メンタルヘルス・ハラスメント
メンタルヘルス 2025/08/29

傾聴とは?意味やビジネス・メンタルヘルス対策での効果、傾聴力の高め方を解説【専門家監修】

傾聴とは?意味やビジネス・メンタルヘルス対策での効果、傾聴力の高め方を解説【専門家監修】

こんにちは。企業の健康経営(R)を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

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傾聴は、職場の人間関係改善やメンタルヘルス対策においても重要視されているコミュニケーションスキルの一つです。部下との1on1ミーティングや顧客対応など、さまざまなビジネスシーンで活用されています。この記事では、傾聴の基本的な意味から実践的なテクニック、メンタルヘルス対策での効果まで詳しく解説します。 以下、専門家監修(産業医・公認心理師)による記事です。

<目次>
◆「傾聴する」とはどういう意味?
◆ビジネスシーンにおける傾聴の効果・メリット
◆話し手への共感の深さによる3段階の傾聴レベル
◆積極的傾聴で重要になる「ロジャーズの3原則」とは?
◆傾聴を重視したコミュニケーションはメンタルヘルス対策や離職防止にも有効
◆傾聴の際に意識すべきポイント
◆傾聴を学ぶ方法・傾聴力を高める方法
◆傾聴力はビジネスでも重要!職場のコミュニケーションやメンタルヘルス改善につながる

「傾聴する」とはどういう意味?

傾聴(けいちょう)とは、単に相手の話を聞くのではなく、相手の話に耳を傾け、こころを寄せて聴くコミュニケーション技法のことです。傾聴の基本は相手の発言を否定せず、丸ごと受け入れようとする姿勢にあります。

耳で聴く:話し手の言葉を最後まで聞いて理解する
目で聴く:表情や身振りなどに注意を払う
こころで聴く:話し手の感情を受け取り、共感する

傾聴は、経済産業省が定める「社会人基礎力」においてチームで働くための力としても取り上げられています。信頼関係の構築や円滑な業務運営に不可欠なスキルとして、多くの企業で重視されています。

■仕事に傾聴のスキルが活かされている例

傾聴のスキルが活かされている職種例

その他、カスタマーサービス、コンサルタント、医療従事者、教育関係者など、人との深い関わりが求められる幅広い職種で傾聴スキルが活用されています。

■傾聴とヒアリングの違い

傾聴とヒアリングは同じもののように思えるかもしれません。実は、両者は目的とアプローチ方法が異なります。

傾聴とヒアリングの違い

傾聴は感情に理解を示して関係を構築することを目的とし、相手が話したいことをサポートします。例えば、「そんなにお忙しいなんて大変ですね。どういうところに苦労されているのですか?」などと、「どう感じたか」「なぜそう思ったか」にフォーカスして寄り添って共感します。

一方ヒアリングは情報収集のために質問し、会話を導いたり必要な情報を得たりします。そのため「現在出稿している広告媒体はなんですか?」「予算はどのくらいですか?」など、知りたい情報にフォーカスして質問します。

ビジネスシーンにおける傾聴の効果・メリット

ここからはビジネスにおける傾聴の効果やメリットを紹介します。

他者と良好な関係を築ける

傾聴により話し手が「理解されている」「共感されている」と感じることで、信頼関係を築けるようになります。また、話すことで話し手自身の気づきや自己理解を深めたり、聞き手が話し手への理解を深めたりできます。

ハラスメント防止の役割
傾聴はまず「共感して理解する」ことに主軸を置いているため、決めつけや誤解など、ミスコミュニケーションによるハラスメントを防げるようになります。また認識が一致していることで問題解決力向上にも寄与します。

心理的安全性の向上
傾聴により話し手が「話しても良い相手なんだ」と安心感を持つことができると、コミュニケーションがスムーズになります。失敗や課題、困っていることなど、話しにくいような報告もしやすくなり、ミスやトラブルの防止にもつながります。

