分煙か、建物内・敷地内全面禁煙か?従業員の反応を紹介

前回の「職場は建物内禁煙、敷地内禁煙、分煙、どれがよいの?」では、職場での分煙・全面禁煙方法とその特徴をご紹介しました。職場での分煙は受動喫煙が完全に防ぎきれず、また三次喫煙のリスクもあるため、「企業が従業員の健康を守る」という観点では不十分であることをお伝えしましたね。今回は「従業員は “分煙、建物内・敷地内 全面禁煙”に対してどのように考えているか」という観点から、全国20代~60代の会社員(非喫煙者)へのインターネット調査結果をご紹介します。
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調査概要
・調査期間 2017年4月14日(金)~16日(日)
・調査企画 ティーペック株式会社(委託先調査会社:株式会社クロス・マーケティング)
・調査方法 インターネット調査
・調査対象 全国20代~60代の会社員(非喫煙者)、男女1,500名
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「分煙でも喫煙による影響を受けている」という声が多い
職場で喫煙による影響を受けているという回答は747件(単一回答)で、なんと全体の約50%もありました。その中で、「業務中席を外すことで、業務が滞る」などの建物内・敷地内に分煙施設を設置するだけでは防ぎきれない喫煙による影響の回答は753件(複数回答可)、フリーコメントで229人から寄せられました。
その中でも、主な被害は以下の3つに大別されました。
① 煙の成分が漏れて受動喫煙多発!分煙施設の実態
② 仕事効率の悪化やハラスメント発生の可能性も?分煙による弊害
③ 分煙・全面禁煙施策を無駄にするルール違反・モラルが低い行動
各々どんな意見があるのか、ご紹介します。
① 煙の成分が漏れて受動喫煙多発!喫煙室の実態
「職場は建物内禁煙、敷地内禁煙、分煙、どれがよいの?」では、「煙の成分を除去するには不十分とされる“空気清浄機”を使用している事業場が25.6% ある」ことを紹介しましたが、煙の成分除去が不十分なことで起こる受動喫煙の被害を従業員の方々は実際に感じているようです。
「喫煙室から煙がもれてきた」
・「喫煙室から煙がもれてきた。喫煙室の作りがザツ。」(製造業/50代/男性)
・「喫煙所の出入りの際、煙、においが漏れてくる。煙い、臭い、においがつく。」(公務員・教職/50代/女性)
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②仕事効率の悪化やハラスメント発生の可能性も?分煙による弊害
タバコの煙以外にも、「喫煙施設での休憩によって仕事効率が悪くなっている」という声や、なんと「喫煙できるスペースに打ち合わせなどで半強制的に拘束されてしまう」という声など、驚きのコメントが多く寄せられました。特に仕事効率の悪化に関する声は239件で、「喫煙で嫌な経験をした」という回答全体の32%にも上りました。
「休憩時間が長すぎる」
・「喫煙による休憩時間が長すぎる。非喫煙者の労働時間が長くなるのはどうかしている。損した気持ちになった。」(製造業/20代/男性)
・「屋内全面禁煙になったために屋外の離れたところに喫煙所が出来たことで一度喫煙に行くと5分以上戻って来ない。喫煙も権利であることは理解するが、だからと言って一日のうちになんども不在になるのは理解し難い。」(公務員・教職/60代/男性)
・「トイレの為に離席をする際、ついでに喫煙する同僚と上司がいる。連絡が取れず、業務が滞る。」(小売業/40代/女性)
「長時間喫煙室にいることを強要された」
・「商談前の待ち時間、喫茶店で長時間過ごすが、いつも喫煙席に同席させられる。衣類が煙臭くなる、副流煙を吸い込み体に悪い。」(サービス業/40代/男性)
・「(個室で)重要書類を書く際、(喫煙可能な部屋であった為)長時間喫煙室にいることを強要された。気持ち悪くなった。」(サービス業/20代/男性)
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また、口や服に残ったにおいが嫌で、会話がつらいという意見が多く寄せられ、上司・部下、同僚同士やお客さまとのコミュニケーションにも影響していることが懸念されます。
「喫煙後すぐに話かけられるととても臭い」
・「喫煙室から戻った人の服や息が臭い。喫煙後すぐに話かけられるととてもにおいがつらいです。」(金融業/40代/女性)
・「上司に仕事のことを尋ねようと近づいた時、一服後だったらしく、ものすごいたばこ臭くて不快だった。」(通信/30代/女性)
・「喫煙後戻ってきた時ににおいが臭くて気分が悪くなった。お年寄りやご家族がいたりする中にいるのにその様なにおいをさせて、現場におられる事がとても信じられない思いで呆れてしまった。」(サービス業/40代/女性)
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においに関しては、女性のコメントが全体に対して63%と男性を上回る結果になりました。女性従業員や女性のお客さまが多い職場は特に注意する必要があるかもしれません。
③ 分煙・全面禁煙施策を無駄にするルール違反・モラルが低い行動
ここまで分煙についての被害コメントをご紹介してきました。しかし、建物内さえ全面禁煙にすれば被害が全てなくなるわけではなさそうです。従業員の間でルールが徹底されていない状況や、モラルが低い行動で会食や外出時に被害が発生していることも明らかになりました。
「部屋は禁煙なのに、くわえタバコで入ってきた」
・「喫煙所があるにもかかわらず長い電話中などに自席で喫煙する。フロアーの男性、上司を筆頭に喫煙者が多いので喫煙所での分煙の規則がなし崩しになっている。」(運輸/50代/女性)
・「部屋は禁煙なのに、くわえタバコで入ってきた。禁煙ルールは守るべき」(建設業/50代/女性)
「これから顧客訪問をするのに…」
・「仕事中の打合せで、喫茶店の喫煙者用の部屋だった為に衣服にも煙やニオイがついて気分が悪くなった。これから顧客訪問をするのに、もう少し配慮すべきだと思った。」(会社経営/60代/男性)
・「会社の飲み会で喫煙する同僚は喫煙することの了承を得てから吸っているので彼らなりの配慮はしているつもりなのだろうが、その場の雰囲気から断ることは出来ない。受動喫煙は避けたいのに避けられない状況なのがつらかった。」(会社経営/30代/男性)
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建物内だけを禁煙にしても、喫煙による被害や影響を完全に防ぐことはできません。。敷地内を全面禁煙にすると共に、従業員に受動喫煙の危険性を認識してもらい、意識を変えることによって“ルールを守る”・“モラルの高い行動をする”など行動を変えさせる必要があります。そのためには、まず推進者である人事部や経営層の意識や姿勢を変える必要があるでしょう。「本気で従業員の健康を考えて推進しているか、社員にその本気度が伝わっているか」ということが問われる問題ですね。
全体として、やはり分煙では喫煙による被害や影響は防ぎきれないと考えている人が多いようです。従業員の視点に立つならば、建物内だけでなく敷地内の全面禁煙を推進することがベターといえるでしょう。敷地内全面禁煙は効果的である一方、従業員や管理職の理解や、場合によっては就業規則の改定なども必要です。そして、なにより『会社が従業員の健康を守る』という本気の姿勢、従業員が会社の姿勢によって意識・行動変容することが必要です。喫煙対策を推進する担当者がどれだけ「従業員の健康と喫煙」に向き合えるかという事が鍵と言えそうです。
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※分煙と全面禁煙の基準や違いについて詳しく知りたい方はこちら
・ 職場は建物内禁煙、敷地内禁煙、分煙、どれがよいの?
※当記事の内容は、弊社運営のWebサイト『禁煙の教科書』に2017年12月27日に掲載された当時のものです。