高年齢従業員の健康課題~心身の健康維持のために企業が重視すべき対策とは~
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こんにちは。企業の健康経営(R)を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
少子高齢化が進む中、労働人口の減少による人手不足は企業の大きな課題となります。また、従業員の平均年齢が上昇する中、高年齢従業員が元気に働き続けてくれることは企業の大きな力となるため、高年齢従業員にとって働きやすい環境を整えることは、企業が行うべき対策といえます。
そこで、高年齢従業員の現状や健康課題等を知って、高年齢従業員の心身の健康維持のために企業がどんな対策を重視すべきか、見ていきましょう。
《目次》
・増え続ける高齢者の労働人口
・加齢とともに起こる心身の健康課題
・企業の持続的成長のためにも、高年齢従業員にとって働きやすい環境が必要
・高年齢従業員を支えることは、自社の健康経営推進にもつながる
・企業として対策を検討するうえでのポイント
・ガイドラインを活用して、環境改善を図る
増え続ける高齢者の労働人口
加齢とともに起こる心身の健康課題
加齢とともに、私たちの体や心には、以下のようなさまざまな変化が起こります。
【体の主な変化】
〇体力や筋力が低下し、骨粗しょう症や転倒による骨折リスクも増えやすくなる。
〇視力や聴力が衰える。
〇病気に対する抵抗力や免疫力が弱くなり、糖尿病や高血圧、心疾患、がんなどの生活習慣病疾病のリスクが高くなる。
【心(精神面)の主な変化】
〇記憶力や判断力などが低下する。
〇退職や家族構成の変化などで人とのつながりが減り、孤独感や気分の落ち込みなどを感じやすくなる。
〇眠りが浅くなったり、夜中に何度も目が覚めたりするなど、睡眠の質が低下しやすくなる。
こうした変化を避けることはできませんが、その状態を放置してしまうと、高年齢従業員の労働災害の発生率が高くなったり、事故や健康被害につながったりしてしまう恐れがあります。
企業の持続的成長のためにも、高年齢従業員にとって働きやすい環境が必要
高年齢従業員にとって働きやすい、安全な環境を整えることは、企業の持続的な成長のためにも必要不可欠と言えます。その主な理由として、以下の点が挙げられます。
理由1:少子高齢化による労働力不足を補完
日本では少子高齢化が進み、若年層の労働力人口が減少しています。そのため、高齢者の就労が重要な労働力の補完となっており、企業は高年齢従業員の活躍を支える必要があります。
理由2:定年延長・再雇用制度の普及
政府の方針により、定年延長や再雇用制度が広がっています(例:70歳までの就業機会確保)。そのため、高齢者が長く働けるよう、職場環境や業務内容の見直しが求められています。
理由3:健康・安全への配慮が必要
加齢に伴い、体力や認知機能などの変化が生じるため、高年齢従業員の特性に配慮した環境(例:施設等のハード面の改善や働き方等のソフト面の改善)が必要です。
理由4:経験・知識の継承に貢献
高年齢従業員は、業務の豊富な経験や専門知識を持っており、若手への技術・ノウハウの継承に貢献できます。そのため、彼らが働き続けられる環境を整備することは、組織全体の生産性や品質向上につながり、ひいては企業の持続的成長にもなります。
高年齢従業員を支えることは、自社の健康経営推進にもつながる
【取り組み事例】
〇安全性を確保する職場改善(転倒防止、設備のバリアフリー化等)
〇柔軟な勤務制度の導入(短時間勤務、シフト調整等)
〇健康管理やメンタルヘルス支援の充実
〇スキル再教育やキャリア再設計の機会提供
こうした施策は、従業員の満足度や定着率を高めるだけでなく、企業のブランド価値や社会的信頼を向上させ、安定した人材活用の仕組みを築くことにもつながります。また、多様な世代が協働することで、イノベーションの創出等にもつながります。
さらに、「健康経営」の視点から見ても、高年齢従業員が心身ともに健康で働き続けられる環境を整えることは、企業にとって医療費や休業リスクの低減につながり、結果として労働力人口の増加や生産性の維持・向上を実現します。
健康経営優良法人2026の認定要件(大規模法人部門、中小規模法人部門)には、新たに「性差・年齢に配慮した職場づくり」の項目が入り、「高年齢従業員の健康や体力の状態に応じた取り組み」が評価項目として組み込まれました。認定項目に入るということは、国が「高年齢従業員の健康や体力の状態に応じた取り組み」を重要視しているということであり、積極的な取り組みが求められているといえます。
図1 健康経営優良法人2026(大規模法人部門)認定要件
【出典】 ACTION!健康経営(日本経済新聞社)「健康経営優良法人2026(大規模法人部門)認定要件」
https://kenko-keiei.jp/wp-content/themes/kenko_keiei_cms/files/250818_dai_ninteiyoken.pdf
企業として対策を検討するうえでのポイント
