メンタルヘルス・ハラスメント
ストレスチェック 2023/03/24

ストレスチェックの結果は厚生労働省ではどう定められている?通知内容や保存方法を解説

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

ストレスチェックは、企業で年1回行われます。その結果について、通知や保存をどうすればよいか悩む担当者は多いかもしれません。この記事では、ストレスチェックの結果について、厚生労働省が定める内容や保存方法を解説します。企業の担当者は実務の参考にしてください。

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<目次>
◆厚生労働省が定めたストレスチェックの結果の取り扱い
◆結果を通知する際の注意点
◆企業はどこまでストレスチェックの結果を知れる?
◆厚生労働省が定めた結果の保存方法
◆ストレスチェックの結果で不利益な扱いをしてはならない
◆まとめ

厚生労働省が定めたストレスチェックの結果の取り扱い

ストレスチェックの結果については、厚生労働省によっていくつかルールが定められています。取り扱い方について解説します。

本人のみが閲覧できる方法で通知する

ストレスチェックの結果には、健康診断と同様に、健康に関する多くの機微な個人情報が含まれます。そのため、結果は実施者、またはその他の実施事務従事者から遅滞なく受検者本人に直接通知される必要があります。閲覧方法は紙や電子データなどがあり、方法は問いません。紙であれば封をした文書を直接本人に送付します。電子メールであれば、労働者本人以外が見られない形で通知します。

本人の同意がなければ他の人には知られてはならない

ストレスチェックの結果は、企業や部署の生産性に関係します。上司や上層部のなかには結果を閲覧したい人もいるかもしれません。しかし、個人の重要な健康情報が書かれているため、本人の同意なくストレスチェック結果を他人が閲覧することはできません。同時に、検査事業者も、本人の同意なく検査結果を第三者に提供するのは禁止されています。

高ストレス者は医師の面接指導を受けられる

ストレスチェックの結果で高ストレスと判断された人は、実施者から必要と判断され、かつ本人が希望した場合には、別途医師による面接指導を実施することが、企業には義務付けられています。面接指導では、ストレス状態の確認や生活状況に関するヒアリングを行い、医師からストレス対処方法など、医学上の指導を受けます。生活習慣のアドバイスをもらう人もいます。

メリットの多い面接指導ですが、「面接指導を希望すると、高ストレス者であることが事業者側に明らかになる」という懸念から、面接指導を申し出ない労働者も多くいるのが現状です。

労働者から面接希望の申し出がなく、直接の高ストレス者のフォローが困難な場合や、ストレス状況の実態把握が難しい場合は、企業担当者が実施者と相談し、集団分析による現状のヒアリングや、他の手段でのメンタルヘルスへの取り組みを行うのもよいでしょう。外部の専門サービスを利用し、専門家による組織分析や、職場改善の施策を検討するのも有用です。

また、申し出のない高ストレス者のケアも重要になってきますので、各事業場の実態に応じて、面接指導以外に健康相談の機会や窓口を設けることなどについても検討されることが望ましいでしょう。

企業は集団分析や加工したデータのみ閲覧できる

ストレスチェックは、職場の環境改善やストレスの要因改善に役立てるのが目的です。厚生労働省が作成したマニュアルによると、企業はストレスチェックを行った結果を用いて、集団的な分析をすることが努力義務とされています。

集団分析とは、受検者のデータをまとめ、年齢や性別、所属などの属性で分析をかけ、ストレスの傾向を比較します。集団分析は個人の特定は不可能なため、職場の全員が閲覧可能です。ただし、職場人数が10名未満の場合や、結果から個人が特定されるリスクのある分析の場合は、別途受検者全員の同意が原則必要という決まりになっています。

※参考:厚生労働省労働基準局安全衛生部「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」84ページ
https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf

結果を通知する際の注意点

ストレスチェックの結果の通知には、いくつか注意点があります。ここでは2つ解説します。

実施者が面接指導を勧奨する

ストレスチェックにおいて、高ストレス者に該当し、実施者が必要と判断した場合には、労働者は医師の面接指導が受けられます。ただし、医師の面接指導を受けるかどうかは労働者の自由です。企業側は誰がどの程度の高ストレスなのか知らないため、面接指導の推奨は実施者が行います。

労働者が医師の面接指導を希望した場合、企業は面接指導の場の設定が義務付けられています。担当医師は、事業場の現状を把握している者が望ましいです。難しい場合は、医師に必要な情報共有を行い、適切な面接指導が行えるよう準備します。

同意は適切に取得しなければならない

ストレスチェックの結果を、企業が勝手に閲覧することは法律で禁止されています。企業が結果を確認するためには、本人の同意が必要です。また、ストレスチェックの結果を労働者本人が知る前に、結果提供の同意を取得することは不適当であるとされていますので、同意取得のタイミングにも気を配る必要があります。

同意確認を行う場合は、口頭ではなく同意書を用意しましょう。企業側は、同意の強要やそのようにみなされる行為を行わないよう留意し、同意に関して誤った認識とならないように努めます。

企業はどこまでストレスチェックの結果を知れる?

企業側は、労働者が受けたストレスチェックの結果をどの程度把握できるのか解説します。

高ストレス判定や面接指導の申し込みは?

