メンタルヘルス・ハラスメント
メンタルヘルス 2026/03/26

五月病になりやすい人の特徴と症状チェック|人事担当者ができる従業員支援の作り方【医師監修】

五月病になりやすい人の特徴と症状チェック|人事担当者ができる従業員支援の作り方【医師監修】

こんにちは。企業の健康経営(R)を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

4月から5月にかけて、新入社員や異動者の欠勤や遅刻が増えたり、覇気がなくなったりする様子が気になることはないでしょうか。「最近あの人、元気がないな」「なんだかミスが増えている」といった変化は、いわゆる「五月病」のサインかもしれません。
五月病は医学的な診断名ではありませんが、放置すれば適応障害やうつ病に進行するリスクがあります。厚生労働省の「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)」の概況によると、現在の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は68.3%にのぼり(※1)、メンタルヘルス不調は多くの職場で身近な問題となっています。

この記事では、五月病になりやすい人の特徴を「性格」だけで断定せず、環境や状況との関係から解説します。また、こころ・身体・行動に現れる症状のチェックポイント、放置してはいけないラインの見極め方、そして人事担当者が整えるべき支援体制について、厚生労働省の指針に基づく「4つのケア」の枠組みを活用しながら具体的に紹介します。(以下、医師監修による記事です)

<目次>
◆五月病とは ー なぜ4〜5月に増えるのか
◆五月病の症状チェック(こころ・身体・行動)ー 早期に気付く観察ポイント
◆五月病になりやすい人の特徴
◆うつ病・適応障害・自律神経の乱れ…「五月病」とどう違う?
◆五月病の対策(個人のセルフケア)ー 食べ物・運動・睡眠
◆人事担当者における従業員支援のポイント
◆Q&A
◆まとめ

五月病とは ー なぜ4〜5月に増えるのか

五月病は「俗称」であり医学用語ではない

五月病とは、主に5月のゴールデンウィーク明けごろに現れる心身の不調を指す俗称です。正式な医学用語や診断名ではありませんが、多くの人が経験する現象として広く知られています。この時期に不調を訴える人が増える背景には、4月から始まる新年度特有の環境変化があります。
4月は入社、異動、転勤、昇進など、多くの人にとって環境が大きく変わる時期です。新しい職場、新しい上司や同僚、新しい業務内容に適応しようとして、知らず知らずのうちに緊張状態が続きます。とくに新入社員は、学生時代とはまったく異なるルールや人間関係の中で、常に気を張って過ごすことになります。

緊張の持続とGW後の「落差」が引き金に

4月の間は「頑張らなければ」という気持ちで緊張を維持できていても、ゴールデンウィークという長期休暇で一度その糸が緩むと、再び緊張状態に戻ることが難しくなる場合があります。これが五月病のメカニズムです。
休暇中にリラックスした分だけ、休み明けに職場へ戻る際の心理的ハードルが高くなります。「あと何十年もこの生活が続くのか」「自分はこの仕事に向いていないのではないか」といった不安が頭をよぎり、出勤すること自体がつらくなってしまうのです。

また、入社前に抱いていた期待と、実際の仕事内容や職場環境とのギャップを痛感する時期でもあります。「思っていた仕事と違う」「こんなはずではなかった」という思いがストレスとなり、心身の不調として表面化します。
五月病は新入社員だけの問題ではありません。異動や転勤で新しい環境に移った中堅社員、管理職への昇進で責任が増した社員など、環境変化を経験した人は誰でもなりうるものです。

五月病の症状チェック(こころ・身体・行動)ー 早期に気付くポイント

五月病の症状は、こころの変化、身体の不調、行動の変化という3つの側面から現れます。人事担当者や管理監督者は、これらのサインを「評価」ではなく「支援のきっかけ」として捉えることが重要です。

◆こころの症状(例)
こころに現れる症状として代表的なのは、気分の落ち込みや無気力感です。以前は楽しめていた仕事に興味が持てなくなったり、休日でも何もする気が起きなくなったりします。
イライラしやすくなることも特徴的な症状です。些細なことで腹が立ったり、同僚や家族に当たってしまったりすることが増えます。また、漠然とした不安感に襲われ、理由もなく「何かよくないことが起きるのではないか」と感じることもあります。
集中力の低下も見逃せないサインです。仕事中にぼんやりしてしまう、何度も同じ資料を読み返さないと頭に入らない、会議の内容が記憶に残らないといった状態が続く場合は注意が必要です。

