健康・予防・両立支援
健診・二次健診 2023/10/30

第4期特定健診・特定保健指導の概要とポイント ―主要達成目標は「腹囲2cm・体重2kg減」―

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

2024年4月より「第4期特定健診・特定保健指導」がスタートします。特定健診では、喫煙や飲酒に係る質問項目について、より正確にリスクを把握できるように詳細な選択肢へ修正されました。特定保健指導でも、アウトカム評価の導入や、ICT活用推進などが新しく盛り込まれていますので、本記事で詳しく解説します。

特定健診・特定保健指導の実施義務がある健康保険組合などの保険者の方だけでなく、健康経営やコラボヘルスに取り組む企業のご担当者の方にとっても、従業員の健康管理・増進に関する重要なテーマになると思いますので、ぜひご一読ください。

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≪目次≫
◆特定健診・特定保健指導とは?
◆第4期特定健診・特定保健指導のポイント
◆第4期特定健診・特定保健指導の実施は、プログラムや手引きを参考に

特定健診・特定保健指導とは?

「特定健診(特定健康診査)」は、生活習慣病の引き金となるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の早期発見に重点を置いた健診です。1年に1度、40歳~74歳の人を対象に実施されます。
メタボリックシンドロームが強く疑われる人、またはその予備群と考えられる人は男女ともに40歳以上から増加し、男性では50歳以上で半数以上、女性も60歳以上で5人に1人という割合に達しています(※1)。

そこで、特定健診の結果、生活習慣病発症のリスクが高く、生活習慣の改善によって生活習慣病の予防効果が期待できると判定された人は、医師、保健師、管理栄養士などの専門家によって、対象者一人ひとりに合わせた生活習慣改善のアドバイスやサポートが行われます。これを、「特定保健指導」と言います。

特定保健指導には、内臓脂肪の蓄積と生活習慣病の危険因子の数に応じて「動機付け支援」と「積極的支援」があり、よりリスクの高いほうが「積極的支援」となります。なお、リスクがない場合は「情報提供」となり、健康的な生活習慣に対する理解と関心を深めるために役立つ情報が提供されます(※2)。

【出典】
※1 厚生労働省「平成30年国民健康・栄養調査報告」第2部 身体状況調査の結果 148ページ
https://www.mhlw.go.jp/content/000615344.pdf

※2厚生労働省保険局医療介護連携政策課 医療費適正化対策推進室 「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第4版)」2023年3月 14ページに基づき社会保険研究所作成
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001081774.pdf

第4期特定健診・特定保健指導のポイント

特定健診・特定保健指導は2008年度から始まり、開始から14年の間にいろいろと改良が加えられてきました。2024年度から始まる第4期特定健診・特定保健指導では、特定保健指導による成果が出たかどうかを評価する「アウトカム評価」が導入されます(後述)。

以下、第4期の概要についてみていきましょう。

(1)第4期の特定健診・特定保健指導の目標値は、第3期と同じ

第4期の特定健診実施率、特定保健指導実施率の目標値については、第3期の目標を維持することになっています(※3)。

・特定健診実施率
<第3期>70%以上 <第4期>70%以上

・特定保健指導実施率
<第3期>45%以上 <第4期>45%以上

・メタボリックシンドローム該当者及び予備群等の減少率
<第3期>25%以上(2008年度比) <第4期>25%以上(2008年度比)

(2)特定保健指導の「積極的支援」の実績評価が大きく変更

①「プロセス評価」+「アウトカム評価」に

第4期の特定健診・特定保健指導では、特定保健指導の「積極的支援」の実績評価が大きく変わります。第3期では、「保健指導をどんな方法で、どれだけ実施したか」という実施量をプロセス評価してポイント換算していました。第4期では、これに加えて減量や行動変容等の成果を評価する「アウトカム評価」を導入し、これもポイント換算します。具体的には、「腹囲2㎝・体重2㎏減」を主要達成目標とし、達成できた場合は180ポイントとします。

②「腹囲2㎝・体重2㎏減」で、成果が出たと評価

特定保健指導は、初回面接を行い、その後3か月以上の継続的な支援を行った後、実績評価を行います。実績評価においては、プロセス評価とアウトカム評価を合計して180ポイント以上であれば、特定保健指導を実施したとみなされます。

アウトカム評価の項目のうち、主要達成目標である「腹囲2㎝・体重2㎏減」を達成した場合はそれだけで180ポイントとなります。この場合、保健指導の介入量を問わず、成果が出たと評価されます。