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部下の成長を促す

1on1ミーティングを実践していても、適切なコミュニケーションができていなければ逆効果になることもあります。傾聴スキルを身に付けることで、部下の本音を引き出し、困りごとや課題に気付きやすくなります。また、「上司が話を聞いてくれる」という環境は、部下のモチベーションを維持するのにも重要です。

1on1ミーティングのコツ
傾聴:相手の話を最後まで否定せずに聴く
承認:相手の努力や成果を認める
質問:オープンクエスチョンで思考を促す
フィードバック:建設的な意見を伝える

話し手への共感の深さによる3段階の傾聴レベル

傾聴には、共感の深さによって3つのレベルに分けられます。

■受動的傾聴
受動的傾聴は、相手の話に真摯に耳を傾けて受け止める方法です。聞き手の興味・関心や意見を優先せず、話し手が気持ちを伝えやすいように配慮します。

実践のコツ:
 ●うなずいたり相槌を打ったりする
 ●アイコンタクトをする
 ●しっかりと向き合って話す
 ●表情やジェスチャーなどを確認する

このとき聞く側は積極的に発言せず、話し手が安心して話せるよう、「聞いているよ」という姿勢を示すことが大切です。

■反射的傾聴
反射的傾聴は、話し手の表現を受けて、聞き手がその内容を繰り返すことで理解や共感を示す方法です。

実践のコツ:
 ●オウム返し:相手の言葉をそのまま繰り返す
 ●言い換え:相手の言葉を別の表現で返す
 ●要約:話の要点をまとめて返す
 ●感情の反映:相手の感情を言葉にして返す

例えば部下が「先週のコンペ、だめでした。価格で負けたみたいです、悔しい」と話した際、上司が「価格で負けたのは確かに悔しいね」などと返すことで、話し手は理解してもらえていると実感できます。

■積極的傾聴
積極的傾聴は、聞き手が主体的に働きかけて、話し手を深く理解する方法です。必要に応じて話し手の発言に言葉を添え、効果的な質問を挟んで思考を促します。詰問されていると感じないよう、相手が話したいことを引き出すように質問しましょう。

具体例:
部下:「クライアントのトラブル対応で2時間かかったため、他の業務が押してしまいました」
上司:「迅速に対応してくれたおかげで先方の印象もよかったはずだよ、ありがとう。2時間かかったなんて大変だったね、特殊なトラブルだったの?」

積極的傾聴で重要になる「ロジャーズの3原則」とは?

積極的傾聴についてお伝えしましたが、上記だけだとなかなかうまく質問するのは難しいと感じる方もいらっしゃるでしょう。積極的傾聴は、心理学者のカール・ロジャーズが提唱したもので3つの基本原則があります。

■自己一致
自己一致とは、聴き手が相手に対しても、自分に対しても真摯な態度で接することです。つまり、「しっかり聞く」ためには「話を理解する」必要があり、理解するためには自分が本当に理解できているのか常に意識している必要があります。また、「共感」を優先して嘘をつけば「話している人」の信頼を損ねかねません。誠実に反応することが大切です。

実践のコツ:
 ●話が分かりにくいときは、素直に聞き直す
 ●自分の感情や反応を偽らない
 ●率直なコミュニケーションを心がける

具体例:自分の考えと相反することを聞いたとき
NG「たしかに!自分もそう思うよ」
OK「そういう考え方もあるんだね!どうしてそう思うの?」

■共感的理解
共感的理解とは、相手の立場になったつもりで、相手の気持ちに共感しながら理解しようとする姿勢です。自分がその状況になったら、その場にいたらと想像し、言葉で聞くのではなくこころがどう動くか考えるイメージです。

ビジネスでの具体例:
顧客からのクレーム対応時:「私がお客様の立場でしたら、おっしゃるとおりそのような状況では不安になっていたと思います」
部下の相談対応時:「確かに自分が同じくらいのころにこの案件を担当していたら、プレッシャーを感じたと思うよ」

共感的理解を示すことで、「自分の気持ちを分かってもらえた」と感じてもらい、協力的な関係を築きやすくなります。

■無条件の肯定的関心
無条件の肯定的関心とは、「どうしてそう考えるのか」を軸に関心を持ち、そのバックグラウンドをポジティブに知ろうとする姿勢です。相手の話について、善悪や好き嫌いで評価せず、まずは否定しないで理解しようと心がける方法です。

