メンタルヘルス・ハラスメント
メンタルヘルス 2025/10/16

新しい環境でストレス増加…新入社員・異動者に必要なケアとは

新しい環境でストレス増加…新入社員・異動者に必要なケアとは

こんにちは。企業の健康経営(R)を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

就職や異動、単身赴任など、新しい環境での勤務はストレスや不安を感じやすい状況にあります。新しい環境に適応できず、最悪の場合、心身の不調による休職や、離職・転職につながってしまうケースも多く存在しています。

今回は企業や組織としてどのようなケアや対策を講じるべきかについて、「特定社会保険労務士」と「公認心理師」の国家資格を有し、多くの企業でその職場の実態に応じた産業保健体制立ち上げやメンタルヘルス対応の支援、またティーペック外部相談サービス「人事・労務ホットライン」の相談員でもある舘野 聡子さんに解説いただきました。(以下、舘野さん執筆)

≪目次≫
1.職場環境の変化はストレス要因のひとつである
2.新しい環境でストレス要因がもたらす問題
3.新しい環境に置かれる労働者への支援
4.最後に


働く人は、日々様々な環境の変化にさらされています。
小さいところでは職場のレイアウトの変更、担当替え、大きなところでいうと勤務先の異動、転職などがあげられるでしょう。近年では、以前よりも転職のハードルがさがりつつありますし、通年採用などの採用側の変化もあり、転職という大きな職場環境の変化を経験することも珍しくなくなりました。
一方では、その変化に対応できない、対応しようと頑張っているが、うまく適応できないという人も当然ながら出てきます。新入社員がストレス状態で体調を崩す、休職・退職するということも珍しくないのではないでしょうか。

本稿では、新たな職場環境となった新入社員や異動になった人に対して、元気で働き続けるために職場そして労働者本人が注意をしなければならないポイントを述べていきたいと思います。

1.職場環境の変化はストレス要因のひとつである

異動・転職などで、これまで慣れ親しんだ職場や環境から新たな職場や環境に変更することは、多かれ少なかれ労働者自身にストレスを与えます。

■物理的なストレス:住居の変更、通勤経路、職場のレイアウトや設備などが変わることで、不便を感じます。

■組織の文化・ルールに適応するストレス:それぞれの職場には、その職場独自のルールが存在することがあります。その文化に馴染めるか、知らないためにルールを逸脱しないか、これらがストレスとして感じることが考えられます。

■人間関係に関するストレス:上司・同僚などと一から人間関係を構築しなければなりません。新たな職場に馴染めるのかどうか、を不安に感じる人も多いことでしょう。

■新たな役割に関するストレス:新しい仕事や責任が課されることで、それを達成できるのだろうか、という不安やプレッシャーを感じます。

■サポートを受けられる関係の喪失:家族や友人と離れて一人になる場合には、安心できる居場所から切り離されたことにより孤独を感じやすくなります。

以上のように、職場環境が変化することにより生じるストレスは、様々なものが考えられます。また、どれか一つだけを単体で感じるというよりも、複数のストレスを同時に抱えることになる状況のほうが一般的ではないでしょうか。(例:新しい上司の下で担当したことのない仕事をする、知り合いが一人もいない地域に転勤になるなど)

ストレスが重層的になると、一度に解決することが難しくなり、ストレスにさらされ続ける状況が生まれてきます。

2.新しい環境でストレス要因がもたらす問題

新しい環境でストレス要因がもたらす問題

ストレス要因は、ストレス反応からメンタルヘルス不調・ストレス関連疾患を生じさせます。職場環境の変化によるストレスはどんな人にも生じることですが、それがメンタルヘルス不調などに至るかどうかは、人によってちがってきます。

職場のストレスに関する研究をみてみると、職場のストレスが生じてもストレス反応やメンタルヘルス不調につながらないようにするために、周囲の支援(上司・同僚・家族など)の効果があることが示されました。(※NIOSH職業性ストレスモデル)
新しい環境でストレスにさらされると、困ったことや辛いことを相談できる上司や同僚、仕事の愚痴を話せる家族や友人などの存在が重要になってきます。しかし新しい環境で、これまでであれば受けられていた支援から物理的に切り離されてしまい、ストレスに対する周囲のケアを受けられなくなることが問題だと言えます。

さらに、新しい環境では仕事上のプレッシャーもこれまで以上に感じることでしょう。これまでの実績を買われて新しい環境で仕事を任された人が、思うようにいかないケースなどは、その人の能力というよりも、新たな環境のストレスに上手に対処できず本来の力が発揮できなかった、とみることができるのではないでしょうか。

