メンタルヘルス・ハラスメント
メンタルヘルス 2024/05/31

管理職によるメンタルヘルス対策とは│管理職自身のケアの重要性【医師監修】

管理職によるメンタルヘルス対策とは│管理職自身のケアの重要性【医師監修】

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

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従業員のメンタルヘルスケアにおいて管理職は重要な役割を担っています。早い段階で部下の不調のサインを把握することは、ミスや事故を防止するだけでなく、生産性の向上にもつながります。その一方で、管理職は自身のストレスもコントロールしなければなりません。本記事ではメンタルヘルス対策での管理職の仕事、管理職自身のケアについてまとめました。以下、医師監修による記事です。

<目次>
◆部下のメンタルヘルス対策が管理職にとって重要な理由
◆従業員のメンタルヘルス対策における管理職の役割とは?
◆管理職が把握すべき同僚・部下のメンタルヘルス不調のサイン
◆管理職に求められるメンタルヘルスのマネジメントに必要なこと
◆企業がすべき管理職へのケア
◆管理職は部下だけでなく自身のメンタルヘルスケアも必要|効果的な対策のためにも正しい知識が重要

部下のメンタルヘルス対策が管理職にとって重要な理由

法律(労働安全衛生法)の改正によって、労働者50人以上の事業場は一定の条件を満たす従業員全員に対して、年に1回ストレスチェックを実施することが義務化されました。従業員のメンタルヘルスケアは、企業にとって非常に重要な事項の一つとなっています。

とくに経営層により近い管理職は、部下のメンタルヘルスケアについて正しい知識を持つことが求められます。また企業の社会的責任(CSR)などの観点からも、労働者のメンタルヘルスケアの重要性は高まっており、さまざまな対策を推進する企業が増えています。

管理職によるケアは厚生労働省の示す「ラインによるケア」に該当

厚生労働省の「職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜」(※1)によれば、労働者のメンタルヘルス対策には以下の4種類のケアを継続的・計画的に行うことが重要だとされています。

【労働者のメンタルヘルスケア推進のための4種類のケア】
1.セルフケア
2.ラインによるケア
3.事業場内産業保健スタッフ等によるケア
4.事業場外資源によるケア

「従業員の状態を把握する」「部下の相談に乗る」「職場環境の改善を進める」などは管理監督者が行う「ラインによるケア」に該当します。管理職には、従業員のメンタルヘルス対策をサポートする役割が求められることを理解したうえで、業務にあたることが大切です。

部下のメンタルヘルスケアは仕事の生産性にも関係する

企業にとって労働者のメンタルヘルスケアが重要なのは、精神的な不調が生産性にも関係するためです。些細な不調も放置すれば悪化する危険性があり、過度なストレスは集中力にも影響します。

厚生労働省の「令和4年労働安全衛生調査(実態調査)」(※2)によれば仕事・職業生活に関して「強い不安、悩み、ストレスを感じる事柄がある」と回答した人の割合は82.2%に上ります。多くの従業員が何らかのストレスを抱えており、生産性を維持するためにも、企業や管理職による適切なケアが必要になります。

メンタルヘルス対策はリスクマネジメントとしての側面もある

従業員のメンタルヘルス対策は生産性を向上させるだけでなく、企業にとってはリスクマネジメントとしての側面もあります。職場におけるストレスやメンタル不調者に対して適切に対応することは、以下のような結果も期待できるのです。

【メンタルヘルス対策のリスクマネジメントとしての側面】
●従業員の離職率や休職率を低下させる
●重大なミスや事故を防止する
●ハラスメントを早期発見して、解決する
●労使間や従業員間のトラブルを回避する

早い段階で問題を認識することができれば、小さなコストで対応可能です。管理職は一般労働者の不調や変化に気づき、必要に応じて「面談を行う」「産業医への相談を促す」「利用可能な制度を紹介する」などの対応を取ることが求められます。

従業員のメンタルヘルス対策における管理職の役割とは?

