ストレスチェックの点数の評価基準とは?2つの計算方法や集団分析について解説
こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
今回は、「ストレスチェック」についてご紹介します。ストレスチェックで算出される点数は、高ストレス者や職場環境を数値化して把握するための指標です。具体的な数値に落とし込むことで、労働者が快適に働ける職場になります。
この記事では、ストレスチェックの点数を評価する方法や集団分析について解説します。ストレスチェックを行う際は、職場の改善方法とあわせて役立ててください。
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<目次>
◆ストレスチェックとは
◆ストレスチェックの3領域
◆ストレスチェックの点数を評価する2つの方法
◆ストレスチェック80項目と23項目との違い
◆ストレスチェックの集団分析
◆ストレスチェックを実施しない企業に対する罰則
◆高ストレス者を出さないためには
◆まとめ
ストレスチェックとは
ストレスチェックとは、一定規模の事業場で実施を義務付けられているストレスに関する検査です。2015年の労働安全衛生法の改正によって、労働者50人以上の事業場では定期的なストレスチェックが義務化されました。
一般的なストレスチェックには、57項目が使用されます。しかし、労働者のストレス判定から働きがいやハラスメントまで調査したり、集団分析を行ったりする際は80項目のストレスチェックがおすすめです。
ストレスチェックにおける3領域
ストレスチェックの項目には、以下の3つの領域があります。各領域の項目に加えて、満足度に関する調査(2項目)を足すことで57項目となります。
心身のストレス反応
仕事のストレスによる心理的な負担からくる心身の反応についての領域です。全部で29項目あります。
仕事でのストレスによって心身にどのような反応があったか、ネガティブな感情とポジティブな感情の測定や身体的な自覚症状の有無を確認し調査します。
仕事のストレス要因
続いて、労働者の心理的な負担に関する領域が17項目あります。職場環境や上司、同僚など、人間関係におけるストレス要因を探ることが目的です。
労働者が思う仕事の量や質、身体的負荷などの仕事に関する項目とあわせて、人間関係や環境などの心理的負担になっている要因について探る項目が用意されています。
周囲のサポート
周囲の同僚や上司、家族の存在の支援に関する調査を行うための領域は、9項目あります。どのようなサポートが得られているかを調べることが目的です。
普段の仕事上での人間関係に関する項目や、何かあった時の相談しやすさに関する項目があり、それぞれ上司、同僚、配偶者、家族・友人に関して尋ねます。
ストレスチェックの点数を評価する2つの方法
ストレスチェックの点数を評価する際には、ストレスチェックにおける3領域をそれぞれ計算します。評価の算出方法は2種類あるので、以下で解説します。
合計点数を使う方法
調査票を基に、3つの領域における合計点数を算出し、ストレスの度合いを測る方法です。ストレスチェックの項目は1~4段階評価になっており、基本的には点数が高いほどストレスが高いとされます。ただし、中には点数が低いほどストレスが高いと判断できる項目もあるため、注意が必要です。その場合は点数を逆転させて足し合わせていく必要があります。
この計算法によって高ストレス者とされる基準は、以下の通りです。
<「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を使用したときの高ストレス者の評価基準例>
・心身のストレス反応の合計点数*が77点以上(最高点は4×29=116点)であること
・仕事のストレス要因と周囲のサポートの合計点数が76点以上(最高点は4×17+4×9=104点)であり、かつ心身ストレス反応の合計点数が63点以上であること
*点数は、ストレスが高い方を4点、低い方を1点とする
素点換算表を使う方法
調査票の3つの領域ごとに計算した点数を、素点換算表により分けられている尺度ごとに5段階評価に換算し、その評価点の合計・平均を求める方法です。合計点数を使う方法とは逆で、評価点が低いほどストレスが高いと判断されます。
この計算法によって、高ストレス者とされる基準は、以下の通りです。
<「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を使用したときの高ストレス者の評価基準例>
・心身のストレス反応の評価点の合計*が12点以下(最低点は1×6=6点)であること
・仕事のストレス要因と周囲のサポートの評価点**の合計が26点以下(最低点は1×9+1×3=12点)であり、かつ心身のストレス反応の評価点の合計が17点以下であること
*心身のストレス反応の6尺度(活気・イライラ感・不安感・抑うつ感・疲労感・身体愁訴)について、素数換算表で5段階(ストレスの高い方が1点、低い方が5点)に換算したもの。
**仕事のストレス要因の9尺度(仕事の量・仕事の質・身体的負担度等)と、周囲のサポートの3尺度(上司からのサポート・同僚からのサポート等)の計12尺度について、素数換算表で5段階(ストレスの高い方が1点、低い方が5点)に換算したもの。
出典:厚生労働省『数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法(ストレスチェック制度実施マニュアルの解説)』より引用
ストレスチェック80項目と23項目との違い
ストレスチェックは、一般的には57項目が使われますが、80項目と23項目で行われる場合もあります。それぞれの違いについて解説します。
ストレスチェック80項目
