ストレスチェックの実施者と実施従事者とは?要件・役割について総復習!
こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
2015年にストレスチェック制度がスタートし、一定規模以上の事業者にはストレスチェックが義務化されています。ストレスチェックを実施するために、事業者は「実施者」と「実施事務従事者」を選定しなければなりません。
この実施者と実施事務従事者には法令で定められた要件があります。本記事では、ストレスチェックにおける実施者と実施事務従事者の要件や業務内容について詳しく解説します。
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<目次>
1.ストレスチェック制度の4つのキーパーソン
2.ストレスチェックの「実施者」とは
2.1実施者の要件
2.2実施者の役割
3.ストレスチェックの「実施事務従事者」とは
3.1実施事務従事者の要件
3.2実施事務従事者の役割
4.守秘義務違反で罰則も 実施事務従事者の注意点
まとめ
ストレスチェック制度の4つのキーパーソン
ストレスチェックの実施には、次の4つの役割をそれぞれ担うキーパーソンの存在が必要不可欠です。
(1)事業者
(2)実務担当者
(3)実施者
(4)実施事務従事者
事業者は、ストレスチェック制度の実施責任者であり、実施における方針を決定します。実務担当者は人事・労務管理担当者やメンタルヘルス推進担当者などが担当し、実施計画の策定や外部機関との連絡調整といった業務を行います。
実施者は、ストレスチェックを行う産業医や保健師、厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師など(※)が担当する役割です。実施事務従事者は、実施者の指示を受けて事務作業を行います。
※3年以上労働者の健康管理等の業務に従事した経験のある看護師・精神保健福祉士は、研修を受講しなくても実施者になることが可能です。
このうち、実施者と実施事務従事者には守秘義務があり、違反をすると罰則が科せられるため注意が必要です。法令を遵守したストレスチェックを実施するために、実施者と実施事務従事者の要件や選定するうえでの注意点などを、実務担当者はよく理解しておく必要があります。
ストレスチェックの「実施者」とは
実施者の要件
実施者の要件は、労働安全衛生規則(※)にて、「医師」「保健師」「検査を行うために必要な知識についての研修であって厚生労働大臣が定めるものを修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理師」と記されています。
この要件に当てはまらない者は実施者になれないため、事業者は実施者候補が要件を満たす資格を有しているかを確認する必要があります。
(※)e-GOV 法令検索「労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032
実施者の役割
ストレスチェック実施者は、主に以下の業務を行います。
<ストレスチェック実施前>
1.事業場におけるストレスチェックの調査票の選定
2.調査票に基づくストレス程度の評価方法の決定
3.高ストレス者を選定する基準の決定に関する意見提起
<ストレスチェック後>
1.ストレスチェック実施結果の確認と評価、および医師による面接指導が必要かを判定
2.高ストレス者に対する面接指導結果の確認と、事後措置に関する意見提起
<実施者自らまたは実施事務従事者への指示で行う業務>
1.ストレスチェック調査票の回収や集計プログラムへの入力および集計
2.ストレスチェックを受けた労働者への結果の通知
3.未受検労働者への受検勧奨
4.ストレスチェック結果の記録作成
5.面接指導対象者への申し出の勧奨
6.集団分析を行う場合には、集団分析の実施と、事業者への集団分析結果の提供
7.面接指導対象者かつ面接指導の申し出を行わない労働者に対する、支援機関の案内や紹介
出典:神奈川労働局「ストレスチェック制度 実施者・実施事務従事者ほか担当者の役割分担」
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/var/rev0/0119/0633/201662784514.pdf
ストレスチェックの「実施事務従事者」とは
実施事務従事者の要件
実施事務従事者は、「解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事してはならない」とされています(労働安全衛生規則第52条の10 2項より)(※)。したがって、人事権のある役員等以外から選任することになります。
(※)e-GOV 法令検索「労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032
実施事務従事者の役割
実施事務従事者は、実施者からの指示で以下の業務を行います。
1.ストレスチェック調査票の回収(通知事務を除く)、記入・入力内容の確認、集計プログラムへのデータ入力と集計、評価点数の算出など、ストレスチェックの結果を出力するまでの労働者の健康情報を取り扱う事務作業
2.評価基準に基づく評価結果の出力、高ストレス者の確認・選定
3.ストレスチェック結果の封入など、労働者に結果を通知するまでの労働者の健康情報を取り扱う事務作業
4.ストレスチェック結果を労働者に通知するための事務作業
5.未受検労働者への受検勧奨
6.ストレスチェック結果の記録作成
7.面接指導対象者への申出の勧奨
8.集団分析をおこなう場合は、分析に必要な作業(労働者が特定できない状態のデータを取扱う作業は除く)と、集団分析結果の出力および集団分析結果の事業者への提供
出典:神奈川労働局「ストレスチェック制度 実施者・実施事務従事者ほか担当者の役割分担」
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/var/rev0/0119/0633/201662784514.pdf
守秘義務違反で罰則も 実施事務従事者の注意点
労働者の個人情報を取り扱うストレスチェックの実施者および実施事務事業者には、守秘義務があります。万が一守秘義務を違反した場合、「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されることがあります。
ストレスチェックの個人結果については、適切に保管されるよう、セキュリティの確保など必要な措置を講じることが事業者に義務づけられています。実施事務従事者は、他者に情報が渡らないよう厳重に管理することも重要な業務です。
法令を遵守し、かつ情報漏えいなどの重大なミスを防ぐためにも、ストレスチェックの実施者および実施事務従事者の選定、ならびに選定後の業務内容の事前確認は確実に行うようにしましょう。
法令に則したストレスチェック実施体制の構築で円滑な運用を
従業員のメンタルヘルス不調は、労働生産性の低下や休職・離職にもつながるため軽視できないものです。従業員のストレスの程度を正しく把握し職場改善につなげるためにも、ストレスチェックの実施者や実施事務従事者と適切にコミュニケーションを取り、調整を行う実務担当者がストレスチェック制度についてよく理解しておく必要があります。
ストレスチェック実施の義務がある企業の人事担当者は、従業員の健康確保、および職場環境の改善のためにも、円滑なストレスチェックの運用を目指して実施体制を整えましょう。
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参考
・厚生労働省「ストレスチェック制度導入ガイド」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/160331-1.pdf
・厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf
・神奈川労働局「ストレスチェック制度 実施者・実施事務従事者ほか担当者の役割分担」
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/var/rev0/0119/0633/201662784514.pdf
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監修者プロフィール
郡司 果林
■ROLE人事パートナーズ社会保険労務士法人 代表
■特定社会保険労務士、第1種衛生管理者
■大学卒業後、SEとしてシステム開発に従事。その後IT企業の人事担当として10年余り、社内の規程整備、衛生委員会の立ち上げ、安全衛生管理体制の構築、メンタルヘルスケア対応等に従事
■勤怠管理や給与計算内製化のシステム導入を行ったことにより、給与計算事務にかかるコスト1/5削減を達成。
■社会保険労務士事務所を開設後は、労働基準監督署相談員等を経て、IT業界の労務管理支援や、安全衛生管理体制構築支援、産業医や衛生管理者向けの研修等を行っている。
■主著
書籍「ITエンジニアの労務管理」(日本法令)
DVD「クラウド勤怠管理システム導入提案の仕方とコンサルの実務」(日本法令)
その他雑誌、Web媒体など執筆多数
※当記事は2022年8月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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