<エンターテインメント×医療・ヘルスケア情報>F1層の未来を守る!子宮頸がん予防啓発プロジェクト『Hellosmile(ハロースマイル)』
ティーペックは2021年7月に「T-PEC子宮頸がんNAプロジェクト」を立ち上げ、子宮頸がんの早期発見啓発活動と、もしがんになってもひとりで悩むことがない社会を目指す取り組みを行っています。本活動の一環として、女性がんサバイバー支援団体C-ribbons代表・藤森香衣さんにご協力いただき、様々な会社や団体の女性の健康に関する活動を紹介しています。
今回、「Hellosmile(ハロースマイル)」委員長の小巻亜矢さんをお招きし、子宮頸がんの予防啓発活動について対談を行いました。
オンラインにて対談を行いました(2021年8月)
<対談メンバー>
・小巻亜矢さん(中央):株式会社サンリオエンターテイメント代表取締役社長、サンリオピューロランド館長、子宮頸がん予防啓発活動プロジェクト「Hellosmile(ハロースマイル)」委員長など幅広い分野で活躍
・藤森香衣さん(左):モデル、NPO法人C-ribbons代表理事
2012年に乳がんの診断を受けたことをきっかけにNPO法人C-ribbonsを設立。「がんサバイバー」と「支える全ての人たち」のために活動を行う
・大井美深(右):ティーペック株式会社 経営企画部
広報担当、社内CSR活動として、子宮頸がんの啓発サイトの運営に参加
活動のきっかけは自身の病気体験と反省から「もっと若い頃から身体に向き合うべきだった」
大井:10年以上続く子宮頸がん予防啓発プロジェクトHellosmileですが、始められたきっかけについて教えてください。
小巻:最初のきっかけは、私自身が乳がんに罹患して「がんになるということ」のインパクトを体感したことです。そのあとに、子宮筋腫や子宮内膜症などがあり、乳がんに対するホルモン治療が難しかったため子宮を摘出したこともきっかけになりました。
それまでに大きな病気にかかったことがなく、自分の健康に過信していました。30~40代はがむしゃらに仕事や子育てを頑張り、自分の体のことは後回しでした。今思うと食事の栄養バランスや薬の飲み方も酷かったと思います。もっと若い頃から体と向き合うことが必要だったという後悔があります。
藤森:サンリオ社内でどのようにHellosmileが始まったのですか?
小巻:企業内起業で株式会社Nalを立ち上げて、女性のキャリア支援に関わる中で、若い世代にキャリアの土台は健康であることを伝えたいと思いました。その世代に健康の大切さ伝えるために、F1層(20~34歳の女性)に罹患者が増えている子宮頸がんに注目しました。
当時、エフエム東京さんがCSR活動の中でF1層に貢献できていないという課題を持っていて、その思いと私たちの思いが合致してHellosmileが始まりました。株式会社サンリオとしても、「見つめる先に、幸せな未来がある」というコンセプトでキャラクターたちの横顔のデザインを供与し、サポートしてくれています。
国連人口基金、厚生労働省、日本医師会などからの後援もいただけました。
継続的な情報提供の場として、Hellosmile10Loungeというラジオ番組を持ちました。伝える内容は、丁寧に、まじめに、医師監修も付けて正しい情報提供をするよう心掛けました。まさか自分がラジオ番組に出るとは思いませんでした。そのときは、全国ネットの重みに気付いていませんでした。今思うと、たくさんの素晴らしいゲストに来ていただきすごい経験でした。
あまりにも子宮頸がんが知られていない現実。「子宮」というデリケートなキーワードとF1層の心理
2012年11月11日(日) 『Hellosmile Live 2012 autumn』にて
大井:Hellosmile活動の中で印象的だったことは何ですか?
