メンタルヘルス・ハラスメント
メンタルヘルス 2026/10/14

企業のメンタルヘルス対策とは?重要性・具体例・相談窓口の活用を解説【専門家監修】

企業のメンタルヘルス対策とは?重要性・具体例・相談窓口の活用を解説【専門家監修】

こんにちは。企業の健康経営(R)を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

メンタルヘルス不調は、従業員本人の心身の健康だけでなく、休職や離職、生産性、組織運営にも影響する可能性があります。企業のメンタルヘルス対策では、不調者への対応だけでなく、予防から早期相談、職場復帰までを含む体制づくりが重要です。(※1)
本記事では、対策の重要性や具体例、相談窓口・カウンセリングの活用について解説します。以下、専門家(産業医・公認心理師)監修による記事です。

<目次>
◆企業におけるメンタルヘルス対策とは
◆企業がメンタルヘルス対策に取り組むべき3つの理由
◆メンタルヘルス対策の基本となる3つの予防と4つのケア
◆企業で実施できるメンタルヘルス対策の具体例
◆相談窓口・カウンセリングサービスを機能させるポイント
◆企業のメンタルヘルス対策に関するQ&A
◆メンタルヘルス対策は従業員と企業を守る継続的な取り組み

企業におけるメンタルヘルス対策とは

メンタルヘルス対策というと、不調になった従業員への個別対応を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」で示されている取り組みは、それだけにとどまりません。

具体的には、従業員が自分のストレスに気づくための教育研修や情報提供、職場環境の把握と改善、管理職による相談対応、産業保健スタッフや外部専門機関との連携、さらに休職者の職場復帰支援までが含まれます。

つまり、メンタルヘルス対策とは「不調者を見つけるための対策」ではなく、従業員が健康に働き続けられる環境を整える取り組み全体を指します。全体の流れは、次のように整理できます。(※2)

予防 → 早期発見・相談 → 休職・復職支援

自社の取り組みがどの段階なのかを確認することから対策を見直しましょう。

企業がメンタルヘルス対策に取り組むべき3つの理由

メンタルヘルス対策は、従業員個人の問題への対応にとどまらず、企業経営に関わる取り組みです。ここでは、企業が対策に取り組むべき理由を3つの観点から解説します。

従業員の休業や退職を未然に防ぐため

厚生労働省の「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者または退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%でした。このうち、退職した労働者がいた事業所の割合は6.5%となっています。(※1)
メンタルヘルス不調は、表面化してから対応しようとすると、本人の療養だけでなく、業務の引き継ぎや人員配置など、職場側の調整負担も大きくなりがちです。休業や退職に至る前の段階で、従業員が気軽に相談できる体制を整えておくことが重要です。

生産性低下と人材流出を防ぐため

ティーペックが企業で働く20代~60代の男女1,000名を対象に実施した調査では、仕事でストレスを感じたときに影響を受けるものとして、34.9%が「仕事のパフォーマンス」を挙げています。ストレスは従業員個人の心身の問題にとどまらず、業務の質や生産性にも影響を及ぼすと考えられます。(※3)
また、現役管理職500名への調査では、普段の業務でストレスを感じている管理職424名のうち、41.7%がストレス要因をきっかけに勤務先からの離職・転職を検討した(している)と回答しました。管理職は部下を支える立場にありますが、本人もまた支援を必要とする対象です。(※4)
これらの結果から、メンタルヘルス対策は福利厚生の一環というだけでなく、人材の定着と事業の継続性を支える経営施策でもあるといえます。

こちらもチェック!>>「【1,000人調査】働く人の7割がストレスを実感!年代別にみる職場の課題と企業の対策」

こちらもチェック!>>「ストレスを抱える管理職の4割が離職・転職を検討!?現役管理職500名へ独自調査を実施」

企業として求められる対応を整えるため

企業には、従業員が安全で健康に働けるよう配慮することが求められています。労働者数50人以上の事業場には年1回のストレスチェックの実施が義務付けられており、実施するだけで終わらせず、その結果を職場環境の改善につなげていく必要があります。

さらに、2025年に公布された改正労働安全衛生法により、2028年4月1日からは労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化されます。これまで努力義務とされてきた小規模な事業場でも、体制の準備が求められる段階に入りました。
制度対応をきっかけに、相談体制や研修、職場環境の改善までを含めた全体の仕組みを見直すことが望まれます。

メンタルヘルス対策の基本となる3つの予防と4つのケア

メンタルヘルス対策を体系的に進めるうえで基本となるのが、「3つの予防」と「4つのケア」という考え方です。それぞれの内容を確認していきましょう。

メンタルヘルス対策における3つの予防

メンタルヘルス対策は、目的に応じて一次予防・二次予防・三次予防の3段階に整理できます。

メンタルヘルス対策における3つの予防についてまとめた図

3つの予防はどれか一つに取り組めばよいものではなく、段階ごとの施策をバランスよく組み合わせることが大切です。

企業全体で取り組むための4つのケア

厚生労働省の指針では、メンタルヘルスケアを継続的かつ計画的に進めるために、次の「4つのケア」を推進することが示されています。(※2)

