2025年度健康経営度調査票 今後の方向性と改訂ポイント
こんにちは。企業の健康経営(R)を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
2025年7月18日に第3回健康経営推進検討会が開催され、今年度施策および調査等の方向性について報告されました。本記事では、検討会の議論のベースになった事務局資料等から要点をピックアップして紹介します。
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《目次》
1.今後の健康経営推進の在り方について
健康経営の可視化と質の向上
■健康経営の社会的意義
■性差に配慮した健康施策の取組状況
■女性の健康施策の効果検証プロジェクト
新たなマーケットの創出
■健康経営の国際展開によるヘルスケア産業の成長機会の創出
■健康経営のアジア展開
■ISO/TR25554-2 Technical Report策定に向けた動き
健康経営の社会への浸透・定着
■自治体による中小企業へのサポートの必要性
■他省庁との連携
2.健康経営銘柄の今後の在り方について
■健康経営銘柄2026の 選定方法
3.政策的視点からの健康経営度調査票等の改訂ポイント
■健康経営優良法人(ホワイト500)認定要件の変更
■調査票・申請書の個別設問の主な改訂内容
1.今後の健康経営推進の在り方について
経済産業省では、2014年度から健康経営度調査を実施しており、従業員の健康保持・増進のための取組状況など、各社の健康経営に関するデータを蓄積しています。2022年度からは健康経営優良法人認定制度の安定的な運営および持続的な発展を確保する観点から、経済産業省の補助事業として日本経済新聞社が運営しています。
そして2025年度からは民間事業者の創意工夫を活かすため、日本経済新聞社(認定事務局)が、健康経営優良法人認定制度も運営することになりました。官民連携によって、健康経営の普及・推進をさらに図っていくとしています。
健康経営の可視化と質の向上
■健康経営の社会的意義
健康経営は、企業等の価値向上に繋がるだけでなく、さまざまなメリットがあります。健康な従業員が増えることで、医療機関や介護施設等の利用が減り、地域の医療や介護資源の持続可能性が高まります。また、健康経営の取組が従業員の家族に広がると、家族全員の健康意識が高まり、ヘルスリテラシーの向上にも繋がります。健康経営は、地域の活力維持や社会発展にも貢献する社会的な意義のある経営手法といえます。
今後は、企業等が健康経営に取り組んだ成果や効果を、有機的に地域・社会に還元していく仕組みが必要で、そのためにこれからどのような政策を推進すべきかが議論されています。
図表1 健康経営の社会的意義
【出典】経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課
「第3回健康経営推進検討会事務局資料2」P7
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/003_02_00.pdf
■性差に配慮した健康施策の取組状況
2024年度の健康経営度調査の結果、女性の健康に関する研修等を実施している法人は85%と多くいましたが、研修等への参加率(中央値)が15.1%と低いことが明らかになりました(対象を限定せずに実施した場合)。 参加率を高めるためには、経営層や管理職を巻き込むことが重要です。参加率を高める工夫として、「従業員からの意見を参考にプログラム構築」、「自社管理職と有識者の対談形式にする」、「短時間構成にする」等が紹介されました。こうしたアイディアを参考にして、法人内での女性の健康に対する理解をさらに促進する必要があります。
図表2 女性特有の健康関連課題に関する知識を得るための取組に対する回答の集計結果
【出典】経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課
「第3回健康経営推進検討会事務局資料2」P8
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/003_02_00.pdf
■女性の健康施策の効果検証プロジェクト
経済産業省では、2025年度、女性の健康に関する取組を実施したい・実施している法人に対し、共通の評価指標を用いてその効果を測定し、可視化する「女性の健康施策効果検証プロジェクト」を実施しています。他社比較を可能にすることで、自社の立ち位置の把握や取組の改善に繋げることが狙いです。
具体的には、図表3のステップ1~3を選択して、その取組に応じた効果検証を行います。同プロジェクトの反響は大きく、141社が参加中です。
現在は、取組のフェーズごとにステップ分けし、毎週開催されるオンライン相談会等を通して、伴走支援を実施しており、次回の検討会(12月)で中間報告をする予定です(図表4)。
図表3 女性の健康施策の効果検証プロジェクト(概要)
図表4 女性の健康施策の効果検証プロジェクト 進捗報告
【出典】経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課
「第3回健康経営推進検討会事務局資料2」P11、14
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/003_02_00.pdf
