メンタルヘルス・ハラスメント
ストレスチェック 2021/07/02

ストレスチェックの集団分析とは?評価方法とメリットを解説

ストレスチェックは、個々の従業員を対象とした検査だけではなく、そのストレスチェックの結果を用いて、部署や課などの一定規模で「集団分析」が行えることをご存じでしょうか。
ストレスチェックの集団分析を実施すると、職場環境におけるストレスの状況と健康へのリスクを詳細に把握することができます。また、その結果をもとに、従業員が安心して効率良く働けるような環境づくりに活用することが可能です。ここでは、ストレスチェックの集団分析の概要と評価方法のほか、集団分析を行うメリットについて解説します。

ストレスチェックの目的

ストレスチェックとは、労働安全衛生法にもとづいて、2015年12月から毎年1回の実施が義務づけられている、50人以上の従業員が働く事業所で従業員を対象としたストレスに関する検査のことです。
ストレスチェックの目的は、従業員自身に自己のストレスについての気づきとケアを促すことです。その結果として、企業も従業員のストレスから来るメンタルヘルスの不調を未然防止(一次予防)できると考えられています。

また、ストレスチェックの個々のデータを集めた「集団のデータ」を分析することで、部署・課ごとのストレスの特徴や傾向、メンタルヘルス不調による健康へのリスク状況を把握することができるのです。

ストレスチェックの集団分析を行うメリット

ストレスチェックの集団分析は、法律では努力義務とされていて、実施しなくても事業者が罰則を課せられることはありません。しかし、集団分析の実施には、下記のようなメリットがあります。

・企業が、従業員全体のメンタルヘルス不調のリスクを把握でき、不調者発生の予防につなげられる
・組織の課題や強みが明確になり、働きやすく生産性の高い職場づくりに活かせる

ストレスチェックの集団分析を行うことによって、高ストレスを抱える人が多い部署がわかるといった組織の課題が可視化できれば、改善策を講じることができます。
そして、職場環境が改善されることで、メンタルヘルス不調の未然防止に役立つだけではなく、仕事の質の向上や離職率低下にも結びつけられるでしょう。

参考:厚生労働省「ストレスチェック制度 簡単!導入マニュアル

ストレスチェックと集団分析の流れ

ストレスチェックの集団分析は、10人以上の集団で行うことが厚生労働省により推奨されています。その理由は10人未満では個人が特定されやすくなり、事業者として守秘義務違反につながるリスクがあるためです。罰則規定も定められています。
ただし、厚生労働省のウェブサイト「こころの耳」のQ&Aでは、事業者が個人を特定できない方法を衛生委員会等で調査審議した上であれば、10人未満でも集団分析を実施できるとしています。
続いて、ストレスチェックの実施と集団分析を行う流れを、詳しく見ていきましょう。

参考:こころの耳「ストレスチェック制度について

1. ストレスチェックを行う実施体制を決める

事業者は、ストレスチェックの企画と結果の評価に関与する「実施者」を選定します。実施者は、専門的な見地で意見を述べるために医師や保健師のほか、厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師、精神保健福祉士といった有資格者から選定されますが、事業場の状況を日頃から把握している産業医などが担当するのが望ましいとされています。さらに、事業者は、実施者の指示に従って、調査票の回収やデータ入力などの実施者の補助を行う「実施事務従事者」を併せて選定します。実施事務従事者の選定にあたっては、人事に関する権限を持つ者を従事させることはできません。人事上において、ストレスチェックを理由とした、従業員に対する不利益な取り扱いが禁じられていますので、実施事務従事者を選任する上では注意が必要です。

2. 従業員にストレスチェックを実施する

実施体制が決まれば、次にストレスチェックをペーパー、またはオンライン上で従業員に実施・回答してもらいます。厚生労働省によると、使用する調査票の質問項目は、医師や保健師の指示のもと、下記の3つの事項に関する質問が含まれている必要があります。

<調査票の質問項目>
・ストレスの原因に関する質問項目
・ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目
・従業員に対する周囲のサポートに関する質問項目

ストレスチェックの項目(調査票)としては、「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)を利用することが推奨されています。また、この57項目を含む「新職業性ストレス簡易調査票」(80項目)を利用することで、ストレスだけでなく、ワーク・エンゲージメントといった職場の活性度を把握する企業が増えているのです。

3. ストレスチェックを集計し、評価判定する

従業員が回答した調査票は、実施者が外部委託先や自社システム等で集計し、個々の評価判定を行います。評価方法・基準は、厚生労働省のマニュアルを参考に実施者が提案・助言を行い、衛生委員会における調査審議を経て、事業者が決定したものを用います。個々の評価判定が終わったら、その結果を一定規模のまとまりの集団ごとに集計・分析する、集団分析の作業を進めましょう。