実践のポイント:
 ●相手の価値観や考え方を尊重する
 ●批判や評価を避ける
 ●相手の背景や文脈を理解しようとする

例:部下が「この仕事は意味がない」と発言した場合
頭ごなしに否定するのではなく、「なぜそう感じるの?」と背景を聞いてみる

傾聴を重視したコミュニケーションはメンタルヘルス対策や離職防止にも有効

相手の話に深く耳を傾けられれば、メンタルヘルス不調のサインを早い段階でキャッチできる可能性もあります。普段から傾聴の姿勢を示すことで「話を聞いてもらえる」という安心感を得て、困っていることや今悩んでいることを話してもらえる機会が増えるからです。

また、困りごとや悩み事の内容など、必要に応じて専門家へのカウンセリングへ繋ぐことも、職場における重要なメンタルヘルス対策の1つです。

メンタルヘルス不調はストレスやトラブル、職場環境などさまざまな要因で引き起こされます。普段から傾聴によるコミュニケーションや専門家とのカウンセリングでこころのケアをしておくことで、精神的な理由による休職や退職を予防できるでしょう。

<事務局より>
ティーペックのメンタルヘルスカウンセリングサービスでは傾聴の姿勢を大切にしながら、公認心理師や臨床心理士などの心理カウンセラーが職場やプライベートなどのさまざまな悩みに対し、対面、オンライン面談、Web・電話によるカウンセリングを提供します。

◆ティーペックの心理カウンセラーからのコメント
カウンセリング効果を充分に得るためには、安心して率直に話ができる相手や環境であることが必要です。外部のカウンセリングサービスは、職場に関する内容の他にも、上司と部下の関係など、仕事上の関係がある立場では話しづらいプライベートな内容でも気兼ねなく相談することができます。加えて、弊社のカウンセラーは、親身な対応、寄り添った対応を心がけており、相談者自身が答えを導き出せるようにお話を傾聴します。

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傾聴の際に意識すべきポイント

効果的な傾聴を実践するためには、以下の5つのポイントを意識することが重要です。

相手の話しやすい雰囲気を作る

話しやすい雰囲気作りは、傾聴の第一歩です。相手が安心して本音を話せる環境を整えましょう。

ポイント
 ●静かな空間を確保する(他に聞いている人がいないと確信できる)
 ●リラックスした姿勢を心がける
 ●時間に余裕を持って対応する(時間がないと最後まで聞けなくなってしまう)
 ●スマートフォンなどは見えない場所に置く
 ●適度に自己開示する

相手だけに話をさせるのではなく、適度に自分の経験や感情を共有することで、相互理解が深まります。ただし、相手の話を奪わない程度に留めるよう気を付けましょう。

非言語的な情報にも意識を向ける

コミュニケーションの約90%は非言語的要素によって成り立っているといわれています。話し手の目線や表情、声のトーンなどに注意を向けることで、不安に思っていそうなのか、聞いてもらえて満足しているのかなど、相手の状態のヒントを得られます。

注目したいポイント
 ●ボディランゲージ(姿勢、表情、ジェスチャー)
 ●声のトーンや話すペース
 ●目線の動き
 ●呼吸のリズム

むやみに相手の話を否定・評価しない

相手の話を否定したり評価したりすると、「話を聞いてもらえない」「受け入れてもらえない」と感じて、本音で話せなくなってしまう恐れがあります。

避けるべき反応:
 ●即座に否定する
 ●自分の考えを押し付ける
 ●考え方を評価する(否定につながりかねない)

個人的な意見はいったん胸の内にとどめ、まずは話を受け止めるよう努力しましょう。

オープンクエスチョンを採用する

オープンクエスチョンとは、「はい」「いいえ」で答えられない「開かれた質問」のことです。相手に考えることを促すため、より多くの情報を引き出すことができます。

効果的なオープンクエスチョンの例:
 ●「どのように感じましたか?」
 ●「もっと詳しく教えてください」
 ●「それについてどう思いますか?」
 ●「どんなことが気になっていますか?」

