メンタルヘルス・ハラスメント
メンタルヘルス 2023/12/20

「令和5年版過労死等防止対策白書」 就業者の約7割が理想の睡眠時間とれず――睡眠の状況に関する調査分析

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

政府は10月13日、「令和5年版過労死等防止対策白書」(令和4年度我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況)を閣議決定しました。平成28年版以来、8回目の発行となる白書です。

今回の白書は、全国の自営業者や会社役員を含む就業者(9,852人)に対して、疲労感の改善やメンタルヘルスに密接に関係する「睡眠時間」に関する調査結果を分析しています。

それによると、就業者の約7割が理想の睡眠時間ほど睡眠をとることができず、理想と実際の睡眠時間の乖離(睡眠の不足感)が大きくなるほど、うつ傾向・不安を悪化させる傾向があることがわかりました。また、1週間あたりの実労働時間が長くなるほど、睡眠の不足感が大きくなる傾向があることから、睡眠時間の確保に長時間労働の削減が重要であることが改めて確認されました。

本記事では、白書の中で紹介されている各種調査結果について解説いたします。

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≪目次≫
◆理想の睡眠時間「7時間以上」が6割、実際の睡眠時間「7時間未満」が8割
◆約7割が理想の睡眠時間ほど睡眠とれず
◆実労働時間が長いほど睡眠時間の理想と実際の乖離大きく
◆理想の睡眠時間より2時間不足すると「うつ傾向・不安あり」が過半数占める
◆労働時間の短縮に向けて

理想の睡眠時間「7時間以上」が6割、実際の睡眠時間「7時間未満」が8割

調査によると、理想の睡眠時間は「7~8時間未満」と回答した人が4割以上(45.4%)を占めて最も多くなりました。「8時間以上」(17.1%)との回答をあわせて、7時間以上の睡眠時間を理想と回答した人が全体の約6割(62.5%)を占めています。

一方で、実際の睡眠時間は「5~6時間未満」と回答した人が35.5%、「6~7時間未満」と回答した人が35.2%といずれも3割を超えており、「5時間未満」と回答した人(10.0%)をあわせて5割弱(45.5%)が6時間未満、約8割(80.7%)が7時間未満でした。(図表1参照)

【出典】
厚生労働省 令和5年版過労死等防止対策白書「令和4年度過労死等に関する実態把握のための労働・社会面調査研究」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/karoushi/23/index.html

約7割が理想の睡眠時間ほど睡眠とれず

理想の睡眠時間と実際の睡眠時間の乖離時間(睡眠の不足感)を見ていくと、約7割(69.3%)の人は、理想の睡眠時間ほど実際は睡眠がとれていないことがわかりました。
理想と実際の乖離時間に関しては、理想の睡眠時間より「1時間不足」と回答した人が約4割(39.6%)、「2時間不足」と回答した人が約2割(21.3%)に及びました。(図表2参照)

【出典】
厚生労働省 令和5年版過労死等防止対策白書「令和4年度過労死等に関する実態把握のための労働・社会面調査研究」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/karoushi/23/index.html

実労働時間が長いほど睡眠時間の理想と実際の乖離大きく

理想の睡眠時間と実際の睡眠時間に一定の乖離が生じる原因の1つと考えられるのが、実労働時間の長さです。実労働時間別に理想の睡眠時間と実際の睡眠時間の乖離時間(睡眠の不足感)を見ていくと、1週間あたりの実労働時間が「20時間未満」の人は4割以上(44.1%)が「理想の睡眠時間以上の睡眠がとれている」と回答している一方で、実労働時間が「20時間以上40時間未満」になると、「理想の睡眠時間より1時間不足」と回答した人が約4割(40.4%)を占め、「理想の睡眠時間以上」と回答した人の割合は35.6%と4割を下回りました。

