ストレスチェック結果で高ストレス者が出た場合の対応は?面接指導や注意点も解説
こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
社内でストレスチェックを実施して高ストレス者が出た場合、必要に応じて職場環境や労働条件の見直しなどの措置を講じる必要があります。適切な対応を行うには、ストレスチェック運営のノウハウが欠かせません。
この記事では、高ストレス者を選定する基準や方法、対策を解説します。職場におけるストレスの原因を把握し、労働者が働きやすい環境を整えるための参考にしてください。
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<目次>
◆ストレスチェックとは
◆ストレスチェックの3領域とは
◆高ストレス者の選定方法
◆高ストレス者を判定する2つの基準
◆ストレスチェックで高ストレス者が出た場合の流れ
◆オンラインでの面接指導の注意点
◆高ストレス者への企業の対応
◆法制度から6年。働く人のストレスはどう変わったか。ティーペックのストレスチェックデータ大公開!
◆まとめ
ストレスチェックとは
ストレスチェックとは、事業場で働く労働者の心理的な負担を把握するために実施されるストレス検査制度です。2015年12月以降、労働者数が50人以上の事業場では年1回の実施が義務付けられています。
高ストレス者や高ストレス職場に対して、産業医による面接指導や、課題解消に向けた職場環境の改善などの取り組みを通じて、メンタルヘルス面での不調を未然に防ぐ狙いがあります。
ストレスチェックの3領域とは
ストレスチェックの検査項目は「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」そして「周囲のサポート」の3領域に大別されます。
「仕事のストレス要因」は、職場環境や対人関係、業務の量的・質的負荷、仕事への適性など、職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目を指します。
「心身のストレス反応」とは、緊張や不安、イライラ、憂鬱感など、心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目を指します。
「周囲のサポート」とは、職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目を指します。
高ストレス者の選定方法
厚生労働省が推奨する職業性ストレス簡易調査票を使用したストレスチェックの場合、以下のどちらかに該当する人が「高ストレス者」とみなされます。
●「心身のストレス反応」の評価点数が高い:現在、ストレスの影響が実際の自覚症状として顕著に表れている者
●「心身のストレス反応」の評価合計が一定以上であり、「仕事のストレス要因」および「周囲のサポート」の評価点数の合計が高い:現在、ストレスの影響による症状が心身にある程度出ており、今後悪化する可能性が高いと思われる者
高ストレス者を判定する2つの基準
高ストレス者の判定には、次の2つの基準が設けられています。それぞれ詳しく解説します。
設問の合計点数
1つは、各設問の回答を点数換算した合計で判定する方法があります。単純な計算で判定できるので使いやすいのが特徴です。以下2つのどちらかを目安として判定します。
<「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を使用したときの高ストレス者の評価基準例>
●「心身のストレス反応」領域の設問回答の点数を合計して、77点以上に該当する場合
●「仕事のストレス要因」領域および「周囲のサポート」領域に関わる設問回答の合計点数が76点以上、かつ「心身のストレス反応」領域に関わる設問回答の合計点数が63点以上、という2つの条件を満たす場合
尺度の合計点数
もう1つは、各設問回答の点数を尺度ごとに素点換算した合計をもとにする判定方法です。「心身のストレス反応」の6尺度、「仕事のストレス要因」の9尺度、および「周囲のサポート」の3尺度を素点換算表に基づいて5段階評価し、合計点数を算出します。なお、5段階評価のうち「1」が最もストレスが高く、「5」は最もストレスが低い状態を意味します。
この方法では、以下のいずれかを目安として判定します。
<「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を使用したときの高ストレス者の評価基準例>
●「心身のストレス反応」の合計点数が12点以下の場合
●「仕事のストレス要因」と「周囲のサポート」を合算した合計点数が26点以下で、「心身のストレス反応」の合計点数が 17点以下の場合
ストレスチェックで高ストレス者が出た場合の流れ
ストレスチェックで労働者の中から高ストレス者が出た場合は、次のステップで対応します。
