健康・予防・両立支援
女性の健康 2023/03/24

働く女性への健康サポート

こんにちは。企業の健康経営を支援する「わくわくT-PEC」事務局です。

働き続ける女性が増える今、女性の健康支援が重要になっています。

経済産業省の「働く女性の健康推進に関する実態調査」によると、働く女性の約51.5%が「女性特有の健康課題によって勤務先で困った経験をした」と回答しています。

女性が、健康でイキイキと働けるように、企業はどのような支援を行えばよいのでしょうか。
今回は、健康経営を推進する企業も高い関心を寄せている「女性の健康支援」についてお伝えします。

≪目次≫
◆働き続ける女性が増える今、女性の健康支援が重要に
◆法律も働く女性をサポート
◆健康課題を抱えながら働き続ける女性たち
◆健康課題が、働く女性のキャリアアップの妨げに
◆女性は、自分の体の仕組みを知ることが重要
◆最近注目のフェムテックによる健康支援も
◆国や企業が連携して働く女性への継続的なサポートを

働き続ける女性が増える今、女性の健康支援が重要に

女性の体は、子供を産むという生殖機能を備えているため、健康課題も複雑になります。また、平均寿命が延びているため、月経の期間も劇的に延び、月経に関するトラブルも増えています。そこで、女性の健康支援、特に働く女性への健康支援が重要になっています。

かつて、女性の年齢階級別の就業率は妊娠・出産時期に低下する「M字カーブ」を描いていましたが、近年は働き続ける女性が増えているため、就業率は「台形カーブ」を描くようになっています。就業率そのものも上昇しています。そのため、働きながら健康課題と向き合わなければいけないという状況があります。

厚生労働省の「令和3年版働く女性の実情」を見ても、令和3(2021)年の女性の労働力人口は3,057万人と、前年に比べて13万人増加し、男性は3,803万人と20万人減少しています(※1)。

また、令和3(2021)年の女性の労働力率を年齢階級(5歳階級)別に見ると、「25~29歳」「30~34 歳」「35~39 歳」「60~64 歳」の階級の労働力率は、比較可能な昭和43(1968)年以降、過去最高の水準となっています。平成23(2011)年と比較しても、すべての年齢階級で労働力率は上昇しており、「30~34歳」では11.9ポイント、「55~59歳」では10.7ポイント上昇しています。そこで、かつての「M字カーブ」から「台形カーブ」へと変化する女性の働き方に合わせた健康支援が推進されています。

出典:厚生労働省「令和3年版働く女性の実情」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/21.html

法律も働く女性をサポート

昭和60(1985)年に「男女雇用機会均等法」が成立し、昭和61(1986)年に施行されて以降、女性に対する差別的取り扱いの禁止、セクシュアルハラスメント防止、妊娠、出産等を理由とした不利益取り扱いの禁止など、法制度を通じて、女性が働き続けやすい環境整備が少しずつ進められてきました(※2)。

国、地方公共団体、民間事業主(一般事業主)それぞれの、女性の活躍推進に関する責務等を定めた「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(以下、「女性活躍推進法」という)が平成28(2016)年4月から施行されています(※3)。また、令和元(2019)年5月には「改正女性活躍推進法」が成立し、令和4(2022)年4月1日から施行されています(※4)。

女性活躍推進法では、常時雇用する労働者が301人以上の企業には、女性の割合、採用における競争倍率や勤続年数の男女差など、女性の活躍に関する状況の把握・課題分析、取り組み例などを盛り込んだ一般事業主行動計画の策定・公表が義務付けられていました。令和4(2022)年4月から施行されている改正法では、この義務付けの対象が、常時雇用労働者が101人以上300人以下の中堅・中小企業まで拡大されています(※5)。

また、国は少子化対策として、令和4(2022)年4月から「不妊治療の保険適用」を実施するなど、女性の健康づくりを支援しています(※6)。

健康課題を抱えながら働き続ける女性たち

働く女性が増える一方で、女性たちは女性特有の健康課題を抱え、それらとどう対処していくか、悩みながら働き続けています。経済産業省の「働く女性の健康推進に関する実態調査」によると、働く女性の約51.5%が、女性特有の健康課題によって勤務先で困った経験をしています。また、若年層ほど、困った経験をした率が高くなっていました(※7)。

