健康経営銘柄2025、健康経営優良法人2025はどう変わる?~健康経営の進捗と今後の方向性~
こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
本記事では、2024年3月に行われた「第11回 健康投資ワーキンググループ※」の資料をもとに、健康経営優良法人2024(2023年度)の回答・申請状況や、次年度(2024年度)の「健康経営度調査」の変更案についてお伝えします。
※健康投資ワーキンググループとは、健康投資の促進等について専門的な検討を行うために経済産業省によって設置された組織です。健康経営度調査や顕彰制度といった健康投資の促進等について議論が行われています。
貴社での健康経営の施策・取り組みの検討にお役立ていただける記事『健康経営の価値を向上させるための本質理解』を読む>>
≪目次≫
■「健康経営銘柄2024」と「健康経営優良法人2024」が発表
■前年度より大幅に増加した「健康経営優良法人2024」
■健康経営施策の今後の展開
(1)健康経営の可視化と質の向上
■可視化のために、デジタル技術が活用できないか?
(2)新たなマーケットの創出
■健康経営企業が支援サービスを選択できる仕組みを用意
■新たなマーケットの創出_健康経営の国際展開のため、海外従業員への対応を考える
(3)健康経営の社会への浸透・定着
■小規模法人への対応 広報強化と認定要件・申請書内容の修正を議論
■非正社員等への対応 非正社員等を含めて実施している企業の加点を検討
■健康経営の社会への浸透 調査票および回答方法の負担軽減を検討
「健康経営銘柄2024」と「健康経営優良法人2024」が発表
2024年3月11日、経済産業省と東京証券取引所と共同で「健康経営銘柄2024」と、日本健康会議による「健康経営優良法人2024」が発表されました。
第10回となる「健康経営銘柄2024」には、27業種から53社が選定されました(※1)。選定は、令和5年度健康経営度調査の回答結果を基に、健康経営優良法人(大規模法人部門)申請法人の上位500位以内(ホワイト500)の上場企業から、1業種1社を基本として行われ、ROE(自己資本利益率)、前年度回答状況、社外への情報開示の状況についても評価されています。
「健康経営銘柄」は、健康経営優良法人(大規模法人部門)の上位500社の中から、特に優れた上場企業が選ばれるため、従業員を大切にしている企業というイメージアップになり、企業価値向上につながります。
【出典】
※1 経済産業省『「健康経営銘柄2024」に53社を選定しました!』
https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240311003/20240311003.html
前年度より大幅に増加した「健康経営優良法人2024」
「健康経営優良法人2024」には、大規模法人部門で2,988法人(上位500法人には「ホワイト500」の冠を付加)が、中小規模法人部門で1万6,733法人が認定されました(上位500法人には「ブライト500」の冠を付加)(※2、※3)。
令和4年度の「健康経営優良法人2023」認定数(大規模法人部門:2,676法人、中小規模法人部門:1万4,012法人)に対し、両部門ともに増加が見られました。認定数は毎年度増えていることから、健康経営に対する関心がいっそう高まっていることが分かります。
図表2 健康経営度調査回答数、健康経営優良法人(大規模法人部門)認定状況の推移
図表3 健康経営優良法人(中小規模法人部門)申請・認定状況の推移
【出典】
※2 経済産業省「健康経営優良法人2024」認定法人が決定しました!
https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240311004/20240311004.html
※3 経済産業省「健康・医療新産業協議会第11回健康投資WG」事務局説明資料P3、P14
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/011_02_00.pdf
健康経営施策の今後の展開
2024年3月15日に「健康・医療新産業協議会第11回健康投資ワーキンググループ(以下、「WG」という)*」が開催され、健康経営施策の今年度の進捗と、今後の方向性について議論が行われました。
WG事務局の説明資料を基に、健康経営が目指す姿や主なポイントについて、要点をご紹介します。
*健康投資ワーキンググループとは、健康投資の促進などについて有識者が専門的な検討を行うために経済産業省が設置した組織です。健康経営調査、顕彰制度など、健康投資を促進するための議論が行われます。
WGで議論された健康経営の目指すべき姿として、以下の3点が挙げられています。
(1)健康経営の可視化と質の向上
(2)新たなマーケットの創出
(3)健康経営の社会への浸透・定着
図表4 健康経営の目指すべき姿
【出典】
※4 経済産業省「健康・医療新産業協議会第11回健康投資WG」事務局説明資料P21
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/011_02_00.pdf
(1)健康経営の可視化と質の向上
可視化のために、デジタル技術が活用できないか?
