男性更年期障害とは?企業が知っておくべき健康課題と健康経営への影響【医師監修】
こんにちは。企業の健康経営(R)を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。
「更年期」と聞くと、女性のライフステージに伴う心身の変化を思い浮かべる方が多く、“女性特有のもの”と捉えている方が多いのではないでしょうか。近年男性においても性ホルモンの低下に伴う「男性更年期障害」があることが明らかになってきています。しかし、厚生労働省が2022年に実施した調査では男性更年期障害について「知らない」あるいは「聞いたことはあるが内容について詳しく知らない」と答えた男性が全年代で8割以上にのぼり、依然としてその認知度は低い状況です。
働き盛りである40代後半〜50代に多く見られる男性更年期障害は、労働生産性の低下や離職のリスクにもつながる恐れがあり、健康経営を推進する企業にとって見過ごすことができない健康課題です。本記事では、男性更年期障害の基礎知識と企業が取り組むべき対応について解説します。以下、医師監修による記事です。
<目次>
◆企業が「男性更年期障害」に注目すべき理由
◆男性更年期障害の基礎知識
◆男性更年期障害がもたらす仕事への影響
◆企業が取り組むべき対応策とは?
◆まとめ
企業が「男性更年期障害」に注目すべき理由
男性更年期障害は、主に40代後半から50代の働き盛りの男性に多く見られる健康課題で、疲労感や気分の落ち込みといった症状が現れます。経済産業省の「健康経営推進検討会」による試算では、男性特有の健康課題を放置することによって生じる経済損失は、年間約1.2兆円※1にまでのぼるとされています。これは欠勤などによる労働生産性の低下、休職や離職に伴うコストが積み重なったことによるもので、企業として軽視することができない問題となっています。
こうした状況を受け、国の「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針2025)において初めて男性更年期障害への対応推進が盛り込まれ、社会全体で取り組むべき課題として位置づけられました※2。女性の健康課題に加えて、男性の健康課題にも目を向けることでより質の高い健康経営を実践することが可能になることから、一部の企業ではすでに従業員に対し健康セミナーを実施するなどの取り組みが進められています。
男性更年期障害の基礎知識
男性更年期障害の主な症状には次のようなものがあります。
・身体症状
疲労感、筋力低下、発汗、肥満、睡眠障害 など
・精神症状
気分の落ち込み、イライラ、不安感、集中力の低下、興味や意欲の低下 など
・性機能症状
ED(勃起不全、勃起障害)、性欲低下 など
これらの症状は、日常のストレスや生活習慣の乱れによる不調とも似ているため、本人が「更年期障害によるもの」と気づかずに、放置されることが多いです。
男性更年期障害がもたらす仕事への影響
男性更年期障害による身体症状や精神症状は、私生活だけではなく、仕事にもさまざまな影響を及ぼす恐れがあります。
・業務効率の低下
気分の落ち込みなどにより感情のコントロールが難しくなると、集中力が持続せず判断力も鈍ることから、ミスが出やすくなり業務パフォーマンスが低下します。
・モチベーションの低下
気分の落ち込みや意欲の減退は、同僚や部下とのコミュニケーション不足を引き起こし、組織全体の雰囲気や士気に影響を与えます。特にリーダー層が不調を抱える場合、部下の育成や意思決定の遅延につながることもあります。
・人間関係の悪化
更年期障害によるイライラが原因で、上司や同僚、部下などに対し、攻撃的な言動や態度をとってしまい人間関係の悪化に発展することがあります。人間関係の悪化による信頼損失は、将来のキャリアにも影響を及ぼす恐れがあります。
・メンタルヘルス不調による休職・離職
気分の落ち込みや意欲の減退といった症状が長期化すると、本人がストレスを抱え込み、うつ病や不安障害といった精神的な不調に発展する可能性があります。症状によっては、長期休職や離職に至るケースもあり、人材流出や新規採用に伴うコストの増加は企業にとって深刻な課題となります。
このように男性更年期障害は、放置すれば個人だけでなく企業の生産性や職場環境、人材育成など多方面に影響を与えます。そのため企業は男性更年期障害を健康経営における重要な課題の1つとして捉え、早期に対策を講じることが重要です。
企業が取り組むべき対応策とは?
男性更年期障害による、長期休職や離職を防ぐには周囲の理解と、症状があっても働き続けることができる職場環境を整えることが重要です。企業が取り組むべき対応策には以下のものがあります。
・従業員への啓発
男性更年期障害は女性の更年期障害と比べ、認知度が低いことから、まずは従業員に対し、男性更年期障害について知ってもらう機会を作ることが重要です。社内セミナーや社内広報等を通じて、男性更年期障害に関する基礎知識を発信することで、本人や周囲が不調に気づける環境を構築することができます。
・相談体制の整備
男性更年期障害による業務への支障や、心身の悩みについて従業員が相談しやすい環境を整えることが重要です。特に男性の場合は、「弱みを見せたくない」「年齢のせいだから仕方がない」などの理由から相談を先送りにする傾向があります。社内に産業医や保健師などがいる場合は連携を図りながら、従業員が気軽に相談することができる体制を整えましょう。また、自身の症状について職場に知られたくないという従業員もいるため、医師やカウンセラーに匿名で相談することができる外部窓口を設けるのも有効です。
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・柔軟な働き方の導入
症状の程度によって、リモートワークや短時間勤務など柔軟な働き方を選択できる環境を整えることで、従業員が治療と就労を両立しやすくなります。こうした制度は、離職防止や人材の安定確保にもつながります。
これらの取り組みは、男性更年期障害への対応にとどまらず、従業員全体の健康課題に備える基盤となり、結果的に企業の生産性や持続的成長にも寄与します。
まとめ
男性更年期障害は、これまで十分に認識されてこなかったものの、個人の心身の不調にとどまらず、組織全体の生産性の低下や離職といった経営上のリスクを引き起こす恐れのある、重大な健康課題です。年間1.2兆円ともいわれる経済損失は、企業にとって見過ごすことのできないもので、早期対応が求められます。企業が啓発活動や相談体制を整備することで、従業員は安心して働き続けることができ、人材定着や組織の活性化につながります。今後の健康経営においては、女性だけでなく男性の健康課題にも着目し、包括的な取り組みを進めることが求められます。
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≪監修者プロフィール≫
本間 雄貴医師
順天堂大学医学部卒業後、外科医として臨床に携わってきた。
手術を受け、苦しむ患者さんの姿を目の当たりにし、病気になってから治療を開始するのではなく、早期に介入し、病気になりにくい体を作る予防医学への関心が高まった。
現在は疫学研究に従事する傍ら、地域医療にも貢献している。
医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。
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<出典>
※1: 経済産業省 「第3回健康経営推進検討会事務局資料」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/health_management/pdf/003_02_00.pdf
(2025年10月17日閲覧)
※2:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2025 について」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2025/2025_basicpolicies_ja.pdf
(2025年10月17日閲覧)
<参考>
・厚生労働省 『「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果』
https://www.mhlw.go.jp/content/000969166.pdf
(2025年10月17日閲覧)
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※当記事は、2025年10月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事が全てのケースにおいて当てはまるわけではありません。
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