健康・予防・両立支援
みんなの健康情報 2023/11/27

新しい国民健康づくり運動「健康日本21(第三次)」

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

令和6年度から「第5次国民健康づくり運動」として『健康日本21(第三次)』がスタートします。

『健康日本21』は、厚生労働省が、日本に住む一人ひとりの健康を実現するために展開している、国民の健康づくり運動です。第三次の目標の中には「健康経営の推進」として「保険者とともに健康経営に取り組む企業数:10万社」が新しく追加されるといった動きもあり、個人や企業・社会全体が協力して、病気の予防や健康増進に取り組むことが求められています。

今回は、『健康日本21(第三次)』について解説します。国民の健康づくりについて、国がどんな方針を出しているかは、健康経営に取り組む企業のご担当者や、従業員の健康管理・増進にかかわる方々にとっても重要になると思うので、ぜひご一読ください。

≪目次≫
◆これまでの取り組みと「健康日本21(第三次)」のビジョン
◆「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」を目指して
◆基本的な方向と51の目標項目
◆健康日本21(第三次)の推進に向けて

これまでの取り組みと「健康日本21(第三次)」のビジョン

平均寿命が延びる一方で、高齢化や生活習慣の変化によって、感染症から生活習慣病へと疾患構造が変化する中、厚生労働省は健康づくり対策を総合的・計画的に推進するため、国民の健康づくり運動を進めてきました。

昭和53年から数度にわたって展開されており、健康診査の充実や健康増進施設の推進、一次予防の重視と具体的な目標設定など、これまで国民健康づくり運動によって各時代の課題に対してさまざまな施策に取り組んできました。

平成25年度から始まった「健康日本21(第二次)」は現在、最終年度に当たり、令和6年度からは第5次国民健康づくり運動として、「健康日本21(第三次)」がスタートします。

図表1 我が国における健康づくり運動

【出典】
※1 厚生労働省「健康日本 21(第三次)」を推進する上での基本方針を公表します」の「資料2 参考資料」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33414.html


健康日本21(第三次)は、令和5年5月31日に厚生労働大臣名で告示されました。
「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」をビジョンに掲げ、「誰一人取り残さない健康づくり」(Inclusion)と「より実効性をもつ取組」(Implementation)をキーワードに進めていきます。計画期間は、令和6年度から17年度までの12年間です。

ビジョンの実現に向けて、①健康寿命の延伸・健康格差の縮小 ②個人の行動と健康状態の改善 ③社会環境の質の向上 ④ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり―の4つの基本的な方向(詳細は後述)が示されています。

図表2 健康日本21(第三次)の全体像

【出典】
※2 厚生労働省「健康日本 21(第三次)」を推進する上での基本方針を公表します」の「資料2 参考資料」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33414.html

「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」を目指して

健康日本21(第三次)では、ビジョンの実現に向けて、「健康寿命の延伸・健康格差の縮小」を最上位の目標に置いています。

健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことで、令和元年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳でした。一方、平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳で、平均寿命と健康寿命の差は男性8.73年、女性12.06年となっており、「不健康な期間」に当たります。

健康日本21(第三次)では、平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加を目指します。これは、健やかで心豊かな生活を実現するとともに、医療費や介護費を抑制するという面から社会保障制度を持続可能なものにすることにもつながります。

「健康格差の縮小」については、各都道府県の健康寿命の格差縮小を目標としています。令和元年の男性の最長県は73.72歳、最短県は71.39歳で、その差は2.33年でした。女性の最長県は77.58歳、最短県は73.68歳で、その差は3.90年でした。
格差が広がりつつある日本社会において、こうした地域格差を縮小することも重要な取り組みの1つとなっています。

図表3 健康寿命の推移

【出典】
※3 厚生労働省「第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会」の「資料3-1 健康寿命の令和元年値について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22740.html

基本的な方向と51の目標項目

最上位目標であり、基本的な方向の①でもある「健康寿命の延伸・健康格差の縮小」の達成に向けて、②個人の行動と健康状態の改善 ③社会環境の質の向上 ④ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり―の3つの方向から取り組みます。健康日本21(第三次)では、そのための具体的な取り組みとして51項目の目標が設定されています。
以下に、②から④の基本的な方向の概要について紹介します。