新たなマーケットの創出
■健康経営の国際展開によるヘルスケア産業の成長機会の創出
健康経営は、日本国内だけでなく、国際的な広がりも見せています。普及をさらに図ることで、海外のヘルスケア産業のマーケット創出・拡大に貢献することができるうえに、「健康を軸とした日本企業のブランドイメージの向上」にも繋がります。
■健康経営のアジア展開
健康経営のアジア展開については、顕彰制度の普及を目指します。具体的には、インドネシア、スリランカ、タイを中心としたアジア地域に健康経営を普及させるため、ウェルビーイングを推進するためのフレームワークを定めた国際規格ISO25554をベースにしつつ、健康経営の取組を可視化する顕彰制度の創設を推進してはどうかという案が示されました。
■ISO/TR25554-2 Technical Report策定に向けた動き
ウェルビーイングの推進を実践するために推奨される枠組みを示す国際規格ISO25554:2024 「高齢化社会―地域や企業等でウェルビーイングを推進するためのガイドライン」は、健康経営の取組をベースとして、2024年11月に英語版が、2025年6月には日本語訳版が発行されました。
ガイドラインの発行によって多くの組織で活動が活性化され、ウェルビーイングが重視される社会になることが期待されます。
さらに、ISO25554の提供するフレームワークの理解を深めて普及を促進することを目的として、ウェルビーイング推進にかかわる国内外の取組を集めた事例集(Technical Report:TR)を現在開発中で、2027年春に発行する予定です。
健康経営の社会への浸透・定着
■自治体による中小企業へのサポートの必要性
健康経営を日本社会に浸透・定着させるためには、日本経済を支える大多数である中小企業への働きかけが不可欠です。しかし、中小企業への浸透については、健康経営に取り組むための資金やリソース不足の問題があり、健康経営が中小企業の主要な課題である「人材確保」の解決に直結していないため、「取組効果が実感できない」という状況があります。
このように、資金やリソース不足により、健康経営施策の推進が難しいと考えている中小企業に対しては、自治体の支援が有効です。検討会でも、中小企業に対する自治体支援の必要性と有効性についての意見が多く出ました。
リソース不足をカバーする自治体のサポート事例には、愛知県名古屋市や神奈川県藤沢市の取組があります。
図表7 自治体のサポート事例
【出典】経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課
「第3回健康経営推進検討会事務局資料2」P21
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/003_02_00.pdf
■他省庁との連携
健康経営の社会への浸透・定着については、各省庁の政策分野の計画書や報告書にも、健康経営の記載が増えており、他省庁との連携が進んでいることがわかります。
図表9 他省庁との連携
【出典】経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課
「第3回健康経営推進検討会事務局資料2」P25
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/003_02_00.pdf
2. 健康経営銘柄の今後の在り方について
■健康経営銘柄2026の選定方法
健康経営銘柄2026の選定方法は、昨年度と同様になる予定です。
図表10 健康経営銘柄2026 の選定方法
【出典】経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課
「第3回健康経営推進検討会事務局資料2」P27
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/003_02_00.pdf
3.政策的視点からの健康経営度調査票等の改訂ポイント
健康経営優良法人認定に関して、2025年度の改訂ポイントは図表11、図表12のとおりです。
特に注目すべき点を見ていきましょう。
図表11 健康経営優良法人認定に関する今年度の改訂ポイント①
図表12 健康経営優良法人認定に関する今年度の改訂ポイント②
【出典】経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課
「第3回健康経営推進検討会事務局資料2」P37、P38
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/003_02_00.pdf
■健康経営優良法人(ホワイト500)認定要件の変更
図表11の①「ステークホルダー全体に対する健康経営のあり方」では、健康経営優良法人認定(ホワイト500)の条件として、「国内外を含めたグループ会社への健康経営推進方針の浸透状況を確認する設問」が新設されました(新Q20)。具体的には、「グローバル含めグループとしての健康経営の推進方針をお答えください。」という設問になっており、推進方針の浸透のために、どのような取組を実施しているかを確認しています。
