健康支援と働き方改革のいっそうの推進に向けて
こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
厚生労働省のデータによると、令和3年度、過労死等に関する労災補償の請求件数は3,099件と、初めて3,000件を超え、うち801件が労災認定となりました。
労災認定となるような健康被害を防ぐためには、過重労働を防ぐことが重要です。そして、従業員が、健康的な働き方を実現するための対策をする必要があります。
そこで今回は「健康支援と働き方改革の推進」というテーマに、企業がとるべき対策などについて解説します。
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≪目次≫
◆「働き過ぎ」を防ぎ、「多様な働き方」を実現するために
◆令和3年度は、過労死等で801件が労災認定
◆過重労働を防ぐために必要な対策とは?
◆困ったときは、専門機関の無料相談を活用!
「働き過ぎ」を防ぎ、「多様な働き方」を実現するために
働く人それぞれの実情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するために、2019年4月より、いわゆる「働き方改革関連法」が施行されています。従業員1人に1年当たり5日間の時季を指定した年次有給休暇の取得を企業に義務付けたり、同一企業内における正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差を禁止するなど、さまざまな措置が講じられています。
また、2021年9月には「脳・心臓疾患の労災認定基準」が約20年ぶりに改正され、長期間の過重業務の評価に当たり、労働時間だけではなく、労働時間以外の負荷要因(例/勤務間インターバルが短い勤務や身体的負荷を伴う業務など)も総合的に評価することが明確化されるなど、働き過ぎを防ぎ、働く人の健康を守るための支援が行われています(※1)。
【出典】
※1 厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント」
https://www.mhlw.go.jp/content/000833810.pdf
なお、脳・心臓疾患を労災認定する上での対象疾病は、脳血管疾患4項目(脳内出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症)、虚血性心疾患等5項目(心筋梗塞、狭心症、心停止、重篤な心不全、大動脈解離)となっています。
令和3年度は、過労死等で801件が労災認定
厚生労働省の令和3年度「過労死等の労災補償状況」を見ると、脳・心臓疾患に係る労災の請求件数は753件、支給決定件数は172件で、請求件数全体の23%を占めています(※2)。
【出典】
※2 厚生労働省「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/000955416.pdf
また、精神障害にかかる労災の請求件数は2,346件、支給決定件数は629件で、支給決定割合は27%となっています(※3)。
【出典】
※3 厚生労働省「精神障害に関する事案の労災補償状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/000955417.pdf
脳・心臓疾患、精神障害の支給決定割合はほぼ同水準ですが、請求件数は、精神障害の場合、脳・心臓疾患の3倍以上になっていることが分かります。
「過労死等のない社会の実現に向けて~『令和4年版過労死等防止対策白書』から見た過労死等の現状とメンタルヘルス対策~」の記事を読む >>
過重労働を防ぐために必要な対策とは?
労災認定となるような健康被害を防ぐためには、過重労働を防ぐことが何よりも大切です。過重労働は、身体的・精神的にも健康に悪影響を及ぼします。「働き方改革」の一環として、現在は時間外労働(残業)に上限が定められており、以下のように、時間外労働は月45時間、原則として年360時間以内となっています。
そのため、企業としては、法令に則って基準時間内に業務を終了させなくてはなりませんが、どうしても仕事が終わらないなどの事情があると、自宅に仕事を持ち帰るなどしてサービス残業を行ったりしている場合も多く、上限を超えて時間外労働を行うケースは依然として多く存在しているといえます。
それでは、時間外労働を減らし、健康的な働き方を実現するためには、どのような対策を取ればよいのでしょうか。具体的には、以下のような方法が考えられます。
●業務プロセスの改善
今までの業務プロセス、業務フロー、作業手順や人員配置等を見直したり、システムや設備の改善をはかったりすることで業務を「見える化」し、どこにどんな課題や無駄があるかを確認することで、労働力の偏りなどを改善する効果が期待できます。ひいては時間外労働の軽減にもつながります。
●時間管理の徹底
業務の優先順位を付けたり、時間配分を見直したりすることで、業務の効率化を図ることができます。
●社員同士のコミュニケーションの活性化
部署内での連携が不足していると、時間外労働の原因になり得ます。例えば、一部の従業員に業務が集中しているにもかかわらず、上司や同僚がサポートしなかった場合、業務量の多い従業員は残業せざるを得ません。しかし、部署内でコミュニケーションを取り、業務が分配されれば、時間外労働の削減にもつなげることができます。
●「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」(※4)等の活用