◆身体の症状(例)
こころの不調は、身体の症状として現れることも少なくありません。代表的なのは睡眠の問題です。寝つきが悪くなる、夜中に何度も目が覚める、早朝に目が覚めて二度寝ができないといった不眠症状のほか、逆にいくら寝ても眠い、朝起きられないという過眠症状が出ることもあります。
倦怠感や疲労感も典型的な症状です。十分に休んだつもりでも疲れが取れず、体が鉛のように重いと感じる状態が続きます。頭痛、腹痛、吐き気といった症状も多く見られ、出勤前になると症状が強くなり、休日には軽減するという方もいます。
動悸やめまい、食欲不振なども五月病に関連する身体症状です。これらは自律神経の乱れによって引き起こされることが多く、内科を受診しても明確な異常が見つからない場合があります。

◆行動の変化(職場で見えるサイン)
職場でよく見られるのは行動面の変化です。遅刻や欠勤が増える、とくに月曜日や連休明けに休みがちになるといったケースは要注意です。以前は時間に正確だった人が遅刻するようになった場合、単なる怠慢ではなく不調のサインである可能性があります。
報告・連絡・相談が減ることも見逃せません。以前は積極的にコミュニケーションを取っていた人が、急に口数が減ったり、必要最低限の報告しかしなくなったりした場合は、何らかの問題を抱えている可能性があります。
ミスの増加も重要なサインです。普段はしないような単純なミスを繰り返す、確認作業を怠る、期限を守れなくなるといった変化が見られたら、本人の能力の問題ではなく、心身の不調が影響している可能性を考える必要があります。
表情の硬さや笑顔の減少、一人で昼食を取ることが増えた、雑談に参加しなくなったといった変化も気にかけたいサインです。

◆「いつまで?(期間)」の考え方
五月病の症状がどのくらい続くかは個人差がありますが、一般的には環境に慣れるにつれて数週間から1〜2ヶ月程度で落ち着くことが多いとされています。しかし、ストレスの原因となる状況が続く場合や、本人のストレス対処能力を超える負荷がかかっている場合は、長引くこともあります。
ただし、症状が2週間以上続く場合は、「一時的な適応の揺れ」ではなく、適応障害やうつ病といった別の状態に移行している可能性も視野に入れる必要があります。

五月病になりやすい人の特徴

なりやすさは「性格」だけでなく"状況×認知×支援の有無"もかかわる

「五月病になりやすい人」というと、完璧主義、真面目、HSP(Highly Sensitive Person:感受性の高い人)といった性格特性が挙げられることがあります。確かにこれらの特性を持つ人は、ストレスを感じやすかったり、周囲の環境変化に敏感に反応したりする傾向があります。

しかし、五月病のなりやすさは性格だけで決まるものではありません。同じ性格特性を持っていても、五月病になる人とならない人がいます。ポイントは、(1)性格と環境要因の組み合わせ、(2)自分の状況をどう受け止めているか(認知)、(3)周囲からのサポートの有無、この3つが重なったときに負担が増えやすい傾向があります。たとえば、同じ「真面目で責任感が強い」人でも「最初から完璧にできない自分はダメだ」と捉えると自分を追い込みやすくなります。

一方で、「新しい環境では慣れるまで時間がかかるのが普通」と捉えられると、必要以上に自分を責めにくくなります。このように環境そのものだけでなく、状況の受け止め方(認知)がストレスの大きさを左右します。

完璧主義の人が五月病になりやすいのは、「完璧にできない自分」を責めてしまいやすいためです。しかし、上司や先輩から「最初からできなくて当然」「徐々に覚えていけばいい」といったフォローやサポートがあれば、完璧主義の人でも過度なストレスを感じずに済む可能性があります。
つまり、五月病の原因を「この人はこういう性格だから」と考えるのではなく、「この人が持つ特性と、今の環境・支援状況の組み合わせがうまくいっていない」と考え、環境を見直したり支援したりすることが大切です。