③行動変容、「腹囲1㎝・体重1㎏減」も評価

特定保健指導の目的は、対象者自身が生活習慣を改善するように行動変容を促し、生活習慣病発症のリスクを減らすことにあります。そこで、第44期では、行動変容(食習慣の改善、運動習慣の改善、喫煙習慣の改善、休養習慣の改善、その他の生活習慣の改善)が評価項目に加わりました(図表4、※5)。この評価は、行動変容別に各1回までです(例:食習慣の改善の目標が複数設定されている場合、複数達成してもポイントの算定は20ポイントだけになります)。

また、主要達成目標「腹囲2cm・体重2kg減」の過程である「腹囲1cm・体重1kg減」も目標として設定し、腹囲1㎝・体重1㎏減少の場合、20ポイントとして評価します。

(3)特定保健指導の早期初回面接実施も評価

特定健診後に速やかに特定保健指導の初回面接を行うことで、特定保健指導の実施率の向上や対象者の負担軽減が期待できることから、第4期では早期の実施を評価します。具体的には、健診当日の初回面接実施で20ポイント、健診後1週間以内の実施で10ポイントが加算されます(※6)。

(4)服薬開始者は特定保健指導の対象者に含めない

特定保健指導の実施率の算定については、特定健診実施後や特定保健指導開始後に糖尿病等の生活習慣病で医療機関を受診し、服薬を開始した場合は特定保健指導の対象者に含めないでよいことになりました(※7)。算定の分母に含めないことが可能になったので、実施率が上がることが考えられます。

(5)ICT活用の推進

コロナ禍の影響で、ICT(情報通信技術)が進歩したことから、ICTを用いた遠隔面接についても、対象者の勤務形態や所在地にとらわれずに保健指導が行えることから、引き続き推進していきます。ICTの利便性は高まっていますが、面接の実施体制やICT環境(スマートフォン、パソコン、タブレット端末等)の整備、個人情報保護への対応等、課題もあります。また、生活習慣改善をサポートする健康管理アプリケーションも多数開発されていますが、すべての人に効果的というわけではないため、対象者の利用の意向やICTリテラシーを確認することも必要です。ICTを活用した保健指導とその留意点等については、「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」に記載されているので、参考にするといいでしょう。

(6)特定健診の健診項目・質問票の見直し

第4期では、特定健診の健診項目・質問票も見直されています(図表7、※8)。
健診項目では、血中脂質検査における中性脂肪において、やむを得ず空腹時以外で中性脂肪を測定する場合は、食直後を除き随時中性脂肪による血中脂質検査を可能としています。

また、質問票では、喫煙や飲酒に係る質問項目について、より正確にリスクを把握できるように詳細な選択肢へ修正されています。例えば、喫煙に関する質問項目では、現在は「はい、いいえ」の2択(※9)となっていますが、第4期では、選択肢を3つに増やしています(※10)。

そのため、「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」は、各質問項目の解説や留意事項、聞き取りポイント、声かけの例や対応方法などをわかりやすく示しています。

第4期特定健診・特定保健指導の実施は、プログラムや手引きを参考に

第4期特定健診・特定保健指導には、これまで解説してきたような変更点があります。留意点等については、「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」および「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第4版)」に掲載されているため、医療機関や医師等の保健指導実施者は、これらを参考にして第4期の特定健診・特定保健指導を実施することになります。「腹囲2㎝・体重2㎏減」をめざし、効果的な保健指導の実施が期待されています。


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【出典】
・厚生労働省「平成30年国民健康・栄養調査報告 第2部 身体状況調査の結果」
https://www.mhlw.go.jp/content/000615344.pdf

・厚生労働省保険局医療介護連携政策課 医療費適正化対策推進室 「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第4版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001081774.pdf

・厚生労働省 「第3回 第4期特定健診・特定保健指導の見直しに関する検討会『第4期特定健康診査等実施計画期間における保険者種別の目標値について』」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001000404.pdf

・厚生労働省保険局 医療介護連携対策課 医療費適正化対策推進室 「令和5年8月3日(木)4日(金) 令和5年度保健師中央会議 『第4期特定健診・特定保健指導の見直しについて』」
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/001127418.pdf

・厚生労働省健康局 令和6年4月「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001093926.pdf

・厚生労働省「標準的な質問票」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/seikatsu/dl/hoken-program2_02.pdf

・厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版) 第2編別紙3・4『標準的な質問票等(令和5年8月17日更新)』」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001081581.pdf


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※当記事は2023年10月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。