では管理職は、具体的にどのようにマネジメントすればよいのでしょうか。ここからは従業員のメンタルヘルス対策における、管理職の具体的な役割について説明していきます。

職場におけるコミュニケーションの促進

「仕事の悩みやトラブルを気軽に相談できない」といったコミュニケーション不足は、メンタルヘルスの不調につながり、生産性の低下を招くだけでなく、より大きなトラブルに発展することもあります。そのため、従業員間のコミュニケーションが促進されるような環境の整備も、管理職の役割になるでしょう。

新型コロナウイルスの流行をきっかけにテレワークを導入する企業が増え、働き方は多様化しています。しかしテレワークは、コミュニケーションが希薄化しやすい傾向があったり、従業員のモチベーションの低下を引き起こしたりするケースもあります。総務省の「令和4年通信利用動向調査」(※3)によれば、民間企業のテレワーク導入率は50%超です。2019年以前に比べてテレワークを導入する企業は大幅に増えていて、その変化に合わせたメンタルヘルス対策が必要になります。

管理職としては自らが率先してコミュニケーションを取るだけでなく、オンラインのコミュニケーションツールを導入したり、新入社員や若手社員に対してメンターを配置したりするなどの対策も検討しましょう。

普段と異なる様子の従業員の把握

メンタルヘルスの不調や過度なストレスを感じている場合、勤務時の様子や行動が普段と異なって見えることも多いです。いつもと異なる様子の従業員を見かけたら、必要に応じて産業医などへ引き継ぐことも管理職の仕事になります。

普段と異なる様子の従業員を迅速に発見するためには、普段からコミュニケーションをとっておくことが大切です。前述の内容とも関連しますが、管理職自らが率先してコミュニケーションをとり、普段の従業員の様子を把握するようにしましょう。

部下からの相談への対応

管理職は部下から相談を受ける機会も多いです。部下からの相談に真摯に対応し、一緒に問題を解決しようとする姿勢が求められます。

このようなケースで必要になるのはコミュニケーションスキルの一つである「傾聴力」です。部下の相談に対して一方的なアドバイスを行うのではなく、何に悩んでいるのかを理解して、「どこに問題があるのか」「どのような解決方法があるのか」を一緒に考えるようにしましょう。そして個人で解決するのが難しい場合は、産業医やカウンセラーへの相談を促したり、社内の制度を紹介したりする必要があります。

また部下が相談しやすい環境整備も重要です。すべての従業員が上司に相談してくれるとは限りません。管理職は普段から声かけを行って信頼関係を築いておき、何かあったときに相談しやすい雰囲気を作りましょう。そのほかには「一対一で話せる場所を用意する」「すぐに対応できるように余裕のあるスケジュールで仕事をする」「普段から話しかけにくいと思われるような言動をとらない」なども大切です。

復職する従業員へのサポート

メンタル不調などで休職していた従業員が復帰する場合、復職をサポートするのも管理職の役割です。数ヶ月にわたって仕事を休んでいたケースでは、休職していた従業員が同僚に対して気まずさを感じたり、復職するのを怖いと思ったりすることも多いです。通院が必要なケースでは、業務時間を調整しなければなりません。休職していた従業員がスムーズに復職できるように、管理職はしっかりとサポートしましょう。

復帰する従業員へのサポート例
●試し出勤制度を導入する
●仕事量や業務時間を調整する
●業務内容や部署の変更を検討する
●通院が必要な場合は遠隔地への出張などをさせないよう配慮する
●メンタルヘルス不調への偏見や誤解が起きないよう、職場の理解を促進させる
●体調が悪化した場合などの職場での相談先・連絡先を確保する
●復職後もメンタル不調などの経過観察を継続する
など

産業医やカウンセラーの意見を参考にしながら、復帰の段階ごとに復職復帰支援プランを作成してください。メンタル不調の再発を防止するためには、復職時・復職後のきめ細かな対応がポイントになります。ただし、復帰する従業員の主治医などから健康状態の情報をヒアリングする場合は、本人の許可を得て、プライバシーに配慮しながら連携することが大切です。

新たな制度の導入や現行制度の適切な運用・改善

管理職は一般の従業員に比べて大きな裁量を持っています。従業員のメンタルヘルスケアのために新たな制度を導入したり、現行制度が適切に運用されるように工夫したりすることも意識しましょう。

