健康経営でも重要視!働く女性への健康支援~企業も継続的なサポートを~

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
経済産業省の「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」(令和6年2月)によると、女性特有の健康課題による労働損失等の経済損失は、社会全体で年間約3.4兆円と推計されています。働き続ける女性が増えている今、女性の健康課題の解決に努めることは、女性の能力活用、労働力確保のためだけでなく、経済的損失を防ぐためにも重要です。そこで今回は、働く女性の健康支援に関わる国の方針を読み解きながら、企業がこの課題に対してどのように取り組むべきかを解説します。
《目次》
◆働く女性が増加、女性への健康支援がますます重要に
◆女性の健康課題は、経済的にも大きな損失に
◆国は、働く女性をサポートするための取り組みを実施
◆「健康経営」でも、女性への健康支援を重要視
◆国や企業が連携して、働く女性への継続的なサポートを
働く女性が増加、女性への健康支援がますます重要に
かつて、女性は妊娠・出産を契機に仕事を辞めることが多く、子育てが一段落したところで再就職するなど、キャリアを中断する人も多くいました。しかし、近年は社会環境の変化もあり、産休・育休制度等を利用するなどして出産後も働き続ける女性が増えています。
厚生労働省の「令和4年版働く女性の実情」を見ても、働く女性が増えていることが分かります。令和4年の女性の労働力人口は 3,096 万人で、前年に比べ 16万人増加しています。一方、男性は3,805 万人と 22万人減少しています。この結果、労働力人口総数は前年より5万人減少して6,902 万人となり、労働力人口総数に占める女性の割合は 44.9%(前年差 0.3 ポイント上昇)となりました。
また、女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)は54.2%(男性 71.4%)と前年に比べ 0.7ポイント上昇しました。女性雇用者数は 2,765 万人となり、前年に比べ 26万人増加しました。男性雇用者数は 3,276 万人となり、前年に比べ2万人減少しました。この結果、雇用者総数に占める女性の割合は45.8 %(前年差 0.3ポイント上昇)となりました。
このように、働き続ける女性が増えている今、女性への健康支援はとても重要になっています。女性の体は子供を産むという生殖機能を備えているため、健康課題が複雑です。妊娠、出産、育児、閉経と、ライフステージごとの体の変化も大きいため、女性の体の仕組みを理解した上での健康支援、健康課題の解決が求められます。

出典:厚生労働省『令和4年版働く女性の実情 「働く女性の状況 I令和4年の働く女性の状況」』
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/22.html
女性の健康課題は、経済的にも大きな損失に
女性の健康課題は、経済的にも大きな損失となります。具体的な健康課題・症状としては、「月経不順、月経痛、月経前症候群などの月経随伴症」「更年期症状」「婦人科のがん」「不妊治療」などがあります。それらが原因で、仕事のパフォーマンスの低下や、欠勤や離職につながれば、労働生産性の損失になります。
経済産業省の「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」(令和6年2月)を見ると、女性特有の健康課題による労働損失等の経済損失は、社会全体で年間約3.4兆円と推計されています。働く女性の健康を支援し、これらの健康課題の解決に努めることは、女性の能力活用、労働力確保のためだけでなく、こうした経済的損失を防ぐことにも大いに役立ちます。

出典:経済産業省「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」令和6年2月
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/jyosei_keizaisonshitsu.pdf
国は、働く女性をサポートするための取り組みを実施
国は、働く女性を継続的にサポートするために、さまざまな取り組みを行っています。
令和5年12月に閣議決定した「こども未来戦略」の「加速化プラン」には、児童手当の拡充、出産等にかかる経済的負担の軽減、男性育休の取得促進等の施策が盛り込まれ、これらを実施するための対策が講じられています。
例えば妊婦等への対策として、令和7年度には「妊婦等包括相談支援事業」を創設して、妊婦等のニーズに応じた支援を総合的に行う方向で準備を進めています。
子供、子育て世帯に対しても、支援の拡充が図られています。厚生労働省の「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」では、出産費用の保険適用導入に向けて、令和7年春をめどに方針を取りまとめる予定です。
また、令和6年度の新規予算事業として、「出産・子育ての安心につながる環境整備等の取組に対する財政支援」を開始します。これは、例えば、女性の健康づくり、出産・子育て支援のために企業と健康保険組合が連携して行う効果的・先進的な取り組みについて、厚生労働省が健康保険組合に対して財政支援を行うものです。健康保険組合に働き掛けることで、企業に対して女性の健康支援を促進する狙いがあります。
「健康経営」でも、女性への健康支援を重要視
経済産業省は、従業員の健康づくりのために「健康経営」を推奨しています。その中でも、女性への健康支援を重要視しています。
「健康経営銘柄」の選定や「健康経営優良法人」の認定を受けるには、「健康経営度調査票」の質問項目について、社内で対応していることを明記する必要があります。その質問項目の中にも、働く女性の健康保持・増進に向けた取り組みについての質問があります。
質問項目にある働く女性に関する設問は、以下のようなものです。