また、「取引先・他社への健康経営の支援に関する設問」が改訂され、新Q21として「サプライチェーンにおいて取引先・他社の健康経営の支援を行っていますか。実施している場合は、公表可能な支援先、支援内容を200文字以内でご記入ください。」という設問となり、具体的な内容を確認できるように選択肢が変更されました。健康経営優良法人(ホワイト500)の認定のためには、この2つの項目を満たすことが必要となります。
図表13 ステークホルダー全体に対する健康経営のあり方(ホワイト500認定要件の変更)
【出典】経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課
「第3回 健康経営推進検討会参考資料1-1」P13
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/003_s01_01.pdf
■調査票・申請書の個別設問の主な改訂内容
図表12で特に注目すべき点は、以下の5点です(以下の番号は、図表12の番号と一致)。
※より詳細な改訂内容は、「第3回 健康経営推進検討会参考資料1-1」からご確認いただけます。
(1)健康経営推進方針と目標、KGI、KPIの定義と整理
昨年度、健康経営優法人認定事務局編として改訂した『健康経営ガイドブック』に基づき、同ガイドブックで定義した健康経営推進方針と目標、KGI(目標の達成状況を確認する指標)、KPI(施策の進捗や効果を可視化する指標)の整理に沿って、設問と選択肢が改訂されました。
企業全体の目標、KGIへの検証に対して、「誰が関与しているか」が重要という観点から、「検証結果の確認、最終的なレビューや改善案の決定をどのレベルで実施していますか。」等の設問を追加するとともに、具体的に何を改善したかを確認できるように修正しました。
(2)健康経営の理解促進に関する取り組み
経営トップ自らによる理解促進に関して、健康経営の推進方針やKGI、KPIの進捗など、どのような内容まで経営トップが自ら発信しているかを具体的に確認できるように、選択肢を修正しました。これは、ホワイト500の認定要件、ブライト500の設問となります。
(3)経営レベルの会議での健康経営の課題化
取締役会での決議事項が企業によって異なることなどを踏まえ、健康経営の推進方針を議論している会議体を確認する設問を追記しました。具体的には、「健康経営の推進方針などを、取締役会や経営会議などの会議体で議論・決定していますか。」という設問とし、そのうえで、具体的な決定事項、報告事項を確認します。
(4)組織全体に影響する効果検証
『健康経営ガイドブック』において、「企業の健康風土醸成」に関する内容を記載したことから、組織全体に影響する効果検証についての設問(「健康経営の継続的な実施による組織全体の雰囲気や風土といった企業の健康風土の醸成状況や、それらに関連した状況の変化をどの様に把握していますか。」)を新設しました。これは、ブライト500の設問にも追加されます。
(9)プレコンセプションケアの認知と取り組み状況
プレコンセプションケアの説明として、企業において取り組む意義を追加し、大規模法人では具体的に企業で実施している取組内容を確認できるよう、アンケート設問・選択肢を修正しました。中小規模法人については、「プレコンセプションケアについて知っていますか。」という認知を問うアンケートを新設しました。
注目キーワードの記事「企業がおさえておくべき、プレコンセプションケアの基礎知識~企業にとっての重要性や、導入しやすいアプローチとは?~」を読む>>
検討会では、健康経営に取り組む企業から、「調査票の『項目』をクリアするのが難しいという声があるため、項目の内容についての説明や、どのような対応策が実施できるかなどのレクチャーをする機会があると望ましい」という意見が出ました。
検討会は、今後も議論を重ね、健康経営を中小企業まで広げること、女性の健康増進だけでなく、国民全員の健康増進に寄与する健康経営を日本社会に定着させることを目指し、さまざまな施策を実施していくとしています。
原稿・社会保険研究所Copyright
改訂版健康経営ガイドブックに携わった産業医科大学の森教授と、先進的な女性の健康施策を推進する野村HD様が効果的な戦略マップの作成方法や健康施策の最新事例を紹介!『産業医科大・森教授×野村HD×T-PECが事例から紐解く、成果につながる戦略と目標設定』>>
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【出典・参考文献】
・経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課「第3回健康経営推進検討会事務局資料2」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/003_02_00.pdf
・経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課「第3回 健康経営推進検討会参考資料1-1」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/003_s01_01.pdf
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※当記事は2025年8月時点で作成したものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
