健康・予防・両立支援
みんなの健康情報 2024/04/08

健康づくりのための睡眠ガイド2023

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

厚生労働省は2024年2月に「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を公表しました。「健康づくりのための睡眠2014」の策定から約10年が経過し、睡眠に関する新たな科学的知見が蓄積されたためです。そこで、睡眠と健康との関係、「成人」、「こども」、「高齢者」のライフステージ別の睡眠の推奨事項を紹介するとともに、質・量ともに十分な睡眠を確保するためのポイントについて解説します。

従業員が睡眠に関して何かしらの問題・悩みを抱えていると、仕事のパフォーマンスや心身の健康にも影響を与えます。「睡眠」は、企業が健康経営を推進するうえでも重要なテーマですので、ぜひご一読ください。

≪目次≫
◆日本人の平均睡眠時間6時間未満の人が約4割
◆体や脳を休めるためには、十分な睡眠を
◆科学的知見の蓄積を反映した新しい睡眠ガイド
◆睡眠に関する推奨事項(1)成人への推奨事項
◆睡眠に関する推奨事項(2)こどもへの推奨事項
◆睡眠に関する推奨事項(3)高齢者への推奨事項
◆良質な睡眠のために、良質な睡眠環境と、適度な運動を
◆(1)良質な睡眠環境をつくるための参考情報
◆(2)運動、食事などの参考情報
◆(3)睡眠と嗜好品についての参考情報

日本人の平均睡眠時間6時間未満の人が約4割

毎日を健康に過ごすためには、食事、運動、睡眠の3つが大切です。これらはお互いに関連し合っておりどれも重要ですが、ストレスの多い現代社会では「よく眠れない」「眠っても疲れが取れない」など、睡眠の悩みを抱える人も多くなっています。

日本人の睡眠の状況はどうなっているのでしょうか。

令和元年の国民健康・栄養調査によると、「1日の平均睡眠時間が6時間未満の人」の割合は男性37.5%、女性40.6%となっています。1日6時間以下の人が約4割いるという現状です。また、令和3年のOECD(経済協力開発機構)の調査報告においても、日本人の平均睡眠時間は加盟33か国の中で最も短くなっています。

体や脳を休めるためには、十分な睡眠を

睡眠で体や脳を休めることは、健康のためにとても重要なことです。睡眠が悪化すると、さまざまな疾患の発症リスクが増えますし、寿命が短くなるリスクがあります。しかし、日本人の睡眠時間は世界の中では少ないという結果が出ています。では、どのくらいの睡眠をとったらいいのでしょうか。また、質のいい睡眠を確保するためにはどうしたらいいのでしょうか。

2024年2月に公表された「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を基に、睡眠時間や睡眠に関する推奨事項を紹介していきます。

科学的知見の蓄積を反映した新しい睡眠ガイド

「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、10年前に策定された「健康づくりのための睡眠指針2014」を見直し、睡眠に関する新たな科学的知見を反映させてつくられた最新ガイドです。

同ガイドの特徴は、「6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する」などの定量的な推奨事項だけでなく、「良質な睡眠を確保するには、どういう睡眠環境がいいのか」「運動、食事等の生活習慣をどのように見直したらいいのか」などの定性的な推奨事項も含んでいることです。

もう一つの特徴は、「睡眠休養感(睡眠で休養が取れている感覚)の向上」を重要な課題と捉え、適正な睡眠時間などの推奨事項を、「成人」「こども」「高齢者」という年代別に取りまとめた点です。
「成人」「こども」「高齢者」への推奨事項を見ていきましょう。

睡眠に関する推奨事項(1)成人への推奨事項

●6時間以上を目安として、必要な睡眠時間を確保しましょう。
適正な睡眠時間には個人差があるので、6時間以上を目安としましょう。

●食生活や運動等の生活習慣や寝室の睡眠環境等を見直して、「睡眠休養感」を高めましょう。
睡眠休養感の低下が、肥満、糖尿病、脂質異常症を含めた代謝機能障害と関連することがわかっています。こころの健康にも、睡眠休養感が影響します。睡眠不足、日中のストレス、就寝直前の食事、朝食を抜くこと、運動不足などを避け、睡眠休養感を高める工夫をしましょう。

睡眠に関する推奨事項(2)こどもへの推奨事項

●小学生は9~12時間、中学・高校生は8~10時間の睡眠を確保しましょう。
夜ふかしなどの生活習慣に関連する睡眠不足を防止する観点から、ガイドでは上記の睡眠時間を奨励しています。米国睡眠医学会では、年齢を細分化して、1〜2歳児は11〜14時間、3〜5歳児は10〜13時間、小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間の確保を奨励しています。この目安は多くの国で参考にされています。

