メンタルヘルス・ハラスメント
メンタルヘルス 2024/05/02

メンタルヘルスと睡眠の関係とは?睡眠がこころの健康に与える影響と睡眠改善のポイント【医師監修】

メンタルヘルスと睡眠の関係とは?睡眠が心の健康に与える影響と睡眠改善のポイント【医師監修】

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

睡眠不足ではストレスを感じやすくなり、ストレスは睡眠障害を引き起こすこともあります。睡眠不足とストレスの悪循環を防ぐには、睡眠を含む生活習慣を見直して改善することが重要です。また、睡眠不足は生産性の低下やメンタルヘルス不調にもつながります。本記事ではメンタルヘルスと睡眠の関係を解説します。人事・管理職の方も、ぜひ従業員向けの情報提供用として活用ください。以下、医師監修による記事です。

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<目次>
◆メンタルヘルスにとって睡眠が重要な理由
◆メンタルヘルスを整える良い睡眠の条件
◆睡眠の質を改善するためのポイント
◆メンタルヘルス不調と睡眠障害の悪循環に注意|まずは生活習慣から見直そう

メンタルヘルスにとって睡眠が重要な理由

良好なメンタルヘルスを維持するためには、毎日、良い睡眠を取ることが非常に重要です。睡眠不足は仕事などでのパフォーマンスの低下、ミスの発生につながります。不眠症などの睡眠障害となった場合、離職・休職のリスクは増大するでしょう。そのため、慢性的に睡眠不足の従業員が増えることは、個人だけでなく、企業の経営にとってもリスクになります。まずはメンタルヘルスにおける、睡眠の役割について説明します。

睡眠不足は脳や身体の疲労回復を妨げる

睡眠の役割のひとつは、脳や身体の疲労を回復することです。活動した分しっかりと睡眠をとって回復することで、健やかな精神状態を維持することができます。

脳や身体に蓄積された疲労は、睡眠の際に多く分泌される成長ホルモンによって回復します。また、就寝中は副交感神経が優位で、リラックスした状態になるのです。睡眠不足は成長ホルモンの分泌に悪影響を与え、脳や身体の回復を妨げてしまいます。慢性化すると疲労が蓄積し、精神的・身体的な不調を引き起こしやすくなるのです。

質の悪い睡眠が集中力・生産性を低下させてストレスに

ただ寝れば良いというわけではありません。「眠りが浅い」「寝ても疲れが取れない」と感じるような、質の悪い睡眠は集中力や生産性を低下させます。よく眠れず、仕事が思うように進まない、ミスが続く、上司から叱責を受けるといった事態が続けば、精神的なストレスとなります。

睡眠不足が続くとストレスを感じやすくなる

睡眠不足は集中力・生産性を低下させるだけでなく、ストレスへの耐性も下げてしまいます。また、ストレスは睡眠障害の一因にもなるため、睡眠不足とストレス、そしてメンタルヘルス不調は悪循環を引き起こしやすいです。

睡眠は怒りや悲しみといった、ネガティブな感情を整理するのにも必要なものです。日中に悲しいことや辛いことがあっても、しっかりと睡眠をとることで寝ている間に感情を整理して、ストレスを和らげてくれます。

慢性的な睡眠不足は感情をネガティブな方向に誘導します。そして不眠症などの睡眠障害は、うつや生活習慣病のリスクを増大させることも分かっているので、早期の発見と対処が非常に重要になります。

メンタルヘルスを整える良い睡眠の条件

前述のとおり、適切な睡眠は集中力や生産性の維持に関係しています。メンタルヘルス不調は従業員の離職・休職にもつながるため、適切な睡眠時間が取れる労働時間かどうかなど、管理・監督者が労働環境を見直すことも重要です。

あわせて、睡眠の質を改善するための方法について従業員に対して積極的に情報提供していくことも必要になります。メンタルヘルスを整える良い睡眠の条件についてまとめました。

睡眠時間が十分であること

良い睡眠の条件の1つ目は「睡眠時間が十分であること」です。一般的には、少なくとも1日6時間以上の睡眠が必要だと考えられています。しかし厚生労働省(※1)の調査によれば、男女20歳以上の約40%は「1日の睡眠時間が6時間未満である」と回答しており、慢性的に睡眠時間が足りていない人の数は決して少なくありません。