3.新しい環境に置かれる労働者への支援

新しい環境に置かれる労働者への支援

日本では、転勤や異動について、会社に大きな裁量が与えられており、総合職の正社員であれば辞令ひとつで世界中に転勤するという働き方が一般的でした。定期的に異動などで新しい環境に身を置くことは労働者として当たり前のことであり、それをできないとは言えない状況でした。

しかし近年では、会社の意向のみに基づく異動や転勤を拒否する、それをきっかけに退職する労働者も少なくないと聞こえてきます。せっかく採用した優秀な社員を失わないためにも、「そんなのは会社員なら当たり前」でフォローしないのではなく、できるだけの支援やケアを行うことで、能力を発揮してもらう方向に進めるべきだと考えます。
支援内容として、組織、上司・同僚の立場としてできる支援、労働者自分自身でできるセルフケアなどを以下にまとめました。

1)組織としてできる支援

・新入社員や、異動をする人に対して、オリエンテーションや業務に関する情報などを共有し、早期に業務のことを理解できるようにする。

・この組織でどんな成果を上げてもらいたいのか、何に期待しているのかが不明確にならないように、人事部等から説明を行う。

・新入社員に対しては、メンター制などを導入し日常的に相談ができる関係づくりを支援する。

・部署横断的な交流イベントなどを企画し、孤立しないように配慮する。

・メンタルヘルス相談窓口などを異動のタイミングで改めて周知し、相談しやすい環境を整える。

・新入社員や異動・転勤をした人はストレスにさらされている状態と考え、全員に定期的に面談を実施するなど、メンタルヘルス不調のアセスメントと早期発見・早期対応を実行する。

・組織としてラインケアやセルフケアの重要性を伝える研修を実施し、ストレスがあっても乗り越えられるよう、組織内で支援しあうことで安心して働き続けられる職場環境を作っていく。

2)上司としてできる支援

・どんなことでも相談できる存在、困ったときに相談に乗って解決策を一緒に考えてくれる存在となる。逆に、知らないことを批判したり、ハラスメント言動をしたりすると、相談されないまま、ストレス状態は改善されない。

・その職場で独り立ちできるまで一定期間様子を見るスタンスでいることを意識し、業務量や進捗を把握しながら、アドバイスを行っていく。

・職場で早く馴染めるように、お互いを知る機会を作る。

・職場で孤立していないか、困ったことがないかなど、状況を確認しながら、定期的な面談の機会を作る。

・困っている様子が見られた場合には、迅速に問題解決のために動く。

3)同僚としてできる支援

・知り合いが誰もいない環境では、他者の支援的な声掛けが安心を与えることを理解した上で、積極的に声掛けをする。

・その場で働いているからこそ把握している情報を積極的に提供し、不安を感じないように支援する。

・困っている状況を放置せず、一緒に問題解決にあたる。

4)労働者自分自身でできるケアと、それを周知・実践してもらうために企業ができる支援

・ストレスについて理解し、自分のストレスの状況をモニタリングする。睡眠や食事、生活のリズムなどを崩さないように気を付け、自分なりのリフレッシュ法を試してみることができるよう、企業は教育研修を実施する。

・自分でケアしても回復できない程度に辛い場合には、迷わず社内の専門家、社外EAPなど客観的に話を聴いてアドバイスをもらえる場に相談する。企業はそのような仕組みを整える。

・わからないことは早めに相談・質問し、一人で抱えないようにする。企業は早めに相談できる環境を作り、それをサポートする。

・これまでの新しい環境に入っていった経験(進学や就職・引っ越しなど)とそれを乗り越えてきた経験から、当時はどうやって乗り越えてきたかを振り返り、自分なりのやり方を考えてみる。企業はそのような経験から乗り越え方を導き出せるようサポートする。

毎年のストレスチェック等に加えて、上記のような取り組みや意識づけを行っていくことをご検討ください。

4.最後に

新しい環境下で生じるストレスと、ケアについて述べてきましたが、今後職場の責任としてのケアの重要性が高まることが考えられます。
新たな人材をお迎えする、異動先でこれまで通りに能力を発揮してもらう、ということを本人任せ、現場任せではうまくいかない可能性があることを踏まえて、しっかり対策をとっていきましょう。

執筆者プロフィール

執筆者である舘野聡子さんのプロフィール画像

舘野 聡子
株式会社イソシア 代表取締役

「特定社会保険労務士」と「公認心理師」の国家資格を有し、株式会社イソシアにて代表取締役を務める。多くの企業で、その職場の実態に応じた産業保健体制立ち上げやメンタルヘルス対応を支援する。
T-PEC外部相談サービス「人事・労務ホットライン」の相談員も務める。


※当記事は、2025年10月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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