メンタルヘルス・ハラスメント
ストレスチェック 2023/12/25

ストレスチェック後に実施する産業医の面談(面接指導)の流れとは?注意点についても解説

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

※当記事は2022年8月に作成されたものに、専門家監修のもと加筆・修正を行っています。(2023年12月更新)

ストレスチェックは、労働者が50人以上の事業場に義務付けられた制度です。ストレスチェックの結果により、速やかに労働者と産業医との面談(面接指導)を実施する必要があります。この記事では、企業の人事担当者に向けてストレスチェックの概要や流れ、注意点などを解説しているため、参考にしてください。

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<目次>
ストレスチェックとは
ストレスチェック後の産業医面談(面接指導)とは
ストレスチェック後の産業医面談(面接指導)の流れ
ストレスチェック後に実施する面談(面接指導)の注意点
まとめ

ストレスチェックとは

ストレスチェックは、労働者が50人以上の事業場に2015年12月から義務付けられている労働安全衛生法上の制度です。ストレスに関する質問に対する回答をもとに、1年に1回以上、労働者のストレス状態を調査します。実施方法としては、労働者がストレスに関する質問票に回答し、その結果を分析することでストレス状態を測ります。労働者が50人未満の事業場では、ストレスチェックは努力義務とされています。

また、ストレスチェックは、医師や保健師、一定の研修を受けた精神保健福祉士等が行いますが、企業においては、事業場で選任されている産業医が実施者となることが最も望ましいでしょう。この記事では、ストレスチェックの実施者を産業医として解説します。

※参考:厚生労働省|ストレスチェック制度導入マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf

ストレスチェックの目的

ストレスチェックの目的は、労働者がどの程度心理的・精神的に負担があるかを、事業者が把握して、労働者のメンタルヘルス不調の防止や早期発見のために行われます。仕事や職場環境にストレスや不安を抱えている労働者の増加に伴い、うつ病や不安障害など精神障害の労災認定も増えています。ストレスチェックを実施して、産業医の意見を聞ければ、労働者に対して就業上の措置を行うなど、職場環境の改善につなげることができます。

※参考:厚生労働省|労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150507-1.pdf

ストレスチェックの3領域

ストレスチェックは、以下の3つの領域に分かれています。

・仕事のストレス要因
職場でどれだけストレスを感じているかを表します。質問に含まれるのは、職場環境や人間関係、仕事量や負荷などの項目です。

・心身のストレス反応
仕事のストレスにより、心や体にどのような反応が起きているかを示します。ネガティブな感情やポジティブな感情、体に出ている症状などの自覚症状に関する項目です。

・周囲のサポート
上司や家族など、周囲にサポートや社会的支援があるかを表します。上司や家族、同僚などの支援、サポートへの満足度などをチェックします。

ストレスチェック後の産業医面談(面接指導)とは

ストレスチェック後に、高ストレス者であると判断された労働者に向けて行われるのが、産業医面談(面接指導)です。ストレスチェック実施者がストレスチェックの結果を確認し、面談(面接指導)が必要と判断した労働者に面談勧奨を行います。ストレスチェック後の面談(面接指導)は必ず産業医が行うとは限らないものの、厚生労働省は事業場の状況を把握する産業医が従事することが望ましいとしています。

※参考:厚生労働省|ストレスチェック制度導入マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf

ストレスチェック後の産業医面談(面接指導)の流れ

ストレスチェックを実施した後は、結果をもとに対象者に対して産業医面談(面接指導)を行います。事業者は、産業医から労働者の状況についての意見を聴き、必要に応じて就業上の措置などを行う必要があります。

1.ストレスチェックの結果を確認・選定する

ストレスチェックの3領域の点数を参考に面談(面接指導)が必要な労働者を選定します。高ストレス者の判定基準は(1)各設問の回答を点数換算した合計で判定する方法、(2)各設問回答の点数を尺度ごとに素点換算した合計をもとにする判定方法の2つが設けられています。

(1)設問の合計点数の場合、以下2つのどちらかを目安として判定します。

<「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を使用したときの高ストレス者の評価基準例>
・「心身のストレス反応」領域の設問回答の点数を合計して、が77点以上の場合
・「 仕事のストレス要因」領域と「周囲のサポート」領域に関わる設問回答の合計点数が76 点以上、かつ「心身のストレス反応」領域に関わる設問回答の合計点数が63点以上