小巻:特に印象的だったことは、あまりにも子宮頸がんが知られていないということ。最近は、啓発活動が広がり改善はされていますが、当時は「はじめて知りました」という人が多くいました。また、若い世代の病気だということも知られておらず驚きました。
子宮頸がんは、ワクチン推奨年齢が中学生頃の多感な時期であり、罹患のピークが30歳代後半だということに加え、「子宮」というデリケートなキーワードの病気ゆえに、「よくわからない、見たくない、知りたくない、見なかったことにしたい」という心の動きがあるように思います。他にも、「自分はならない」、「婦人科に行きたくない」というネガティブ要素から検診の受診とは逆の動きになってしまいます。
また、子宮頸がんの説明をすると、感染経路などから、「性病なの?」と勘違いする人もいて、人に言いにくいという問題もあり、啓発の難しい分野です。
子宮頸がんは無症状であることが多いので診断された方でさえ、「なっていたら怖い」「見つかったらどうしよう」という怖さで受診を先延ばしする人もいます。
藤森:世代的に生理痛などは「我慢すること」と教わった人が多いと思います。女性の健康に関わる活動をしている私でも、自分が子宮内膜症の治療でホルモン剤を服用するときに、知らないことが多く愕然としました。
病院では、こちらが聞かないと医師も詳しくは話しません。女性はもっと子宮のことを自分で知らないといけないと思います。難しいことですが、小巻さんの活動のようなきっかけがあれば向き合うことができますね。
未病の方や、F1層に情報を届ける工夫。エンタメで「きっかけ」を作って知ってもらう!
大井:エンタメ(キャラクターやアーティスト)を活用した健康啓発活動を行った感想を教えてください。
小巻:キャラクターにはメッセージをまろやかにして、わかりやすくしてくれる効果があります。キティちゃんが直接的な「子宮頸がん」というワードを言うのではなく、「あなたの笑顔のために、大切な人の笑顔のために」「自分のことを大切に」などのメッセージを伝えることで、未病の方やF1層が興味を持ってくれることがあります。
子宮頸がんなど、病気は自分事にしたくない、自分や家族に関わることでも見たくないと思ってしまう傾向がありますが、キティちゃんがパンフレットに載っていると見てもらえます。Hellosmileの3つ折りリーフレットは成人式や高校でも配布していただいています。フリーダウンロードにしていますので是非、ご活用ください。
(参考)Hellosmileの3つ折りリーフレットはHellosmile公式サイトから無料でダウンロードできます。
ぜひ、啓発活動にご活用ください。
https://www.tfm.co.jp/hellosmile/
(C) 2021 SANRIO CO., LTD. APPROVAL No.P1308271
Hellosmileのリーフレット
大変珍しい横顔のキャラクターデザインは、[見つめる先には、幸せな未来がある]というコンセプト。
藤森:キティちゃんは若い人の目に留まりますし、子宮頸がん予防啓発活動を広げたいF1層にぴったりですね。メインビジュアルがサンリオキャラクターの横顔というのも珍しいので注目されると思います。
大井:私も、学生のときからこの横顔キティちゃんを知っていました。珍しいと思って調べると子宮頸がんというキーワードが出てきたのを覚えています。日常生活の中で自然に啓発できるということが、他が真似できない啓発活動ですね。
小巻:子宮頸がんを知ってもらうためには、はじめの扉を開けてもらわないといけないと考えていて、様々なアーティストを呼んで集客し、アーティストから家族の体験談や自分の体験談を語ってもらうHellosmile Live(ハロースマイルライブ)も開催しています。
ゲストのアーティストにイベントの趣旨を伝えると皆さん勉強してくださって、ステージ上で家族のがんの体験談を語ったり「女性は自分のことを後回しにしがち、自分を大切に」「検診に行こう!」などのメッセージを発信したりしてくださいます。これが検診に行くきっかけになったという声がたくさん寄せられました。
皆さん、アクションを起こす気持ちがゼロではなく、きっかけさえあれば動くのです。ただ、忙しい毎日で忘れがちになります。継続的にイベントを開催することで、情報に触れるきっかけをたくさん提供していくことが重要です。イベントの会場に検診バスを用意するなど、その場でアクションにつながる工夫もしています。