健康経営の可視化のために、デジタル技術の活用の可能性が議論されました。
先進的な企業では、従業員に対してPHR(Personal Health Record)を活用した健康増進の取り組みを行っています。しかし、事業者ヒアリングを実施したところ、積極的な効果検証ができている企業は少数であることが分かりました。また、個人情報の提供に関するルール設計もまだできていません。けれども、これからの企業経営において、従業員一人一人の健康状態を可視化し、ヘルスリテラシーの向上などを通じて人的資本の価値を高めていくことが重要です。
そこで、次年度は、「健康経営度調査」において、健診情報等の電子閲覧環境整備を問うQ44(従業員のヘルスリテラシー向上のために、健康情報等を電子記録として活用するための取り組みを行っていますか)を拡充し、PHRを実際に活用するための具体的な取り組み内容についても問うこととしてはどうか、という案が出ています。
図表5 電子閲覧環境整備を問うQ44
【出典】
※5 経済産業省「健康・医療新産業協議会第11回健康投資WG」事務局説明資料P24
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/011_02_00.pdf
(2)新たなマーケットの創出
健康経営企業が支援サービスを選択できる仕組みを用意
図表6 仕組みのイメージ
【出典】
※6 経済産業省「健康・医療新産業協議会第11回健康投資WG」事務局説明資料P28
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/011_02_00.pdf
健康経営の国際展開のため、海外従業員への対応を考える
健康経営をグローバルに推進している企業においても、健康経営の取り組み方針や具体的な取り組み内容は各社さまざまです。今年度は、自由記述という形で企業からの意見を聴収しましたが、取り組みの実態を正確に把握するためにも、次年度は方針および取り組みをより具体的に選択肢化し、アンケートの形で調査してはどうか、という案が出ました。
図表7 グローバルでの健康経営の取り組み方針および取り組み内容
【出典】
※7 経済産業省「健康・医療新産業協議会第11回健康投資WG」事務局説明資料P31
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/011_02_00.pdf
(3)健康経営の社会への浸透・定着
小規模法人への対応 広報強化と認定要件・申請書内容の修正を議論
健康経営優良法人制度への申請実態を調査するに当たり、小規模法人へのヒアリングを実施しました。その結果、リソースの不足に加え、健康経営優良法人申請書の解釈が障壁となり、普及が進まないという声が聞かれました。
そのため、小規模の事業者への普及拡大については、健康経営への理解を深めてもらうための広報活動を強化した上で、小規模法人の実態に合った健康経営実践を促すため、認定要件・申請書内容の修正を検討してはどうか、という案が出されました。
図表8 認定要件・申請書内容の修正(案)
【出典】
※8 経済産業省「健康・医療新産業協議会第11回健康投資WG」事務局説明資料P34、P35
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/011_02_00.pdf
非正社員等への対応 非正社員等を含めて実施している企業の加点を検討
非正社員等については、健康経営度調査では任意で調査範囲に含めることができます。しかし、非正社員等を含めている企業の割合は26%にとどまっています。一方で、企業ヒアリングからは、派遣社員や非正社員も対象範囲に含めて健康経営に熱心に取り組む企業も見られます。
そのため、次年度は、これらの取り組み情報をポータルサイト等で紹介するとともに、健康経営度調査において、対象範囲に非正社員を含めている法人については加点することを検討してはどうか、という意見が出ています。
図表9 健康経営の対象範囲の現状および非正社員等に対する健康経営の取り組み事例
【出典】
※9 経済産業省「健康・医療新産業協議会第11回健康投資WG」事務局説明資料P37
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/011_02_00.pdf
健康経営の社会への浸透 調査票および回答方法の負担軽減を検討
健康経営度調査を開始してから10年が経過し、調査票の設問数も増加していることから、回答担当者の負担軽減を訴える声が大きくなっています。
そのため、調査回答内容を見直し、大多数の回答者がクリアしている設問等を削除するなどの設問数削減や、担当者の負担を軽減するためのシステム設計の変更などについて検討を進めていくことになりました。
図表10 中小規模法人部門の調査票の変遷
【出典】
※10 経済産業省「健康・医療新産業協議会第11回健康投資WG」事務局説明資料P39
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/011_02_00.pdf
原稿・社会保険研究所Copyright
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【出典】
・経済産業省 『「健康経営銘柄2024」に53社を選定しました!』
https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240311003/20240311003.html
・経済産業省 「健康経営優良法人2024」認定法人が決定しました!
https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240311004/20240311004.html
・経済産業省 「健康・医療新産業協議会第11回健康投資WG」事務局説明資料
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/011_02_00.pdf
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※当記事は2024年4月時点で作成したものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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