労働者自身が自らの疲労の蓄積状況を確認できるツールとして、「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」があります。2023年4月に見直され、食欲、睡眠、勤務間インターバルに関する項目が追加されました。同チェックリストを活用することによって、自身の疲労度を自覚し、意識的に体を休めることで、ストレスや疲労を軽減することができます。
●フレックスタイム制などの導入
従業員が自分の都合に合わせて勤務時間を調整できるフレックスタイム制を導入することで、 例えば、育児中の社員は朝子どもを学校に送り出してから出勤することができるなど、ワークライフバランスの向上が期待できます。体調に合わせて業務時間の増減もできるため、リフレッシュした状態で仕事に取り組むことができ、健康管理もしやすくなります。また、決められた曜日は必ず定時に帰る「ノー残業デー」なども有効といえるでしょう。
●勤務時間外のメールやSNSなどに返信しない、させない
勤務時間外のメールやSNSなどにすぐに返信しなければならない、という状況を改善する必要もあります。スマホ社会の現代ではいつでも、どこでもメールやメッセージが飛んできます。中には1日数百件のメールを処理したり、休日に上司からメールが送られてくるケースもあります。こうした状態を「テレプレッシャー」といい、「すぐに返信しなければならない」という衝動や強迫観念から強いストレスが生じたり、睡眠の質が低下したりするといわれています。フランスでは2017年から、勤務時間外や休日には上司からのメールに返信しなくてもよい(オフラインになる権利)という労働者の権利が認められています。雇用する側も働く側も、オンとオフのメリハリが重要といえるでしょう。
●ヘルスリテラシーを高める
健康や医療の情報を「入手」「理解」して、「評価」「意思決定」できる力のことを「ヘルス(健康)リテラシー」といいます。ネットやテレビに氾濫する健康情報から、自分に合った信頼できるものを見極める能力もヘルスリテラシーです。残念ながら、日本人のヘルスリテラシーはあまり高くないことが分かっています。ヘルスリテラシーが向上すれば、適切な受診や健康維持増進により、アブセンティーイズム(出勤しているのに、何らかの不調を抱え、生産性が低下している状態)を防ぎ、生産性を高めたり、企業の医療費負担を抑えることができます。雇用する側は、従業員の健康づくりの重要性を理解し、従業員自身もヘルスリテラシーを身に付けることが大切だといえます。健康に関する情報は自身で収集するほかに、産業医や保健師、または加入している健康保険組合等に相談することができます。
【出典】
※4 厚生労働省「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)
https://www.mhlw.go.jp/content/001084057.pdf
困ったときは、専門機関の無料相談を活用!
政府は、働き方改革の実現支援に向けて、全都道府県に「働き方改革推進支援センター」を設置しています。社会保険労務士などの専門家が、時間外労働の削減や人手不足の解消に向けた雇用管理改善などに関する相談に無料で応じ、アドバイスや訪問支援等も受けることができます。
・働き方改革推進支援センター
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198331.html
原稿・社会保険研究所Copyright
<以下、事務局より>
ティーペックでは、健康的な働き方を実現するための対策の1つである「従業員のヘルスリテラシー向上」に向けてさまざまなニーズに沿った研修サービスを提供しています。
<研修テーマ例>
・フィジカル&メディカル(睡眠、食事、運動、がん、生活習慣病など)
・メンタル(セルフケア、ラインケア、職場改善ワークなど)
・ソーシャル(ハラスメント防止、傾聴、アサーションなど)
研修は対面型だけではなく、オンライン、動画といった提供方法もございますので、お気軽にお問い合わせください。
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出典
・厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント」
https://www.mhlw.go.jp/content/000833810.pdf
・厚生労働省「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/000955416.pdf
・厚生労働省「精神障害に関する事案の労災補償状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/000955417.pdf
・厚生労働省「『働き方」 が変わります!!」
https://www.mhlw.go.jp/content/000474496.pdf
・厚生労働省「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)
https://www.mhlw.go.jp/content/001084057.pdf
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※当記事は2023年5月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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