職場で増える典型パターン

五月病が起きやすい状況として、いくつかの典型的なパターンがあります。

新入社員の場合は、入社前に抱いていた期待と現実のギャップに苦しむことがあります。「もっとやりがいのある仕事ができると思っていた」「こんなに細かい作業ばかりだとは思わなかった」といった失望感がストレスになります。また、職場に気軽に相談できる相手がいないことも大きな要因です。学生時代は友人や先生に何でも話せたのに、職場では誰に相談していいかわからないという状況が孤立感につながる可能性があります。

異動・転勤者の場合は、これまで築いてきた信頼関係や評価が新しい環境では通用しにくく、「また一から関係づくりをしなければならない」という不安を抱えることがあります。たとえば前の部署では「できる人」として認められていたのに、新しい部署ではゼロから実績を示す必要がある状況ではプレッシャーを感じやすくなります。
また、業務内容が変わるケースでは、これまでの経験がそのまま活かしにくく、覚えること・確認することが増える/判断の迷いが増える/周囲への質問回数が増えるといった形で、日々の認知負荷が高まりやすくなります。その結果、同じ時間働いていても疲労感が強くなり、ストレス増大につながる場合があります。

仕事ができる人の場合も注意が必要です。周囲から頼りにされるあまり、多くの仕事を抱え込み、人に任せることができなくなるケースもあります。「自分がやらなければ」という責任感が強いほど、疲弊しやすくなるのです。また、「弱音を吐けない」「相談することは負けだ」と考え、問題の早期発見を妨げることもあります。

共通点

五月病になりやすい人に共通して見られる要素があります。
まず、十分な休憩や休息が取れていないことです。忙しさを理由に昼休みも仕事をする、休日も仕事のことを考えてしまうといった状態が続くと、心身の回復が追いつきません。

睡眠不足も共通する要因です。睡眠は心身の疲労回復に不可欠であり、睡眠不足が続くとストレスへの耐性が低下します。
完璧にやろうとする傾向も挙げられます。70点で十分な場面でも100点を目指そうとして疲弊したり、小さなミスを必要以上に気に病んだりすることで、心理的負担が蓄積します。
そして、助けを求めないことです。「こんなことで相談したら迷惑をかける」「自分で解決しなければ」という思いから、一人で問題を抱え込んでしまいます。

うつ病・適応障害・自律神経の乱れ…「五月病」とどう違う?

五月病は俗称であり、背景に別の状態が隠れることがある

五月病はあくまでも俗称であり、医療機関を受診すると「適応障害」や「うつ病」「自律神経失調症」といった診断名がつくことがあります。これらの疾患は症状が重なる部分も多いため、見分けることが難しい場合もありますが、いくつかの特徴的な違いがあります。

適応障害は、明確なストレス要因があり、そのストレスから離れると症状が改善する傾向があります。たとえば、「会社に行く前は憂うつで吐き気がするが、休日は友人と出かけて楽しめる」といったケースなどです。ストレス要因の発生から3ヶ月以内に症状が現れ、ストレス要因がなくなれば6ヶ月以内に回復することが多いとされています。

うつ病は、必ずしも明確なストレス要因があるとは限りません。ストレスから離れても症状が持続し、何をしても楽しめない状態が続きます。休日でも気分が晴れず、趣味や好きだったことへの興味も薄れていってしまうケースが多いです。症状が2週間以上続き、日常生活に支障をきたす場合にうつ病と診断されることがあります。

自律神経の乱れは、動悸、めまい、頭痛、腹痛といった身体症状が中心となります。検査をしても明確な異常が見つからないことが多く、ストレスや生活習慣の乱れが原因となっていることがあります。

人事が押さえるべき線引き

人事担当者や管理監督者が判断すべきなのは、「この人はうつ病か適応障害か」という診断ではありません。診断は医師の役割です。人事が押さえるべきは、「専門家につなぐべきかどうか」の見極めです。

