健康経営
健康経営 2023/06/30

健康経営の認定状況および今後の展開

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

2023年3月16日に、第8回目となる「健康投資ワーキンググループ」が開催されました。その中では、「健康経営銘柄2023」「健康経営優良法人2023」の認定状況や、次年度にむけた「健康経営度調査」の改訂、今後の健康経営施策の展開等についての議論が進められました。

本記事では、その要点についてお伝えいたします。

≪目次≫
◆「健康経営銘柄2023」と「健康経営優良法人2023」
◆次年度調査設問等の改訂について
◆健康経営施策の今後の展開

「健康経営銘柄2023」と「健康経営優良法人2023」

2023年3月8日、経済産業省と東京証券取引所は「健康経営銘柄2023」を、また日本健康会議は「健康経営優良法人2023」をそれぞれ発表しました。

第9回となる「健康経営銘柄2023」には、31業種49社が選定されました(※1)。選定は、健康経営優良法人(大規模法人部門)申請法人の上位500位以内の上場企業から、1業種1社を基本として行われ、ROE(自己資本利益率)、前年度回答状況、社外への情報開示の状況についても評価しています。また、各業種で最高順位の企業の平均より優れている企業も選定しています。 

一方、「健康経営優良法人2023」には、大規模法人部門で2,676法人、中小規模法人部門で1万4,012法人が認定されました。また、大規模法人部門では、特に優れた評価の上位500法人を「ホワイト500」、中小規模法人部門では、「ブライト500」として認定しています(※2)。

経済産業省では、「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人(大規模法人部門)」を選定するにあたり、
「健康経営度調査」を実施しています(以下、調査という)。調査に回答した法人に対し、各施策の偏差値等を記載した評価結果(フィードバックシート)を送付し、自社の取り組みの改善に活用するよう促しています。

また、他社との比較を通じたさらなる取り組みの推進や、求職者や投資家等ステークホルダーに対する情報開示を促す観点から、評価結果の開示に同意した法人の結果を健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト「ACTION健康経営」で公表しており、開示に同意した2,238法人分の評価結果を見ることができます(※3)。評価結果の開示は、健康経営優良法人を目指す企業にとっては、自社に足りない点を確認できるため、非常に有益といえるでしょう。

【出典】
※1 経済産業省「健康経営銘柄2023」に49社を選定しました!
https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230308003/20230308003.html

※2 経済産業省「健康経営優良法人2023」認定法人が決定しました!
https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230308002/20230308002.html

※3 ACTION!健康経営(日本経済新聞社)
https://kenko-keiei.jp/

次年度調査設問等の改訂について

現在、経済産業省の「健康・医療新産業協議会 健康投資ワーキンググループ」において、調査設問の改訂等についての議論が進められています。3月16日に開催された「第8回健康投資ワーキンググループ」(以下、WGという)では、以下の点が挙げられました。

1.業務パフォーマンス指標に関する開示

2022年度健康経営度調査の調査項目Q71「従業員の生産性や組織の活性度等についてどのような評価指標を設定し、定期的に測定していますか」では、アブセンティーイズム(傷病による欠勤)、プレゼンティーイズム(出勤はしているものの健康上の問題によって完全な業務パフォーマンスが出せない状況)、ワークエンゲージメント(仕事へのポジティブで充実した心理状態)といった業務パフォーマンス指標について質問していますが、この回答内容は、健康経営優良法人の認定要件としての評価対象にはなっていません。これについて、WGでは、一定数の企業が測定結果や測定方法の開示に取り組んでいる状況を鑑み、次年度の調査では新たに評価対象としてはどうか、といった方向性が示されました。

業務パフォーマンス指標に関する開示

2.労働安全衛生に関する開示

労働安全衛生について、以下の改訂が提案されました。

①健康経営の目的・体制の開示有無を問う設問において、労働安全衛生も含めることを必須とする。

調査項目のQ19「健康経営の推進に関して会社全体の目的・体制を社外に公開していますか」には、「労働安全衛生だけの取り組みの場合は該当しません」という但し書きがついていますが、これを「労働安全衛生に加え、健康経営の目的・体制を公開している必要があります」と修正し、労働安全衛生も健康経営優良法人の認定要件の評価対象に含める案が提案されました。

②各指標の開示状況を問う設問において、労働安全衛生に関する以下の選択肢を追加する。

上記①に伴い、労働安全衛生に関する選択肢を追加(赤字部分)することが提案されました。

出典:経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課「健康・医療新産業協議会 第8回健康投資WG 事務局説明資料」P13
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/008_02_00.pdf

3.仕事と育児・介護の両立支援

従業員が心身ともに健康を維持しつつ業務パフォーマンスを向上させていくためには、育児や介護といった個別事情に応じた働き方への支援等が重要となっています。

現行の調査票では、Q44「適切な働き方の実現に向けて、どのような取り組みを行っていますか」の質問において、「労働時間の適正化」と「休暇の取得促進」を評価項目としていますが、新たに「育児」や「介護」についても質問し、評価対象としてはどうか、といった案が示されました。また、各種支援制度の利用率についても併せて聞いてはどうか (次年度は評価には使用しない。)」という案も出ています。(※4)