ストレスチェック57項目版に、人事評価に関する項目などの23項目を加えた検査です。57項目では、労働者個人のストレスに関する調査が主であるのに対し、80項目では働きがいや人事評価、上司のマネジメント、ハラスメントなどに関するデータも取得できます。
得られる情報が多く、職場環境の改善に取り組む事業場にはおすすめですが、「回答に時間がかかる」「集計や分析が困難」という点には注意が必要です。
ストレスチェック80項目の特徴は?質問でわかることや57項目版との違いを解説>>
ストレスチェック23項目
一般的なストレスチェックの57項目版を簡略化したものです。80項目に追加された23項目とは異なります。
57項目や80項目の調査に比べると、回答に時間がかからず回答者への負担が少ないため、試験的に導入したい事業場などで利用されます。ただし、設問数が少なく、ストレスに関するデータを集めにくいため、80項目か57項目を利用する方がおすすめです。
ストレスチェックの集団分析
事業場全体のストレス状況を把握するためには、集団分析が必要です。
ここからは、集団分析についてメリットや注意点を解説します。
ストレスチェックの集団分析とは
ストレスチェックの集団分析とは、ストレスチェックの結果を事業場や部署などの集団ごとに集計して評価する方法です。事業場ごとのストレスの状況を把握し、ストレスによる心身の不調を防ぐことや職場環境の改善に役立てることが出来ます。
50人以上の労働者がいる事業場では、労働安全衛生法によりの集団分析の実施が努力義務となっています。
ストレスチェックの集団分析のメリット
ストレスチェックの集団分析を行うと、企業内で高ストレス者が多い部署の早期発見が可能です。労働者の不調の予防につなげられます。
また、集団分析によって得られる企業の強みや課題は、働きやすく生産性の高い事業場にするための対策や改善策を考える際の参考にもなります。
ストレスチェックの集団分析を行う際の注意点
ストレスチェックの回答者が10人未満の場合、個人が特定されてしまうおそれがあるため、企業への結果の開示は回答者全員の同意が必要です。そのため、ストレスチェックの集団分析を行う場合は、原則10人以上のデータを使って行いましょう。
また、ストレスチェックの結果は、5年の保存が義務付けられています。
ストレスチェックの集団分析とは?評価方法とメリットを解説 >>
ストレスチェックを実施しない企業に対する罰則
労働安全衛生法では、ストレスチェック実施後の報告を行わなかった場合の罰則金は最大50万円と定められています。
労働者が50人未満の事業場では、努力義務となっているものの報告義務がないため罰則はありません。
高ストレス者を出さないためには
どのような事業場でも、高ストレス者をできるだけ出さないことが課題です。以下では、高ストレス者を出さないためにできる取り組みについて具体例を紹介します。
高ストレス者が多い部署・事業場の改善に取り組む
ストレスチェックの集団分析結果をもとに、何がストレス要因となっているのか確認して改善に取り組むことが重要です。
高ストレス者が多い部署や事業場に所属する労働者に対しヒアリングを行い、ストレス要因を把握することがおすすめですが、誰が高ストレス者なのか特定されないように配慮が必要です。
経営層・管理者が率先して職場改善に取り組む
経営層や管理者が率先して職場改善に取り組むトップダウン型では、大きな取り組みを推進できます。決定権を持つ立場から改善策を講じることで、スピーディーな対応が可能です。
ただし、現場の労働者との距離があることで、適切な対策を実施できない可能性があります。必ず、現場の実情を把握してから対応することが重要です。
また、管理監督者に対して結果数値の意味の理解を促すための研修も必要となります。
労働者が参加して職場改善に取り組む
性別や年齢、役職などに関わらず、できる限り事業場内の労働者全員が参加して職場改善に取り組むことも、高ストレス者を減らすことにつながります。
現場をよく知る労働者の意見を反映して改善策を計画・実施できる点はメリットです。また、事業場内のチームワーク向上も期待できるため、対人的なストレスの緩和にもつながります。
まとめ
ストレスチェックは、集団分析を行うことで事業場内の身体的・精神的なストレスの状況を把握できます。ただし、集団分析は目的ではなく手段であるため、分析結果から課題を見出し、改善することが重要です。把握した課題への対策を取る際は、専門的なノウハウを持った外部機関を利用するのがおすすめです。
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また、専任スタッフが運用をサポートするため、ストレスチェックのスケジューリングから期日管理まで、初めて実施する場合でも適切に実施できます。
ストレスチェックの結果をしっかりと活用できる、充実した職場環境改善サポートサービスをご提供していますので、ぜひお問い合わせください。
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参考
・厚生労働省「ストレスチェック制度実施マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf
・厚生労働省『数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法(ストレスチェック制度実施マニュアルの解説)』
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150803-1.pdf
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※当記事は2022年10月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。