●朝は太陽の光を浴びて、朝食をしっかり摂り、日中は運動をして、夜ふかしの習慣化を避けましょう。
夜ふかしが続くと、朝起きることが難しくなります。睡眠・覚醒リズムを整えるために、朝から太陽の光を浴びましょう。朝食をしっかり食べることも睡眠・覚醒リズムをつくるために重要です。
座りっぱなしの時間、特にスクリーンタイム(テレビ視聴やゲーム・スマホ利用など)が長くなりすぎないようにしましょう。小・中・高校生は1日当たり60分以上体を動かし、スクリーンタイムは2時間以下にしましょう。

【出典】厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会「健康づくりのための睡眠ガイド2023」15ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html

睡眠に関する推奨事項(3)高齢者への推奨事項

●床上時間が8時間以上にならないことを目安に、睡眠時間を確保しよう。
65歳以上の高齢者の場合、睡眠時間の長短よりも床上げ時間が長すぎると健康リスクが高まります。寝床で過ごす時間が8時間以上にならないようにしましょう。

●食生活や運動等の生活習慣や寝室の睡眠環境等を見直して、「睡眠休養感」を高めましょう。
睡眠休養感が欠如していると、死亡リスクが高くなります。
米国の調査では、65歳以上の高齢世代では、床上時間が長く(8時間以上)、かつ睡眠休養感が欠如している場合、死亡リスクが増加することがわかっています。

【出典】厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会「健康づくりのための睡眠ガイド2023」20ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html

●長い昼寝は夜間の良眠を妨げるため、日中の長時間の昼寝は避けて、活動的に過ごしましょう。
長い昼寝、回数の多い昼寝は夜間の睡眠の質を低下させます。昼間は活動的に過ごして、昼夜のメリハリをつけましょう。

良質な睡眠のために、良質な睡眠環境と、適度な運動を

同ガイドには、良質な睡眠のための参考情報も掲載されています。その中から幾つかご紹介します。

(1)良質な睡眠環境をつくるための参考情報

●日中にできるだけ朝日を浴びましょう。
起床後に朝日の強い光を浴びることで体内時計がリセットされ、睡眠・覚醒リズムが整います。

●寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まないようにしましょう。
スマートフォンにはLEDが使用されており、体内時計への影響が強いブルーライトが多く含まれています。寝室にスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることがよい睡眠につながります。

●寝室を適温にし、就寝1、2時間前に入浴しましょう。
寝室は暑すぎず寒すぎない温度にし、就寝の1、2時間前に入浴して体を温めてから寝床に入ると、入眠しやすくなります。

(2)運動、食事などの参考情報

●適度な運動習慣を身につけましょう。
適度な運動習慣により、日中に体をしっかりと動かすことは、睡眠時間を増やし、睡眠の質を高めます。
運動のタイプは、ウォーキングやジョギング等の有酸素運動、ダンベルを用いるような筋トレが適しています。
運動強度は、息が弾み、汗をかく程度の中強度の運動がいいでしょう。
運動時間は1日60分程度を習慣化することが理想ですが、60分未満でも定期的な運動習慣を身につけ、少しずつ運動時間を増やしていきましょう。

●しっかりと朝食を摂り、就寝直前の夜食を控えましょう。
朝食は、体内時計の調整に役立ち、朝食を抜くと、睡眠休養感が低下することも
明らかになっています。また、就寝前の夜食や間食は体内時計を後退させます。

●規則正しい生活習慣を心がけ、日中の活動と夜間の睡眠のメリハリをつけましょう。
規則正しい生活習慣が睡眠の質を高め、日中の眠気を改善します。日中は活動的に過ごし、夜間はやや暗い環境でゆったりとリラックスして過ごして、睡眠・覚醒のリズムにメリハリをつけることが、良質な睡眠につながります。

(3)睡眠と嗜好品についての参考情報

日常生活の中での嗜好品についても、睡眠に影響を及ぼすものがあります。

●カフェイン
カフェインの摂取量は1日400㎎(ドリップコーヒーで珈琲カップ4杯分、700cc
を超えないようにしましょう。こどもや高齢者、妊婦はさらにカフェインの摂取量
を減らしましょう。
夕方以降のカフェインの摂取は、夜間の睡眠に影響しやすいので控えめにしましょう。

【出典】厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会「健康づくりのための睡眠ガイド2023」30ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html


●アルコール
晩酌は控えめにし、寝酒はしないようにしましょう。
アルコールは一時的に寝つきを促進しますが、睡眠後半の眠りが顕著に悪化します。

●ニコチン
禁煙をめざしましょう。
タバコに含まれるニコチンには覚醒作用があり、睡眠前の喫煙、夕方の喫煙も
睡眠に悪影響を与えます。習慣的な喫煙は睡眠を悪化させるので、良い睡眠のために禁煙をめざしましょう。

健康づくりのために睡眠が果たす役割は重要なものです。「睡眠ガイド2023」は、一人ひとりがそれぞれのライフスタイルに合わせて良質な睡眠が確保できるように、さまざまな推奨事項を掲げています。これらの事柄を、睡眠と休養をしっかりとって毎日を元気に過ごすためにお役立てください。

原稿・社会保険研究所Copyright

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【出典】
厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html

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※当記事は2024年3月時点で作成したものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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