メンタルヘルス・ハラスメント
メンタルヘルス 2023/01/25

過労死等のない社会の実現に向けて~『令和4年版過労死等防止対策白書』から見た過労死等の現状とメンタルヘルス対策~

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

厚生労働省は、令和4年10月21日に『令和4年版 過労死等防止対策白書(令和3年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況)』を公開しました。厚生労働省の発表によると、令和3年度の過労死等に関する労災補償の請求件数は3,099件と、初めて3,000件を超えました。

本記事では、白書の中で紹介されている各種調査結果をもとに、企業に求められるメンタルヘルス対策について解説いたします。

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≪目次≫
過労死等とは
過労死等の労災請求件数が3,000件を超える
政府の取り組み
『令和4年版過労死等防止対策白書』にみる過労死等の現状
求められる職場のメンタルヘルス対策
仕事に関することでストレスを感じている労働者は5割超
職場のメンタルヘルス対策の推進、課題は小規模事業所
過労死ゼロを目指して

過労死等とは

過労死等防止対策推進法第2条において、次のように定められています。

●業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
●業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡

上記のほか、死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害を含めて「過労死等」と定義されています。

過労死等の労災請求件数が3,000件を超える

厚生労働省の発表によると、令和3年度の過労死等に関する労災補償の請求件数は前年度から264件増加して3,099件と、初めて3,000件を超えました(※1)。

実際に、過重な業務が原因で発症した脳・心臓疾患、または業務による強いストレスが原因で発病した精神障害であると認定され、「過労死等」として労災保険給付の支給が決定した件数は801件(前年度比1件減)で、このうち死亡(自殺未遂含む)した件数は136件(同12件減)でした。

なお、これらの集計は民間企業等に勤める労働者に関するもので、公務員の公務災害は含まれていません。

【出典】
※1 厚生労働省『令和3年度「過労死等の労災補償状況」を公表します(令和4年6月24日公表)』
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26394.html

政府の取り組み

過労死は1980年代後半から社会的に注目されはじめました。それから30年以上が経過した現在においても、劣悪な雇用管理で従業員を過労死等に至らしめる企業等の存在と対策の必要性が各方面から指摘されています。
 
過労死は、本人はもとより、大切な人を亡くした家族等にとっても計り知れない苦痛であり、社会にとっても大きな損失です。
 
そこで政府は、過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現を目指して、さまざまな対策を推進しています。
 
平成26年11月には「過労死等防止対策推進法」が施行され、平成27年7月には過労死等の防止のための対策や数値目標などを定めた「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が閣議決定されました。大綱はおおむね3年先を見据えて定めるもので、その後、平成30年7月と令和3年7月に見直されています。
 
こうした法および大綱に基づき、国においては、過労死等に関する現状把握や調査研究、国民や企業に対する普及・啓発などの取り組みが進められています。その状況は平成28年から『過労死等防止対策白書』としてまとめられ、毎年報告されています。

『令和4年版過労死等防止対策白書』にみる過労死等の現状

政府は令和4年10月21日、『令和4年版過労死等防止対策白書』(令和3年度我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況)を閣議決定しました(※2)。平成28年版以来、7回目の白書となります。
 
白書は、過労死等の現状や推移、企業等の取り組み状況などをまとめています。まずは過労死等の現状とともに、これまでの件数の推移を確認していきます。

【出典】
※2 厚生労働省『令和4年版過労死等防止対策白書』
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/karoushi/22/index.html

■脳・心臓疾患は緩やかな減少傾向

白書によると、業務における過重な負荷により脳・心臓疾患を発症したとする労災補償の請求件数は、平成14年度に800件を超えて以降、700件台から900件台で推移しています。令和3年度は753件で、前年度から31件減少しました(図1参照 ※3)。
 
労災支給決定件数は平成19年度の392件をピークに近年は減少傾向にあり、令和3年度は172件で、前年度から22件減少しています(図2参照 ※4)。

【出典】
※3、※4ともに厚生労働省『令和4年版過労死等防止対策白書』56P

脳・心臓疾患に係る労災請求件数の推移
脳・心臓疾患に係る労災支給決定(認定)件数の推移

■精神障害は右肩上がり

一方、業務における強いストレス(心理的負荷)が原因で発病した精神障害に関する労災補償の請求件数は、右肩上がりで増えています。令和3年度は前年度から295件増加して2,346件となりました(図3参照 ※5)。
 
労災支給決定件数は、平成24年度以降500件前後で推移していましたが、令和2年度に600件を超え、令和3年度はさらに21件増えて629件となりました(図4参照 ※6)。

