メンタルヘルス・ハラスメント
ハラスメント 2022/09/22

担当者として知っておきたい!ハラスメントの定義と種類とは

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

2020年6月に施行された改正労働施策総合推進法により、2022年4月から中小企業においてもパワーハラスメント防止措置が義務化されました。人事・労務担当者は、職場におけるハラスメントを防止するため、あるいは早期発見のためにもハラスメントの定義を理解しておく必要があります。

本記事では、ハラスメントの定義をあらためて解説し、義務化されたパワーハラスメント防止措置への対応法をご紹介します。

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<目次>
1.パワハラ、セクハラ、マタハラ…職場にあるハラスメントの種類と定義
 1.1パワーハラスメント
 1.2セクシュアルハラスメント
 1.3マタニティハラスメント
2.パワーハラスメント6つの類型とハラスメントのグレーゾーン
 2.1身体的な攻撃
 2.2精神的な攻撃
 2.3人間関係からの切り離し
 2.4過大な要求
 2.5過小な要求
 2.6個の侵害
 2.7注意したいハラスメントのグレーゾーンについて
3.パワハラ防止対策は万全に
 3.1企業に課された4つの義務
4.ハラスメントを防止し、よりよい職場環境の構築を

パワハラ、セクハラ、マタハラ…職場にあるハラスメントの種類と定義

職場で起こりやすいハラスメントには、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントの3つがあります。はじめに、3大ハラスメントとも呼ばれるこれらハラスメントの定義について説明します。

パワーハラスメント

職場におけるパワーハラスメントとは、次の3つの要素を満たすものを指します。

1.優越的な関係を背景とした言動であること
2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
3.労働者の就業環境が害されるもの

例えば、上司が部下を殴打する、人格を否定するような発言をする、長期にわたり別室に隔離し業務を行わせるといった行為はパワハラにあたる可能性があるため注意が必要です。

セクシュアルハラスメント

職場におけるセクシュアルハラスメントとは、職場内で性的な言動が行われること、または性的な言動を拒否したことにより労働条件について不利益(解雇や降格などの処分)を受けたり、就業環境が害されたりすることなどを言います。これらは異性・同性を問いません。

マタニティハラスメント

職場におけるマタニティハラスメントとは、上司や同僚から受ける妊娠・出産、育児休業に関する言動によって、就業環境が害されることを指します。妊娠の状態や育児休業制度等の利用と嫌がらせにあたる行為に因果関係があるものはハラスメントとみなされる可能性があります。

パワーハラスメント6つの類型ハラスメントのグレーゾーン

これらハラスメントの中でとくに注意したいのが、防止措置が義務化されたパワーハラスメントです。パワーハラスメントの6つの類型を確認し、職場の中で該当する行為が発生していないかあらためて確認しましょう。近年課題となっているハラスメントのグレーゾーン事例についても後述します。

<パワーハラスメントの6つの類型>
1.身体的な攻撃
2.精神的な攻撃
3.人間関係からの切り離し
4.過大な要求
5.過小な要求
6.個の侵害

それぞれどのような状態を指すのか、厚生労働省から示されている代表的な言動の例について次項より説明します。
(個別の状況によって判断が異なることがあるためご注意ください)

身体的な攻撃

殴打、足蹴りや殴打、相手に物を投げつける行為などの暴力行為など。

精神的な攻撃

人格を否定するような言動や必要以上の叱責、長時間の激しい叱責、他の従業員の前で威圧的な叱責を繰り返し行うことなど。

例)部下に対して、「お前は馬鹿だ」「役立たず」など、人格を否定するような発言を繰り返すことなど。

人間関係からの切り離し

特定の従業員を業務から外したり、長時間別室に隔離したりする行為です。また、特定の従業員を職場内の集団で無視をして孤立させる行為や、特段の理由なく長期間の自宅研修を命じ実行させることなど。

過大な要求

必要な教育を行わないまま、対応できないレベルの業績目標を課したり、それを達成できなかった場合は激しく叱責したりする行為など。

過小な要求

管理職を退職させるために簡単な業務を行わせたり、気に入らない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない、あるいは本来の業務とは異なる雑務を行わせたりする行為など。

例)管理職を退職させるために、本来の業務ではなく清掃作業を行うよう命じる行為など。

個の侵害

職場の外で特定の従業員を監視する、ロッカーの中にある私物を写真撮影する、従業員の個人情報を本人の了承なく他の従業員に暴露するといった行為など。

注意したいハラスメントのグレーゾーンについて

前述した6類型に加え、近年ではパワーハラスメントにあたるかの判断が難しい、グレーゾーンの事例が多く発生しています。

<判断が難しい事例>
・上司は指導のつもりで大きな声を頻繁に出していたところ、部下からパワハラと捉えられた
・部下に考えさせる指導法を行っている中で、部下を追い詰めてしまった
・安全性の観点から、命に関わる現場で厳しい指導を行っている
・世代間のギャップがもとで、指導法や接し方によってハラスメントと捉えられた

