<健康経営インタビュー>野村證券株式会社
こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
2022年3月、4年連続5回目となる「健康経営優良法人ホワイト500」の認定を受けた野村ホールディングス株式会社(野村證券株式会社)様。健康経営推進最高責任者(CHO:Chief Health Officer)のもと、社員の健康保持・増進に向けて進めてきた具体的な施策、今後、取り組んでいく健康経営の課題などについて、人事企画部ヘルスサポートグループの水野晶子さんと河野和絵さんにお話を伺いました。
(インタビュイー)
野村證券株式会社 人事企画部ヘルスサポートグループ
エグゼクティブ・ディレクター 兼 グループ長 水野晶子さん(写真左)
野村證券株式会社 人事企画部ヘルスサポートグループ
シニア・アソシエイト 河野和絵さん(写真右)
<目次>
■CHO(Chief Health Officer)が牽引する健康経営の取り組み
■治療と仕事の両立、メンタルヘルスケアにも注力
■健康経営銘柄を目指し、ひとつひとつ課題解決を
CHO(Chief Health Officer)が牽引する健康経営の取り組み
―――― 健康経営への取り組みを加速させたのは、どのようなきっかけからでしょうか?
水野さん(以下敬称略):
元々、野村グループは人が資本の会社ですので、人間ドック受診の無料化、休暇制度の充実など、社員の健康保持や増進を図ってきましたが、さらに力を入れていくきっかけになったのは、2015年から始まった「健康経営銘柄」の選定です。
経営層が「社員の健康」にしっかりコミットメントしていく必要があると考え、2016年に健康経営推進最高責任者(CHO:Chief Health Officer)を置くことを決めました。同年7月には「NOMURA健康経営宣言」を行い、社員に会社の考えを伝えるとともに、経営層に向けては健康経営推進の重要性を徹底しました。続いては体制づくり。それまでも健康保険組合とはさまざまなコラボレーションをしてきましたが、より連携を深める環境を整えていきました。
現在のCHOは2021年4月から野村ホールディングス株式会社執行役(野村證券株式会社副社長)の飯山が務めています。自身も趣味がロードバイクということもあり健康に対する意識が非常に高く、健康経営に対する取り組みにも積極的に関与してくれるため、健康経営に対する取り組みがさらに加速していきました。
―――― これまでの具体的な施策を教えていただけますか?
水野:
例えば2017年には、健康経営をサポートするプラットフォームを導入しました。健康診断結果の一元的なデータ管理のほか、ウェアラブル端末と連携して、部署ごとにウォーキングなど健康に関する取り組みを行う「NOMURA健康チャレンジ(ノム☆チャレ)」という健康イベントを毎年実施しています。
また、健康診断や人間ドックの問診結果を確認したところ「20代男性の喫煙率の高さ」が高いことがわかったため、2018年度より禁煙治療の費用補助といったサポートを拡充。研修センターの宿泊室内を禁煙にするなど、分煙の取り組みを強化しました。さらに、2020年度からは毎月22日を終日禁煙に。2021年秋からは就業時間内禁煙を実施するなど、喫煙対策を継続的に進めています。
―――― 2022年度に新たに始めた取り組みを教えてください。
水野:
2022年の夏に、「女性の健康」をテーマにした研修を行いました。当社では毎年、全社員を対象に「健康意識調査」を行っているのですが、その中の「職場において、女性特有の健康課題で困ったことはありますか?」という質問に、女性社員の約7割が「困ったことがある」と答えました。その一方で、管理職は半数が「管理職として女性社員の健康課題で困ったことはない」と答えたのです。
―――― 管理職と現場に大きな意識のズレがあったのですね。
水野:
そうです。当社の半数は女性社員ですので、すぐに「女性の健康」に関するリテラシーの向上を図るため、男女を問わず野村グループの全社員に研修を実施することに。具体的には、CHOの飯山と産婦人科医の先生による「企業が女性の健康に取り組む理由」というテーマの対談動画を作成し、「男女の健康」「管理職が知っておくべき女性の健康」「月経トラブル」「更年期」「女性に多い病気」がテーマの動画とともに全社員に視聴してもらいました。
ただ単に「動画を見てください」というだけでは、どうしても「やらされ感」が出てしまうので、まずCHOの飯山から全社員に向けて「女性の健康は、女性だけの問題ではない。男女ともに正しい知識を持つことが、すべての人にとって働きやすい環境へとつながる」とメッセージを発信しました。飯山も「『生理』などのワードは、口にしてはいけない言葉だと思っていた」と、対談の中で話していましたが、男性が「女性の健康」について知る機会は、これまでなかなかありませんでした。とはいえ、一緒の職場で働く女性社員がいて、妻や娘といった家族もいる。むしろ女性社員以上に、男性社員がより真摯な気持ちでこの対談を受け止めてくれたように思いました。