(2)尺度の合計点数の場合、以下のいずれかを目安として判定します。

<「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を使用したときの高ストレス者の評価基準例>
・「心身のストレス反応」の合計点数が12点以下の場合
・「仕事のストレス要因」と「周囲のサポート」を合算した合計点数が26点以下で、「心身のストレス反応」の合計点数が 17点以下の場合

※参考:厚生労働省|労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150507-1.pdf

2.産業医から面談(面接指導)をすすめる

ストレスチェックで高ストレス者であると判断された労働者には、以下の3つの方法で面談(面接指導)をすすめます。まずは、ストレスチェックの結果を通知するときに合わせて面談(面接指導)を促す方法です。続いて、結果通知から一定期間後に、状況確認をしたうえで面談(面接指導)をすすめましょう。最後に、対象者のうち面談(面接指導)の申し出がなかった労働者に対して、再度面談(面接指導)をすすめる方法があります。

3.申し出のあった労働者の勤務状況などを産業医と共有する

労働者から面談(面接指導)の申し出があった場合、面談(面接指導)前に勤務状況や職場環境、心理的な負担などの情報を産業医と共有します。事業者は、労働者の労働時間や深夜業務の回数、作業負荷などの情報を提供して、産業医と適切な面談(面接指導)の実施に努めることも求められています。

4.面談(面接指導)を行う

労働者からの申し出があってから1か月以内に、面談(面接指導)を行います。面談(面接指導)は、労働者がリラックスできるように環境を整えて、個人のプライバシーにも配慮しましょう。産業医は、事前に共有した勤務状況や健康診断やストレスチェックの結果をもとに、ストレスに関しての聞き取りを実施します。面談(面接指導)では、ストレスに対するセルフケアの指導も行います。

5.就業上の措置や環境改善を行う

面談(面接指導)の結果を受けて、事業者は労働者に対して就業上の措置や職場環境の改善を計ります。改善方法については、面談(面接指導)を行った産業医から意見を取り入れることが必要です。事業者は、労働者が労働時間の短縮や作業の転換など、就業制限や休業の必要があるか産業医の判断を仰ぐ必要があります。

6.ストレスチェック・面談(面接指導)の結果報告書を作成・提出する

ストレスチェック・面談(面接指導)の結果は、管轄の労働基準監督署への提出義務があります。提出時期に決まりはありませんが、ストレスチェックは年1回の実施が義務付けられているため、1年以内ごとに1回、定期に設定する必要があります。報告書の提出時期は、各事業場における事業年度の終了後など、事業場ごとに設定しておくとよいでしょう。
未提出の場合は、労働安全衛生法に基づき罰則の対象となるため注意しましょう。報告書は厚生労働省の入力支援サービスやデジタル庁のe-Gov(イーガブ)電子申請の利用が便利です。

厚生労働省の入力支援サービスで作成した帳票は、オンラインでの提出はできないため、印刷した帳票を労働基準監督署へ提出します。e-Govは、事前にアプリをダウンロードしたうえで、必要事項を記入し、電子申請を行います。

※参考:厚生労働省|心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei36/24.html
※参考元:デジタル庁|e-Gov電子申請
https://shinsei.e-gov.go.jp/

ストレスチェック後に実施する面談(面接指導)の注意点

ストレスチェック後の面談(面接指導)は、書類の管理や実施において決まりがあります。面談(面接指導)における注意点を解説します。

ストレスチェックの結果は5年間保管する

ストレスチェックならびに面談(面接指導)の結果は、5年間保管する責任があります。書面かデータで記録を保存し、第三者が閲覧できないように厳重に保管しなければなりません。労働者が事業者との情報共有に同意した場合は、事業者側が保存、管理します。しかし、情報共有の同意が得られなかった場合は、適切な記録保存のため、保存場所の設定やセキュリティの確保、対策を実施者もしくは事業者が指名した実施事務従事者が行います。