ストレスチェックの結果を通知する
ストレスチェックの結果は、ストレスチェック実施後、実施者又はその他の実施事務従事者から遅滞なく受検者本人に通知します。
実施者はストレスチェックの結果に基づき、高ストレス者を含むすべての受検者について、医師による面接指導を受ける必要があるかどうか確認します。該当労働者に対しては、ストレスチェックの結果を通知する際、産業医や医師による面接指導を受けてもらう必要性を伝えます。その後、本人から面接指導を受けたい旨の申し出があった場合は、概ね1か月以内に実施する必要があります。
当該労働者から、面接指導の申し出がない場合は、面接指導を受けるよう勧めます。
面接指導を実施する
当該労働者は、医師による面接指導を受けます。面接指導の実施は、当該事業場の産業医、あるいは事業場における産業保健活動に従事する医師が担当することが推奨されています。面接指導の実施を外部の医師に委託する場合には、産業医資格を有する医師に委託することが望ましいでしょう。
面接指導では、ストレスチェックでの3領域に加えて、以下に掲げる事項について医師が確認します。
●勤務状況の確認:労働時間や業務内容などの情報を事前に職場から入手するほか、ストレス要因となり得る人間関係や、前回の検査以降の業務や役割の変化などについて状況を確認します。
●心理的な負担の状況確認:抑うつ症状などがないかを把握します。場合によっては、うつ病のスクリーニング検査や構造化面接法などを行うことも考えられます。
●その他の心身の状況確認:過去の健診結果や現在の生活状況などに関する確認を行います。うつ病や一般的なストレス関連疾患を念頭に置いた確認が行われる場合もあります。
面接指導の結果報告書の提出・保管
面接指導の実施後は、ストレスチェックおよび面接指導の結果を報告書にまとめ、管轄の労働基準監督署に提出する義務があります。特に提出期限は定められていないものの、ストレスチェックは年1回の実施が義務付けられているため、 1年以内ごとに1回、定期に設定する必要があります。各事業場における事業年度の終了後など、事業場ごとに設定しておくとよいでしょう。
ストレスチェックおよび面接指導の結果は個人情報なので、適切にまとめて正しく保管する必要があります。そのため、関連する書面やデータなど、安全かつ厳密に5年間保管するよう義務付けられています。
就業制限もしくは休業措置を実施する
面接指導の結果、就業状況や環境の改善などが必要と医師が判断した場合、時間外労働や休日労働、出張を制限するなど、具体的な措置を講じます。場合によっては休暇や休職の取得などの対応を行うこともあります。
実施した結果、ストレス状態が改善した場合は、当該労働者の意見や産業医などの意見を踏まえて、通常の勤務に戻すなどの適切な対応をとります。
オンラインでの面接指導の注意点
ストレスチェックの面接指導はオンラインでも実施可能です。その際に注意すべき点を2つのポイントから解説します。
安定した通信環境のもと実施する
オンラインで面接指導を担当する医師は、当該労働者の顔色や表情、しぐさ、声色などをチェックして、心身の状況を適切に把握したうえで判断や助言を行う必要があります。そのため、安定した通信環境とビデオ通話ができるツールが不可欠です。
また、当該労働者のプライバシー保護の観点からも、オンラインでの面接指導のデータが外部に流出しないよう、情報セキュリティの面も十分に配慮し、必要な対策を講じることも義務付けられています。
事前に労働者に周知しておく
オンラインの面接指導に関しては、実施方法について衛生委員会などの場で調査審議を行った上で、事前に労働者に周知することも義務付けられています。オンラインでの面接指導は、コロナ禍でも対応しやすく、労働者にとっても面接指導を受けやすいのが特徴なので、積極的に取り入れていく価値のある取り組みです。
高ストレス者への企業の対応
高ストレス者と判定された労働者には企業としてどう対応していくべきかを、2つのポイントから解説します。
社外に相談窓口を設置する
医師による面接指導の実施は企業側の義務である一方、高ストレス者とされた労働者全員が面接指導を申し出てくれるとは限りません。そこで社外に専用の相談窓口を設け、高ストレス者が相談しやすい体制を整備することも大切です。社外の窓口なら、相談内容が社内に漏れるなどの不信感も軽減されるので、より気軽に相談できる雰囲気づくりに役立ちます。
職場環境や労働条件を改善する
ストレスチェックの結果をもとに職場に潜むストレスの実態を把握し、改善に向けて必要な対策を講じることも重要です。高ストレス者を放置すると後々メンタルヘルスの不調に陥るリスクが増大して心身の健康が損なわれるだけでなく、ビジネスでも不利益を被る可能性があります。労働契約法第5条に定められている安全配慮義務違反に問われる可能性もあるため、注意が必要です。
法制度から6年。働く人のストレスはどう変わったか。ティーペックのストレスチェックデータ大公開!
