2024年度 健康経営度調査等の状況報告と今後の方向性~前編~
こんにちは。企業の健康経営(R)を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
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2024年12月19日、第1回 健康経営推進検討会(従来の「健康投資ワーキンググループ」は、当検討会に再編されました)が開催され、健康経営度調査(以下、調査という)等の報告が行われました。
本記事では、検討会の議論のベースとなった事務局説明資料から要点をピックアップして紹介します。
《目次》
Ⅰ 2024年度健康経営度調査等の状況報告
●【大規模法人部門】健康経営度調査の回答状況
●【中小規模法人部門】健康経営優良法人2025の申請状況
●2024年度改訂のポイントに関する回答状況
1 健康経営の可視化と質の向上
2 新たなマーケットの創出
3 健康経営の社会への浸透・定着
Ⅰ 2024年度健康経営度調査等の状況報告
●【大規模法人部門】健康経営度調査の回答状況
2024年度の健康経営度調査の回答数は、前回から349件(前年比10%)増加して3,869件となりました。
2014年度と比べて、約8倍に増えています。
図表1 健康経営度調査回答数、健康経営優良法人(大規模法人部門)認定状況の推移
●【中小規模法人部門】健康経営優良法人2025の申請状況
中小規模法人部門の申請数を見ると、前回から2,964件増加して20,280件となりました。
2016年度と比べて約51倍に増えており、今後、申請数はさらに増えると予測されます。
図表2 健康経営優良法人(中小規模法人部門)申請・認定状況の推移
●2024年度改訂のポイントに関する回答状況
図表3は、2024年度調査と申請書について実施された改訂ポイントです。
以下の項では、この改訂のポイントに沿って2024年度の回答状況と分析、提案等が記されています。
図表3 2024年度改訂のポイント
1.健康経営の可視化と質の向上
◆PHRサービスの導入状況
図表4の左の円グラフに見られるように、7割弱の法人が、従業員が自身の健診情報やライフログ等のPHR(パーソナルヘルスレコード)を閲覧できる環境を整備しています。
また、それらの法人のうち5割以上は、「健康増進につながるアドバイスや提案を行うサービス」を提供しています。
図表4 PHRサービスの導入状況
◆集計データの分析・活用状況【大規模法人部門】
図表5の円グラフより、「いずれかのPHRサービスを導入している」と回答した法人のうち、9割は導入サービスのセキュリティ対策を実施しています。また、そのうちの約半数が集計データの分析・活用まで行っていますが、半数は環境整備のみにとどまっています。
経済産業省は「PHRの活用は、健康状態の可視化を通じ健康経営の質の向上に繋がると考えられるため、次年度調査では、 より深掘りして問うこととしてはどうか」という提案をしています。
図表5 集計データの分析・活用状況
◆40歳以上および40歳未満の従業員に関する健診データの提供【大規模法人部門】
40歳以上の従業員の健診データを保険者へ提供している法人は9割以上、同意書提出済みを合わせると大半の法人が保険者へ健診データを提供しています。 この調査結果を踏まえて、経済産業省は「次年度以降は当該設問を削除し、誓約事項に追加してはどうか」という提案をしています。
一方、図表6に示されているように、40歳未満の従業員に関する健診データを保険者へ提供している法人は8割(79.6%)です。40歳未満の健診データを活用した若年層対策を行っている健保組合は約3割というデータもあるため、経済産業省は「次年度も引き続き状況把握を行う」という方針を示しています。
図表6 40歳未満の従業員に関する健診データの保険者への提供と保険者の若年層対策
◆経営レベルの会議での議題化【大規模法人部門】
また、企業における健康経営の取組について、取締役会など経営レベルでその効果を議論している法人は約3割にとどまっています。ただし、上位法人ほどフィードバックシート等を活用した議論をしているとのデータもあり、下位法人にもフィードバックシート等を活用した議論が広がることが期待されます。
図表7 経営レベルの会議での議題化-暫定順位別-
◆柔軟な働き方の促進【大規模法人部門】
在宅勤務・サテライトオフィスなどのテレワークを導入している法人は8割弱(77.4%)です。これは、総務省「2023年通信利用動向調査」における従業員300人以上の企業の平均 64.1%と比較すると高い割合になっています。また、テレワークを導入している法人の9割(図表8の右表「いずれも行っていない」6.2%を除いた93.8%)は、在宅勤務による健康障害を防ぐための施策を実施しています。
図表8 柔軟な働き方の促進(大規模法人部門)
◆柔軟な働き方の促進【中小規模法人部門】
中小規模法人の場合は、在宅勤務・サテライトオフィスなどのテレワークを導入する法人は3割弱(27.7%)です。大規模法人部門と比べると導入比率は低くなっています。とはいえ、テレワークを導入している法人の9割(図表9の右表「いずれも行っていない」9.7%を除いた90.3%)は、健康障害を防ぐための施策を行っています。
図表9 柔軟な働き方の促進(中小規模法人部門)
◆ブライト500申請法人数の推移【中小規模法人部門】
ブライト500に申請する法人数は795件(前年度比20%)増加の4,224件となっています。ブライト500認定法人の倍率は高いものの、今年度から501位から1,500位までの法人を「ネクストブライト1000」として認定する顕彰枠が創設されたため、認定法人の倍率は2.8倍に緩和されました。
◆ブライト500申請法人 フィードバックシートの公開への回答【中小規模法人部門】