以下のような場合は、産業医や医療機関への相談を促すべきサインです。

環境を調整しても症状が改善しない場合:業務量を減らしたり、担当を変えたりしても不調が続く場合は、環境要因だけでは説明できない可能性があります。

原因がはっきりしない場合:本人に聞いても「何がつらいのかわからない」「理由なく落ち込む」という場合は、うつ病の可能性を考慮する必要があります。

症状が長期化している場合:2週間以上症状が続いている場合は、一時的な不調ではない可能性があります。

五月病の対策(個人のセルフケア)ー 食べ物・運動・睡眠

五月病の予防と改善には、生活習慣の見直しが重要です。とくに睡眠、運動、食事の3つは、セルフケアの基本となります。

睡眠不足を立て直す

睡眠は五月病対策において最も優先度が高い要素です。睡眠不足が続くと、ストレスへの耐性が低下し、感情のコントロールが難しくなります。睡眠不足は事故やうつ病のリスクを高めることが指摘されています。
睡眠の質を改善するためのポイントとして、まず就寝時刻と起床時刻を一定に保つことが挙げられます。平日と休日で起床時間を大きく変えないことで、体内時計のリズムが整います。

休日に「寝だめ」をする人も多いですが、これは逆効果になることがあります。休日に昼まで寝てしまうと、その夜の睡眠の質が低下し、翌朝がつらくなるという悪循環に陥りがちです。どうしても眠い場合は、遅くとも15時頃までに15〜30分程度の昼寝に留めることをおすすめします(※2)。

朝起きたら日光を浴びることで、体内時計がリセットされ、夜の眠りが深くなります。逆に、就寝前のスマートフォンやパソコンの使用は、ブルーライトの影響で寝つきを悪くするため控えめにしましょう。カフェインも睡眠に影響するため、夕方以降は摂取を控えることが望ましいです。

運動(ハードでなく"散歩"で良い)

運動はストレス解消やメンタルヘルスの改善に効果的ですが、五月病で疲れているときにハードな運動を始めるのは現実的ではありません。大切なのは、継続できる程度の軽い運動から始めることです。
運動習慣がある人は寝つきがよく、睡眠の質も高い傾向があります。週に数回、20〜30分程度のウォーキングから始めてみましょう。通勤時に一駅分歩く、エレベーターではなく階段を使うといった工夫をしてみてください。
ただし、就寝直前の激しい運動は交感神経が緊張し、逆効果になるため注意が必要です。

食べ物("整える"観点)

食事も心身の健康に大きく影響します。ストレスを感じているときほど、食生活が乱れがちになりますが、栄養バランスの偏りはメンタルヘルスの悪化につながります。

まず、朝食を抜かないことが重要です。朝食を食べることで体内時計がリセットされ、日中のパフォーマンスも向上します。忙しくても、簡単なもので構わないので何か口にする習慣をつけましょう。
食事の内容としては、血糖値の急激な変動は、イライラや疲労感の原因になるため、菓子パンやお菓子など糖質の多いものだけで食事を済ませるのではなく、タンパク質や野菜も一緒に摂ることで血糖値の乱高下を防げます。

アルコールについては、寝酒として飲む人もいますが、睡眠の質を下げることがわかっています。ストレス解消のつもりで飲酒量が増えることも問題です。適度な量に抑えることを心がけましょう。

仕事に行きたくないときの対処

朝起きて「仕事に行きたくない」と感じることは誰にでもあります。しかし、その気持ちが続く場合は、一人で抱え込まないことが大切です。
まず、信頼できる誰かに話してみましょう。家族、友人、同僚、上司など、話しやすい相手に今の状況を打ち明けるだけでも気持ちが軽くなることがあります。職場に相談しにくい場合は、社外の相談窓口を利用する方法もあります。

症状が続く場合は、医療機関の受診も選択肢の一つです。心療内科や精神科への受診に抵抗がある人も多いですが、早期に適切な対処をすることが大切です。「こんなことで受診していいのだろうか」と思う必要はありません。つらいと感じたら、それは受診の十分な理由になります。

人事担当者における従業員支援のポイント

メンタルヘルス対策は「4つのケア」で設計すると漏れにくい

厚生労働省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」において、職場のメンタルヘルス対策を「4つのケア」で進めることを推奨しています(※3)。この枠組みを活用することで、「本人任せ」「管理職任せ」「人事・産業保健任せ」などの偏りを防ぎ、役割分担を整理したうえで対策を組み立てられます。

4つのケアとは以下となります。

(1)セルフケア(労働者自身によるケア)
(2)ラインによるケア(管理監督者によるケア)
(3)事業場内産業保健スタッフ等によるケア(産業医や保健師、人事労務担当者などによるケア)
(4)事業場外資源によるケア(外部の専門機関や専門家によるケア)

