、こころの不調―メンタルヘルス不調に陥る可能性があります。
メンタルヘルス不調は、環境や状況により、誰でもかかりうるものです。その意味合いにおいて「こころの風邪」と表現されることもあります。しかし、身体の風邪と違い、メンタルヘルス不調は発見しづらく、深刻化するとうつ病などの疾病につながり、自殺のリスクが高まることもあります。また、回復に長く時間がかかることも特徴です。このような事態になる前に、未然に防いだり、早期に発見して対処したりすることが重要です。
職場でのメンタルヘルス問題の現状
メンタルヘルス不調の主な発生原因はストレスです。令和4年度の調査によると(※1)、仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は、82.2%にのぼります。その内訳は、1位:仕事の量(36.3%)、2位:仕事の失敗、責任の発生等(35.9%)、3位:仕事の質(27.1%)、4位:対人関係(26.2%)です。
また、令和3年11月1日~令和4年10月31日の1年間にメンタルヘルス不調により1ヶ月以上休業・退職した労働者がいた事業所の割合は13.1%となっており、前年(10.1%)よりも増加傾向にあります。(※2)
このことから、メンタルヘルス問題はどの事業所でも起こりうる共通の課題であると言えるでしょう。
※1)厚生労働省「令和4年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001154314.pdf
※2)厚生労働省「令和4年度 労働安全衛生調査(実態調査)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r04-46-50_kekka-gaiyo01.pdf
メンタルヘルス研修を行う目的
メンタルヘルス対策は、企業の課題解決のために必要であると同時に、法的な義務でもあります。労働契約法5条には「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」とあります。これを安全配慮義務といいます。
では、どのような対策をすればよいのでしょうか?メンタルヘルス対策は3つの段階で考えます。メンタルヘルス不調が発生する前に未然に防止する一次予防、メンタルヘルス不調を早期に発見して適切に対処し、こころの病気の重症化や休職、退職を防ぐ二次予防、そして、メンタルヘルス不調により休職をした従業員の職場復帰を支援する三次予防です。
それぞれの段階で大きく分けて2つのアプローチで対策します。一つが環境や体制、制度の整備です。そして、もう一つのアプローチが情報提供や教育研修です。メンタルヘルス研修は、一次予防から三次予防のあらゆる段階で、従業員や産業保健スタッフが自ら対処できるように教育することを目的として実施されます。
メンタルヘルス研修のメリット・効果
さらに、メンタルヘルス研修を実施するとどのようなメリットや効果があるか整理してみましょう。
1.社員自身で対処できる
メンタルヘルス研修を通して、自分で自分のこころの健康をケアすることができるようになれば、早期にメンタルヘルス不調に陥ることを予防する効果が期待できます。
2.部下の変化に早期に対処できる
ラインケア研修など通して、管理職が部下の変化に早く気づき、より適切にかかわることができるようになれば、部下のメンタルヘルス不調の発生や深刻化を防ぐことが期待できます。
3.休職や離職の防止
1と2の結果として、メンタルヘルス不調を未然に防いだり、重症化を予防したりすることができ、休職や離職を防止することができます。
4. 生産性・モチベーションの向上
こころとからだの健康は、能力を発揮する上で基盤となるものですし、管理職と部下、同僚間での円滑なコミュニケーションも業務遂行する上で重要な要素です。メンタルヘルス対策として取り組む内容が、結果として生産性やモチベーションの向上にもつながります。
メンタルヘルス研修を成功させるポイント
1.メンタルヘルス対策の方針を表明する
2.定期的に社員のメンタルヘルスに関する実態調査を行い、自社に必要な研修テーマや内容を検討する
研修は社員が抱える課題に基づいて設計します。健康診断やストレスチェック等、社員の心身の健康についてのデータも課題を知る一つの方法ですが、社員が日々の業務でどのようなことで悩みストレスを感じることが多いのか等実態調査で把握できれば、より現場の課題に即した研修を設計することができます。
3.研修実施後にアンケートなどを実施し、研修内容を改善する
まず、研修を設計する時に研修目的を明確にします。そして、研修後にアンケートを実施し、研修目的が達成されたのかを検証しましょう。その結果を次回の研修内容の改善に反映させます。
4.外部の専門機関に委託する
社内人材を活用してメンタルヘルス研修を行うことも多くのメリットがありますが、事業場に必ずしも専門的な知識を有する人材がいるとは限りません。外部の専門機関に委託することで、社内担当者の負担を減らし、専門家ならではの知見を得ることができます。
5.在宅勤務のケースも考慮し、オンラインでの研修環境を整える
近年ではオンラインの研修も多く行われるようになりました。オンラインツールを使用し、双方向で研修を進行したり、受講者の意見を広く引き出したりすることも可能です。オンライン研修も選択肢の一つとして環境を整えておくと良いでしょう。
メンタルヘルス対策の基本となる4つのケア
メンタルヘルス対策を効果的に進めるためには、従業員、管理職、産業保健スタッフ、事業場外の資源による4つのケアを計画的かつ継続的に進める必要があります。
1. セルフケア
従業員自身がストレスやメンタルヘルスに対して正しく理解し、自分のストレスに気づき、対処するケア。
2. ラインケア
管理監督者が部下に対して行うケア。具体的には、部下の「いつもと違う」変化に早く気づく、部下からの相談に適切に対応する、メンタルヘルス不調の部下の職場復帰の支援を適切に行う等。