実際に必要な睡眠時間には個人差があるため、6時間未満の睡眠でも、業務に支障の出ない人もいます。しかし、日中に眠気を感じることがあるのであれば、睡眠時間が不足している可能性が高いです。仕事中のパフォーマンスを考慮しながら、睡眠時間を調整するよう心がけましょう。

(※1)厚生労働省 「令和元年国民健康・栄養調査報告 第3部 生活習慣調査の結果」
https://www.mhlw.go.jp/content/000711008.pdf

毎日の就寝・起床時間が規則正しいこと

良い睡眠の条件の2つ目は「毎日の就寝・起床時間が規則正しいこと」です。不規則な生活は睡眠時間が短くなりやすいだけでなく、体内時計のリズムが狂う原因にもなります。たとえば、平日に不足しがちな睡眠時間を週末に取り戻そうとして長時間寝てしまうと、平日と週末の生活リズムに大きなズレが生じます。結果的に「日中にだるさを感じる」「夜に眠れない」などの影響が出てしまうため、仕事が休みの日も生活リズムを大きく変えないことが重要です。

質の良い睡眠であること

良い睡眠の条件の3つ目は「質の良い睡眠であること」です。質の良い睡眠について明確な定義があるわけではないものの、厚生労働省の検討会で用いられた資料(※2)では以下のような説明がなされています。

『(前略)量と質のバランスが保たれ、心身の健康を促す睡眠が良い睡眠といえます。適度な長さで睡眠休養感があることが良い睡眠の目安ですが、昼間に生じる強い眠気や、睡眠中に目覚める回数なども、良い睡眠かどうかを判断する目安として役立ちます。』

(※2)厚生労働省 第2回 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会 「【参考資料3】良い睡眠の概要」より
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001151837.pdf

たとえば、「十分な時間寝たはずなのに、疲れが残っている」という場合は、睡眠の質に問題があると考えられます。睡眠の質を下げる可能性のある要因、睡眠の質を改善するための方法については次章で説明するので、詳しくはそちらも確認してください。

睡眠の質を改善するためのポイント

睡眠の質を改善するためには次のようなポイントがあります。

適度な運動を行う

「眠りが浅い」「寝付くまでに時間がかかる」という場合、習慣的に適度な運動を行うことも重要です。質の良い睡眠には強度が低く、一定時間継続できるウォーキング、サイクリングなどのような有酸素運動が良いといわれています。大切なのは継続することなので、これらの有酸素運動を無理のない範囲で行いましょう。

ただし、強度の高い運動や就寝直前の運動は身体を興奮状態にし、寝付きにくくなってしまうため逆効果になります。軽度な有酸素運動であっても、就寝から3時間前までを目安に済ませましょう。就寝前の軽いストレッチやゆったりとした深い呼吸は、よい眠りの助けとなります。

寝る前にスマホを使用しない

寝る前のスマートフォンやタブレットの使用が睡眠の質を下げるケースもあるので注意しましょう。スムーズな入眠のためにはメラトニンの分泌が重要になりますが、就寝前にスマートフォンなどの強い光やブルーライトを浴びると、メラトニンの分泌が抑制されることが分かっています。ベッドに入ってからは部屋を暗くし、すぐに眠れなくてもスマートフォンなどを操作しないようにしましょう。

長時間の昼寝・寝だめをやめる

日中に眠気を感じる場合、短時間の昼寝が有効なケースもあります。長時間の昼寝は夜眠れなくなる原因になるので、昼寝をするときは時間に注意しましょう。厚生労働省のWebサイト(※3)によれば基本的には15分程度、高齢者であれば30分程度が効果的な昼寝の時間だとされています。適度な昼寝は日中の眠気を覚まし、睡眠の質の向上につながります。

また先述したとおり、寝だめも睡眠の質を下げる要因になります。日常的に睡眠不足を感じている場合、週末に寝だめするのではなく、平日に十分な睡眠時間を確保できるように工夫しましょう。平日と週末の起床・就寝時間の大きな差はソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)と呼ばれ、体内時計が狂う原因のひとつです。

(※3)厚生労働省 e-ヘルスネット 「快眠と生活習慣」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-004.html

朝に太陽光を浴びる

人間の体内時計は24時間よりも少し長いため、毎日少しだけ体内時計を早め、24時間(1日分)の周期に調節する必要があります。体内時計が調整されないと、就寝時間・起床時間が遅くなり、生活リズムがずれやすくなってしまいます。