では、働く女性たちはどんな健康課題を抱えているのでしょうか。

この実態調査で、女性従業者に対して勤務先で女性特有の健康課題や症状で困った経験の有無を質問したところ、以下のような回答がありました。

具体的な健康課題・症状としては、「月経関連の症状や疾病(月経不順・月経痛など)」が 36.9%、 「PMS (月経前症候群)」が 22.1%でした。続いて、更年期障害、メンタルヘルスが9.9%、不妊・妊活、女性のがん・女性に多いがんが上がっています(※8)。

年代別では、20代の「月経関連の症状や疾病(月経不順・月経痛など)」が 48.3%、50代以上の「更年期障害」の23.5%が目立っています(※8)。

勤務先で困った経験(従業員女性)

健康課題が、働く女性のキャリアアップの妨げに

同調査で、女性従業者に対して、女性特有の健康課題が原因で職場で何らかのことをあきらめた経験があるかどうかの有無を質問したところ、「そういう経験はない」が57.5%で、「ある」が42.5%でした。あきらめた経験のトップは、「正社員として働くこと」で、24.6%でした。次いで「昇進や責任の重い仕事につくこと」が20.4%となっています。女性特有の健康課題によって正社員の地位やキャリアアップを断念する人が、それぞれ20~25%程度存在する結果となりました。年代別では、若い人ほど「昇進や責任の重い仕事につくこと」をあきらめた経験があると答えています(※9)。

女性特有の健康課題・症状が原因で職場で 何かをあきらめた経験有無(従業員女性)

女性は、自分の体の仕組みを知ることが重要

女性には妊娠・出産のための卵巣と子宮があるため、卵巣がん、子宮がんや子宮筋腫といった女性特有の病気をはじめ、月経によるトラブルなどもあります。こうした健康課題に対処するためには、女性自身が自分の体の仕組みを知ること=「ヘルスリテラシー」を持つことが重要です。

一般的に、ヘルスリテラシーとは、健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力を指し、ヘルスリテラシーを高めることは病気の予防や健康寿命の延伸につながるといわれています。女性の場合は、月経の仕組み、月経前後のホルモンの変化などの体のメカニズムと、それがメンタルに与える影響などを知ることで、自身の健康課題に取り組みやすくなります。

「働く女性の健康増進調査2018」(特定非営利活動法人 日本医療政策機構)では、ヘルスリテラシーについての調査も行っています。調査対象者をヘルスリテラシーが高い群、低い群に分類し、1ヵ月の仕事のパフォーマンスを比較したところ、「ヘルスリテラシーが高い人の方が、仕事のパフォーマンスが高い」という結果が出ています(※10)。

【図表4】

また、ヘルスリテラシーが高い人の方が、PMS(月経前症候群)や月経随伴症状、更年期症状や更年期障害によって、仕事のパフォーマンスが下がる割合が低くなっています(※10)。

【図表5】

【図表6】

図表4~図表6の出典:特定非営利活動法人 日本医療政策機構「働く女性の健康増進調査2018」
https://hgpi.org/wp-content/uploads/1b0a5e05061baa3441756a25b2a4786c.pdf

女性の体は、女性ホルモンの影響を受け、月経、出産、閉経、更年期など、ライフステージごとに体にさまざまな変化があります。更年期以降は、生活習慣病のリスクも高まります。元気で健康に過ごすためにも、また仕事のパフォーマンスを低下させないためにも、何か気になる症状がある場合は、ためらわずに婦人科を受診することが大切です。

最近注目のフェムテックによる健康支援も

最近、注目を集めているのがフェムテックによる健康支援です。
フェムテックとはFemale(女性)と Technology(技術)からなる造語で、生理や更年期などの女性特有の健康課題を先進的な技術を用いて解決しようとする製品やサービスを指します。例えば、生理予測、妊娠をサポートするアプリなどはフェムテックの1つです。