最近では、労働者のメンタルヘルスケアに関する社会的な意識の高まりも影響し、福利厚生を充実させる企業は増えてきています。しかし、「新たな制度を導入しても利用されない」「適切に運用されていない」では意味がありません。

管理職が部下のメンタルヘルス不調に対応するためには、社内の利用可能な制度について知っておく必要がありますし、ときには担当者や担当部署に制度の導入・改善を求めることも重要です。

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管理職が把握すべき同僚・部下のメンタルヘルス不調のサイン

従業員のメンタルヘルスケアにおいて、管理職が担う役割の一つとして「通常と異なる様子の従業員を把握すること」を挙げました。具体的には、以下のような行動・状態はメンタルヘルス不調のサインです。

【同僚・部下のメンタルヘルス不調のサイン】
●遅刻や欠勤、早退が増加する
●無断欠勤が発生する
●仕事量に対して残業時間や休日出勤が多くなる
●服装などがだらしなくなる
●仕事に関する報告や連絡がおろそかになる
●小さなミスが目立つようになる
●仕事のペースが遅くなる

これらのような普段とは異なる様子が見られた場合、問題を抱えていないか親身になって相談に乗りましょう。早い段階で異変に気づけば、状況が悪化する前に対応できる可能性があります。産業医などへ相談することを従業員に促す、医師などの専門家に管理職が対応を相談できる仕組みを作っておくといった対策も重要です。

メンタルヘルス不調の原因やサインについては別の記事で解説しているので、詳しくはそちらもご確認ください。
「メンタルヘルス不調の原因や症状とは?企業としての対策について解説【医師監修】」を読む >>

管理職に求められるメンタルヘルスのマネジメントに必要なこと

管理職はマネジメントスキルのひとつとして、労働者のメンタルヘルス対策に関する正しい知識を持つことも重要になります。

研修で正しい知識を得て対応力を身に着ける

メンタルヘルスケアに関する正しい知識を得るには、研修・セミナーを利用するのが効果的です。管理職自身のセルフケアに関するセミナーだけでなく、管理職のためのラインケアの研修などもあります。オンラインで参加できるセミナーも多いので、正しい知識を得て、柔軟に対応できる力を身に着けましょう。

「メンタルヘルス研修の重要性とは~従業員のこころとからだの健康を守る!~」を読む >>

「メンタルヘルスにおける『ラインケア』の重要性」を読む >>

管理職自ら制度を利用して働きやすい環境と雰囲気を作る

社内の福利厚生制度や契約している外部EAP(メンタルヘルスや身体的な健康をサポートするサービス)などは、管理職自身も積極的に利用しましょう。自らが利用することで制度の改善点が見つかることもありますし、管理職が利用すれば一般の従業員も利用しやすくなります。

労働者のメンタルヘルスケアは、企業の社会的責任でもあります。管理職も従業員の一員である以上、企業のメンタルヘルスケア対策から、管理職が除外されないような運用が求められます。ラインケアの観点から言えば、管理監督者は従業員のメンタルヘルス対策を促進する立場です。その一方で、管理職自身のメンタルヘルスケアも必要であることを忘れてはいけません。

企業がすべき管理職へのケア

前述のとおり、管理職自身にもメンタルヘルスケアが必要です。管理職は一般従業員よりストレスを抱えやすい状況に置かれることも多いため、企業が積極的にサポートするようにしましょう。

管理職はプレッシャーを感じやすい

そもそも管理職は責任の重さから、仕事に対してプレッシャーを感じやすい立場でもあります。管理職がメンタルヘルスの不調によって休職・離職した場合、現場の混乱につながり、企業への影響もより大きいです。

管理職向けにメンタルヘルスケアに関する研修を行うなども有効です。日々の業務に追われている管理職は、独学でメンタルヘルス対策を学び、個人で研修に参加するというのが難しいケースもあります。企業が主体となって定期的に管理職向けの研修・セミナーを行いましょう。また法律などの変更があったタイミングや、メンタル不調者が出やすい時期に合わせて研修を開催するのも効果的です。

