仕事を辞める人の前兆とその対策|辞めそうな人の見逃せない7つのサインを解説【専門家監修】
こんにちは。企業の健康経営(R)を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
従業員から突然退職を申し出られ、対応に戸惑う人事担当者は少なくありません。仕事を辞める人・辞めそうな人には、勤怠や言動などに前兆が表れる場合があります。本記事では、仕事を辞める人に見られる7つの前兆と、退職を防ぐために企業が取り組みたい対策について解説します。以下、専門家(産業医・公認心理師)監修による記事です。
<目次>
◆仕事を辞める人の前兆は「退職の確定」ではない
◆辞めそうな人に見られる7つの前兆
◆辞めそうな人の前兆に気づいたときの対応
◆前兆が表れる前から整えたい離職防止策
◆仕事を辞める人の前兆に関するQ&A
◆仕事を辞める人の前兆を決めつけず、適切な支援につなげよう
仕事を辞める人の前兆は「退職の確定」ではない
退職を考えている従業員には、勤怠や言動などの変化が前兆として表れることがあります。ただし、前兆と思われる変化が見られても、退職の意思が固まっているとは限りません。変化の背景には、退職の検討だけでなく、一時的な疲労、家庭の事情、メンタルヘルスの不調など、複数の可能性が考えられます。
厚生労働省の「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスと感じる事柄がある労働者の割合は67.5%に上ります。(※1)
強いストレスを抱える状態は多くの従業員に起こり得るため、目立った変化だけで退職の意思があると決めつけることは適切ではありません。大切なのは、本人の普段の様子と比べて、どのような変化がどの程度続いているかを確認することです。あわせて、管理職や人事担当者が病気の有無を判断することは避けてください。前兆は詮索の材料ではなく、声をかけるきっかけと位置付けましょう。
なお、退職を申し出ないまま仕事への意欲が低下する「静かな退職」については、以下の記事で詳しく解説しています。
こちらもチェック!>>「静かな退職とは?原因・兆候・企業のリスクと対策について解説」
辞めそうな人に見られる7つの前兆
勤怠や仕事の進め方に表れる変化
1つ目は、遅刻・早退・欠勤が増えるなど、勤怠のパターンが変わることです。始業直前の出社が続く、平日の半休が特定の曜日に集中するといった変化は、転職活動や心身の不調が背景にある場合があります。ただし、注意したいのは、有給休暇の取得自体を問題視しないことです。休暇の取得は従業員の権利であるため、「休みが増えたから辞めそうだ」と短絡的に結び付けず、普段との変化と他の兆候が重なっていないかを確認しましょう。
2つ目は、仕事の能率や判断、成果物の質に変化が表れることです。これまで期限を守っていた従業員の提出物が遅れるようになる、以前は見られなかった確認漏れが増えるといった変化は、意欲の低下や心身の不調のサインである可能性があります。成果だけを見て指摘するのではなく、変化の背景に目を向けることが大切です。
3つ目は、新しい業務や中長期のプロジェクトを避けるようになることです。退職を視野に入れている従業員は、完了までに時間がかかる仕事への関与をためらう傾向があります。以前は前向きに手を挙げていた従業員が、理由を明確にしないまま新しい役割を断るようになった場合は、変化のサインとして受け止めましょう。
コミュニケーションや意欲に表れる変化
4つ目は、報告や相談、会議での発言が減ることです。雑談に加わらなくなる、社内行事への参加を控えるなど、周囲との関わりを最小限にとどめようとする様子が続く場合、職場への帰属意識が下がっている可能性があります。
5つ目は、愚痴や改善提案を言わなくなり、反応が表面的になることです。不満が減ったように見えても、実際には会社への期待が低下し、発言する意味を感じなくなっているケースが考えられます。ただし、本人の心情はあくまで推測の域を出ないため、憶測で決めつけないよう注意しましょう。
将来や引き継ぎを意識した行動
6つ目は、評価や昇進、キャリアに関する話題への関心が薄れることです。次の評価面談や将来の配置に関心を示さなくなった場合、その従業員は社内でのキャリアを描かなくなっている可能性があります。目標設定の場で、これまでより挑戦的な目標を掲げなくなることも同様のサインといえます。
7つ目は、ファイルや私物を整理し、引き継ぎ資料を作り始めることです。ただし、業務の整理や資料づくりは通常の業務改善でも行われるため、これだけで退職の前兆と判断することはできません。他の変化とあわせて総合的に見ることが大切です。(※2)
辞めそうな人の前兆に気づいたときの対応
事実と推測を分けて状況を確認する
はじめに、「退職を考えているのだろう」と推測することは保留し、勤怠、業務量、発言の変化など、客観的に確認できる事実を整理しましょう。いつごろから、どのような変化が続いているのかを時系列で書き出すと、状況を把握しやすくなります。事実と推測を区別することで、面談の場でも本人に余計なプレッシャーを与えずに済みます。