職場における女性の健康課題の解消に向けて、健康経営度調査票の中では、上記のような取り組みが設問・選択肢として設けられています。Q57.は、設問の選択肢から該当するものを選ぶ形式です。その中に「3 従業員や保健師等による女性の健康相談窓口を設置している」「4 女性特有の健康関連課題に対応可能な体制を構築している(産業医や婦人科医の配置、外部の医師や相談窓口の紹介等)」があります。相談窓口を社内で設置するのが難しい、産業医や婦人科医を自社で配置するのが難しいなどの場合は、積極的に外部の医療相談サービスを導入することも有効です。
出典:経済産業省「第12回健康投資ワーキンググループ」参考資料2「令和6年度健康経営度調査票(素案)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/012_s02_00.pdf
国や企業が連携して、働く女性への継続的なサポートを
女性への健康支援は、国や企業が連携して継続的に行うことが重要です。
そのため、厚生労働省は毎年3月1日から8日までを「女性の健康週間」と定めて、女性の健康づくりを国民運動として展開しています。
厚生労働省は、女性の健康支援ツールとして、「働く女性の心とからだの応援サイト」を用意しています。このほかにもさまざまなツールがありますので、こうしたツールを上手に活用して、働く女性が自身の健康課題を解決したり、企業が解決のために利用したりすることが奨励されます。
働く女性の健康課題は、女性だけでなく、一緒に働く人たち、企業、国の課題でもあります。性別にかかわらず、周りで一緒に働く人が女性の健康課題を知り、正しい配慮をすることは、女性の働きやすさだけでなく、すべての人の働きやすさにつながります。そして、働きやすい職場づくりは、企業の生産性アップ、国力アップにもつながります。
国も企業も、継続的に働く女性の健康サポートを行い、男女ともに働きやすい職場をつくる努力を続けていくことが重要です。
原稿・社会保険研究所Copyright
<事務局より>
ティーペックは「こころとからだの相談窓口」や「職場のヘルスリテラシー向上研修」など、充実の研修プログラムとサポート体制で働く女性の健康を支援します。 2024年10月1日からは「T-PEC女性の健康研修動画」を販売開始しました。男性を含めた全従業員が、女性の健康の特徴をホルモン変化から捉え、各ライフステージにおいて心身の変化との上手な付き合い方や仕事のスケジュール調整と健康について学べる内容となっています。
研修動画のサンプルは下記よりご覧いただけます。
ティーペックの各種サービスに関するお問い合わせはこちら >>
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【出典】
・厚生労働省「令和4年版働く女性の実情」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/22.html
・経済産業省「女性特有の健康課題による経済損失の試算と 健康経営の必要性について」令和6年2月
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/jyosei_keizaisonshitsu.pdf
・総務省『こども未来戦略「加速化プラン」の着実な実施』
https://www.soumu.go.jp/main_content/000960086.pdf
・厚生労働省「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-hoken_474087_00001.html
・厚生労働省「出産・子育ての安心につながる環境整備等の取組に対する財政支援」
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/24syokan/dl/01-07.pdf
・経済産業省「第12回健康投資ワーキンググループ」参考資料2「令和6年度健康経営度調査票(素案)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/012_s02_00.pdf
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※当記事は2024年10月時点で作成したものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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