「ストレスチェック制度の新たな枠組み」~厚生労働省の検討会が、中間とりまとめ案を了承~
こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
1000社以上の改善提案を経験したコンサルに聞く!ストレスチェックを職場環境改善につなげるためのソリューション例とは?>>
2024年10月10日に、厚生労働省で「第7回 ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」が行われ、現在50人以上の事業場に年一回義務付けられているストレスチェックの実施を、従業員50人未満の小規模事業所に対しても義務づける方針が決まりました。集団分析・職場環境改善の義務化についても議論されましたが、それらについては今後の検討課題となっています。
本記事では、厚生労働省の「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ案」をもとに、ストレスチェックの今後の方向性について解説します。
<目次>
◆ストレスチェック制度の新たな枠組みを検討
◆50人未満の事業場のストレスチェックの今後のあり方について
◆マニュアルの作成と地産保の体制強化が不可欠
◆集団分析・職場環境改善の義務化は今後の検討課題に
◆外部の支援を受けて、職場環境改善の実施を促進
ストレスチェック制度の新たな枠組みを検討
2024年10月10日に、厚生労働省で「第7回 ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」が行われ、「50人未満の事業場のストレスチェック」と「集団分析・職場環境改善」の今後の方向性が盛り込まれた「中間とりまとめ案」が了承されました。
今回の「中間とりまとめ案」で了承されたストレスチェック制度の新たな枠組みを、以下の図にまとめました。
新たな取り組みとして、50人未満の事業場のストレスチェックを義務づける方針に決定しました。
集団分析・職場環境改善の義務化についても議論されましたが、それらについては今後の検討課題となっています。
厚生労働省は、2024年3月から「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」を原則月に一度のペースで開催し、職場におけるメンタルヘルス対策の現状やストレスチェック制度の効果、制度の枠組みなどについて、検討を重ねています。
2015年にストレスチェック制度が導入されて以来、50人以上の従業員が働く事業場では、年に1回、ストレスチェックの実施が義務付けられています。この結果を踏まえ、従業員のストレスからくるメンタルヘルスの不調を未然に防止するため、さまざまな取り組みが行われています。
ストレスチェック制度施行後5年以降に検討を行って必要な措置を講じることも、制度発足時に決められていました。検討会はこの趣旨を踏まえて開催されており、検討会の構成員は、日本医師会、日本精神科病院協会、日本公認心理師協会や日本経済団体連合会等の団体から集められた専門家が務めています。
検討会では、ストレスチェック制度の効果について、学術論文や研究報告書等をもとに検証を行ってきました。また、構成員から多くの意見があったストレスチェック制度の枠組み(50 人未満の事業場におけるストレスチェック及び集団分析・職場環境改善)についても議論を進めてきました。
そして、2024年10月10日に第7回検討会が開催され、「中間とりまとめ案」が了承されました。「50人未満の事業場のストレスチェック」については、十分な準備期間を設けた上で、義務を拡大する方針が決まりました。また「集団分析・職場環境改善」については、今回の「中間とりまとめ案」では、ともに努力義務のままとなりましたが、義務化については引き続きの検討課題としつつ、まずは適切な取り組みの普及を図る方針となりました。
ここからは「中間とりまとめ案」の概要を紹介します。
50人未満の事業場のストレスチェックの今後のあり方について
中間とりまとめ案では、「50人未満の事業場におけるストレスチェックのあり方」について、以下の5つの観点から検討した結果がまとめられています。
(1)労働者のプライバシー保護
(2)医師の面接指導の事後措置
(3)50人未満の事業場に即した実施内容
(4)実施コスト
(5)地域産業保健センター(以下、地産保)等による支援、その他50人未満の事業場に対する支援策
プライバシー保護のため、外部委託を推奨
産業医がいない小規模事業場では、適切な情報管理等が困難な場合があります。そこで、中間とりまとめ案では、「50人未満の事業場においては、原則として、ストレスチェックの実施を労働者のプライバシー保護の観点から外部委託することが推奨される。ただし、その場合でも、事業者の取り組みが形骸化しないよう、事業者として実施方針の表明や実施計画の策定等により、ストレスチェック制度に主体的に取り組んでいくことが基本であり、そのための実施体制・実施方法について整理し、外部委託業者に示していくべきである」としています。
厚生労働省は「ストレスチェック制度実施マニュアル」の中で、「外部機関にストレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合のチェックリスト」を示していますが、中間とりまとめ案では、「50人未満の事業場が、このチェックリストを活用できるように内容を見直して周知していくべきである」という方向性が示されました。
医師の面接指導後は、対応可能な措置や配慮が重要
50人未満の事業場では、規模等の実情から配置転換が難しいなど、できる措置に制約があることが考えられます。中間とりまとめ案では、そうした状況であっても「対応可能な措置や配慮を講じることが重要」であるとし、「国はストレスチェック制度の取り組みについて、事後措置を含めた好事例及びその効果やトラブルになりやすいケース等の事例をとりまとめて周知すべき」と提言しています。
50人未満の事業場の実施内容は、現実的で実効性のあるものを
現在の「ストレスチェック指針」や「ストレスチェック実施マニュアル」は、50人以上の事業場における実施体制・実施方法を念頭に置いて示されています。50人未満の事業場についてもこれに準じた取り組みが行われることが望ましいのですが、衛生委員会等の設置義務や産業医の選任義務がないため、体制が脆弱で、実態も多様なのが現状です。
そのため、中間とりまとめ案では「現在の50人以上の事業場における実施体制・実施方法を一律に求めることは困難であり、50人未満の事業場に即した現実的で実効性のある実施内容を求めていく必要がある」としています。
一方で、ストレスチェックの実施結果の監督署への報告義務については、「一般健診と同様に、50人未満の事業場については、負担軽減の観点から課さないことが適当」としています。衛生委員会等の設置義務がない50人未満の事業場では、労働者が安心してストレスチェックを受けられるよう「関係労働者の意見を聴く機会を活用する」こととし、「その機会は衛生委員会等のように会議体の構成要件は課さないものの、事業場の実情に応じた方法で、実効性を確保することが重要」だとしています。