相手の話すスピードやトーンに合わせる

ペーシング、マッチング、ミラーリングと呼ばれるテクニックを活用することで、相手により寄り添うことができます。意識しすぎると不自然になるため、少しずつ試してみましょう。

傾聴する姿勢を身につけるときに意識すべきポイント

傾聴を学ぶ方法・傾聴力を高める方法

傾聴力は、適切な学習と継続的な実践で磨かれていきます。独学で学ぶ方も多いですが、コミュニケーションのスキルであるため、実践が不可欠です。

企業向けの研修を活用する

傾聴の習得は、コミュニケーションをテーマとした研修・セミナーを活用すると効率的です。

例えば聴き手、話し手、観察者の三者に分かれて実践するトレーニングなどがあり、異なる立場から傾聴を体験できるプログラムもあります。

傾聴は想定された質問をするコミュニケーションではなく、相手の話したいことを軸にしたスキルのため、対人での実践をしなければ分からないことも多いです。社員の傾聴力やコミュニケーションを活性化させたい企業ご担当者は、ぜひご検討ください。

<事務局より>
ティーペックでは、コミュニケーション活性化の教育研修(傾聴、アサーションなど)をご提供しております。ティーペックの各種研修について、詳細はお気軽にお問い合わせください。

その他

研修以外にも、書籍で学ぶ方法があります。自分のペースで学習を進めたい方や、まずはフレームワークを知りたいという方は書籍から始めてみるのもよいでしょう。とはいえ、やはり「相手」がいての傾聴のため、最終的には一緒に練習してくれる人や機会を探す必要があります。

傾聴力はビジネスでも重要!職場のコミュニケーションやメンタルヘルス改善につながる

傾聴の方法を知り、コミュニケーションの中で日々実践していくことで、クライアントや部下とのやりとりがスムーズになり、仕事の生産性向上にもつながります。傾聴スキルは企業研修などで訓練することで、正しくより効率的に身に付けられるようになるでしょう。

傾聴は従業員のメンタルヘルス対策はもちろんのこと、良好な職場環境の構築や、生産性向上にも役立ちます。会社としては、まずは管理職研修から始めて、徐々に全社的な取り組みへと広げていくことで、組織全体のコミュニケーション力を高めることができるでしょう。

<事務局より>
ティーペックのメンタルヘルスカウンセリングサービスでは傾聴の姿勢を大切にしながら、公認心理師や臨床心理士などの心理カウンセラーが職場やプライベートなどのさまざまな悩みに対し、対面、オンライン面談、Web・電話によるカウンセリングを提供します。

また、コミュニケーション活性化の教育研修(傾聴、アサーションなど)も提供しておりますので、詳細はお気軽にお問い合わせください。

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◆関連記事

・パワハラと言われない!信頼関係を築く「傾聴力」
https://t-pec.jp/work-work/article/331

・業績低迷、不調者続出…。負の連鎖を防ぐのは、やっぱりあの「技術」だった!
https://t-pec.jp/work-work/article/422

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【参考】
経済産業省 経済産業政策局 産業人材課「人生100年時代の社会人基礎力」説明資料
https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.html

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◆監修者プロフィール

監修者である大西良佳さまのプロフィール写真

●名前
大西良佳
●科目
産業医、公衆衛生、ペインマネジメント、麻酔科、漢方内科、美容皮膚科
●所属学会・資格
公認心理師
産業医
麻酔科専門医
ペインクリニック専門医
公衆衛生修士
温泉療法医
緩和ケア研修修了
ICLSプロバイダー
●メディア出演実績
テレビ朝日「林修のレッスン!今でしょ」
宝島社
東京スポーツ新聞
小学館
日刊ゲンダイ
ライトハウスメディア

※当記事は、2025年8月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
※本記事内で紹介されているサービスに関して、記事監修の医師は関与しておらず、またサービスの監修もしていません。

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