メンタルヘルス・ハラスメント
ハラスメント 2022/08/04

パワハラと言われない!信頼関係を築く「傾聴力」

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

今回は、ティーペック研修講師で、数多くの企業でコミュニケーション関連の研修を行う船見敏子さん(株式会社ハピネスワーキング代表)に、”パワハラと言われない!信頼関係を築く「傾聴力」“について解説いただきました。本記事の内容は、管理職の方への情報提供用としてもぜひご活用ください。(以下、船見さん執筆)

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<目次>
なぜ、いまリーダーに「傾聴力」が必要なのか?
なぜあなたはパワハラと言われてしまうのか?会話のクセをチェック
「傾聴力」の高い人は信頼される
「傾聴力」を高める3つのポイント

2022年4月、パワハラ防止法(労働施策総合推進法)の対象が中小企業にも広がり、すべての組織にパワハラ防止措置が義務付けられました。「自分もそのうちパワハラと言われてしまうのではないか!?」と戦々恐々としている人も少なくないことでしょう。

そこで、パワハラと言われないコミュニケーションを取るために有用なスキル「傾聴力」についてお伝えしていきます。いまの時代に必須のスキルを、ぜひ身につけてください。

なぜ、いまリーダーに「傾聴力」が必要なのか?

そもそも「傾聴」とは、ただ単に相手の話を表面的に聞くことではありません。相手が伝えようとしていることをできるだけ正確に理解し、考え方や感情を受け止め、話を前に進めたり深めたりする技術のことを指します。能動的に、積極的に聴いていくので、英語ではActive Listeningと言います。

ビジネスにおいてもいま、「傾聴力」が求められるようになってきていますが、その背景には、マネジメントの手法が変化してきたことがあります。いまは、VUCAの時代と言われています。

V(Volatility:変動性)
U(Uncertainty:不確実性)
C(Complexity:複雑性)
A(Ambiguity:曖昧性)

この4つのワードの頭文字を取ってVUCA(ブーカ)というわけですが、まさにいまは、いつ何が起こるかわからない、予測の難しい時代です。さまざまな変化に対応できるよう、メンバー個々がリーダーシップを発揮し、多様性のある組織を作っていく必要があります。

リーダーには、メンバーがリーダーシップを発揮できる環境を整える役割があります。そのために、メンバーの話を「傾聴」することが大切なのです。

なぜあなたはパワハラと言われてしまうのか?会話のクセをチェック

ではここで、あなたの会話のクセをチェックしてみてください。
部下が深刻な表情であなたに近づいてきて、こう言いました。
「A社の件、納期が遅れそうです。どうしましょう」

さて、あなたならなんと返答しますか?

1 「ええっ!なんでいま頃そんなこと言うんだよ。もっと早く相談しろよ!まったくお前はいつも報告が遅いんだよ!(と、怒る)」
2 「なぜそうなったのかまず説明してくれる?あなた、こういうことを何度もしているよね。なぜ自分がそうしてしまうのか分析しなさい(と、冷静だが論理的に詰め寄る)」
3 「報告ありがとう。納期が遅れそうで焦ってしまっているんだね。どのように対処するか一緒に考えるから、まず状況を詳しく聴かせてもらえるかな?」

上記3つのうち、日頃の会話のパターンはどれにいちばん近いでしょうか。

会話のクセチェック(怒る)

1は、パワハラと言われても仕方がないパターンですね。部下の言い分を聴くことなく頭ごなしに怒るのも、「お前」や「いつも」というフレーズも、精神的な攻撃に該当する可能性があります。

会話のクセチェック(理詰め)

2は、冷静に対処しているものの、理詰めの態度が気になります。このような対応が重なると部下は追い詰められ、「パワハラされた」と感じてしまうかもしれません。上司としては、論理的に考えてもらい、成長を促そうという意図があるのかもしれませんが、部下はたまったものではありません。

もしもこのふたつのパターンに近い対応をしがちなら、あなたはいつか、「パワハラされた」と言われてしまうかもしれません。

「傾聴力」の高い人は信頼される

会話のクセチェック(傾聴力が高い)

では3はどうでしょう。状況がどうであったにせよ、報告してくれたことにまずは感謝の意を述べています。そして、焦っているという感情に共感。さらに、「一緒に考える」と寄り添いながら、まずは状況を詳しく聴こうとしています。まさに「傾聴力」が高い態度であると言えます。

このような対応をしてもらえると、部下も安心します。自分を理解してくれる人に、人は心を開きますから、部下は上司を深く信頼し、次からは早めに相談をしてくれるようになるでしょう。

このように、「傾聴力」が高まると、パワハラを予防できるばかりでなく、部下との信頼関係を築くことができます。また、彼らの考えやアイデア、思いを引き出すことができるので、自分で考える部下に成長させることができるのです。

「傾聴力」を高める3つのポイント

「傾聴」の基本は、相手を尊重し、理解しようとする姿勢。そこで意識していただきたいのが、以下の3つのポイントです。

1.最後まで聴く

2.否定しない

3.頭ごなしにアドバイスしない

1の「最後まで聴く」という行為は、考えてみれば当たり前のことです。しかし、話の途中で口をはさんでしまう人は意外と少なくありません。途中でさえぎられると、「信頼されていない」「ないがしろにされた」と感じてしまいます。信頼関係にヒビが入りかねません。
それだけでなく、部下が本当に伝えたいことを聴き取ることもできなくなります。さえぎりたくなってもガマン!最後まで聴くようにしましょう。

2の「否定しない」は、部下の考えや思いを否定しないということ。たとえそれが間違っていると思っても、「それは違う!」とか「こんなのダメだよ」と頭ごなしに言わないことです。部下は部下なりに頑張っているわけです。そのプロセスを確認することもなしにダメ出しされたら、ダメージを受けます。

理詰めも、否定に近い行為。論理性は大事ですが、部下を追い詰めずに「一緒に考える」スタンスを取ることが、部下を成長させるためには重要です。

そして3の「頭ごなしにアドバイスしない」。アドバイスして何が悪い?と思われるかもしれませんが、アドバイスは、「いまのあなたのやり方はダメだから、こうしなさい」というメッセージ。基本的にダメ出し行為なのです。

ときにアドバイスは有効ですが、落ち込んでいるときや弱っているときにアドバイスをされると、とてもしんどく感じるものです。
部下が成長するには、自分の頭で考えるプロセスが欠かせません。頭ごなしのアドバイスはそのチャンスを奪うことになりかねないのです。アドバイスしたくなってもグッとこらえて、「あなたはどう思う?」など質問を投げかけ、自ら考える時間を作ってあげてください。

傾聴力を高める3つのポイント

自分の話をするよりも、まずは聴くようにする。慣れないうちは難しく、歯がゆさを感じるかもしれませんが、「傾聴力」は必ずや、あなたに大きな喜びをもたらします。
そのことを楽しみにしつつ、3つのポイントにトライしてみください。

プロフィール

船見敏子

株式会社ハピネスワーキング代表取締役。
公認心理師、1級キャリア・コンサルティング技能士。
企業、組織でメンタルヘルス・コンサルティング、従業員カウンセリング、研修などを実施し、「幸せに働く」「幸福経営」のサポートを行う。著書に『幸せなチームのリーダーがしていること』、『課長のほめ方の教科書』、『「聴く力」磨けば人生うまくいく!』など。

※当記事は2022年8月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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