ティーペックでは、現在、年間約700社80万人を対象にストレスチェックサービスを提供しております。今回、2015年12月にストレスチェックが義務化されてから、新型コロナウイルス感染症の流行によって働き方が大きく変化した2021年までの6年間で、働く人のストレスがどのように変わったのか、ティーペックのストレスチェック受検データを分析いたしました。
【ストレスチェック受検率の推移】
まず、ストレスチェックの受検率について、法制度直後は関心度の高さから90%を超える受検率でしたが、ここ数年は85%前後で推移しています。
【総合健康リスクの推移】
総合健康リスク(全国平均を100としたときの、その職場のリスク度合い)については、2021年度は前年度と変わらず90という結果でした。全国平均100とは、15年以上前にサンプリングされた結果であるため、現在では「100を下回っていればいい」という考えには注意が必要です。
仕事の量・コントロールリスクを見てみると、2020年度に96まで下がりましたが、2021年度には97に上がっています。一方、職場の支援リスク(上司・同僚の支援リスク)については、2016年度から2020年度まで94でしたが、2021年度は93に下がっています。
【リスク値を構成する4項目の推移】
リスク値を構成する「仕事の量的負担」「仕事のコントロール」「上司の支援」「同僚の支援」の4項目についての推移を調べてみると、「仕事の量的負担」はコロナ禍1年目の2020年度に大きく良化したものの、コロナ禍2年目の2021年度はコロナ禍前のレベルへ悪化していることがわかりました。
また、「上司の支援」と「仕事のコントロール」は毎年良化しているのに対して、「同僚の支援」はほぼ横ばいとなっています。
【高ストレス者やハラスメント、エンゲージメントの現状は?】
貴社のメンタルヘルス対策にお役立て頂ける資料『法制化7年目 ストレスチェックデータの推移~法制化当初からコロナ禍を含む2022まで働く人のストレスはどう変わったか~』では、ティーペックのストレスチェック受検データをもとに、これまでにご紹介したデータの詳細や、高ストレス者の推移、ハラスメントを受けている人の割合、エンゲージメントの現状などについて詳しく解説しております。ぜひ、ダウンロードいただき、貴社の取り組みにお役立てください。
まとめ
ストレスチェックは、社員が抱える職場での心理的負荷の程度を判定する検査として、労働者50人以上の事業場で義務付けられています。ストレスチェックを実施するだけでなく、その結果に応じて、医師による面接指導の実施や社外の相談窓口の設置など、メンタルヘルス予防を徹底する必要があります。
ストレスチェックを適切に実施するには、専門サービスの利用がおすすめです。年間650社以上の企業に利用されているティーペックなら、高セキュリティのシステム環境下で専門スタッフが適切な運用をサポートします。また、ストレスチェックを実施したままにせず、結果を有効活用し、課題に合わせた職場環境改善サポートサービスをご提供します。詳細は以下よりお問い合わせください。
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参考
・厚生労働省「ストレスチェック制度導入マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf
・厚生労働省「労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf
・厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、 第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導 の実施について(令和2年11月19日付け基発1119第2号)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000536467.pdf
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※当記事は2022年11月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。