業務パフォーマンス指標に関する開示

【出典】
※4 経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課「健康・医療新産業協議会 第8回健康投資WG 事務局説明資料」P16
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/008.html

4.健康経営度調査における特定健診・特定保健指導実施率の評価案

この項目は、厚生労働省から提出された内容です。調査項目Q48「主な健保組合等保険者が実施する、特定健康診査および特定保健指導の実施率を把握していますか。」では、実施率の把握の有無を質問していますが、「主な保険者が実施する、特定健康診査および特定保健指導実施率の把握と具体的な数値を記入してください。」という設問案も示されており(※5)、今後は実施率の数値も問われる可能性があります。

【出典】
※5 厚生労働省「健康経営度調査における特定健診・保健指導実施率の評価案」P2
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/008_s01_00.pdf

健康経営施策の今後の展開

さらに、WGでは今後の展開として、以下の点が報告されました。

1.中小企業への普及拡大

・中小企業向け補助金における審査加点
「ものづくり補助金」をはじめ、中小企業を対象とした以下の補助金審査の加点対象に、「健康経営優良法人に認定された事業者」が追加されることになりました。

出典:経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課「健康・医療新産業協議会 第8回健康投資WG 事務局説明資料」P20
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/008_02_00.pdf

「ものづくり補助金」(正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」)とは、中小企業が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援する補助金です。そのほか、ITツール(ソフトウェア・サービス等)の導入を支援する「IT導入補助金」、事業承継を契機とした経営革新的な取り組みや、専門家を活用した事業の引継ぎを支援する「事業継続・引継ぎ補助金」、中小企業等がものづくり基盤技術及びサービスの高度化に向けて、大学・公設試と連携して行う研究開発を最大3年間支援する「Go-tech補助金」を審査する際の加点項目の対象になります。

「健康経営優良法人に認定された事業者」が加点対象になることは、補助金申請へのハードルが下がるため、中小企業にとっても大きな魅力があるといえます。また、従業員にとっても、補助金の活用は、業務効率化による生産性の向上や仕事のモチベーションアップ、スキルアップにもつながるといえます。

・中小企業向け融資における特別利率の適用
日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」の貸付対象に、「健康経営優良法人の認定を受けていること」が追加されます。また、ホワイト500、ブライト500にはさらなる優遇利率が適用されます。

中小企業向け融資における特別利率の適用

出典:経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課「健康・医療新産業協議会 第8回健康投資WG 事務局説明資料」P21
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/008_02_00.pdf

2.健康経営を支える産業の創出

・健康経営関連サービスの把握
WGでは、「健康経営支援サービスのプラットフォームを検討するため、次年度調査票では、自社が抱える健康課題に対し、どのような外部サービスを導入しているか問うてはどうか(評価には使用しない)」といった意見がありました。

・健康経営企業が抱える課題と支援サービスのマッチングに向けた検討
健康経営企業が、自社の健康課題に対し、エビデンスに基づき質の高いサービスを受容できる環境整備が求められることから、「次年度委託事業において、健康経営でニーズが高いと考えられるメンタルヘルス領域から、健康経営企業がエビデンスに基づきサービスを選択できる仕組みの検討(自社の健康課題の特定や、その解決に資するサービス の可視化等)を行う。」ことが提案されました。

出典:経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課「健康・医療新産業協議会 第8回健康投資WG 事務局説明資料」P23
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/008_02_00.pdf

3.健康経営の国際展開

・海外事業所等も含む健康経営の取組調査
「健康経営の国際展開の検討にあたり、まずは海外の現状を把握することを目的に、次年度調査票では、海外事業所を有する法人に対し、その取組内容をアンケート形式で問うてはどうか。(評価には使用しない。)」といった案も検討されています。(※6)

以上が、WGで議論された主な改訂内容です。次回のWGは、7月に開催予定です。WGの動向を注視しつつ、上記の改訂内容を踏まえた、次年度調査への準備をしておくことは必須といえるでしょう。

【出典】
※6 経済産業省 「健康・医療新産業協議会第8回健康投資WG」資料2
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/008.html


原稿・社会保険研究所Copyright

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出典

・経済産業省「健康経営銘柄2023」に49社を選定しました!
https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230308003/20230308003.html

・経済産業省「健康経営優良法人2023」認定法人が決定しました!
https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230308002/20230308002.html

・ACTION!健康経営(日本経済新聞社)
https://kenko-keiei.jp/

・経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課「健康・医療新産業協議会 第8回健康投資WG 事務局説明資料」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/008_02_00.pdf

・厚生労働省「健康経営度調査における特定健診・保健指導実施率の評価案」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/008_s01_00.pdf

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※当記事は2023年6月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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