内臓脂肪は万病のもと ~介護予防、医療費抑制の面でもメタボ対策は重要~
こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
メタボリックシンドローム(通称:メタボ)を放置しておくと、あらゆる病気のリスクが高まります。特に、心筋梗塞や脳卒中といった循環器系の病気の引き金になることが多く、注意が必要です。
本記事では、メタボと診断される従業員を減らすために、押さえておきたいポイントなどについてお伝えします。
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≪目次≫
◆メタボリックシンドロームを放置しておくと、深刻な病気を引き起こす
◆介護予防、医療費抑制の面でもメタボ対策は重要
◆メタボの診断基準は、男性85cm・女性90cm
◆メタボ対策のために、以下を実践しよう!
◆特定保健指導を受けるメリットを知って、積極的に利用しよう
◆メタボを改善して、より健康的な生活へ
メタボリックシンドロームを放置しておくと、深刻な病気を引き起こす
メタボリックシンドローム(通称:メタボ)は、「内臓脂肪症候群」の別名です。皮下脂肪ではなく、胃や腸などの臓器の周りにつく内臓脂肪が多くたまった「内臓脂肪型肥満」に脂質代謝異常、高血圧、高血糖のうち2つ以上が当てはまる状態をいいます。
メタボは、「太っている」、「やせている」という外見だけで判断できないケースが多くあります。見た目は細くても、内臓脂肪が蓄積されていて、おなか周りがポッコリしている「隠れ肥満」の可能性もあります。
内臓脂肪が過剰にたまると、健康に大きな影響があります。「内臓脂肪型肥満」は糖尿病や高血圧症、脂質異常症等を引き起こす原因になります。特に、心筋梗塞や脳卒中といった循環器系の病気の引き金になることが多いので注意が必要です。
循環器系の病気は命にかかわることも多く、日本人の死亡原因の上位を占めています。2022年の「人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、死亡原因の1位は悪性新生物(腫瘍)ですが、第2位が心疾患(高血圧性を除く)、第4位が脳血管疾患となっています。2位と4位を合わせると21.6%となり、循環器系の病気で亡くなる人が多いことがわかります(図表1)(※1)。
図表1 日本人の主な死因の構成割合
【出典】
※1 厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai22/dl/kekka.pdf
介護予防、医療費抑制の面でもメタボ対策は重要
心筋梗塞や脳卒中などの循環器系の病気の中には、体に麻痺が残るなど、後遺症によって生活の質を著しく低下させるものがあります。「2022(令和4)年国民生活基礎調査」によると、介護が必要となった主な原因としては認知症が23.6%と最も多いのですが、第2位は脳血管疾患(脳卒中)の19.0%となっています(※2)。要介護にならず、自立した生活を維持するためには、メタボ対策が大事になります。
また、「令和3(2021)年度 国民医療費の概況」によると、医科診療医療費を傷病分類別に見たものでは、「循環器系の疾患」が6兆1,116億円(構成割合18.9%)と最多になっています。国の医療費抑制の面からも、家計の中での医療費を抑えるためにも、メタボの予防・改善に取り組むことが求められます(※3)。
※2 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/05.pdf
※3 厚生労働省「令和3(2021)年度 国民医療費の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/21/dl/kekka.pdf
メタボの診断基準は、男性85cm・女性90cm
日常生活の中でメタボ対策をするために、メタボの診断基準を知っておきましょう。
日本では、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm・女性90cm以上で、かつ血圧・血糖・脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れると、「メタボリックシンドローム」と診断されます(図表2)(※4)。
図表2 メタボリックシンドロームの診断基準
【出典】
※4 メタボリックシンドローム診断基準検討委員会「メタボリックシンドロームの定義と診断基準」日本内科学会雑誌、2005年
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000120907.pdf
メタボ対策のために、以下を実践しよう!