※参考:厚生労働省|心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000346613.pdf

面談(面接指導)の強制はできない

面談(面接指導)は、労働者からの申し出があるときのみ実施が可能です。産業医や事業者側から、面談(面接指導)の無理強いはできません。面談(面接指導)が行われないと、メンタルヘルス不調の改善が進まず労働者は高ストレスの状況が続くことが懸念されます。事業者には、労働者が安心して面談(面接指導)の申し出ができるよう配慮が求められています。

申し出後、速やかに面談(面接指導)を行う

事業者は、労働者から面談(面接指導)の申し出があった場合、申し出から1か月以内を目安に面談(面接指導)を実施する必要があります。事業者は、産業医に面談(面接指導)の実施を依頼するとともに面談(面接指導)の日程調整を行います。また労働者も、ストレスチェックの結果が通知されてから1か月以内に面談を申し出なくてはなりません。

オンラインでの面談(面接指導)は要件を満たす必要がある

面談(面接指導)は、オンラインでの実施も可能です。オンライン面談(面接指導)を行えるのは、以下のいずれかの条件に当てはまる場合に限られます。また、以下のいずれの場合においても、事業者は、面談(面接指導)を実施する医師に対し、面談(面接指導)を受ける労働者に関する労働時間等の勤務の状況及び作業環境等に関する情報を提供する必要があります。

・該当する労働者が所属する事業場の産業医である場合。
・契約(雇用契約を含む)により、少なくとも過去1年以上の期間にわたって、該当する労働者が所属する事業場の労働者の日常的な健康管理 に関する業務を担当している医師。
・過去1年以内に、該当する労働者が所属する事業場を巡視したことがある医師。
・過去1年以内に該当する労働者に直接対面により指導等を実施した経験がある医師。

また、映像と音声が安定した状態で労働者のプライバシーが守られる環境が必要です。オンライン面談(面接指導)の実施にあたっては、衛生委員会等で調査審議を行ったうえで、事前に労働者への周知が必須です。

※参考:厚生労働省|情報通信機器を用いた面接指導の実施について
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150918-1.pdf

適切にストレスチェックを行わないと罰則がある

ストレスチェックは、労働者50人以上の事業場に義務付けられた制度です。ストレスチェックを行わない場合、安全配慮義務違反で損害賠償責任を問われる可能性があります。また、ストレスチェックの報告は、労働安全衛生法の規定により、滞りなく行わなくてはなりません。報告をしない、あるいは虚偽の報告をした場合には最大50万円の罰金に科せられることもあります。

アルバイト・パートも対象になる場合がある

年1回のストレスチェックは、雇用形態にかかわらず、※期間の定めの無い者で、週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上である者が対象です。なお、ストレスチェックの対象にならない労働時間の労働者であっても、継続雇用であれば、ストレスチェックの基準である「労働者50人以上の事業場」の数に含まれます。

※期間の定めがある労働契約の場合は、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者

まとめ

ストレスチェック後の産業医による面談(面接指導)には、高ストレスにさらされている労働者の就業状況を改善したり、ストレスに対するケアの指導をしたりする目的があります。産業医による対応が難しい場合は、外部機関を活用しましょう。

<事務局より>ティーペックのストレスチェックでは、ストレスチェックの結果をしっかりと活用できる、充実した職場環境改善サポートサービスをご提供いたします。従業員のストレスチェックはティーペックにお任せください。

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≪監修者プロフィール≫
石川 弘子
特定社会保険労務士/産業カウンセラー/ハラスメント防止コンサルタント

青山学院大学経済学部経済学科卒業。2004年石川社労士事務所を開業し、2016年フェリタス社会保険労務士法人に組織変更し、代表社員に就任、現在に至る。企業の労務相談を受けているほか、障害年金請求手続きや、産業カウンセラーとして、企業のメンタルヘルス対策などにも携わる。著書は『あなたの隣のモンスター社員』(文春新書)、『モンスター部下』(日本経済新聞出版社)。
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参考

・厚生労働省「ストレスチェック制度導入マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf

・厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150507-1.pdf

・厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei36/24.html

・デジタル庁「e-Gov電子申請」
https://shinsei.e-gov.go.jp/

・厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000346613.pdf

・厚生労働省「情報通信機器を用いた面接指導の実施について」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150918-1.pdf

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※当記事は2022年8月に作成されたものに、専門家監修のもと加筆・修正を行っています。(2023年12月更新)
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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