実施コストは、1人当たり数百円から千円程度
50人未満の事業場が、ストレスチェックの実施を外部機関に委託する場合、実施コストが問題となります。そこで、厚生労働省は50人未満の事業場にストレスチェックに関するサービスを提供している機関に対してアンケート調査を行い、実施コストの結果を発表しています。それによると、「実施方法等によって異なるものの、ストレスチェック自体の費用は1人当たり数百円から千円程度であった」としています。
地産保等による支援、その他の支援策が必要
50人未満の事業場において、ストレスチェック制度が適切に実施されるためには「都道府県産業保健総合支援センター(産保センター)及び地域産業保健センター(地産保)による支援が重要であり、その充実が必要である」としています。
現在、地産保では、50人未満の事業場に対して登録産業医・保健師等による産業保健支援サービスを無料で提供しています。また、高ストレス者の面接指導については、登録産業医が対応しています。
そのため、ストレスチェックの義務対象を50人未満の事業場に拡大する場合、面接指導の対象者が大幅に増加することが推測されることから、「円滑な施行に資するよう、登録産業医等の充実など、地産保で高ストレス者の面接指導に対応するための体制強化を図る必要がある」と提言しています。
マニュアルの作成と地産保の体制強化が不可欠
中間とりまとめ案では、「ストレスチェック及び面接指導の実施により、自身のストレスの状況への気付きを得る機会は、全ての労働者に与えられることが望ましく、個々の労働者のストレスを低減させること、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することの重要性は、事業場規模に関わらないものである」と指摘しています。
そして、「ストレスチェックの実施義務対象を50人未満の全ての事業場に拡大することが適当」との方向性を打ち出しています。そのため、国は「50人未満の事業場に即した、労働者のプライバシーが保護され、現実的で実効性のある実施体制・実施方法についてマニュアルを作成し、周知を徹底する」としています。
中間とりまとめ案では、前述した「地産保における面接指導の体制強化」と併せて、支援体制の整備、支援を含めた制度の周知をした上で、実施体制の整備に要する期間を確保するため、十分な準備期間の設定を行うことを進言しています。
集団分析・職場環境改善の義務化は今後の検討課題に
「令和5年度労働安全衛生実態調査」によれば、集団分析を実施した事業所の割合は50人以上で64.5%、10人~49人で22.6%になっています。また、職場環境改善で集団分析結果を活用した事業所の割合は50人以上で52.1%、10~49人で17.3%にとどまっています。
職場環境改善については、大企業であっても試行錯誤しながら取り組んでいるところであり、また集団分析結果も含めて活用する情報や実勢体制・実施方法などは極めて多様であることを踏まえ、中間とりまとめ案では「事業場規模に関わらず義務化することは時期尚早であり、義務化については引き続きの検討課題としつつ、まずは適切な取り組みの普及を図るべきである」としています。
検討会では「集団分析だけでも義務化することは可能か」との意見もありましたが、「集団分析だけ実施する場合には、管理職が神経をとがらせたりするなど、むしろマイナスが生じることもあることから、集団分析だけをやればいいと誤解されないように、一体的な制度であることをしっかり示すべき」との指摘もあり、「現時点では、集団分析だけを義務化するという判断はできない」と結論づけました。
外部の支援を受けて、職場環境改善の実施を促進
出典:厚生労働省 ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 第5回資料「資料1 第1回~第4回検討会における主な意見及び論点案」49ページ
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001279642.pdf
中間とりまとめ案では、上記の実態を踏まえて、職場環境改善の実施を促進するためには「外部の支援」が必要であるとし、支援の充実を求めています。併せて、「国は、ストレスチェック制度について、労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止する一次予防の効果が得られるものであり、集団分析及び職場環境改善まで含めた一体的な制度であることを、事業者や労働者に対して明確に伝えることができるような方策を検討し、関係者の理解を図っていくべきである」としています。
また、ストレスチェック制度が労働者のストレス状況の改善及び働きやすい職場環境の実現を通じて生産性向上にもつながるものであることに留意し、「事業経営の一環として、積極的に制度活用を進めるよう、事業者に働きかけていくべきである」とも述べています。
この「中間とりまとめ案」は委員から了承を得られたので、引き続き検討会においてストレスチェック制度の実効的な運用等について、議論を行うこととなっています。
原稿・社会保険研究所Copyright
1000社以上の改善提案を経験したコンサルに聞く!ストレスチェックを職場環境改善につなげるためのソリューション例とは?>>
**************
【出典】
・厚生労働省 ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 第7回資料「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ案」
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001314987.pdf
・厚生労働省 令和3年度 厚生労働省委託事業「ストレスチェック制度の効果検証に係る調査等事業 報告書」
https://www.mhlw.go.jp/content/000951471.pdf
・厚生労働省 ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 第5回資料「資料1 第1回~第4回検討会における主な意見及び論点案」
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001279642.pdf
・厚生労働省「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ」
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001323707.pdf
**************
※当記事は2024年11月時点で作成したものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
関連記事
ストレスチェックの記事一覧は、こちら