これらは、一人(ひとつの部署)が最初から最後まで抱え込むという考え方ではなく、本人・上司(管理職)・社内の産業保健/人事・社外の専門機関が、それぞれの役割を担いながら、必要に応じてバトンを渡して支えるための枠組みです。4つのケアを組み合わせることで、予防→早期発見と相談→専門支援→復職・再発予防までを、抜けや漏れが出にくい形で設計できます。

一次予防(未然防止)

一次予防は、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための取り組みです。五月病対策としては、4月から5月にかけて以下のような施策を実施することが効果的です。

新入社員・異動者へのオンボーディング設計が重要です。最初から過大な期待をかけず、業務量を段階的に増やしていく設計にします。「半年後にはこのレベル、1年後にはこのレベル」といった具体的な成長イメージを共有することで、過度なプレッシャーを防げます。また、メンター制度やバディ制度を導入し、気軽に相談できる相手を明確にしておくことも有効です。

管理職向けの対応も欠かせません。部下への声かけのタイミングや言葉選びについて、具体的なテンプレートを共有します。「最近どう?」「困っていることはない?」といった定期的な声かけを1on1の機会に組み込みます。一方で、「気合いが足りない」「もっと頑張れ」といった根性論や、本人を追い詰めるような関わりは避けるべき対応として周知します(本人の罪悪感を強め、相談を遅らせる要因になり得ます)。

相談先の見える化も重要です。産業医、保健師、人事担当者、社外相談窓口などの連絡先を、ポスターやイントラネット、社内チャットツールの固定メッセージなどで常に目に触れる場所に掲示します。「困ったらここに相談」という導線を明確にしておくことで、早期の相談につながります。

二次予防(早期発見・早期対応)

二次予防は、不調の兆候を早期に発見し、適切な対応につなげる取り組みです。
大切なのは、不調のサインを「評価」ではなく「支援」に接続する運用です。遅刻やミスが増えた従業員に対して「勤務態度が悪い」と叱責するのではなく、「何か困っていることがあるのかもしれない」という視点で声をかけることが求められます。

産業医や保健師、社内相談窓口へのエスカレーション基準を明確にしておくことも重要です。たとえば、「連続して不眠を訴えている」「食事がまともに取れていない様子がある」「涙を流す場面が見られた」といった場合は、上司の判断だけで対応せず、専門家につなぐという基準を設けておきます。そうすることで、早期発見・早期対応によって、休職や退職を防ぎやすくなります。

こちらもチェック>>メンタル不調による離職を生まない適切な介入の判断基準とは?「早期介入で休職・退職を防ぐ!職場のメンタルヘルス問題を未然に防止するポイントと最適なタイミング」を読む

三次予防(休職・復職):再発を防ぐ

三次予防は、休職者の職場復帰支援と再発防止の取り組みです。
厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、休業開始から復職後のフォローアップまでを5つのステップで進めることが推奨されています。具体的には、以下のように進める流れが示されています(※4)。

(1)病気休業開始及び休業中のケア
(2)主治医による職場復帰可能の判断
(3)職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
(4)最終的な職場復帰の決定
(5)職場復帰後のフォローアップ

休職中の従業員に対しては、会社としての休み方の案内(傷病手当金などの制度説明、連絡方法の取り決めなど)を明確に伝えます。復職時には、産業医面談を実施し、主治医の診断書だけでなく、職場で求められる業務遂行能力が回復しているかを確認します。

復職後は、いきなり以前と同じ業務量に戻すのではなく、段階的に負荷を上げていく計画を立てます。定期的なフォローアップ面談を実施し、状況に応じて計画を見直す柔軟性も必要です。

外部相談窓口/EAP/カウンセリングの重要性

社内の相談窓口だけでは、従業員が相談しづらいケースがあります。「上司や人事に知られたくない」「社内の人には話しにくい」という心理的ハードルが存在するためです。
そこで有効なのが、外部相談窓口やEAP(従業員支援プログラム)の導入です。外部の専門機関が運営するため、匿名性が確保され、相談内容が会社に伝わる心配がありません。また、臨床心理士やカウンセラーなど専門家によるサポートを受けられます。
相談チャネルの多様化も利用率向上のポイントです。電話だけでなく、オンラインやメールでの相談にも対応できる体制があれば、時間や場所を選ばずに相談できます。

