メンタルヘルス・ハラスメント
メンタルヘルス 2026/10/19

企業のメンタルヘルス対策は「実施」から「活用」の時代へ! 令和7年「労働安全衛生調査」の結果から見る次の一手

企業のメンタルヘルス対策は「実施」から「活用」の時代へ! 令和7年「労働安全衛生調査」の結果から見る次の一手

こんにちは。企業の健康経営(R)を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

厚生労働省は8月7日、令和7(2025)年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況を発表しました。この調査は年1回実施され、事業所におけるメンタルヘルス対策を含む安全衛生管理や労働災害防止活動の実施状況と、働く労働者の不安やストレス等の実態について調べたものです。

過去1年間(令和6年11月1日~令和7年10月31日)において、事業所の63.0%がメンタルヘルス対策を行っていました。特に労働者50人以上の事業所では93.7%の実施率となり、日本のメンタルヘルス対策は一定水準で定着しているといえます。
しかし、メンタルヘルス不調によって連続1か月以上休業または退職した労働者は13.5%でした。これは過去5年間で微動しているもののほぼ横ばいであり、昨年度と比較すると0.7%増加しています。

事業者側の対策は進んでいる一方、肝心の休職者・退職者は減っていないという現実。
そのはざまにある問題点と、休職者・退職者を減少傾向に動かすために有効な対策を、過去5年間のデータ分析と将来の施策を見据えて考えていきます。

<目次>
1 事業所のメンタルヘルス対策は一定基準で定着
2 一方で休職者・退職者は微増している
3 要因の一つとして考えられるのは「ストレス」の変化
4 休職者・退職者を減らすカギは、ストレスチェックの活用を見直すこと
5 ストレスチェック制度は2028年義務化|今から意識できること

1 事業所のメンタルヘルス対策は一定基準で定着

日本の事業所におけるメンタルヘルス対策の実施率は63.0%。4年前に60%を超えて以来、定着しています。

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合(2021年~25年)

【出典】厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要」事業所調査(2021年~25年)

事業所規模別にみると、労働者50人以上では93.7%、30~49人では72.0%。過去5年間では10~29人の小規模事業所の変化が大きく、49.6%から現在54.6%に上がりました。

その中身はどんなことが行われているのか。メンタルヘルス対策の取り組み状況の上位5位を紹介しましょう。
メインとなるのは、「ストレスチェックの実施」です。厚生労働省により2015年にストレスチェック制度が導入されて以来定着しています。2028年4月1日からは、50人未満の事業所を含む全ての事業所で義務化されます。(第4章以降で詳しく紹介します)

<メンタルヘルス対策の取り組み内容(上位5つ)>
・ストレスチェックの実施 64.0%
・職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック結果の集団(部、課など)ごとの分析を含む) 52.8%
・メンタルヘルス不調の労働者に対する必要な配慮の実施 52.5%
・メンタルヘルス対策に関する事業所内での相談体制の整備 48.3%
・メンタルヘルス対策の実務を行う担当者の選任 35.1%

【出典】厚生労働省「令和7年労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要」事業所調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r07-46-50_gaikyo.pdf

2 一方で休職者・退職者は微増している

では、事業所で働く労働者の状況はどうでしょう。

メンタルに不調をきたし、連続1か月以上の休業、または退職した労働者がいた事業者の割合は13.5%でした。5年前の10.1%からアップし、直近4年間はほぼ横ばいです。
内訳としては、休業者が10.8%、退職者が6.5%。労働者の割合でみると、休業者は0.6%、退職者は0.2%となりました(いずれも複数回答)。

事業所側の対策は定着したものの、効果として減っていない、というのが現状の結果です。

過去1年間にメンタル不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職者がいた事業所割合及び労働者割合(2021年~25年)

【出典】厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要」事業所調査(2021年~25年)

3 要因の一つとして考えられるのは「ストレス」の変化

同調査では、個人調査として、仕事や職業生活に関するストレスの状況についてのデータも示されています。その変化に、休業者・退職者が横ばいである要因を見ることができます。
労働者の「強い不安、悩み、ストレスと感じる事項がある」と答えた人は、67.5%にのぼりました。コロナ禍だった2022年、2023年と比べると減ったものの、約3人に2人が強いストレスを抱えていることになります。

仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスの有無の割合(2021年~25年)