メタボと診断される従業員を減らすために、以下のポイントについて働きかけましょう。
●日頃から、規則正しい生活習慣を心掛けよう
内臓脂が蓄積してしまう主な原因は、「食べ過ぎ」と「運動不足」だといわれています。このほか、喫煙、アルコール、加齢、ストレスなども関連しています。メタボの予防・改善のためには、日頃から規則正しい生活習慣を心掛け、食べ過ぎに注意して、体を動かすことが重要であることを従業員へ伝えましょう。
●年に1度の健診を受けよう
1年に1度、40〜74歳の人を対象に実施される特定健診・特定保健指導は、生活習慣病の引き金となるメタボの早期発見に重点を置いた健診です。健診を受けることは、自分自身の生活習慣を見直し、改善に取り組むきっかけとなります。また、病気を早期に発見し、早期治療につなげることができます。
●特定保険指導が必要な人は、特定保健指導を受けよう
特定健診の結果、生活習慣病発症のリスクが高く、特定保健指導に該当した人には、医師や保健師、管理栄養士などの専門家によって、生活習慣改善のアドバイスやサポートが受けられます。特定保健指導を受けるメリットを伝え、該当する従業員が指導を受けて生活を見直し、健康状態を改善するよう、働きかけましょう。
●医療機関への受診が必要な人は、医師に相談を
特定健診の結果、医療機関への受診が必要と判定された人は、自身の健康に関わることですので、医師に相談することを勧めましょう。
特定保健指導を受けるメリットを知って、積極的に利用しよう
特定保健指導を受けると、以下のようなメリットがあります。上手に利用して、健康状態を改善させることが大切です。
【メリット1】 検査値が改善
特定保健指導には、内臓脂肪の蓄積と生活習慣病の危険因子の数に応じて、「動機付け支援」と「積極的支援」があります。よりリスクの高い人に対して行われるのが「積極的支援」です。
図表3は、積極的支援に該当した人で、特定保健指導に参加した人と参加しなかった人の4年後の結果を示したものです。男女ともに、参加したグループの腹囲の改善幅が大きいことがわかります(※5)。
図表3 積極的支援該当者(過去特定保健指導参加なし)の腹囲の比較(2013年と2017年)
【メリット2】 ライフスタイルが改善
特定保健指導に参加した人では、食習慣の改善が60.7%、運動習慣の改善が39.5%、禁煙継続が4.4%(喫煙者のうち9.5%)認められています(図表4)(※6)。
保健師や管理栄養士といった健康づくりのプロと一緒に生活習慣の改善に取り組むことができるので、自身の悪い生活習慣を見直し、健康的なライフスタイルに切り替えることができるようになります。
図表4 特定保健指導による行動変容の達成状況
【メリット3】喫煙について相談できる
煙は、血圧や血糖、血中脂肪に影響を及ぼし、メタボのリスクを高めます。さらに、喫煙とメタボが重なると、動脈硬化がさらに進むことになり、リスクのない人に比べて、約4~5倍も脳梗塞や心筋梗塞にかかりやすくなります。
しかし、「体に悪いとわかっていても、なかなか禁煙できない」という人が多いのが現状です。特定保健指導では、禁煙の助言が受けられます。希望者には禁煙治療のできる病院を紹介してくれるなど、的確なアドバイスやサポートを受けることができます。
【メリット4】 減酒の提案が受けられる
多量の飲酒は、がんや高血圧、脂質異常症などの生活習慣病のリスクを高めます。また、純アルコール1gは7kcalに相当することから、体重コントロールの観点からも見逃せないリスクとなります。
特定保健指導では、アルコールに関する相談ができます。医師、保健師、管理栄養士などの専門家は、質問票の答えによって飲酒の状況を把握できるため、減酒に向けた具体的な提案をしてくれます。
【出典】
※5 厚生労働省「特定健診・保健指導の医療費適正化効果等の検証のためのワーキンググループ 取りまとめ」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000616588.pdf
※6 厚生労働省「第5回 効率的・効果的な実施方法等に関するワーキング・グループ資料1」 特定保健指導の評価体系について
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000968520.pdf
メタボを改善して、より健康的な生活へ
内臓脂肪が蓄積されて腹囲が大きくなってしまう主な原因は、「食べ過ぎ」と「運動不足」です。このほかに喫煙、飲酒などの原因もありますが、まずは、「食」と「運動」についての習慣を見直して、メタボの予防・改善に取り組むことが大切です。
そうはいっても、自分の力だけで生活習慣を見直すのはなかなか難しいもの。そこで、特定保健指導を上手に使って専門家のサポートを受けることで、メタボを改善し、より健康的な生活を手に入れることができるようになります。
原稿・社会保険研究所Copyright
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出典
・厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai22/dl/kekka.pdf
・厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/05.pdf
・厚生労働省「令和3(2021)年度 国民医療費の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/21/dl/kekka.pdf
・メタボリックシンドローム診断基準検討委員会「メタボリックシンドロームの定義と診断基準」日本内科学会雑誌、2005年
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000120907.pdf
・厚生労働省「特定健診・保健指導の医療費適正化効果等の検証のためのワーキンググループ2019年度 取りまとめ」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000616588.pdf
・厚生労働省「第5回 効率的・効果的な実施方法等に関するワーキング・グループ資料1」 特定保健指導の評価体系について
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000968520.pdf
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※当記事は2024年1月時点で作成したものです。
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