マスク専門家・飯田裕貴子先生へインタビュー2 すき間を減らしフィット感をあげる!~自分に合ったマスクの選び方~
前回に引き続き、今回もマスクの専門家である株式会社環境管理センターの飯田裕貴子先生に、マスクの使い方に関わることをお聞きしていきます。
前回はマスクの役割やつけ方、はずし方、捨て方などのお話を伺いましたが、今回は自分に合ったマスクの選び方や素材の違いなどについてお話しいただきます。
自分に合ったマスクの選び方
―――自分に合ったサイズのマスクを選ぶコツなどはありますか?
大人や子ども、顔の大きい人や小さい人など、顔の形は人それぞれです。ドラッグストアなどではさまざまなサイズ(M、Lなど)が販売されていて、どのような基準で選べばよいのか迷いますよね。
全国マスク工業会から自分に合ったマスクの測り方などが紹介されているのですが、人それぞれに鼻の高さや肉付きが違うので、着用してみないとわからないというのが現実です。
自分に合ったマスクを選ぶ目安としては、顔の幅とマスクの幅が合っているか、マスクのプリーツを広げて下まぶたの際(キワ)からあごの奥までカバーできるのかです。ただしこれはつけてみないとわからないので、買って試すしかありません。
素材別マスクの性能
―――マスクの素材によって性能の違いはありますか?
マスクは現在いろいろな素材のものが販売されています。不織布以外にもポリエステルや布など、性能にもそれぞれ違いがあるのでお話ししていきましょう。
ナノファイバーをフィルターに使ったマスクは、捕集性(微細粒子を捕らえる能力)が高い割に息をするのが楽なのが特徴です。
不織布マスクでも「帯電効果」や「静電効果」と書いてあるものは、静電気で細かいホコリを取るので、この性能がないものに比べて息をするのが楽です。
一般的に静電効果等がなく捕集性の高いものは、目が密になっているので呼吸しにくくなります。そうなるとフィルターのない部分(顔とマスクのすき間)から息をすることになり、マスクの効果が落ちてしまいます。これではマスクをしている意味がありませんから、ナノファイバーを使っているものや、不織布のものでも「帯電効果」や「静電効果」と書いてあるものをお薦めします。
また、ポリエステルはファイバーを編んだものや、素材に穴を開けたりしたものもあるので、息のしやすさもさまざまです。ポリエステルや布は不織布に比べてやや捕集性能が落ちますし、またポリウレタンマスクなどの息をするのがすごく楽なものは、性能としては低くなりがちです。
ただし飛沫を出さないという性能は、布もポリエステルもほぼ同等です。ポリエステルは肌触りもよく洗って使えるので、日常使いにはよいと思います。
布マスクは市販品やお母さんが子どもに作ったりする場合もありますが、飛沫を出さない効果に関しては不織布マスクとほぼ同じで、ウイルスや細菌などの侵入を防ぐ効果に関しては不織布マスクが上だとお考えください。
また、マスクの色や柄などによる効果の違いについて聞かれる場合もあるのですが、色や柄などで捕集効果は変わりません。素材と形で性能は変わります。
素材としては、やはり不織布が優秀です。パーテーションがあって換気をしっかりしてある室内であればポリエステルや布でもよいと思いますが、人の多い室内や電車では不織布が望ましいです。
マスク購入時の表示の見方
―――マスクの性能表示はどれも同じように見えますが、どのような表示のものを選ぶとよいのでしょうか?
販売店に行くと、販売されているマスクのパッケージにはサイズ以外に性能的な記載もあると思います。どんなものを何パーセント捕まえるかということを書いたものも多いですね。
パッケージの裏などにはフィルターの素材が書いてありますが、実際には、顔にどれだけフィットするかで捕集性は変わってしまいます。ですからフィルターの性能表記を確認するのであれば、「帯電効果」や「静電効果」の有無を確認したほうがよいと思います。ただ、最近のマスクは捕集性が上がってきているので、性能差を気にするよりまず自分の顔にフィットするかどうかが大事なことですね。
―――マスクはフィットさせることが一番大事なのですね?
その通りです。もし見た目で性能を確認するのであれば、先ほどの帯電効果などの他に、鼻の横のすき間を埋めるようなクッションやパッド、スポンジ等の有無を確認するのがよいかもしれません。
少し値段が高くなりますが、空気の漏れは少なくなります。
他にも空気の漏れを少なくする工夫として、最近はマスクを留めるマスクバンドというものが販売されています。粉塵作業用の産業用マスクは耳かけ式ではなく、後頭部と首にひもをかけるようになっています。このマスクバンドを使うと、この産業用マスクの方式に近くなってマスクが顔にフィットしやすくなります。これにはかわいらしいものもあるので、女性の方などは検討してみてはいかがでしょうか。
マスクは何層かの構造になっていて、捕集性を発揮しているのは内側のフィルター部分になります。マスクを逆につけたりすると、メーカーの想定している着用の形と違ってしまい、フィルターの性能を発揮できなくなる可能性があります。正しい向きで、なるべく顔にフィットさせるように使いましょう。
また、最近はマスクの中央にセンターバーが入っているマスクも販売されていてお薦めです。これはマスクのフィルターが口につきにくいので、不快感が少なく、フィルター全体から空気を吸えるので息苦しさも軽減してくれます。先ほども申し上げましたが、フィルターのない部分から息を吸うことはマスクの効果を下げてしまうので、これは効果的だと思います。
―――どのような素材であってもマスクの性能は完全ではないので、風邪をひいている時などは人混みに行かないのが一番のようですね。
次回は、外出先での食事のマスクマナーなど、シーン別マスクの取扱いについてお伺いしていきます。
※当記事は2021年8月に作成したものです。