さらに1週間あたりの実労働時間が「40時間以上60時間未満」になると、「理想の睡眠時間以上」と回答した人の割合が約3割(28.8%)まで低下し、「60時間以上」となると、同じく2割程度(22.3%)まで低下しました。

特に1週間あたりの実労働時間が「60時間以上」となると、理想の睡眠時間と実際の睡眠時間の乖離時間が大きくなり、「理想の睡眠時間より1時間不足」と回答した人が3割以上(34.4%)、「2時間不足」と回答した人が3割弱(27.9%)、「3時間不足」と回答した人も約1割(9.7%)に及びました。(図表3参照)

【出典】
厚生労働省 令和5年版過労死等防止対策白書「令和4年度過労死等に関する実態把握のための労働・社会面調査研究」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/karoushi/23/index.html

理想の睡眠時間より2時間不足すると「うつ傾向・不安あり」が過半数占める

理想の睡眠時間と実際の睡眠時間の乖離時間別に「うつ傾向・不安」のあり・なしを見ると、乖離時間が大きくなるほど「うつ傾向・不安なし」と回答する人が減少し、「うつ傾向・不安あり」の人や「うつ病・不安障害の疑い」のある人が増加していく傾向が見られました。(図表4参照)

具体的に、理想の睡眠時間以上の睡眠がとれている人(乖離なし)は約7割(68.4%)が「うつ傾向・不安なし」と回答していますが、理想の睡眠時間より1時間不足している人は「うつ傾向・不安なし」が約6割(62.2%)まで下がり、さらに理想の睡眠時間より2時間不足している人は「うつ傾向・不安なし」と回答した割合が48.0%と5割を下回りました。

同じく3時間不足している人は「うつ傾向・不安なし」と回答した割合が37.2%、4時間不足している人は「うつ傾向・不安なし」と回答した割合34.1%となり、4割を下回っています。

【出典】
厚生労働省 令和5年版過労死等防止対策白書「令和4年度過労死等に関する実態把握のための労働・社会面調査研究」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/karoushi/23/index.html

労働時間の短縮に向けて

このように1週間あたりの実労働時間が長くなるほど、睡眠の不足感(理想の睡眠時間と実際の睡眠時間の乖離時間)が大きくなり、理想の睡眠時間から不足する時間が長くなるほど、うつ傾向・不安のある人の割合が高まっていく傾向が見られることから、メンタルヘルスを維持・改善し、過労死等を防止するには、労働時間の短縮が有効な対策の1つになりそうです。

白書によると、就業者全体の1週間あたりの実労働時間は図表5のとおりです。実労働時間が「60時間以上」の割合を業種別に比較すると、就業者全体の割合(7.5%)を上回るのは、「運輸業・郵便業」(13.3%)、「宿泊業・飲食サービス業」(12.3%)、「建設業」(9.6%)、「教育、学習支援業」(9.2%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(8.9%)などとなっており、労働時間短縮に向けた取り組みがより求められています。

【出典】
厚生労働省 令和5年版過労死等防止対策白書「令和4年度過労死等に関する実態把握のための労働・社会面調査研究」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/karoushi/23/index.html

一方、会社など(事業場)で行われている過重労働防止対策を見ると、多くの会社で行われているのは「タイムカード、ICカード等の客観的な方法による労働時間の管理」(68.6%)、「従業員間の業務の分担見直しや集約等の推進」(43.7%)、「病気や通院等に配慮した就業上の措置等の実施」(41.7%)、「人員の増員」(35.6%)などの取り組みです。(図表6参照)
会社の実情に応じて、より効果的な取り組みの実施が望まれています。

【出典】
厚生労働省 令和5年版過労死等防止対策白書「令和4年度過労死等に関する実態把握のための労働・社会面調査研究」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/karoushi/23/index.html

原稿・社会保険研究所Copyright

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出典
・厚生労働省「令和5年版過労死等防止対策白書」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/karoushi/23/index.html

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※当記事は2023年12月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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