このように、判断が難しい事例が発生した場合には顧問弁護士・社会保険労務士に相談のもと、経営陣に判断を求めましょう。

パワハラ防止対策は万全に

冒頭で説明したとおり、2022年4月からは中小企業においてもパワーハラスメント防止措置が義務づけられました。すべての企業は、次項にて紹介する国が求めるパワーハラスメント防止措置を適切に行うことができているかどうかを確認し、不足があれば迅速に対応する必要があります。

企業に課された4つの義務

義務化されたパワハラ防止措置には次の4つがあります。

1.事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
2.相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
3.職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
4.1~3までの措置と併せて講ずべき措置

参考:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

「1. 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」では、事業主は職場内のハラスメントにおける方針について社内報やパンフレット、社内ホームページなどに掲載し、従業員に周知する必要があります。ハラスメントに関する研修や講習の実施も有効です。

「2.相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」では、ハラスメントに関する相談窓口を設置し、相談窓口の存在を従業員に周知することが求められています。また、相談窓口の担当者が相談に対し適切に対応できる体制を構築しなければなりません。相談窓口は外部機関に対応を委託することも可能です。

「3.職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」では、ハラスメントが発生する前に、発生後の対応をあらかじめ定めておくことが重要です。相談窓口で受けた相談への対応は誰が行うのか、対応の手順はどうするのかを明確化しておきます。

相談を受けたときには迅速に事実確認を行うことはもちろん、ハラスメントの認定に時間を割かず、問題行為が中止され、就業環境を回復することを重点に対応することが重要です。

「4.1~3までの措置と併せて講ずべき措置」として、当事者のプライバシー保護のための措置や、不利益取り扱いの禁止等が求められます。相談者・行為者に関する情報は保護しなければなりません。

企業は、プライバシー保護に関する対応をマニュアル化し、相談窓口の担当者に対してマニュアルに基づいた対応を求めましょう。あわせて、相談窓口の担当者に対してプライバシー保護に関する研修を実施します。

また、従業員が安心して相談できるよう、相談窓口ではプライバシー保護のための措置を講じていることや、相談したことをきっかけに不利益な取り扱いを行わないことなどを社内報や社内ホームページなどに掲載して周知を行います。

ハラスメントの起きない職場環境の構築を

ハラスメント問題は従業員だけのものではありません。場合によっては訴訟に発展する可能性もある、経営上のリスクです。義務化されたパワハラ防止措置をはじめ、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントなどさまざまなハラスメントを防止して、よりよい職場環境をつくりリスク軽減に努めましょう。

とはいえ、4つの義務に対応し続けるのは難しいものです。社内のリソースだけで防止措置の継続が難しい場合は、外部サービスの利用も検討しましょう。

ティーペックの「ハラスメント総合プログラム」では、ハラスメント予防のための研修プログラムの提供をはじめ、ハラスメント相談サービスや、人事・労務担当者向けの相談対応サービス「人事・労務ホットライン」を用意しています。

また、企業が適切に防止措置を講じられるよう、弁護士等の専門家がハラスメント規定の改定やハラスメント第三者委員会として問題解決に向けた対応をサポートします。

相談窓口の設置から事実調査、再発防止まで、企業のハラスメント対策をトータルにサポートする「ハラスメント相談プログラム」に関する詳細は、以下のページをご覧ください。

T-PEC「ハラスメント総合プログラム」
https://www.t-pec.co.jp/service/harassment-p/

<事務局より>以下より、従業員のハラスメント対策にお役立て頂ける資料をダウンロードしていただけます。ぜひご活用ください。

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参考

・厚生労働省「パワーハラスメントの定義について」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000366276.pdf

・厚生労働省「あかるい職場応援団 」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/

・厚生労働省「職場におけるセクシュアルハラスメント」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000378182.pdf

・厚生労働省 明るい職場応援団「事業主の皆さまへ NOパワハラ」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/

・厚生労働省「職場のパワーハラスメント等に関する実態把握の概要について(中間報告)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000359171.pdf

・独立行政法人労働政策研究・研修機構「職場のパワーハラスメントに関するヒアリング調査結果」
https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20200110/resume/02-kenkyu-mochizuki.pdf

・厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf


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監修者プロフィール

郡司 果林

■ROLE人事パートナーズ社会保険労務士法人 代表
■特定社会保険労務士、第1種衛生管理者
■大学卒業後、SEとしてシステム開発に従事。その後IT企業の人事担当として10年余り、社内の規程整備、衛生委員会の立ち上げ、安全衛生管理体制の構築、メンタルヘルスケア対応等に従事
■勤怠管理や給与計算内製化のシステム導入を行ったことにより、給与計算事務にかかるコスト1/5削減を達成。
■社会保険労務士事務所を開設後は、労働基準監督署相談員等を経て、IT業界の労務管理支援や、安全衛生管理体制構築支援、産業医や衛生管理者向けの研修等を行っている。
■主著
書籍「ITエンジニアの労務管理」(日本法令)
DVD「クラウド勤怠管理システム導入提案の仕方とコンサルの実務」(日本法令)
その他雑誌、Web媒体など執筆多数

※当記事は2022年9月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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