【出典】厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要」個人調査(2021年~25年)

では、具体的にどんなストレスを抱えているのでしょうか。
上位3つのストレスを見てみると、毎年挙がるのは「仕事の量」「仕事の質」「仕事の失敗・責任」です。背景には、慢性的な人手不足とそれに伴う業務負荷の増大がうかがえます。「仕事の失敗・責任」は、リスクを恐れる若い世代の意識が表れているといっていいでしょう。

そして注目したいのが、本年度2025年に2位へと浮上した「対人関係」です。セクハラ、パワハラを含む職場の人間関係のストレスを強く感じている割合が増えていることがわかり、それは「対人関係」の5年間の増加率を見ても顕著です。

仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスの内容上位3位(2021年~25年)と、ストレスの内容を「対人関係」と回答した労働者の推移(2021年~25年)

【出典】厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要」個人調査(2021年~25年)

事業所側のハラスメント対策が進むと同時に、労働者側のハラスメント意識が高まり、ひと昔前は「このくらい…」と流していた不快感を、はっきりと自覚、問題視するようになっています。さらに働き方の多様化、特にリモートワークが拡大したことで、コミュニケーションの手段や密度が著しく変化していることも影響しているでしょう。
「業務がきつい」に加えて、「業務も人間関係もきつい」に変わりつつあります。

4 休職者・退職者を減らすカギは、ストレスチェックの「活用」を見直すこと

対策はしている、でも休職者・退職者は減らない現実…その改善策のヒントが、同「労働安全衛生調査」の中の「ストレスチェック結果の活用状況」に見てとれます。

1で述べた通り、ストレスチェックは、メンタルヘルス対策の主要な取り組みとして64.0%で実施されています。個人の結果は本人にしか開示されませんが、部や課ごとの「集団分析」を集計することもできます。
ストレスチェックを実施した事業所のうち、74.9%が集団分析を実施し、そのうち78.1%がその結果を活用しています。

その内訳の上位を見てみると、4年前(2021年)から取り組み率が下がっている項目(太字)が多いことがわかります。昨年度との比較で率が増えている項目は多いですが、それでも大半の項目で4年前(2021年)の取り組み率には及びません。

ストレスチェックの集団分析の結果を、事業所としてどう活用するか――。活用率の向上と、それぞれの事業所に合った活用の発展を探ることで、組織の健康増進を図っていきたいものです。

ストレスチェック結果の集団ごとの分析結果の活用の有無及び活用内容(2021年~25年)

【出典】厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要」事業所調査(2021年~25年)

5 ストレスチェック制度は2028年義務化|今から意識できること

2028年4月1日からは、労働者数50人未満の事業所を含む全ての事業所でストレスチェックの実施が義務化されます。
ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止を目的とするとともに、個人が特定されないように、個人結果を集団(事業場、職場等の単位)ごとに集計・分析し、職場環境の改善に活かすものです。
労働者のプライバシー保護の観点から、集計・分析の単位が10人を下回る場合には、原則として集団分析を実施してはいけないなど、一定の制約はありますが、義務化されているから「実施」するだけでは、大変もったいない仕組みです。
3で見てきたとおり、職場では約3人に2人が強いストレスを抱えており、その要因は「仕事の量」「仕事の質」「仕事の失敗・責任」、そして近年じわじわと増えている「対人関係」など、多様かつ変化が見て取れます。

労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止し、職場環境を改善していくためにも、ストレスチェックを「実施」するだけでなく「活用」していくことが、全ての事業所に求められているのではないでしょうか。

原稿・社会保険研究所Copyright


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<出典>
・厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要」事業所調査(2021年~25年)
(2025年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r07-46-50_gaikyo.pdf
(2024年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r06-46-50_gaikyo.pdf
(2023年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r05-46-50_gaikyo.pdf
(2022年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r04-46-50_gaikyo.pdf
(2021年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r03-46-50_gaikyo.pdf

・厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要」個人調査(2021年~25年)
(2025年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r07-46-50_kekka-gaiyo02.pdf
(2024年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r06-46-50_kekka-gaiyo02.pdf
(2023年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r05-46-50_kekka-gaiyo02.pdf
(2022年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r04-46-50_kekka-gaiyo02.pdf
(2021年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r03-46-50_kekka-gaiyo02.pdf
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※当記事は2026年9月時点で作成したものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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