なお、体調の急激な悪化など、緊急性のある健康・安全上の問題が疑われる場合は、面談を待たずに産業医や産業保健スタッフへ連携してください。このときも、上司や人事担当者が本人の健康状態を診断することは避け、専門職につなぐ役割に徹することが大切です。
落ち着いて話せる場所で本人の話を聴く
状況を整理したら、周囲の目が気にならない場所で面談の機会を設けます。声をかける際は、「最近、残業が増えているようですが、困っていることはありませんか」というように、観察した事実から入ると本人も話しやすくなります。反対に、「辞めるつもりですか」と問い詰める聞き方は避けましょう。
面談では、すぐに説得や評価、否定をせず、本人が何に困っているのかを確認することに集中します。また、相談内容は本人の同意なく必要以上に共有してはいけません。推奨する対応と避けたい対応を、以下の表に整理しました。
話の聴き方については、以下の記事で詳しく解説しています。
こちらもチェック!>>「傾聴とは?意味やビジネス・メンタルヘルス対策での効果、傾聴力の高め方を解説」
原因に応じて支援先とフォロー期限を決める
本人の話から原因が見えてきたら、内容に応じて支援先を決めます。業務量や勤務時間の問題であれば上司や人事による調整、評価・配置・キャリアに関する不満であれば人事制度や役割の確認が中心になります。上司との関係が原因の場合は、上位の管理職や人事、外部窓口が受け皿となり、健康上の不安がある場合は、産業保健スタッフや医療機関、外部カウンセリングへつなぎましょう。(※2)
一方で、すでに退職の意思が固い場合は、無理な引き留めをせず、公正な手続きと引き継ぎを進めることが企業への信頼につながります。退職する従業員への対応は、残る従業員も見ています。いずれの場合も、面談後は「誰が、いつまでに、何を確認するか」を明確にし、対応を面談だけで終わらせないことが重要です。
前兆が表れる前から整えたい離職防止策
前兆に気づいてからの対応には限界もあります。変化が表れる前から相談しやすい環境を整えておくことが、離職防止の土台になります。ここでは、平常時から取り組みたい3つの施策を紹介します。
日常的に相談できる職場環境をつくる
まず、評価面談とは別に、1on1や定期面談など日常的に話せる機会を設けましょう。面談では、業務量や役割、評価基準、キャリアの見通しについて認識のずれがないかを確認します。あわせて、管理職に対して、部下の変化への気づき方や話の聴き方を学ぶ研修を行うことも有効です。
また、面談で把握した課題を個人への対応だけで終わらせず、業務配分の見直しなど職場環境の改善につなげることで、他の従業員の離職防止にも波及します。離職率の改善については、以下の記事で詳しく解説しています。
こちらもチェック!>>「離職率を下げるには?会社が見直すべき10のポイント|離職率改善のカギは「企業のメンタルヘルス対策」と外部相談窓口(EAP)」
社内と社外の相談窓口を選べるようにする
相談先が上司や人事担当者に限られていると、上司や人事担当者自身が悩みの原因となっている場合、従業員は相談しにくくなります。社内窓口に加えて、外部相談窓口やカウンセリングサービスを選択肢として用意し、従業員が相談先を選べる状態をつくりましょう。
厚生労働省の「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」では、ストレスを相談できる人がいる労働者の割合は94.8%である一方、実際に相談したことがある労働者の割合は71.2%にとどまっています。(※1)
相談できる相手がいても、実際の相談に至らない従業員は一定数存在するため、心理的なハードルの低い相談経路を複数設けることが求められます。なお、外部委託によって企業の安全配慮の責任がなくなるわけではありません。社内と社外の窓口は役割が異なり、互いに補完しあう関係と捉えましょう。
外部相談窓口を選ぶ際の確認項目
外部相談窓口やカウンセリングサービスを導入する際は、次の項目を確認しましょう。
・対応する専門職と相談できる領域
・電話、Web、対面など利用方法の種類
・相談内容の守秘範囲
・本人の同意が必要となる情報共有の範囲
・医療機関情報の提供
・従業員への周知や利用促進の支援の有無
・個人を特定しない集計報告の有無
外部相談窓口を導入するメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。
こちらもチェック!>>「社外相談窓口の導入メリットとは 社内窓口との違いと失敗しない体制づくりのポイント」
また、ティーペックでは、企業向けの外部相談窓口・カウンセリングサービス「こころのサポートシステム」を提供しています。従業員が相談しやすい体制づくりを検討する際は、ぜひご活用ください。
こちらもチェック!>>ティーペック『こころのサポートシステム(R)』
仕事を辞める人の前兆に関するQ&A
最後に、仕事を辞める人・辞めそうな人の前兆について、人事担当者からよく寄せられる質問に回答します。
Q1.前兆がないまま仕事を辞める人もいますか?
