健診の問診票に「女性の健康課題」が追加~ 厚生労働省のマニュアルからポイントを整理~
こんにちは。企業の健康経営(R)を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
女性の就業率の上昇に伴い、女性特有の健康課題への対応の重要性が一層高まっています。こうした背景を踏まえ、厚生労働省の「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」では、企業の一般健康診断の問診票に「女性特有の健康課題に関する質問」を追加する方針が示され、2026年1月に健診機関向けと事業者向けのマニュアルが公表されました。本記事では、事業者に求められる対応や望ましい職場環境改善の取り組みについて、マニュアルのポイントを整理して解説します。
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《目次》
1.一般健康診断の問診票に、女性特有の健康課題に関する新たな問診を追加
2.標準問診票に追加された問診
3.健診機関向けマニュアルのポイント(「はい」の回答があった場合の健診機関の対応)
4.事業者向けマニュアルのポイント(女性の健康問診を活用した事業所の健康管理支援)
5.まとめ
1.一般健康診断の問診票に、女性特有の健康課題に関する新たな問診を追加
定期健診や法定健診といわれる事業所の健康診断は、労働安全衛生法(以下「安衛法」)によって事業者が常時使用する労働者に実施することを義務づけており、制度上は「一般健康診断」と呼ばれます。一般健康診断の実施には、問診票として、安衛法が定める法定項目を踏まえて厚生労働省が作成した標準的な質問項目のセット(以下「標準問診票」)が推奨され、広く使われています。
厚生労働省は2026年1月、「女性特有の健康課題に関する問診に係る健診機関実施マニュアル」(以下「健診機関向けマニュアル」)と「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル」(以下「事業者向けマニュアル」)を公表し、その中で標準問診票に女性特有の健康課題に関する問診を追加しました。
本マニュアルは、2024年11月1日に厚生労働省が公表した「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」の中間とりまとめにおいて、一般健康診断の問診票に女性特有の健康課題に関する質問を加えることが適当との方針が示されたことを受けて作成されました。
2.標準問診票に追加された問診
健診機関向けマニュアルでは、次のような女性特有の健康課題に関する質問が推奨されています。
『女性特有の健康課題(月経困難症、月経前症候群、更年期障害など)で職場において困っていることがありますか。
① はい、② いいえ』
この問診は任意回答形式で、回答したくないときは無回答とすることもできます。
3.健診機関向けマニュアルのポイント(「はい」の回答があった場合の健診機関の対応)
4.事業者向けマニュアルのポイント(女性の健康問診を活用した事業所の健康管理支援)
事業者向けマニュアルは、女性特有の健康課題で職場において困っている労働者に対する事業者の対応、望ましい職場環境改善の取り組みや参考情報をとりまとめています。その要約・ポイントは次のとおりです。
〇女性の健康問診の位置づけ
女性特有の健康課題に関する問診(以下「女性の健康問診」)の回答結果は、健診機関から事業者に直接提供されません。というのは、女性特有の健康課題は、業務との直接的な関連性や作業関連疾患としての位置づけが限定的と考えられ、安衛法などによる事業者への義務づけ(健診の実施、健診結果の記録・保存、労働者への結果通知、就業上の措置など)の対象と見られていないからです。問診が追加された理由は、「女性自身の健康状態への気づきを促し、必要に応じて労働者(女性)が医療機関へアクセスできるよう支援すること」が重要と認識されるようになったからです。
〇マニュアルの構成と要約・ポイント
以下はマニュアルの目次に沿った要約やポイントです。
(1)基本情報の周知
代表的な女性特有の健康課題(月経困難症・過多月経症・月経前症候群・更年期障害)の基本情報は、全労働者・関係者が理解しておくことが求められます。
(2)基本的な考え方(手順と留意事項)
女性特有の健康課題に関する相談があった場合に事業者が行うべき望ましい対応、女性特有の健康課題に配慮した職場環境づくり(相談体制・支援体制の整備など)について基本方針を定め、取り組みの手順を決めることが求められます。
主な留意事項としては、月経や更年期は病気ではないが、それに伴う「困りごと」は個人の努力だけで解決できないこともあり、職場の理解と適切な配慮が必要という認識を持つこと。症状の有無や程度の個人差が大きく、画一的ではなく個々の状況に応じた柔軟な支援が求められること。労働者は事業者に対して健康課題に関する相談をいつでもできること(女性の健康問診と関係なくいつでも相談を受けられる体制の構築が必要)等。
(3)方針決定から相談体制の整備まで(準備)