ストレスチェックは、事業者内で完結させることが可能ですが、事業者側の負担を減らし、より精緻な分析を行いたいなら、外部機関に業務委託する方法もあります。

ストレスチェックの集団分析の評価方法

ストレスチェックの集団分析の評価方法は、「仕事のストレス判定図」を使って行うことを、厚生労働省では推奨しています。

仕事のストレス判定図で分析を行う

仕事のストレス判定図は、「量-コントロール判定図」と「職場の支援判定図」という判定図の2つからなり、集団におけるストレスの度合いと、ストレスによって健康状態に問題が出る危険度を表した健康リスクを判断することができます。2つの判定図の概要は、下記のとおりです。

■仕事のストレス判定図

※出典:厚生労働省「ストレスチェック制度 導入ガイド」より引用

・量-コントロール判定図(仕事の量的負担とコントロール) ※上図左側
量-コントロール判定図は、仕事量とコントロール(仕事の裁量権・自由度)とのバランスを見るための図です。縦軸「仕事のコントロール」は、職業性ストレス簡易調査票のA8~10の回答、横軸「仕事の量的負荷」は、A1~3の回答の点数(1~4点)を合計したものです。縦軸と横軸が交わる斜めの線の点数で判定します。
判定図に描かれている斜めの線のうち、「100」と書かれた線が全国平均ラインで、図の右下に近づくほど、ストレスが高いことを表します。平均値よりも点数が高い場合は仕事量が多く、仕事量のコントロールが難しいことになります。
なお、厚生労働省が無料で配布しているストレスチェックアプリ「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を使うと、職業性ストレス簡易調査票の回答を自動で集計して、「仕事のストレス判定図」に反映されますので、併せてご確認ください。

・職場の支援判定図(上司の支援と同僚の支援) ※上図右側
職場の支援判定図は、上司の支援と同僚の支援の状態を見るための図です。縦軸「同僚の支援」は、職業性ストレス簡易調査票のC2、5、8の回答、横軸「上司の支援」はC1、4、7の回答の点数を合計したものです。
全国平均ラインは、量-コントロール判定図と同様に「100」と書かれた線で、こちらの図の場合は左下に近づくほど、ストレスが高いことを表します。平均値よりも点数が高い場合は、上司、同僚ともに、支援の度合いが低いことを表します。

参考:厚生労働省「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム

ストレスチェックの集団分析において重要なポイント

ストレスチェックの集団分析においては、「総合健康リスク」と「高ストレス者」の2つを見ることが重要です。総合健康リスクが高く、なおかつ高ストレス者の割合が高い職場環境だと判明した場合は、すでにメンタルヘルス不調を抱えている従業員がその集団内に多くいることを表します。生産性の低下や休職・離職といった、業務・組織へダメージを与える状況が増えると考えられるのです。
ここでは、総合健康リスクと高ストレス者について、詳しく解説します。

総合健康リスク

総合健康リスクは、職場の負担感が従業員の健康にどのくらい影響があるのかを指す指標のことで、仕事のストレス判定図から求めることができます。
「量-コントロール判定図」の点数を健康リスクA、「職場の支援判定図」の点数を健康リスクBとして、次の式で総合健康リスクを算出します。

総合健康リスク=A×B÷100

例えば、全国平均ラインの100に対して、総合健康リスクが120なら、心身の不調から休職者が発生する確率が全国平均よりも20%高いと評価され、職場環境が健康状態にリスクを与えることがわかるのです。
もしも、総合健康リスクが150以上なら、健康問題がすでに表面化していることが多く、早急な職場環境の改善やカウンセリングといった、従業員への直接的なケアが求められるケースがあります。

参考:
・東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野『テクニカルノート (2001.11.20更新)
・平成29年度厚生労働科学研究費補助金(労働安全衛生総合研究事業)ストレスチェック制度による労働者のメンタルヘルス不調の予防と職場環境改善効果に関する研究(H27-労働-一般-004)『職場環境改善スタートのための手引き

高ストレス者

調査票の評価点数から心身の自覚症状が多く、心身の状態が著しく悪い人、または心身の自覚症状が一定以上あり、職場のストレス負荷が強く、周囲のサポートが得られていない人が、高ストレス者として判定されます。

高ストレス者と判定された人は、実際に自覚の有無にかかわらず不調をかかえていることが多いのですが、個人の状態を特定して把握することはできないため、すべての高ストレス者を医師による面接指導の対象として、面接勧奨を行うケースが多くあります。
ストレスチェックによる高ストレス判定の詳しい方法については、厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」に記載がありますので、そちらをご確認ください。

参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル

ストレスチェックの集団分析の結果を職場改善に活かすには?