高ストレス判定が出た段階では、事業者は労働者のストレスチェックの結果を見ることはできません。

ストレスチェック結果の事業者への提供については、労働者本人の同意が必要です。同意を取得する場合は次に掲げるいずれかの方法によらなければならなりません。

1)当該ストレスチェックの結果を通知した後に、事業者、実施者又はその他の実施事務従事者が、ストレスチェックを受けた労働者に対して、個別に同意の有無を確認する方法。

2)当該ストレスチェックの結果を通知した後に、実施者又はその他の実施事務従事者が、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた労働者に対して、他の労働者に把握されないよう、個別に同意の有無を確認する方法。

なお、厚生労働省が作成したマニュアルによると、「ストレスチェックを受けた労働者が、事業者に対して面接指導の申出を行った場合には、その申出をもってストレスチェック結果の事業者への提供に同意がなされたものとみなして差し支えないものとする」としています。

したがって、高ストレスという結果が出て、本人からも面接指導の希望があった場合、企業側は閲覧の同意を得たと判断できます。

この時点で、企業にストレスチェックの結果が通知されます。また面接指導の内容も、医師から企業へ伝えられます。企業側は各種結果を踏まえ、職場環境や就業内容の改善に取り組まなければなりません。

※参考:厚生労働省労働基準局安全衛生部「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」105ページ
https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf

ストレスチェックには守秘義務がある?

ストレスチェックや面接指導で個人情報を扱う人は、法律で守秘義務が課されます。実施者と補助する実施事務従事者がこれに該当します。実施者は、医師や保健師、精神衛生福祉士などを指します。実施事務従事者は、実施者からの指示でストレスチェックに関する各種事務作業を行う人のことです。「解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事してはならない」とされています(労働安全衛生規則第52条の10 2項より)(※)。したがって、人事権のある役員等以外から選任することになります。彼らは面接などの業務で知り得た情報を漏らしてはなりません。違反した場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金といった処罰の対象になります。

たとえ、企業側の上層部や直属の上司からの要望であっても、本人の同意がない限り、結果の通知は禁止されています。

(※)e-GOV 法令検索「労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032

人事権を持つ人は実施に関われない

労働安全衛生法には、直接の人事権を持つ人がストレスチェックの実施に携わってはいけないと明記されています。例えば、代表取締役や専務といった立場だけでなく、直属の上司や人事部の決裁者などです。「直接の人事権」の定義は、昇進昇格、異動や解雇など、監督的権限を持つ人を指します。総務や人事選考に関与しない人事部の労働者は該当しません。

ただし、労働者の健康情報を取り扱わない事務、例えば、ストレスチェックの実施日時や実施場所等に関する実施者との連絡調整や、調査票の配布などであれば、人事権を持つ人も、従事できます。

ストレスチェックは、企業側の適切な人員配置ではなく、労働者の心身の不調を未然に防ぐのが目的です。ストレスチェックの結果が、労働者のその後の働き方にマイナスにならないような配慮が必要です。

※参考:厚生労働省労働基準局安全衛生部「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」26ページ
https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf

厚生労働省が定めた結果の保存方法

企業および実施者には、ストレスチェックの結果を適切に保存することが法律で義務付けられています。結果開示の同意が得られているかどうかで、保存方法が異なります。それぞれ解説します。

労働者の同意がある場合

ストレスチェックの結果は個人情報です。労働者が結果の閲覧に同意した場合のみ、企業には結果の記録を作成し、保存する義務が課せられます。保存するものには、ストレスチェックの結果だけでなく、面接時の対応内容なども該当します。

保存期間は5年間と定められています。保存方法は書面でも電磁的媒体でも、どちらでもかまいませんが、電磁的媒体で保管する場合は、厚生労働省の法律に基づき、適切な保存体制を構築します。

労働者の同意がない場合

ストレスチェックの結果の通知に労働者が応じていない場合、保管は実施者が行うのが望ましいとされます。実施者が、保管すべきデータの作成や保存を行い、同意がある場合と同じく5年間の保管を行うのが望ましいとされています。

何らかの理由で実施者が結果を保管できない場合は、企業が実施事務従事者から保管担当者を選任します。同意がない場合の保管方法も、紙でも電磁的媒体でもどちらでもかまいません。

なお、実施者が保存を行う場合も、指名された実施事務従事者が保存する場合も、実施者等が個人で保管場所を確保して管理することを意味するものではありません。事業者は、ストレスチェックの結果の記録の作成・保存が適切に行われるよう、記録の保存の場所の指定・保存期間の設定、セキュリティの確保など必要な措置をとる必要があります。

ストレスチェックの結果で不利益な扱いをしてはならない

企業は結果をもとに、不利益な扱いをしてならないことが法律で定められています。例えば、ストレスチェック結果の閲覧に同意しなかった人を不当に処罰や異動させる、高ストレス者で面接指導を受けない人の更新を打ち切るなどの行為が該当します。ストレスチェック自体を受けない労働者に対する不利益な扱いも禁止されています。

まとめ

ストレスチェックの結果の取り扱い方法について解説しました。ストレスチェックの結果は、健康診断の結果とあわせて機微な個人情報が記載されています。取り扱いには十分に注意し、企業の職場環境の改善に活用してください。

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参考

・厚生労働省労働基準局安全衛生部「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf

・e-GOV 法令検索「労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032

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※当記事は2023年3月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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