フェムテックを通した健康情報の提供は女性のヘルスリテラシー向上にも役立ちますし、セキュリティーに配慮しながらアプリを通して女性特有の悩みのデータが収集できれば、適切な治療法の提案も期待できます。

フェムテック開発企業は、これまで人に話すことをタブーとされてきた女性特有の健康課題について、1人で悩まずに皆で共有して助け合うことを「新しい当たり前」にしようという提案もしています。

フェムテックは2016年ごろから注目され始めた新しい市場ですが、投資額、市場規模ともに成長傾向にあり、今後さまざまな製品・サービスの開発が期待され、成長市場になると予測されています。
経済産業省はフェムテックに注目し、働く女性の妊娠・出産・更年期等ライフイベントに起因する望まない離職等を防ぎ、企業の人材多様性を高め、企業の価値創造につなげることを目指して「フェムテック等サポートサービス実証事業」を実施しています。これはフェムテックを利用して働く女性の健康づくりに取り組む企業に実証事業補助金を出す制度です(※11)。

国や企業が連携して働く女性への継続的なサポートを

働く女性の健康課題の解決には、国や企業が連携してサポートすることが重要です。

厚生労働省は、毎年3月1日から3月8日までを「女性の健康週間」と定め、女性の健康づくりを国民運動として展開しています。また、働く女性の健康支援のため、健康経営優良法人認定制度において「女性の健康保持・増進に向けた取り組み」を評価項目に盛り込んでいます(※12)。

働く女性の健康課題は、女性だけの問題ではありません。一緒に働く周りの人たちは、女性の健康課題を知ることで正しい配慮ができ、職場のマネジメントが改善します。女性の働きやすさは男性の働きやすさにもつながります。国は、今後も働く女性の継続的なサポートを行い、女性も男性も働きやすい職場、イキイキと生きられる社会をつくることを目指しています。

原稿・社会保険研究所Copyright

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出典

※1 厚生労働省「令和3年版働く女性の実情」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/21.html

※2 厚生労働省「男女雇用機会均等法の変遷」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11902000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Koyoukintouseisakuka/0000087683.pdf

※3 e-Gov法令検索「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=427AC0000000064

※4厚生労働省「女性活躍推進法の省令・告示を改正しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26587.html

※5厚生労働省「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000614010.pdf

※6厚生労働省「令和4年4月から、不妊治療が保険適用されています。」
https://www.mhlw.go.jp/content/leaflet202212ver2.pdf

※7、※8、※9経済産業省 「『働く女性の健康推進』に関する実態調査」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/H29kenkoujumyou-report-houkokusho-josei.pdf

※10 特定非営利活動法人 日本医療政策機構「働く女性の健康増進調査2018」
https://hgpi.org/wp-content/uploads/1b0a5e05061baa3441756a25b2a4786c.pdf

※11経済産業省「フェムテックを活用した働く女性の就業継続支援」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/femtech/femtech.html

※12経済産業省「健康経営銘柄2022選定及び健康経営優良法人2022(大規模法人部門)認定要件」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/daikibo2022_ninteiyoken.pdf

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参考文献:

・ 厚生労働省「令和3年版働く女性の実情」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/21.html

・厚生労働省「男女雇用機会均等法の変遷」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11902000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Koyoukintouseisakuka/0000087683.pdf

・e-Gov法令検索「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=427AC0000000064

・厚生労働省「女性活躍推進法の省令・告示を改正しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26587.html

・厚生労働省「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000614010.pdf

・厚生労働省「令和4年4月から、不妊治療が保険適用されています。」
https://www.mhlw.go.jp/content/leaflet202212ver2.pdf

・経済産業省 「『働く女性の健康推進』に関する実態調査」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/H29kenkoujumyou-report-houkokusho-josei.pdf

・特定非営利活動法人 日本医療政策機構「働く女性の健康増進調査2018」
https://hgpi.org/wp-content/uploads/1b0a5e05061baa3441756a25b2a4786c.pdf

・経済産業省「健康経営銘柄2022選定及び健康経営優良法人2022(大規模法人部門)認定要件」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/daikibo2022_ninteiyoken.pdf

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※当記事は2023年3月に作成されたものです。
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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