厚生労働省が公表している高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン「エイジフレンドリーガイドライン」では、高齢者でも安全に働き続けることができるよう、企業に必要な対策を講じることを求めています。
同ガイドラインでは、企業が重視すべき対策として、「職場環境の改善」や「高年齢労働者の健康や体力の状況の把握」「高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応」などを挙げています。
特に、「高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応」については、次の3点を掲げています。
(1) 個々の高年齢労働者の健康や体力の状況を踏まえた措置
脳・心臓疾患が起こる確率は加齢にしたがって徐々に増加するとされており、高年齢労働者については基礎疾患の罹患状況を踏まえ、労働時間の短縮や深夜業の回数の減少、作業の転換等の措置を講じる。
【考慮事項】
・業務の軽減等の就業上の措置を実施する場合は、高年齢労働者に状況を確認して、十分な話合いを通じて本人の了解が得られるよう努める。
(2) 高年齢労働者の状況に応じた業務の提供
健康や体力の状況は高齢になるほど個人差が拡大するとされており、個々の労働者の状況に応じ、安全と健康の点で適合する業務をマッチングさせるよう努める。
【考慮事項】
・疾病を抱えながら働き続けることを希望する高齢者の治療と仕事の両立を考慮する。
・ワークシェアリングで健康や体力の状況や働き方のニーズに対応することも考えられる。
(3) 心身両面にわたる健康保持増進措置
・「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」や「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づく取り組みに努める。
・集団と個々の高年齢労働者を対象として身体機能の維持向上に取り組むよう努める。
・以下の例を参考に、事業場の実情に応じた優先順位をつけて取り組む。
【対策の例】
・フレイルやロコモティブシンドロームの予防を意識した健康づくり活動を実施する。
・健康経営の観点や、コラボヘルスの観点から健康づくりに取り組む。
そして、具体的な取り組みとして、以下のようにまとめています。
図2 事業者に求められる事項
【出典】厚生労働省「エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001107783.pdf
このように、高年齢従業員の健康維持のためには、「治療と仕事の両立支援」や「メンタルヘルス対策」「健康維持と体調管理」などの対策が必須と言えます。「治療と仕事の両立支援」については、「労働施策総合推進法」の中で、「事業主に対し、職場における治療と就業の両立を促進するため必要な措置を講じる努力義務を課すとともに、当該措置の適切・有効な実施を図るための指針の根拠規定を整備する。」と定められており、事業主の責務が明記されました。施行期日は、令和8年4月1日となっています。
ガイドラインを活用して、環境改善を図る
高齢者が持つ豊富な経験や知識を活かしながら、彼らが安心して働き続けられる環境を整えることは、企業にとっても人材の多様性や組織力の向上につながります。また、高齢者の社会参加が促進されることで、孤立の防止や健康維持など、良い影響を及ぼします。
ガイドラインなどを参考にしながら職場の環境改善を進め、高年齢従業員が安全に働き続けることができる職場環境をつくることが求められています。
原稿・社会保険研究所Copyright
2026年4月に「治療と仕事の両立支援」が努力義務化!従業員の平均年齢上昇に伴うがん罹患リスク増大に対し、ティーペックが「本当に必要ながん治療と仕事の両立支援」の体制構築について解説>>
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<出典・参考文献>
・内閣府「令和7年版高齢社会白書」
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2025/zenbun/pdf/1s2s_01.pdf
・ACTION!健康経営(日本経済新聞社)
https://www.kenko-keiei.jp/
・厚生労働省「エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001107783.pdf
・厚生労働省「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律の概要(令和7年法律第63号、令和7年6月11日公布)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001502748.pdf
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※当記事は2025年11月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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