ただし、EAPは導入しただけでは機能しません。従業員への周知が不十分だと、そもそも存在を知らないまま利用されないことがあります。定期的な周知活動、上司からの案内促進、利用率や認知率の定期的なモニタリングをセットで行うことで、実効性のある支援体制となります。

Q&A

Q:五月病はどれくらいで治る?
A:五月病の期間は個人差がありますが、一般的には新しい環境に慣れるにつれて数週間から1〜2ヶ月程度で落ち着くことが多いです。一方で、ストレスの原因が続く場合や、本人の対処範囲を超えている場合は長引くこともあります。期間にかかわらず、早めに専門家に相談したり相談窓口を利用したりすることを検討してください。

Q:五月病とうつ病の違いは?
A:五月病は俗称であり、医学的な診断名ではありません。一方、うつ病は正式な診断名です。五月病は一時的な適応の問題であることが多いのに対し、うつ病は明確なストレス要因がなくても症状が持続し、ストレスから離れても改善しにくい特徴があります。五月病が長引くとうつ病に移行することもあるため、早期の対処が重要です。

Q:五月病と適応障害の違いは?
A:適応障害は、明確なストレス要因があり、そのストレスから離れると症状が改善する傾向がある疾患です。五月病の多くは、医学的には適応障害に該当することがあります。適応障害はストレス要因の発生から3ヶ月以内に発症し、ストレスがなくなれば6ヶ月以内に回復するとされています。

Q:五月病の症状で「吐き気・頭痛・腹痛」が出るのは普通?
A:はい、これらの身体症状は五月病でよく見られます。ストレスによって自律神経のバランスが乱れることで、吐き気、頭痛、腹痛といった症状が現れます。とくに出勤前に症状が強くなり、休日には軽減するというパターンがある場合は、心理的なストレスが身体症状として現れている可能性があります。

Q:「眠れない」「動悸」「めまい」があるときは何科?
A:まずは内科を受診して身体的な異常がないか確認することをおすすめします。検査で異常が見つからない場合は、心療内科や精神科への受診を検討してください。心療内科は身体症状と心理的な問題の両方を診てもらえる科です。どの科を受診すればよいかわからない場合は、かかりつけ医に相談するのも一つの方法です。

Q:本人が「仕事に行きたくない」と言ったら、人事は最初に何をする?
A:まずは本人の話をじっくり聞くことが大切です。「なぜ行きたくないのか」を問い詰めるのではなく、「どんな状況か教えてほしい」という姿勢で傾聴します。話を聞いた上で、産業医面談や社内外の相談窓口の利用を案内し、必要に応じて業務量の調整や配置転換を検討します。症状が重い場合は、医療機関の受診を勧めることも必要です。

Q:新入社員が五月病っぽい。上司にどう動いてもらう?
A:上司には、まず本人への声かけを依頼します。「最近どう?」「困っていることはない?」といった気軽な声かけから始め、話を聴く姿勢を持ってもらいます。叱咤激励や根性論は逆効果になることを伝え、必要に応じて業務量の調整や相談窓口への案内を行うよう依頼します。上司一人で抱え込まず、人事や産業保健スタッフと連携することも重要です。

Q:HSP/真面目/完璧主義の人への配慮で注意点は?
A:これらの特性を持つ人は、周囲の期待に応えようとして無理をしがちです。「頑張りすぎていないか」「一人で抱え込んでいないか」を気にかけ、定期的に声をかけることが大切です。また、「完璧でなくてもいい」「助けを求めることは悪いことではない」というメッセージを伝え、心理的安全性のある環境を整えることが重要です。

Q:セルフチェックはどこまで有効?
A:セルフチェックは自分の状態に気づくきっかけとして有効です。ただし、あくまでも参考であり、医学的な診断ではありません。チェックリストに多く当てはまったからといって必ず病気というわけではなく、逆に当てはまらなくても不調を感じているなら受診を検討すべきです。セルフチェックは「相談や受診を考えるきっかけ」として活用してください。