・セルフケア:従業員自身がストレスに気づき、対処する
・ラインによるケア:管理監督者が職場環境を改善し、部下の相談に対応する
・事業場内産業保健スタッフ等によるケア:産業医や衛生管理者などが専門的に支援する
・事業場外資源によるケア:外部の専門機関やサービスを活用する

重要なのは、4つのケアを別々に実施するのではなく、相互に連携させることです。

企業で実施できるメンタルヘルス対策の具体例

ここからは、3つの予防の段階ごとに、企業が実施できる具体的な取り組みを紹介します。自社で取り組めていない項目がないか、チェックリストとしてもご活用ください。

一次予防|不調が起きにくい職場環境をつくる

一次予防の目的は、メンタルヘルス不調の発生自体を防ぐことです。具体的には、次のような取り組みが挙げられます。

・メンタルヘルス対策の方針と担当者を決める
・ストレスチェックを実施し、集団分析の結果を職場改善に活用する
・業務量、労働時間、役割分担、人間関係の課題を確認する
・従業員向けにセルフケア研修を実施する
・管理職向けにラインケア研修や傾聴研修を行う

また、制度や相談窓口は一度告知して終わりにせず、定期的に周知することが重要です。入社時や異動時、研修の機会などを活用し、繰り返し伝えていきましょう。

二次予防|不調を抱え込む前に相談できる環境を整える

二次予防の目的は、不調の兆候に早く気づき、深刻化する前に対応することです。中心となるのは、相談しやすい環境づくりです。

・上司、人事、産業保健スタッフ、外部相談窓口など、複数の相談経路を設ける
・上司や人事が悩みの原因である場合も想定する
・電話、Web、対面など、利用しやすい相談方法を用意する
・相談内容の守秘範囲と、会社に共有される情報の範囲を明示する
・管理職自身も相談できる仕組みにする

ティーペックの調査では、勤務先のストレス・メンタルヘルス対策や支援体制について「整備されていない」と感じている人が50.6%、「わからない」と回答した人が21.3%にのぼりました。また、対策が整備されていないと回答した人が希望する対策として最も多かったのは、「社外の相談窓口やカウンセリングサービス」の30.1%でした。(※3)
この結果からは、制度がないことだけでなく、制度があっても従業員に知られていない、あるいは安心して利用できると思われていない可能性がうかがえます。相談体制は、設置とあわせて周知と信頼づくりまでを含めて設計することが求められます。

<事務局より>
ティーペックでは、企業のメンタルヘルス対策をサポートする健康相談窓口、メンタルヘルスカウンセリングサービスを提供しております。健康相談窓口では、保健師や心理カウンセラーなどの経験豊富な専門家が、こころだけでなく身体の健康もケアすることで潜在的なメンタルヘルス不調者をサポートします。詳細はお気軽にお問い合わせください。

こちらもチェック!>>「こころとからだの健康サポート(EAP外部相談窓口)」

三次予防|休職者の職場復帰と再発を支援する

三次予防の目的は、休職した従業員の円滑な職場復帰と再発防止です。次のような点を整えておきましょう。

・休職から復職までの手順をあらかじめ定めておく
・主治医の診断だけで復職可否を判断せず、産業医などと連携する
・復職後の業務量や勤務時間、配置を段階的に調整する
・本人の健康情報は、必要な範囲に限定して取り扱う
・復職後も定期的な面談を継続する

復職支援は個別性が高く、人事担当者だけで判断することが難しい場面も少なくありません。産業医や外部の専門機関と連携できる体制を整えておくと、本人にとっても職場にとっても安心につながります。

こちらもチェック!>>「メンタルヘルスと人事担当者の役割:企業の管理と対策の重要性【医師監修】」

相談窓口・カウンセリングサービスを機能させるポイント

二次予防の中心となる相談窓口・カウンセリングサービスについて、導入と運用のポイントをさらに詳しく見ていきます。

社内と社外の相談経路を用意する

社内の相談窓口には、職場の調整や人事上の措置につなげやすいという強みがあります。一方で、上司や人事が悩みの原因である場合には、従業員が利用をためらいやすい面もあります。
社外の相談窓口やカウンセリングサービスには、社内の利害関係を気にせず相談できる第三者性があります。前述の調査で「社外の相談窓口やカウンセリングサービス」を希望する声が最も多かった背景にも、こうした安心感があると考えられます。
どちらか一方に絞るのではなく、相談内容や従業員の希望に応じて選べるよう、社内・社外の両方の経路を用意することが望ましいでしょう。なお、外部に委託しても、従業員の健康に配慮する企業としての責任がなくなるわけではない点には注意が必要です。

