第3期データヘルス計画で、さらなる健康づくりを推進
こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
2024年度から「第3期データヘルス計画」がスタートします。本記事では、これまでの「データヘルス計画」の流れを振り返りながら、第3期データヘルス計画のポイントについて解説します
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≪目次≫
◆データヘルス計画とは?
◆第3期データヘルス計画のポイント
◆データヘルス計画の実効性を高めるには、事業主とのコラボヘルスが不可欠
データヘルス計画とは?
健康寿命延伸のための仕組み
「データヘルス計画」とは、国民の健康寿命延伸のための新たな仕組みです。具体的には、保険者がレセプトおよび健診データの分析に基づき、加入者の健康増進に役立つ事業を実施する保健事業計画です。データヘルス計画の背景には、「治療から予防へ」という政府の方針があります。2008年4月より特定健診・特定保健指導が始まり、従来のレセプトデータに加えて、全国の特定健診データが電子化されたことから、医療と健康のデータを使って疾病予防を進めることができるようになりました。データヘルスとは、こうした医療と健康のデータを活用した疾病予防・健康づくりの総称です。
このように、電子情報の基盤が整備されたことから、2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」において、健康保険組合(以下、「健保組合」という)等の保険者に対し、レセプト・健診のデータの分析に基づく加入者の健康増進のための事業計画として、データヘルス計画の作成・公表、事業実施、評価等の取り組みが求められることになりました。健保組合を中心とした「第3期データヘルス計画」への取り組みについて見ていきます。
実施主体は保険者
データヘルス計画の実施主体者は保険者です。保険者が加入者の医療・健康情報を分析して、加入者の健康増進に役立つ事業を実施します。
2015年度(2017年度までの3年間)から「第1期データヘルス計画」がスタートし、2018年度から2023年度までの6年間は「第2期データヘルス計画」が実施されました。各保険者はPDCAサイクルを回しながら、第1期、第2期の保健事業を実施し、そして2024年度からは第3期がスタートします。
「第3期データヘルス計画」は2029年度までの6年間を対象としています。2024年度からは、データヘルス計画の中核を成す第4期特定健診・特定保健指導がスタートすることから、いかに実効性の高い事業にするかが問われているといえます。
健保組合は加入者の健康増進を目指す
データヘルス計画は国民の健康寿命延伸のための仕組みですが、保険者である健保組合はデータヘルス計画で何を目指すのでしょうか。
一番重要な目標は、加入者の健康増進です。加入者の病気の罹患や重症化を予防できれば、加入者の人生の質が上がり、事業主にとっては「人的資本経営」(健康経営)にプラスになります。さらに、医療費も削減することができます。結果として、円滑な運営が可能になり、持続可能な健康保険制度を構築することができます。
データヘルス計画で目指すこと
【出典】厚生労働省保険局 健康保険組合連合会「データヘルス計画作成の手引き 第3期改訂版」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001114929.pdf
第3期データヘルス計画のポイント
ポイント1 健保組合の優位性を生かした「コラボヘルス」による健康課題の解決
健保組合は働き盛り世代の健康にアプローチできる優位性があります。また、労働安全衛生法に基づき職場での健康診断が実施されてきたことから、健診データが得やすく、被保険者の健康課題を見つけやすいという特長があります。
一方、事業主の側にも健康経営の考え方が浸透してきていることから、「健保組合と事業主との連携(コラボヘルス)」によって職場の健康課題を共有するためにもデータヘルス計画は有用です。
ポイント2 データヘルス計画の「標準化」による保健事業の質の向上
第1期、第2期データヘルス計画の実施によって、職場間で健康状況や医療費に格差があることが明らかになりました。今後、働き盛り世代の健康増進と健康格差を解消していくためには、どこで働いても同じようなサービスが受けられるようにすることが重要です。そのためには、全国の健保組合が、健康課題解決に成功している健保組合のやり方を学び、自分たちの保健事業に応用できるようにすることが必要です。
そこで、第3期データヘルス計画では、「計画の標準化によって保健事業の質を向上させること」を大きな狙いとしています。具体的には、共通の評価指標で全国の保健事業を比較・評価し、成果の出ている保険者から効果的な知見を抽出するという方法を取ります。この知見を健保組合全体で共有することで、保健事業の質の向上を図ります。
ポイント3 第4期特定健診・特定保健指導の「アウトカム評価」をデータヘルス計画に生かす
特定健診・特定保健指導のデータは、データヘルス計画の中核を成すデータですが、第3期データヘルス計画との連携において、第4期特定健診・特定保健指導では、「アウトカム評価」が導入されます。