Q:会社として外部相談窓口(EAP)を入れるメリットは?
A:最大のメリットは、従業員が匿名で専門家に相談できることです。社内の相談窓口では「人事に知られたくない」という心理的ハードルがありますが、外部窓口ならその心配がありません。また、臨床心理士などの専門家によるカウンセリングを受けられること、早期に問題を発見し深刻化を防げること、メンタルヘルスに配慮している会社というイメージ向上につながることなどもメリットです。

Q:休ませるべきサインは?
A:以下のような場合は、医療機関への受診を勧め、場合によっては休職を検討する必要があります。(1)希死念慮(死にたいという気持ち)がある、(2)連続して眠れない日が続いている、(3)食事がまともに取れていない、(4)涙が止まらない・突然泣き出す、(5)症状が2週間以上続いている、(6)業務に著しい支障が出ている。これらは「様子を見る」段階ではありません。

Q:再発を防ぐ復職支援のコツは?
A:再発防止のポイントは、段階的な復帰と継続的なフォローアップです。復職直後からフルタイム・フル業務に戻すのではなく、短時間勤務や軽減業務から始めて通常業務に戻していきます。定期的な面談を実施し、本人の状態を確認しながら計画を柔軟に見直すことも重要です。また、休職の原因となった環境要因が解消されているかも確認し、必要に応じて配置転換なども検討します。

まとめ

五月病は「俗称」ではありますが、現れる症状を放置してはいけません。「気の持ちよう」「甘えだ」といった言葉で片付けるのではなく、早期に気づいて適切な支援につなげる体制を整えることが、人事担当者に求められる役割です。

五月病になりやすいかどうかは、性格だけで決まるものではありません。入社、異動、転勤といった環境変化に加え、期待と現実のギャップ、相談先がない、過度な業務負荷といった環境要因が組み合わさることで起こりやすくなります。つまり、会社側の取り組みによって予防できる部分が大きいのです。

対策は、従業員へのセルフケアの推奨だけで終わらせてはいけません。企業として、オンボーディング設計による一次予防、ラインケアと早期発見による二次予防、休職・復職の標準フローによる三次予防という運用設計を行い、「休み方」や「相談などの案内先」を事前に明文化しておくことが鍵となります。

外部相談窓口やEAPは有効な手段ですが、導入しただけでは機能しません。匿名性の確保、相談チャネルの多様化でハードルを下げつつ、周知活動や上司からの案内促進、認知率・利用率のモニタリングをセットで回すことで、早期発見・早期対応の実効性が高まります。

最後に、この記事を読んでいる人事担当者の方々へ。従業員に不調の兆候が見られたら、まずは症状をチェックし、本人や上司と話をして状況を把握してください。必要に応じて相談窓口や医療機関への受診を案内し、職場環境の調整を行うことが大切です。状況に応じて外部資源も活用しながら、従業員が安心して働ける環境を整えていきましょう。

<事務局より>
ティーペックの「こころとからだの健康サポート(EAP外部相談窓口)」では、従業員とそのご家族のこころとからだの相談を一つの窓口で対応します。こころの相談に対するハードルが下がり、かつ、ストレスが原因の身体症状も見逃さず、早期発見・早期予防の実現をサポートします。
また、セルフケア・ラインケア、コミュニケーションに関する教育研修も各種提供しておりますので、詳細はお気軽にお問い合わせください。

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<出典・参考文献>
※1 厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r06-46-50_kekka-gaiyo02.pdf

※2 厚生労働省 「健康づくりのための睡眠指針2023(案)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001151837.pdf

※3 厚生労働省「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」
https://www.mhlw.go.jp/content/001579077.pdf

※4 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00005.html

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◆監修者プロフィール

監修者である大西良佳先生のプロフィール画像

●名前
大西良佳
●科目
産業医、公衆衛生、ペインマネジメント、麻酔科、漢方内科、美容皮膚科
●所属学会・資格
公認心理師
産業医
麻酔科専門医
ペインクリニック専門医
公衆衛生修士
温泉療法医
緩和ケア研修修了
ICLSプロバイダー
●メディア出演実績
テレビ朝日「林修のレッスン!今でしょ」
宝島社
東京スポーツ新聞
小学館
日刊ゲンダイ
ライトハウスメディア

※当記事は、2026年2月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
※本記事内で紹介されているサービスに関して、記事監修の医師は関与しておらず、またサービスの監修もしていません。

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