河野さん(以下敬称略):
研修後のアンケートでも、「妻と娘に関係することなのに、初めて知りました」など男性社員から肯定的な感想が多く届きました。また女性社員からも「ずっと苦しんでいたので、こういう研修をやってもらってよかった」という声があり、これまでで一番反響の大きかった研修だったと感じています。
治療と仕事の両立支援、メンタルヘルスケアにも注力
―――― 治療と仕事の両立支援にも力を入れていると伺いました。
河野:
当社にも、がんや循環器系の病気にかかる社員が多くいます。これまでもサポートはしてきましたが、会社としてより積極的に「治療と仕事の両立」を支える姿勢を社員に伝えるため、「治療と仕事のガイドブック」を作成しました。このガイドブックには、本人編と上司編がありまして、本人編には上司への病気の伝え方や休暇制度、上司編には、部下から病気を伝えられた時の対応といったように、具体的な内容となっています。
また、社内のがんサバイバーや、実際に治療と仕事を両立している人の体験談をイントラネットで紹介しているのですが、インタビューを受けた社員に他の社員から問い合わせが来たり、応援のメッセージが届いたりといった反響が多くあります。
ティーペックさんからご提案をいただいている、「セカンドオピニオン手配サービスを活用して職場復帰された方の体験談セミナー」も次年度に向けて検討したいと思っています。
―――― メンタルヘルス対策については、どのような取り組みをなさっていますか?
水野:
「NOMURA健康経営宣言」を行った2016年から、メンタルヘルスケアにもしっかり取り組んできました。エリアごとに保健師が担当していて、社員の相談にスムーズに対応できるような環境を作っています。
例えば新入社員はメンタルヘルスにおいて特に気を配るべき対象ですので、保健師から「何かあったら連絡をしてくださいね」と新入社員にメールで伝えるようにしてきました。
また、ストレスチェック結果についても実施だけで終わらせず、全国の部支店長へ組織分析の結果を積極的にフィードバックしています。
さらに健康保険組合がティーペックさんと契約しているメンタルヘルス相談窓口を利用しています。このことも社員に周知し、積極的に利用を呼びかけています。
―――― ストレスチェックだけでなく、健康相談窓口などティーペックのサービスを複数ご利用いただいておりますが、社員の皆さんはどのくらいご存じですか?
水野:
社内の健康意識調査の回答によると、7割くらいの社員がティーペックさんを含む相談窓口の存在を知っています。イントラネットでの紹介はもちろん、管理職向けの健康経営研修、新入社員研修など、ターゲットを絞って、繰り返し周知を図っています。
健康経営銘柄を目指し、ひとつひとつ課題解決を
―――― 来年度以降、特に力を入れたい取り組みがあれば教えてください。
水野:
今年度は「女性の健康」に関する研修がうまくいったものの、まだ周知の段階で留まっていますので、今後は行動変容を促すような施策を行っていく必要があると考えています。また「女性の健康」の研修のアンケート結果に「男性更年期についても取り上げてほしい」という声が多くありました。男性更年期は女性の更年期以上に情報が少なく、情報収集もうまくいかず一人で悩んでいる男性社員もいると思われますので、機会を見つけて、いい形で情報発信していきたいです。
―――― 昨年、4年連続5回目となる「健康経営優良法人ホワイト500」の認定を受けられましたが、次は健康経営銘柄ですね。
水野:
そうですね。2022年はグループ会社である野村アセットマネジメント株式会社とともに、ホワイト500に認定され、中小規模法人部門でも5つのグループ会社が健康経営優良法人の認定を受けましたが、健康経営銘柄はなかなか難しく……。それでも健康経営銘柄を目指すことで、当社に何が足りないのか気づくことができましたし、課題を解決しながらここまで進んできました。今後も今まで通り、変わらずに取り組んでまいります。
河野:
ティーペックさん主催の健康経営実践研究会にも、毎年参加していますが、健康経営戦略マップの作り方やPDCAサイクルの回し方など、産業医科大学の森晃爾先生に直接教えていただける機会を得られて、大変に勉強になっています。
水野:
健康経営実践研究会で学んだことは、グループ会社にも共有させてもらっています。今後の課題として、野村證券だけではなく、グループ会社への波及を積極的に行い、グループ全体の社員の健康保持・増進に励む所存です。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
※当記事は、2023年3月に作成されたものです。
※当記事内のインタビューは、2023年1月に行われたものです。
※撮影時のみマスクを外しています。
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