中間管理職は職場環境改善による負担が増加しやすい

管理職の中でも中間管理職は、経営層と一般の従業員との間で板挟みになりやすいです。より一般の従業員の立場に近いということもあって、中間管理職は職場の環境改善によって負担が増加しやすい点に注意しましょう。たとえば、残業時間を削減するように働きかけた結果、全体の残業時間は減少したものの、中間管理職が対応することになったことで負担が増加したというケースもあります。

中間管理職の負担の増加は、生産性の低下を招きますし、仕事に対するモチベーションの低下につながることも考えられます。企業としては、労働時間や残業時間などの勤怠をチェックするのはもちろんのこと、管理職も含めて根本的な部分から働き方を改善していく必要があります。

管理職の業務量・裁量を定期的に見直す

企業全体で職場環境を改善していくためには、「管理職の業務量や裁量が適切かどうか」を定期的に見直す必要があります。

繰り返しになりますが、職場環境改善を推進するにあたって、管理職への負担が増加するケースも少なくありません。まずは現状で管理職が担っている業務の内容を、整理することが重要です。そのうえで、適切な業務量になるように工夫しましょう。

●ITシステムの導入で業務の効率化を図る
●非管理職に権限の一部を委譲する
●不要な制度を廃止する

などの工夫が考えられます。

管理職の負担の軽減にはメンタルヘルスの専門スタッフの配置なども有効

研修を受けた管理職も、メンタルヘルス対策の専門家ではありません。そのため管理監督者によるラインケアをサポートするための、専門スタッフの配置も有効です。メンタルヘルス対策の専門的な知識を有するスタッフを配置して、連携できる環境を整えることで管理職の負担は軽減されます。またラインケアの強化にもつながります。

多忙な管理職がすべてを担当する場合、部下の相談に乗る時間を確保できない、現場業務の管理監督がおろそかになるといった状況に陥る可能性もあります。専門のスタッフを配置してある程度分業させることで、管理職もメンタルヘルス対策以外へリソースを割けるようになるでしょう。

管理職は部下だけでなく自身のメンタルヘルスケアも必要|効果的な対策のためにも正しい知識が重要

労働者のメンタルヘルスケアは、個々の問題ではありません。企業全体でメンタルヘルス対策を推進する必要があります。管理職は職場環境を整備したり、部下の相談に対応したりする役目もあります。メンタルヘルス不調者を出さないことは生産性の向上にもつながります。そのため、メンタルヘルスに関する知識を身に着けることは、管理職に求められるマネジメントスキルの一つだと認識しましょう。

しかし管理職もメンタルヘルスケアが必要な従業員の一人です。管理職の負担を軽減して、ラインケアを強化するためには、企業による支援も重要になります。従業員全体に行うセルフケアの研修に加えて、管理職向けにはラインケアに関する研修などを実施しましょう。また、管理職の業務量や裁量を見直すなどして、すべての従業員が健康的に働ける環境を整えることもポイントです。

<事務局より>以下より、従業員のメンタルヘルスの実態について解説している資料をダウンロードいただけます。ぜひご活用ください。

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【出典】
※1
厚生労働省 「職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf

※2
厚生労働省「令和4年労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r04-46-50_gaikyo.pdf

※3
総務省 「令和4年通信利用動向調査」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/230529_1.pdf

【参考】
厚生労働省 「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html

厚生労働省 「ストレスチェック制度導入マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf

厚生労働省 「職場における心の健康づくり」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf

厚生労働省 「両立支援プラン/職場復帰支援プランの作成例」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001225763.pdf

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◆監修者プロフィール

●名前
大西良佳
●科目
産業医、公衆衛生、ペインマネジメント、麻酔科、漢方内科、美容皮膚科
●所属学会・資格
公認心理師
産業医
麻酔科専門医
ペインクリニック専門医
公衆衛生修士
温泉療法医
緩和ケア研修修了
ICLSプロバイダー
●メディア出演実績
テレビ朝日「林修のレッスン!今でしょ」
宝島社
東京スポーツ新聞
小学館

※当記事は、2024年5月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
※本記事内で紹介されているサービスに関して、記事監修の医師は関与しておらず、またサービスの監修もしていません。

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