業績低迷、不調者続出…。負の連鎖を防ぐのは、やっぱりあの「技術」だった!
こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
今回は、心理カウンセラーでもあり、ティーペック研修講師で数多くの企業に対してコミュニケーション関連の研修を行う、船見敏子さん(株式会社ハピネスワーキング代表)に、相談しやすい職場づくりについて解説いただきました。相談のしやすさは、心理的安全性と生産性の高い職場づくりに大きく影響するとのことで、人事担当者の皆さまが思い描く理想の職場に、一歩近づくかもしれません。その具体策をお伝えします!ぜひご覧ください。(以下、船見さん執筆)
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<目次>
◆相談しにくい世の中になった!?
◆相談の効能は、問題解決だけじゃない!
◆相談しやすい職場づくりのキーワードは、傾聴
◆研修で相談の重要性と技術を学ぶ
「リモートワークが多く気軽に相談できない」、「若手が一人で仕事を抱え込んでいる」、「部署間の対話がない」……。コミュニケーションに関する問題がない職場はありませんが、コロナ禍を経て、最近は人事担当者のこのような悩みを耳にするようになりました。そこからは、対面する機会が減り、以前と比べて相談がしにくくなった職場の様子が見えてきます。
社員が相談しないことで仕事のクオリティが落ち、業績の低迷をもたらしているケースもあります。さらにはメンタルヘルス不調に陥る人や退職者が続出するといった事態に発展するなど、負の連鎖を招くことだってあるのです。
働き方が柔軟になってきた時代。今、「相談」を見直すことは、重要な課題と言えそうです。
相談しにくい世の中になった!?
仕事の悩みがあっても相談しない人は増えているようで、厚生労働省の調査結果を見ても、悩みを実際に相談した人の割合は、この5年で約15%減少しています※1。日本人は古来から、弱みや悩みを人に打ち明けることが恥であると考える傾向がありました。迷惑をかけると思い込み、相談を躊躇する人も少なくありません。欧米ではマッサージに行くかのごとく利用されているカウンセリングも、日本ではいまだネガティブなイメージが持たれています。
そんな傾向が、ここへ来て強くなっているようなのです。
働き方改革がスタートし、決められた時間の中で仕事をこなさなければいけなくなりました。人手不足で一人あたりの仕事量が増えました。それによって余裕がなくなっていることも要因でしょう。新型コロナウイルスの影響で対面で話す機会が減ってしまったことが、拍車をかけました。筆者も、「相談したほうがいいのでしょうが、できません」という悩みを、カウンセリングで多数、聞いています。
相談の効能は、問題解決だけじゃない!
報連相は仕事をスムーズにする基本。一人で仕事を抱え込まないためにも、相談を積極的にするのは大切なことです。実は、相談することにはさまざまな効能があります。
(1)悩みの核心がはっきりする
(2)もやもやから抜け出して前向きになる
(3)感情を整理できる
(4)メンタルダウンを防げる
(5)相手との信頼関係が築ける
ただ単に問題解決ができるだけでなく、いくつもの二次的効能があるのです。健康でイキイキした職場、生産性の高い職場を作るためにも、社員が積極的に相談することが欠かせません。
しかし、先述したように、世の中全体が相談しにくいムードになっています。また、報告、連絡と違い、相談は相手を巻き込む行為で、少しハードルが高いものです。では、どうすれば、このような状況下で相談しやすい職場をつくれるのでしょうか。
相談しやすい職場づくりのキーワードは、傾聴
相談しやすい職場をつくるには、まずは心理的安全性が保たれていることが欠かせません。心理的安全性とは、自分の意見や考えを安心して話せる状態であるということ。上司が話しかけるなオーラを出していたり、「そんなことで相談するなよ」などと見下したりするような言葉を口にするような行為が横行している状況は、心理的に「不安全」です。部下は安心して相談できなくなります。
上司―部下の関係だけにかかわらず、同僚同士や部署間でのやりとりにおいても、相談すると見下されたり拒否されたりするといった「不安全」な環境では、互いに相談しあって仕事のクオリティを高めあうこともできなくなります。
「不安全」な行動をなくし、心理的安全性を高めることが、相談しやすい職場をつくります。
心理的安全性を高めるのに必要な技術は、やはり「傾聴」です。ちゃんと話を聴いてもらえるという安心感があって初めて、人は自由に思いや考えを話せるようになるからです。
傾聴とは、ただ黙って話を聞くことではありません。自分とは異なる相手の価値観を理解し、相手が問題解決できるように、心の奥底に眠っている考えや思いを引き出す行為です。
傾聴の基礎知識と初歩的な技術を身につけることで、人の話を聴く態度そのものががらりと変わります。職場の皆がこの技術を磨くことで、互いに話を聴きあうようになり、相談しやすい職場へと変化していくはずです。悩みを抱え込む人やメンタルヘルス不調者の発生の予防につながります。それだけでなく、仕事の連携もスムーズになり、生産性が高まる効果も期待できます。
研修で相談の重要性と技術を学ぶ
心理的安全性、そして相談の重要性について、社員皆が知識を身につけ、同じ方向を向いてコミュニケーションを取っていくには、研修での学びが有益です。
管理職には、メンタルヘルスの「ラインケア研修」で、メンタルヘルスの基礎と同時に相談に乗ることの重要性を学んでもらうと良いでしょう。1on1面談を導入する企業も増え、管理職が傾聴スキルを磨く必要性が高まってきました。どのような行動がメンタルヘルスにとって「不安全」なのか、どのような「安全」な行動を取ればいいのかという知識とともに、傾聴スキルを体得することで、相手を安心させる聴き方の基礎が身につきます。1on1面談に苦手意識を持っている管理職も、自信を持って臨めるようになるでしょう。
「メンタルヘルスにおける『ラインケア』の重要性」を読む>>
一般社員には、メンタルヘルスの「セルフケア研修」で、相談することの重要性を学んでもらうと良いでしょう。相談することがメンタルヘルスやパフォーマンス向上にいかに重要かということを知れば、悩んだときに躊躇なく相談できるようになります。
私たちの働き方は、今後ますます柔軟になるでしょう。心理的安全性を高め、社員同士が意見や悩みを言い合える関係性をいかに保つかは、ますます重要な課題になっていきます。
いつの時代も、仕事は人と人とが協力しあい、力を発揮しあって成し遂げていくもの。そのためには相談というスキルを機能させることが大事です。社員皆で支えあうことの大切さを共有する。そんな「はじめの一歩」から、相談しやすい職場をつくってください。
【プロフィール】
船見敏子
株式会社ハピネスワーキング代表取締役。
公認心理師、1級キャリア・コンサルティング技能士。
雑誌記者を経て現職。組織のメンタルヘルス・コンサルティング、従業員カウンセリング、研修などを実施し、幸せに働く人、幸せな職場が増えるよう尽力している。著書に『仕事で悩まない人の相談力』、『言い返せない人の聴き方・伝え方』、『幸せなチームのリーダーがしていること』など。
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<出典>
※1 厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)の概況」
ストレスを実際に相談した人の有無「実際に相談した」の割合
・平成28年(85.0%)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h28-46-50_gaikyo.pdf
・令和4年(69.4%)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r04-46-50_gaikyo.pdf
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※当記事は、2024年5月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