図表4 健康日本21(第三次)の概念図

【出典】
※4 厚生労働省「健康日本 21(第三次)」を推進する上での基本方針を公表します」の「資料2 参考資料」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33414.html


②「個人の行動と健康状態の改善」は、一人ひとりの日常生活での行動や、生活習慣病の予防に関わる目標で構成されています。

生活習慣の改善の領域は、「栄養・食生活」「身体活動・運動」「休養・睡眠」などの分野で、例えば、野菜摂取量の増加(1日350g)、歩数の増加(1日7,100歩)、睡眠時間の確保(6~9時間〈60歳以上は6~8時間〉)といった指標が設定されています。

また、生活習慣病(NCDs)の発症予防・重症化予防の領域は、「がん」「循環器病」「糖尿病」「COPD」の4分野に分かれており、がんの年齢調整罹患率の減少、高血圧の改善(ベースライン値から5mmHgの低下)、特定健診の実施率の向上といった指標が設定されています。

このほか、生活機能の維持・向上の領域は、ロコモティブシンドロームの減少や骨粗鬆症検診受診率の向上などの目標が並んでおり、生活習慣病の予防だけでなく、日常生活に支障を来す状態を防ぐために大切な目標や行動を示しています。

③「社会環境の質の向上」は、これまでの研究結果から、生活習慣の改善は個人だけの努力のみならず、個人を取り巻く社会環境の質を高めることの重要性から据えられており、3つの領域別に目標が設定されています。

「社会とのつながり・こころの健康の維持及び向上」の領域では、地域の人々とのつながりの醸成や、就労・就学を含めたさまざまな社会活動の実践、メンタルヘルス対策に取り組む事業場の増加などの目標が設定されています。

「自然に健康になれる環境づくり」の領域では、歩きたくなるまちなかづくり、受動喫煙の防止などの環境整備が挙げられています。

「誰もがアクセスできる健康増進のための基盤の整備」の領域では、自治体だけでなく、企業や民間団体といった様々な団体による健康づくりが広まっており、そうした取り組みをさらに推進していくことが必要という観点から目標が設定されています。具体的には、スマート・ライフ・プロジェクトに参画して活動している企業・団体の増加や、健康経営に取り組む企業の増加などがあり、働く人の健康づくりや職域保健における取り組みにも大きな役割が期待されています。

○スマート・ライフ・プロジェクトについて
https://www.smartlife.mhlw.go.jp/

○健康経営について
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html

④「ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり」は、健康課題や取り巻く状況がライフステージ(乳幼児期、青壮年期、高齢期等の人の生涯における各段階)ごとに異なっているため、成人とは別に「こども」と「高齢者」の領域が設けられています。

また、現在の健康状態は次世代の健康にも影響を及ぼす可能性があることも鑑みて、「女性」の領域も設けられており、「若年女性のやせ」「女性の飲酒」「妊婦の喫煙」といった指標が設定されています。

図表5 健康日本21(第三次)の主な目標

【出典】
※5 厚生労働省「健康日本 21(第三次)」を推進する上での基本方針を公表します」の「資料2 参考資料」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33414.html

健康日本21(第三次)の推進に向けて

健康日本21(第三次)における51の目標と目標値、項目ごとの背景や考え方等に関しては、下記の厚生労働省のホームページで公開されています。

○健康日本21(第三次)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21_00006.html

現在、都道府県と市町村は、「健康日本21(第三次)」の令和6年度のスタートに向けて、それぞれ独自の健康増進計画の策定に取り組んでいるところです。また、こうした地方計画策定の参考となるよう、厚生労働省では「アクションプラン」や好事例集の作成に取り組んでいるところです。
健康日本21(第三次)では、「誰一人取り残さない健康づくり」を掲げており、これを効果的に展開するためには、行政だけでなく、地域の関係者や民間部門の協力が必要です。大学等の研究機関はもちろんのこと、企業、教育機関、NPO、NGO、住民組織等の関係者が連携し、効果的な取り組みを行っていくことにより、「人生100年時代」を迎える日本の健康づくり運動がいっそう推進されることにつながります。


原稿・社会保険研究所Copyright

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出典

・厚生労働省「健康日本 21(第三次)」を推進する上での基本方針を公表します」の「資料2 参考資料」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33414.html

・厚生労働省「第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会」の「資料3-1 健康寿命の令和元年値について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22740.html

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※当記事は2023年11月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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