【出典】
※5、※6ともに厚生労働省『令和4年版過労死等防止対策白書』66P

精神障害に係る労災請求件数の推移
精神障害に係る労災支給決定(認定)件数の推移

求められる職場のメンタルヘルス対策

このように近年の過労死等の状況は、脳・心臓疾患が緩やかな減少傾向にある一方で、精神障害が急増しており、全体の過労死等の件数を押し上げている傾向にあります。
 
前述した通り、過労死等とされる精神障害の発病は、業務による強いストレス(心理的負荷)が原因です。労働者のストレスを緩和させるには、長時間労働の削減など、働き過ぎを防止し、ワーク・ライフ・バランスの取れた働き方ができる職場環境づくりを推進するほか、労働者の心の健康を保つためのメンタルヘルス対策が有効です。
 
そこで、ここからは労働者のストレス状況や、職場のメンタルヘルス対策の状況などを整理していきます。

仕事に関することでストレスを感じている労働者は5割超

仕事や職場生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者はどの程度いるのでしょうか。白書によると、仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は、令和3年で53.3%になっており、ここ数年はやや減少傾向にあるものの、半数を超えている状況が続いています(図5参照 ※7)。
 
また、労働者の強い不安、悩み、ストレスの原因となった内容を見ると、「仕事の量」(43.2%)が最も多く、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」(33.7%)、「仕事の質」(33.6%)となっています(図6参照 ※8)。

【出典】
※7、※8ともに厚生労働省『令和4年版過労死等防止対策白書』43P

仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合
「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる」とした労働者のうち、その内容(令和3年)

職場のメンタルヘルス対策の推進、課題は小規模事業所

仕事をする上で、成果物の「質」を求められたり、繁忙期などにおいて仕事の「量」が増えたりするのは、よくあることですし、時には仕事で失敗することもあります。
 
したがって、図6で上位に挙がった「仕事の量」や「仕事の質」、「仕事の失敗」などのストレス等の原因を取り除くことは難しいと思われます。それ故に、ストレス等を感じている労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止する、あるいはメンタルヘルス不調の労働者を早期に発見して必要な対応を図る等の職場のメンタルヘルス対策には、効果的な役割を果たすことが期待されており、取り組みの推進が求められます。
 
政府は、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所を令和4年までに80%以上とする数値目標を掲げています。令和3年時点では、対策に取り組んでいる事業所の割合は59.2%にとどまり、目標達成には及ばない状況です。ただ、事業所の規模別に見ると、50人以上の事業所は90%を超えていることが分かります。一方で、10人~29人の事業所は49.6%、30人~49人の事業所は70.7%となっており、小規模な事業所における取り組みの推進が今後の課題の一つです(図7参照 ※9)。
 
具体的な取り組みの内容は、図8の通りです(※10)。平成27年から労働者数50人以上の事業場に義務づけられている「ストレスチェックの実施」(65.2%)が最も多く、次いでストレスチェック結果の集団分析を含む「職場環境等の評価及び改善」(54.7%)、「メンタルヘルス不調の労働者に対する必要な配慮の実施」(50.2%)、「メンタルヘルス対策に関する事業所内での相談体制の整備」(50.2%)などとなっています。

【出典】
※9 厚生労働省『令和4年版過労死等防止対策白書』46P
※10 厚生労働省『令和4年版過労死等防止対策白書』47P

メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所の割合 および事業所規模別割合(令和3年)
メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所における取組内容(令和3年)

過労死ゼロを目指して

「過労死等防止対策推進法」は、過労死等がない社会の実現に向けて、国や地方公共団体、事業主のほか、国民に対しても責務を果たすよう求めています。

第4条第4項(国の責務等)

国民は、過労死等を防止することの重要性を自覚し、これに対する関心と理解を深めるよう努めるものとする。

国民一人ひとりが自身の健康に自覚を持ち、過重労働による自らの不調や周りの人の不調に気付くことが、過労死等がない社会の実現の第一歩です。疲れが取れない、やる気が出ない、イライラするなど、何かおかしいなと思ったら、自分自身の体調を最優先に考えるようにしましょう。自分の健康より大切な仕事はありません。


原稿・社会保険研究所Copyright

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参考:

・厚生労働省『令和3年度「過労死等の労災補償状況」を公表します(令和4年6月24日公表)』
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26394.html

・厚生労働省『令和4年版過労死等防止対策白書』
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/karoushi/22/index.html

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※当記事は2023年1月に作成されたものです
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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