体内時計の調整にとって重要なのが「朝に太陽光を浴びること」です。太陽光には体内時計の周期を早め、睡眠に重要なメラトニンというホルモン分泌を促す効果があるので、朝起きたらカーテンを開け、太陽の光を浴びるようにしてください。

就寝直前の飲食や飲酒は控える

就寝直前に食事や飲酒をすると、消化活動が活発なときに眠りにつくことになり、睡眠の質を下げてしまいます。十分な量かつバランスの良い食事は健康維持に必要ですが、食事の時間にも注意してください。できれば、夕食は寝る3時間前には済ませておきましょう。

加えて、寝る前のコーヒーや緑茶などのカフェインを含む飲み物、アルコール飲料の摂取も良くありません。カフェインの覚醒作用は寝つきを悪くしますし、アルコールの摂取は眠りを浅くし、中途覚醒の原因になります。飲酒によって眠気を誘われても、睡眠の質は落ちていることを覚えておいてください。

朝食を抜かない

夜にしっかりと眠るためには、朝食を抜かないこともポイントになります。朝食は日中に活動するためのエネルギー補給です。朝食を抜くことで日中の活動量が落ち、夜間の睡眠に影響が出ることも考えられます。

また太陽の光と同様、規則正しい時間に朝食を取ることは体内時計の調整にもつながります。朝食を食べない生活が常態化すると、体内時計が遅くなり、就寝時間・起床時間にも影響するため、できる限り食べる時間をつくるようにしてください。

禁煙を行う

寝る前の食事や飲酒は良くないと説明しましたが、喫煙習慣のある方は、タバコが睡眠の質を下げている可能性もあります。タバコにはニコチンなどの刺激物質が含まれるため、寝つきを悪くし、睡眠も浅くなりやすいです。

また、ニコチンは一定時間、血液中に成分が残ります。そのため、寝る直前の喫煙でなくても、タバコに含まれる成分が睡眠に影響する可能性はあります。タバコは睡眠だけでなく、さまざまな健康リスクの増加につながるので、少しずつでも禁煙していくことが大切です。

睡眠の質を改善するためのポイント

メンタルヘルス不調と睡眠障害の悪循環に注意|まずは生活習慣から見直そう

ストレスなどが原因となるメンタルヘルス不調と睡眠の関係性について説明してきました。睡眠不足が続くとストレスに対して弱くなるだけでなく、ストレスは不眠の症状や睡眠の質を下げる原因になります。メンタルヘルス不調と睡眠障害はお互いに影響を与えあうため、悪循環に陥らないように注意しましょう。

睡眠などの生活習慣の管理は個人の問題のように思えますが、睡眠不足は生産性の低下を引き起こすため、企業にとっての課題でもあります。メンタルヘルス不調が原因で大きなミスが起こったり、離職者・休職者の増加によって経営が不安定になったりする可能性も十分に考えられます。企業としては勤務制度や福利厚生を整備して、働きやすい環境を整えると同時に、睡眠の重要性とメンタルヘルスケアについて積極的に従業員へ情報共有していくことも大切です。


<事務局より>以下より、従業員のメンタルヘルスの実態について解説している資料をダウンロードいただけます。ぜひご活用ください。

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<出典>
・厚生労働省 「令和元年国民健康・栄養調査報告 第3部 生活習慣調査の結果」
https://www.mhlw.go.jp/content/000711008.pdf

・厚生労働省 第2回 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会 「【参考資料3】良い睡眠の概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001151837.pdf

・厚生労働省 e-ヘルスネット 「快眠と生活習慣」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-004.html

・厚生労働省 e-ヘルスネット「健やかな眠りの意義」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-001.html

・NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター 「喫煙と睡眠」
https://www.ncnp.go.jp/hospital/guide/sleep-column23.html

・厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」
https://www.mhlw.go.jp/content/001237245.pdf

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◆監修者プロフィール

●名前
大西良佳
●科目
産業医、公衆衛生、ペインマネジメント、麻酔科、漢方内科、美容皮膚科
●所属学会・資格
公認心理師
産業医
麻酔科専門医
ペインクリニック専門医
公衆衛生修士
温泉療法医
緩和ケア研修修了
ICLSプロバイダー
●メディア出演実績
テレビ朝日「林修のレッスン!今でしょ」
宝島社
東京スポーツ新聞
小学館

※当記事は、2024年4月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
※本記事内で紹介されているサービスに関して、記事監修の医師は関与しておらず、またサービスの監修もしていません。

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