ストレスチェックの集団分析によって、ネガティブな結果が出た場合には、その結果をもとに職場や職位ごとのストレス負荷の状況、従業員の健康状態などをあらためて精査する必要があります。点数を見るだけではなく、実際に現場の状況を観察することが大切です。また、従業員にヒアリングをして状況を把握しなければ、現状に合った職場環境改善策を考えることは難しいでしょう。

特に、総合健康リスクと高ストレス者の割合が高かった集団に関しては、従業員へのヒアリングを通じて原因を探る作業を根気よく行うことが必要です。その際には、高ストレス者か否かに関係なく、集団内のなるべく多くの従業員に話を聞くことをおすすめします。

ストレスチェックの集団分析の結果からヒントを得る

ストレスチェックの集団分析の結果から、ストレスの原因を探るヒントを得ることができます。
例えば、「量-コントロール判定図」の点数が高かった場合は、「仕事量が多すぎる」「人員数が足りていない」「個人のスキルが不足している」「個人に与えられる裁量権・自由度が低すぎる」「マニュアルが整備されていない」「特定の個人やチームに業務の偏りがある」といった原因が考えられます。

一方、「職場の支援判定図」の点数が高かった場合は、「上司の管理能力不足」「職場内のコミュニケーション不足」「コミュニケーションツールをうまく活用できていない」「社内イベント等による交流の機会が少ない」といった原因が考えられるのです。

原因をある程度特定できれば、職場環境を改善するためのプランニングが行いやすくなります。問題が生じている集団を健全な状態に戻すには、多くの労力やトライ&エラーが必要です。何も手を打たず放置していても状況は変わらず、むしろ悪化していく危険性すらあります。ストレスチェックの集団分析の結果を活用し、従業員のストレスと総合健康リスクを減らすための有効な方法を考えましょう。

ストレスチェックの集団分析で課題改善まで行うことが重要

ストレスチェックの集団分析は、あくまで手段であって目的ではありません。職場環境の改善、あるいはマネジメントへのフィードバックといったところまでアクションを起こしていかなければ、企業はリスクを把握するだけにとどまってしまうのです。事業者側がリスクを把握していたにもかかわらず、放置していたのでは意味がなく、安全配慮義務という観点からも、何らかの労災上の問題などが起きたときに必要な対策をとってきたとはいえなくなります。

ストレスチェックの集団分析によって課題が浮き彫りになったら、その課題をどのように解決していくかが事業者側にとっては最も重要です。何らかの対策や施策を事業者内で考え、実行するのは限界がありますので、専門的なノウハウを持つ、外部機関を利用するのもおすすめです。

ティーペックでは、ストレスチェックおよび集団分析の実施だけでなく、職場改善コンサルティングも含めた支援体制を整えています。ストレスチェックと職場改善についてのサービスに関心がある方は、ティーペックにお気軽にご相談ください。

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<監修者プロフィール>
監修者
渡邊 宏行医師

信州大学医学部卒業後、大学附属病院、クリニック等を経て総合病院勤務。
産業医活動に重点を置き、現在、嘱託産業医として活動中。システム開発、ゲーム開発、保険などのオフィス現場から製造、食品、薬剤等の工場や建設・物流、医療・介護施設など、業界は多岐にわたり、これまで70社以上の企業を担当した経験あり。
日本精神神経学会、日本プライマリ・ケア連合学会、医師+(いしぷらす)所属。
株式会社医師のとも

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出典
・厚生労働省『ストレスチェック制度 簡単!導入マニュアル』
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf

・こころの耳『ストレスチェック制度について』
https://kokoro.mhlw.go.jp/etc/kaiseianeihou/#section-3

・厚生労働省『厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム』
https://stresscheck.mhlw.go.jp/material.html

・厚生労働省『ストレスチェック制度導入ガイド』
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/160331-1.pdf

・厚生労働省『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150507-1.pdf

・厚生労働科学研究費補助金労働安全衛生総合研究 『職業性ストレス簡易調査票を用いたストレスの現状把握のためのマニュアル ―より効果的な職場環境等の改善対策のためにー』
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000050920.pdf

・東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野『テクニカルノート (2001.11.20更新)』
https://mental.m.u-tokyo.ac.jp/jstress/hanteizu/Technote.htm

・平成29年度厚生労働科学研究費補助金(労働安全衛生総合研究事業)
ストレスチェック制度による労働者のメンタルヘルス不調の予防と職場環境改善効果に関する研究(H27-労働-一般-004)『職場環境改善スタートのための手引き』
http://mental.m.u-tokyo.ac.jp/jstress/

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※当記事は2021年6月に作成されたものです。