女性特有の健康課題に配慮した個別の支援を進めるには、土台となる環境整備が不可欠です。その基本的な考え方は、病気の治療と仕事を両立させるために事業場が整備すべき相談体制・情報連携を示した厚生労働省の「治療と就業の両立支援指針」(2026年厚生労働省告示第28号、2026年4月施行)に記されています。治療と就業の両立支援に向けた取り組みをすでに実施していれば、その取り組みを活用します。
流れとしては、基本方針の表明→衛生委員会などによる労使の十分な話し合い→管理職向け研修と全従業員向け研修→「相談体制の整備」→支援制度の整備、と進めることになります。
例えば「相談体制の整備」は、女性特有の健康課題は上司や人事に直接相談しづらいケースがあることを踏まえ、人事労務部門、産業保健スタッフ、外部EAP(従業員支援プログラム)など、複数の相談窓口を設け、従業員が選択できるようにしておき、相談窓口の存在と連絡先を全従業員に周知徹底します。また、相談窓口は、相談が外部に漏れないよう、個室の相談室を確保する、オンラインでの相談を可能にするなどの配慮が求められます。
「支援制度の整備」は、休暇制度(生理休暇、時間単位の年次有給休暇など)の整備や勤務制度(時差出勤制度、短時間勤務制度、在宅勤務制度など)の整備を意味します。
(4)専門医を受診した労働者からの相談対応
女性特有の健康課題に関して職場で困っている労働者が職場への配慮を申し出てきた場合、事業者はその労働者が事前に医療機関を受診して自身の健康状態を正確に把握しているほうが対応しやくなります(特に女性特有の健康課題は症状の原因が多様で症状の重さや必要な配慮が判断しにくい)。相談の際、本人がまだ専門医への受診を行っていないときは、本人の希望にも配慮しつつ、専門医への受診勧奨を行うようにします。
(5)職場環境の改善
女性特有の健康課題に配慮した職場環境を推進する企業は、健診機関と連携し、労働者に説明した上で、女性の健康問診への回答を集計した情報(個人が特定しにくい形式)を入手し、活用することも考えられます。この場合でも労働者の個人情報保護の観点から、1つの健診機関あたりの受診者が少なく(10人未満など)個人が特定されやすいケースでは、健診機関から集計情報の提供を求めてはいけないとされます。職場環境や労働者の状況は事業場ごとに異なり、最適な対応は一様ではありません。したがって、職場改善は、さまざまな事例を参考にしつつも、労使で十分に話し合い、柔軟に対応を検討することが重要です。
(6)Q&A
女性の健康問診に関してよくある質問とその回答例が、「制度の目的と企業の役割」「従業員への対応と環境整備」「健診機関との連携とデータ活用」の3グループに分類されて示されています。
(7)参考資料
女性特有の健康課題への対応のために、労働者や事業者が利用できる支援制度・支援機関が掲載されています。医療機関を受診しても解決できないときや他の意見を聞きたいときは、掲載されている外部支援機関を活用できます。
5.まとめ
厚生労働省は、一般健康診断の問診票(標準問診票)に女性特有の健康課題に関する問診(女性の健康問診)を追加し、その取り扱いを「健診機関向け」と「事業者向け」の2種類のマニュアルで示しました。
この取り組みは、女性が働きやすい職場環境を実現し、健康課題の早期発見・早期対応することを目的としています。事業者には、生産性向上を目指す「健康経営」の観点からも事業者向けマニュアルに取り組むことが推奨されます。
原稿 社会保険研究所Copyright
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<出典・参考文献>
・厚生労働省「第181回労働政策審議会安全衛生分科会」(令和8年1月19日開催) 資料3「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等について」
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001634188.pdf
・厚生労働省「第181回労働政策審議会安全衛生分科会」(令和8年1月19日開催) 参考資料1「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会報告書」
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001634189.pdf
・厚生労働省『「女性特有の健康課題に関する問診に係る健診機関実施マニュアル」及び「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル」を公表します』
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68776.html
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※当記事は2026年3月時点で作成したものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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