特定健診の目的は、健診によって内臓脂肪の蓄積による糖尿病などのリスクの高い対象者を抽出し、特定保健指導によって対象者自身の状態の自覚、生活習慣の改善を促すことです。健保組合や事業主は、健診の結果によって職場の健康課題を可視化することができ、有効な保健事業につなげることができます。
第3期特定健診・特定保健指導において、特定保健指導の実施率を向上させる見直しが行われましたが、成果はあまり上がりませんでした。そこで、第4期では大きな見直しが行われました。その一つが特定保健指導へのアウトカム評価の導入です。アウトカム評価の主要達成目標を「腹囲2㎝・体重2㎏減」としたこと、腹囲2cm・体重2kg減の過程である「腹囲1cm・体重1kg減」を達成した場合も、保健指導の成果が出たと評価すること、行動変容(食生活の改善、運動習慣の改善、喫煙習慣の改善、休養習慣の改善、その他の生活習慣の改善)も評価することになりました。また、ICTの活用も新しく盛り込まれています。
この見直しにより、特定保健指導の成果が上がることが期待できます。さらに、生活習慣病リスク者が減ること、第4期特定健診・特定保健指導のデータを生かした効果的なデータヘルス計画が推進されることも期待されています。
表 第4期特定健診・特定保健指導の主な見直し内容
【出典】厚生労働省保険局 健康保険組合連合会「データヘルス計画作成の手引き 第3期改訂版」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001114929.pdf
データヘルス計画の実効性を高めるには、事業主とのコラボヘルスが不可欠
健保組合と事業主は積極的に連携を
コラボヘルスとは、健保組合と事業主が積極的に連携して、明確な役割分担と良好な職場環境の下で、加入者である従業員と家族の健康づくりを効果的・効率的に実行することです。したがって、健保組合が加入者の健康課題を解決するためにデータヘルス計画を作成し、その実効性を高めるには、コラボヘルスが不可欠です。
健保組合は職場の健康状況と生活習慣の情報を分析し、その分析結果と課題解決策を事業主と共有します。そして、事業主の理解の下、事業主と健保組合が両輪となってデータヘルス計画を推進しなければ、計画の実効性は高まりません。
コラボヘルスのために「健康スコアリングレポート」の活用を
健康スコアリングレポートは、加入者の健康状況や生活習慣の状況、医療費の状況、予防・健康づくりへの取り組み状況などについて、全健保組合平均や事業平均と比較して、自健保組合や各事業所の立ち位置を把握できるツールです。
健康スコアリングレポートの各指標を健保組合と事業主が共有することで、事業主の健康づくりに関する意識は高まります。
コラボヘルスで最も重要なことは、データの分析結果から具体的なアクションにつなげることです。健康スコアリングレポートを参考にして、健保組合と事業主で問題意識の共有を図った上で、課題解決のための健康増進事業を「計画、実施、評価、改善」のPDCAサイクルに沿って実施していくことが重要です。
図 健康スコアリングレポートの活用方法
【出典】厚生労働省・日本健康会議・経済産業省「健康スコアリング活用ガイドライン2022 年度版(2021年度実績分)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000369666.pdf
働き盛り世代の健康増進は、企業競争力向上に寄与
データヘルス計画によって、働き盛り世代を中心とした加入者の健康増進を図ることは、企業競争力の向上にも寄与します。
政府は、少子高齢化の進展や潜在成長率の停滞などを踏まえて、人への投資を重視する政策を掲げています。経済産業省は、持続的な企業価値の向上のためには、社員を資源ではなく資本として捉える「人的資本経営」の推進を提起しています。従来進められている健康経営は、「人的資本経営」の重要な要素です。
健保組合によるデータヘルス計画は、健康経営に寄与し、働き方世代がやりがいを持って仕事をし、生き生きと人生を送ることができる長寿国・日本の基盤を作る大切な計画といえます。
原稿・社会保険研究所Copyright
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参考
・厚生労働省保険局 医療介護連携政策課 医療費適正化対策推進室「第4期特定健診・特定保健指導の見直しについて」
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/001127418.pdf
・厚生労働省 「データヘルス計画作成の手引き 第3期改訂版」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061273.html
・厚生労働省・日本健康会議・経済産業省「健康スコアリング活用ガイドライン2022 年度版(2021年度実績分)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000369666.pdf
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※当記事は2024年2月時点で作成したものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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