設置だけで終わらせず、利用しやすい状態をつくる

外部サービスを選定・運用する際には、次のような点を確認しておきましょう。

・対応する専門職(臨床心理士、産業カウンセラーなど)と相談できる領域
・電話、Web、対面などの相談方法
・利用できる曜日や時間帯
・匿名で相談できるかどうか
・守秘義務の範囲と、企業へ共有される情報の範囲
・医療機関情報の提供
・導入後の社内周知への支援
・個人を特定しない形での利用状況や傾向の報告
・社内担当者への連携フロー

こうした条件を確認したうえで、自社の従業員が実際に使いやすいサービスを選ぶことが、相談窓口を機能させるうえで重要なポイントとなります。

企業のメンタルヘルス対策に関するQ&A

最後に、企業のメンタルヘルス対策についてよくある質問にお答えします。

Q1.メンタルヘルス対策は企業の義務ですか?
メンタルヘルス対策のすべてが一律に法的義務となるわけではありません。ただし、労働者数50人以上の事業場にはストレスチェックの実施義務があり、2028年4月1日からは50人未満の事業場にも実施義務の対象が拡大されます。義務の有無にかかわらず、従業員の健康への配慮は企業に求められる基本的な姿勢といえます。

Q2.小規模企業でもメンタルヘルス対策は必要ですか?
従業員数にかかわらず、休職や離職が組織に与える影響は小さくありません。人数が少ない企業ほど、1人の不調が業務全体に影響しやすい面もあります。産業保健の専門人材を社内で確保しにくい場合は、産業保健総合支援センターや外部サービスの活用が選択肢になります。

Q3.社内相談窓口と外部相談窓口はどちらを設置すべきですか?
どちらか一方ではなく、相談内容や従業員の希望に応じて選べる体制が望ましいといえます。社内窓口は職場調整に、社外窓口は第三者としての相談受付に、といった形で役割分担を明確にしておきましょう。

Q4.相談窓口を設置しても利用されない場合はどうすればよいですか?
入社時や異動時、研修時などの機会に繰り返し周知し、守秘範囲や利用方法、会社への情報共有のルールを明示することが有効です。「相談しても不利益を受けない」と従業員に理解してもらうことが、利用促進の前提になります。

メンタルヘルス対策は従業員と企業を守る継続的な取り組み

メンタルヘルス対策は、不調者が出てから始めるものではなく、職場環境の改善、研修、早期相談、職場復帰支援までを一体として進める継続的な取り組みです。管理職や人事担当者だけに対応を集中させず、社内・社外の相談経路を用意し、従業員が安心して選べる状態をつくることが大切です。自社だけでの体制づくりが難しい場合は、外部相談窓口やカウンセリングサービスの導入もあわせて検討してみてください。

こちらもチェック!>>ティーペックの「こころのサポートシステム(R)」

<事務局より>
ティーペックでは、企業のメンタルヘルス対策をサポートする健康相談窓口、メンタルヘルスカウンセリングサービスを提供しております。健康相談窓口では、保健師や心理カウンセラーなどの経験豊富な専門家が、こころだけでなく身体の健康もケアすることで潜在的なメンタルヘルス不調者をサポートします。詳細はお気軽にお問い合わせください。

◆関連記事
・こころとからだの健康サポート(EAP外部相談窓口)
https://t-pec.jp/work-work/article/500

・【1,000人調査】働く人の7割がストレスを実感!年代別にみる職場の課題と企業の対策
https://t-pec.jp/work-work/article/550

・ストレスを抱える管理職の4割が離職・転職を検討!?現役管理職500名へ独自調査を実施
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出典
※1 厚生労働省『令和7(2025)年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況』
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r07-46-50_gaikyo.pdf

※2 厚生労働省「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」
https://www.mhlw.go.jp/content/001579077.pdf

※3 【1,000人調査】働く人の7割がストレスを実感!年代別にみる職場の課題と企業の対策
https://t-pec.jp/work-work/article/550

※4 ストレスを抱える管理職の4割が離職・転職を検討!?現役管理職500名へ独自調査を実施
https://t-pec.jp/work-work/article/529

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◆監修者プロフィール

監修者である大西良佳先生のプロフィール画像

●名前
大西良佳
●科目
産業医、公衆衛生、ペインマネジメント、麻酔科、漢方内科、美容皮膚科
●所属学会・資格
公認心理師
産業医
麻酔科専門医
ペインクリニック専門医
公衆衛生修士
温泉療法医
緩和ケア研修修了
ICLSプロバイダー
●メディア出演実績
テレビ朝日「林修のレッスン!今でしょ」
宝島社
東京スポーツ新聞
小学館
日刊ゲンダイ
ライトハウスメディア

※当記事は、2026年9月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
※本記事内で紹介されているサービスに関して、記事監修の医師は関与しておらず、またサービスの監修もしていません。

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