都道府県別の喫煙率は?がん死亡率に関係はある?

健康志向の高まりにより年々喫煙率は減少していますが、都道府県別では大きな差があります。
地域により喫煙率に影響する要因はあるのでしょうか。またそのことによるがん死亡率との相関関係はあるでしょうか。
全国の喫煙率は?数字から見てみましょう
全国で見た場合、喫煙率はどうなっているのでしょうか?厚生労働省が発表している数字を確認してみましょう。
「国民健康・栄養調査」によると、全国の喫煙率は18.3%で、性別では男性30.2%、女性8.2%となっています。
1950年頃の日本人男性の喫煙率は8割以上でしたので、以降、順調に低下してきたと言えます。しかし2010年以降はその減少割合が緩やかになっており、女性の50歳以上は横ばいか上昇傾向にあるという報告データがあります。
また厚生労働省が発表した「がん対策推進基本計画」では、「2022年度までに成人喫煙率を12%とすること」が掲げられています。
では都道府県別喫煙率は?
それでは次に、2016年の都道府県別の喫煙率をみてみましょう。
◆喫煙率が高い県 上位5位
全体:①北海道 ②青森 ③岩手 ④福島 ⑤群馬
男性:①佐賀 ②青森 ③岩手 ④北海道 ⑤福島
女性:①北海道 ②青森 ③群馬 ④神奈川 ⑤千葉
◆喫煙率が低い県 上位5位
全体:①奈良 ②香川 ③徳島 ④鹿児島 ⑤京都
男性:①京都 ②奈良 ③東京 ④徳島 ⑤香川
女性:①島根 ②鹿児島 ③鳥取 ④福井 ⑤岐阜
喫煙率の上位10位と下位10位の都道府県とその割合を下記のグラフに示します。


喫煙率は都道府県でなぜこんなにも違うの?
上のグラフをみると、1位の北海道と47位の奈良県の喫煙率の差は7%以上もあります。
喫煙率が高い地域は北海道がダントツで、また東北地方のうち4県がランクインしています。喫煙率が低い地域は西日本に集中しており、東日本や日本の寒い地域ほど高くなる傾向がみられます。
寒い地域ほど外に出ない?
こちらは一概に言えることではありませんが、寒い地域にいるほどタバコに火を付けたくなるのでしょうか。雪に閉ざされる期間が長いため、積極的に外出するよりも、自宅や屋内にいることが多く、ついタバコに手が伸びてしまうのかもしれません。
また地方ほど近所との付き合いが密接で、子どもは小さい頃から近所の大人たちが自宅に集まりタバコを吸う環境に慣れているので、喫煙が自然に習慣になることも考えられます。
自治体の積極的な取り組み
奈良県では、未成年者禁煙支援相談事業、世界禁煙デーの禁煙啓発イベント、インターネットによる禁煙支援など、禁煙化に向けた取り組みを行っています。こうした自治体による積極的な取り組みも、喫煙率に好影響をもたらしているのかもしれません。実際、奈良県は喫煙率が17.1%と47都道府県の中で一番低くなっています。
さらに、奈良県生駒市では、2018年4月から「喫煙した職員は、その後45分間、エレベーターを使用してはならない」というルールが始まりました。喫煙後45分間は、呼気から有害な物質が吐き出されるためです。今後、自治体の積極的な姿勢が禁煙の成果に表れる事例は他県でも見られるようになるでしょう。
<喫煙率が低い県1位、奈良県生駒市の45分ルールをご紹介>
・『喫煙後45分間はエレベーター使用禁止!?喫煙ルールの背景や効果を解説』
https://t-pec.jp/work-work/article/225
喫煙率とがん死亡率に相関関係はある?
「喫煙しなくてもがんになる人はいる。好きなようにタバコを吸ってストレスを解消した方がむしろ体に良い」という人もいます。実際、「がんの死亡率とタバコの相関関係はない」という研究者もいます。
日本人の死因トップはがんで、中でも肺がんが最多となっています。
喫煙率は年々下がっているにも関わらず、肺がん死亡率は年々高くなっているため、一見すると因果関係はないのではないかと思われます。
しかし、タバコを吸ったからといってすぐに肺がんにかかりやすくなるわけではありません。喫煙期間が長く、喫煙開始年齢が若いほどリスクが高いといえます。実際、肺がんに罹患する患者さんは60代以上の男性に多く、喫煙経験の影響は大きいようです。
国立がんセンターが発表したデータでは、2016年の都道府県別がん死亡率順位は以下のようになっています。
1位:青森
2位:秋田
3位:北海道
4位:鳥取
5位:高知
青森県は10年以上に渡り都道府県別がん死亡率1位です。やはり喫煙率の高さがその大きな原因と考えられ、その他に飲酒量や塩分摂取量が多いこと、野菜の摂取量が少ないこと、運動習慣が少ないことも挙げられています。
都道府県別の喫煙率やがん死亡率は一つのデータに過ぎないものの、数値を見ると喫煙ががんのリスクを高めている一つの要因になっていることがうかがえます。喫煙が私たちの健康を脅かし、第三者を巻き込む受動喫煙のリスクを伴うものである以上、喫煙率低下への働きかけは、社会全体で取り組むべきものなのではないでしょうか。
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参考
・厚生労働省 平成28年国民健康・栄養調査「成人喫煙率」
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou_7.pdf (2018年6月25日時点)
・国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」「国民生活基礎調査による都道府県別喫煙率データ」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/index.html#smoking(2018年6月25日時点)
・奈良県「奈良県たばこ対策推進委員会」
http://www.pref.nara.jp/35007.htm(2018年6月28日時点)
・国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」「人口動態統計による都道府県別がん死亡データ」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/index.html#pref_mortality(2018年6月25日時点)
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※当記事の内容は、弊社運営のWebサイト『禁煙の教科書』に2018年6月28日に掲載された当時のものです。