3. 事業場内産業保健スタッフ等によるケア
事業場内の産業保健スタッフ等が、セルフケアやラインケアが効果的に実施されるように従業員や管理監督者に対し支援を行うとともに、メンタルヘルス対策の実施にあたり中心的な役割を果たす。
4. 事業場外資源によるケア
外部専門機関から情報・教育提供を受ける、ネットワークを形成する、職場復帰において専門的な支援を受ける等のケア。
ティーペックのメンタルヘルス研修プログラムをご紹介
ティーペックでは、身体的、精神的、社会的な健康に関するリテラシーを向上させるための豊富なコンテンツを提供することが可能です。対面型、オンライン型、コンテンツ配信型(動画)など、職場の状況に合わせた方法でご提供します*。
*依頼内容によってはご要望に沿えない場合があります。不明点はお問い合わせください。
■ラインケア教育研修
ラインケア研修は、メンタルヘルス不調やそれに伴うリスクを未然に防ぎ、問題に迅速対応できる人材の育成のためにも重要です。
「メンタルヘルスにおける『ラインケア』の重要性」を読む>>
■セルフケア教育研修
従業員一人ひとりがセルフケアを行うことで、健康な職場づくりや生産性の高い職場を目指します。
<テーマ例>
・ストレスの基礎知識
・ストレス対処の方法を知る(身体/思考/感情(マインドフルネス)/行動(相談の重要性含む)からのアプローチ)
・人間関係とストレス など
■ハラスメント防止教育研修
全従業員向けや管理職向けに、それぞれの立場における、適切な行動・対処方法をお伝えします。研修を受講することで、コンプライアンス意識の向上と問題予防、対応スキルの強化を図ります。
■傾聴トレーニング教育研修(管理職対象・ラインケア教育研修応用編)
ラインケアで最も必要なスキル「聴く力」を養う実践力強化研修です。メンタルヘルス問題はもちろん、上司・部下間での信頼関係構築にも大きく寄与します。
■アサーショントレーニング教育研修(全従業員対象・セルフケア応用編)
アサーション(assertion)とは、相手のことも、自分のことも大事にしながら、自分の感情や考え、要求などを伝えていくことです。メンタルヘルス問題の予防には、職場のコミュニケーション活性化が重要です。「パワハラ防止」や「ダイバーシティ」、「心理的安全性の確保」という点からも昨今注目されています。
「アサーティブ(アサーション)研修が企業に必要とされる背景とは?」を読む>>
誰もが生き生きと働ける職場環境づくりを
メンタルヘルス研修を取り入れて、従業員のこころとからだの健康を守る
メンタルヘルス不調に陥ると本人にとってもつらいだけでなく、組織にとっても損失となります。メンタルヘルス研修を取り入れることで、従業員のこころとからだの健康を守りましょう。
さらに、従業員や管理職だけでは対応できない場合や、職場で相談しづらい時に外部の相談機関があると安心です。
<事務局より>以下より、従業員のメンタルヘルスの実態について解説している資料をダウンロードいただけます。ぜひご活用ください。
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参考
・厚生労働省「令和4年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001154314.pdf
・厚生労働省「令和4年度 労働安全衛生調査(実態調査)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r04-46-50_kekka-gaiyo01.pdf
・厚生労働省「職場における心の健康づくり」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00002.html
・厚生労働省「事業場におけるメンタルヘルス対策の取組事例集」
https://www.mhlw.go.jp/content/000615709.pdf
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≪プロフィール≫
一般社団法人コーポレートウェルネス研究会 代表理事 傳川紀子
中学校の英語教諭を務めたのち、関東学院大学にて建築工学を専攻し建築構造設計に従事。
ハードワークにより崩してしまった体調を戻すことをきっかけに、心と身体の健康について国内と米国で15年以上に渡って学ぶ。約10年間延べ50,000人以上を対象としたボディコンディショニングの指導経験を持つ他、個人や若手経営者向けの睡眠、瞑想の講座も数多く提供。身体を整えることでパフォーマンスを上げることを得意とする。
2019年に一般社団法人コーポレートウェルネス研究会を設立。“幸せに働く人を増やす”ことを理念として、主に法人向けにメンタルヘルス、睡眠、運動など心身の健康に関する研修プログラムや教材の作成、提供を行っている。
【保有資格】
・産業カウンセラー
・上級睡眠健康指導士
・骨盤調整体操インストラクター(b-i スタイリスト)
・米国チョプラセンター認定瞑想&ヨガインストラクター
・ホリスティックヘルスコーチ(The Institute for Integrative Nutrition認定)
※当記事は2024年2月に作成されたものです
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
◆関連記事
・メンタルヘルス不調の原因や症状とは?企業としての対策について解説【医師監修】
https://t-pec.jp/work-work/article/405
・職場でのメンタルヘルスケアの重要性と推進方法を解説【医師監修】
https://t-pec.jp/work-work/article/403
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