目に見える前兆がないまま退職に至る場合や、周囲が変化に気づけない場合もあります。そのため、前兆の発見だけに頼らず、定期面談や相談窓口といった従業員の声を拾う仕組みを、平常時から整えておくことが大切です。
Q2.有給休暇が増えたら退職の前兆と考えるべきですか?
有給休暇の取得だけで退職の意思を判断することはできません。取得理由を詮索することは避け、勤怠以外の変化や業務上の困りごとがないかを確認しましょう。
Q3.本人に退職を考えているか直接聞いてもよいですか?
最初から退職の意思を問い詰めることはおすすめできません。まずは、確認できた変化や業務上の負担について話を聴き、本人が困っていることの解消から会話を始めましょう。
Q4.社内相談窓口と外部相談窓口はどちらを優先すべきですか?
どちらか一方に限定するのではなく、従業員が相談先を選べる状態が理想です。それぞれの守秘範囲と情報共有のルールを明確にしたうえで、相談しやすい経路を複数設けましょう。
仕事を辞める人の前兆を決めつけず、適切な支援につなげよう
仕事を辞める人・辞めそうな人の前兆は、退職の意思を確定させる材料ではなく、声をかけるきっかけです。普段との変化に気づいたら、本人の話を丁寧に聴くことから始めましょう。そのうえで、上司や人事担当者だけで抱え込まず、産業保健スタッフや外部相談窓口など適切な支援先につなぐことが大切です。外部相談窓口の設置をはじめ、平常時から複数の相談経路を用意することが、離職防止と従業員が安心して働ける職場づくりにつながります。
<事務局より>
ティーペックでは、企業のメンタルヘルス対策をサポートする健康相談窓口、メンタルヘルスカウンセリングサービスを提供しております。健康相談窓口では、保健師や心理カウンセラーなどの経験豊富な専門家が、こころだけでなく身体の健康もケアすることで潜在的なメンタルヘルス不調者をサポートします。詳細はお気軽にお問い合わせください。
◆関連記事
・こころとからだの健康サポート(EAP外部相談窓口)
https://t-pec.jp/work-work/article/500
・離職率を下げるには?会社が見直すべき10のポイント|離職率改善のカギは「企業のメンタルヘルス対策」と外部相談窓口(EAP)【専門家監修】
https://t-pec.jp/work-work/article/544
・社外相談窓口の導入メリットとは 社内窓口との違いと失敗しない体制づくりのポイント
https://t-pec.jp/work-work/article/541
***************
出典
※1 厚生労働省『令和7(2025)年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況』
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r07-46-50_gaikyo.pdf
※2 厚生労働省「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」
https://www.mhlw.go.jp/content/001579077.pdf
***************
◆監修者プロフィール
●名前
大西良佳
●科目
産業医、公衆衛生、ペインマネジメント、麻酔科、漢方内科、美容皮膚科
●所属学会・資格
公認心理師
産業医
麻酔科専門医
ペインクリニック専門医
公衆衛生修士
温泉療法医
緩和ケア研修修了
ICLSプロバイダー
●メディア出演実績
テレビ朝日「林修のレッスン!今でしょ」
宝島社
東京スポーツ新聞
小学館
日刊ゲンダイ
ライトハウスメディア
※当記事は、2026年9月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
※本記事内で紹介されているサービスに関して、記事監修の医師は関与しておらず、またサービスの監修もしていません。
メンタルヘルスの記事一覧は、こちら