ブライト500の認定意義には他社の模範となることが含まれています。経済産業省は、今年度よりブライト500申請法人に対してフィードバックシートの公開を求めました。 その結果、ブライト500申請法人の99%にあたる4,167法人が、何らかの形で公開に「同意」と回答しています。今後は、中小規模法人においても他社の取組を参照することが可能となり、健康経営の裾野拡大や質の向上が期待されます。
2. 新たなマーケットの創出
◆海外法人を含めた健康経営の推進【大規模法人部門】
自社の健康経営推進方針に基づき、グローバルで健康経営を推進する法人は約44%(図表10の棒グラフ赤枠部分)となっています。これまでの調査等により、制度や文化の違いから国ごとに取組内容に差があること、また日本本社の関与レベルにも差があることがわかっています。
図表10 海外法人を含めた健康経営の推進
3. 健康経営の社会への浸透・定着
◆仕事と介護の両立支援【大規模法人部門】
ほぼすべての大規模法人が、「仕事と介護の両立支援」について何らかの施策を実施していますが、トップのコミットメントの下で実態を把握したり、両立支援の施策を必要とする従業員へ丁寧にフォローできている法人はまだ少ないと見られます。実態把握の割合は41.1%となっており、昨年度の27.2%よりは向上していますが、仕事と介護の両立支援は個別性が高いため、今後より一層一人ひとりの状況に沿った支援ができる体制整備を進めていくことが期待されます。
また、介護は従業員全員に生じ得る課題であることや、急に当事者になり得ることもあり、介護に直面する前の層へのリテラシー向上を促していく必要があると見られています。
図表11 仕事と介護の両立支援(大規模法人部門)
◆仕事と介護の両立支援【中小規模法人部門】
経営層のコミットメントがある法人は2割(20.3%)あるものの、その後の実態把握・施策実行が課題となっています。中小企業単独で実態把握の調査や従業員ニーズに基づいた施策検討を進めることが困難である場合も多く見られ、企業側の意識啓発と並行して両立支援のための外部支援者を育成していくことも課題です。今年度の調査結果を踏まえ、経済産業省は「次年度以降は、中小規模法人部門についても評価項目として追加してはどうか」という提案をしています。
図表12 仕事と介護の両立支援(中小規模法人部門)
◆常時使用しない従業員への取組【大規模法人部門・中小規模法人部門】
常時使用しない従業員※がいる大規模法人の89%、中小規模法人の81%が何らかの取組を実施していると回答していますが、個人向け施策の取組は低調といえます。
なお、大規模法人では「メンタルヘルス予防・不調者への対応」、中小規模法人では「一般定期健康診断の実施」が最も多く取り組まれています。
※常時使用しない従業員とは、以下のような従業員を指します。
1)日日雇い入れられる者
2)2箇月以内の期間を定めて使用される者
3)季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者
4)試の使用期間中の者
図表13 常時使用しない従業員への取組
◆他社からの派遣社員への取組【大規模法人部門・中小規模法人部門】
他社からの派遣社員がいる大規模法人の88%、中小規模法人の79%が、健康経営に関する何らかの取組を実施していると回答しています。 正社員と共有した職場の環境整備の割合は高い一方、個人向けの施策や派遣元法人との連携が必要な施策の取組割合は低いといえます。
図表14 他社からの派遣社員への取組
◆若年層から健康意識を高めるための取組~プレコンセプションケア~【大規模法人部門】
プレコンセプションケアとは、「男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身に付け、健康管理を行うよう促すこと」を意味します。この「内容を知っている」法人は全体の3割程度(27.6%)で、そのうち「取組を実施している」法人は3割程度(30.3%)にとどまっています。
プレコンセプションは男女双方を対象としていますが、実際には女性だけを対象にした取組を実施している法人が多数を占めています。プレコンセプションケアを正しく認知したうえで、若年層からの健康意識を高める取組を進めることが求められています。
図表15 プレコンセプションケア
◆小規模法人の申請状況【中小規模法人部門】
今年度、小規模法人への特例制度※の導入が実施されたことにより、特例制度該当の法人による申請数は昨年比510件増加の4,065件となり、小規模法人への裾野拡大が堅調に進行しています。「小規模法人への特例制度は、今後の申請状況を踏まえて、あり方を検討する」とされています。
※小規模法人に対する健康経営優良法人の申請間口を拡大し、従業員数の少ない法人に対して、取組の実態に合わせた健康経営の推進を促すにあたり、認定要件を低減した特例。
原稿・社会保険研究所Copyright
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<出典・参考文献>
・経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 「第1回健康経営推進検討会事務局説明資料②」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/001_03_00.pdf
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※当記事は2025年2月時点で作成したものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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