10年以上活動を続けて、大井さんみたいに「この横顔キティちゃん見たことある」という方も増え、メディアに取り上げられることも多くなってきました。子宮頸がんの検診受診率の上昇にもHellosmileは貢献できていると思います。
課題は検診受診率50%未満と偏見。「女性本人だけでなく社会全体が健康課題と向き合う意識を」
大井:Hellosmileの活動で課題だと感じていることを教えてください。
小巻:課題はまだまだたくさんあります。まず、子宮頸がん検診受診率が50%に満たないこと。そして、病気に対する偏見です。
子宮の病気、不妊や女性の健康課題への偏見、理解の浅さをまだ感じます。女性同士でも生理について話すことは少なく、若い頃に「子宮」というキーワードが付く病気や症状について学ぶ機会も体系化されていません。男性にとっては触れてはいけない領域になっています。文化的にも話しにくさもあり、知ってほしい情報なのに遠慮したり話題にしにくかったりする傾向が、子宮頸がんだけでなく女性の健康課題にはあります。
女性の健康課題は女性だけではなく男性に対しても、一部の団体だけでなく、企業、家庭、自治体が主体になり啓発活動を進めることで、みんなが理解を深めて話しやすい社会になっていく、その社会が実現すればみんなにとっての自分事になって偏見もなくなっていくので、みんなで力を合わせていく必要があります。
藤森:私もやはり男性の理解向上がとても大切だと思っているのですが、Hellosmileは男性向けのイベントは開催したことがありますか?
小巻:男性限定というわけではないのですが、イベントで女性アイドルグループが登壇したときは、お客さんのほとんどが若い男性でした。
男性参加が多いハロースマイルライブには大きな成果があって、「そのイベントがなければ僕は子宮頸がんを知らなかった」「帰ったら妻に検診を進めます」など感想を頂きました。また、教師をしている方から、「今まで女子生徒のそういう話題には敢えて触れないようにしていたけれど『検診に行こうね』は僕からも言えると思った」という声もありました。
テーマパークを活用した啓発活動。「たくさんの企業がF1層向けのCSR、社内のイベントに活用してほしい」
2021年7月4日(日) サンリオピューロランドにて開催されたトークイベント「Let's talk! in TOKYO」の様子
大井:Hellosmileの今後の展開や挑戦したいことについて教えてください。
小巻:テーマパークでイベントをやることにインパクトがあるので、運営しているサンリオピューロランド、大分県にあるハーモニーランドの社会貢献の活動として、テーマパークと融合した啓発イベントを継続的に実施していきたいと思っています。
将来的には、20~30代の女性が安心してキャリアプランを立てられるように、企業に向けた大きなコンソーシアムが組めたらいいなと思います。
まずは、ティーペックさんのように、今後、もっといろんな企業が子宮頸がんに着目してほしいですね。インセンティブを持たせるとか、子宮頸がん検診補助などの工夫や、もともとあるイベントに子宮頸がんのテーマを入れるなど、現在あるものを利用して少しでも子宮頸がん啓発にパワーを使ってほしいと思います。
F1層を大切にしている会社のCSR活動にはHellosmileが最適です。サンリオピューロランドや大分県のハーモニーランドでF1層向けのCSRイベントをしませんか?社員向けのイベントの開催もできます。
グローバル展開も視野に、From Japanのキャラクターを活用した健康啓発活動として世界へ
小巻:グローバルも視野に入れ、From Japanの1つの成功事例として海外にも発信していきたいです。子宮頸がんという枠での活動としてだけではなく、1つの健康啓発の方法、活動の成り立ちとしてユニークな社会活動として世界中に知らせていきたいです。
藤森:エンタメをここまで活用したがんの啓発活動はHellosmileにしかない唯一のものだと思います。日本でしかできないものでもあるので、日本初の方法として全世界に広がりそうですね。
大井:たしかに、エンタメ活用の啓発活動は単発ではあっても10年以上継続しているものはないと思います。キャラクターを活用した健康啓発の論文なども出せそうですね。
小巻:そうなんです。本当にやりたいこと、やるべきことがたくさんあります。この活動は「想い」と「動ける人」がいることが大切です。いま、ピューロランドのみんなが積極的に動いてくれるのでとても助かっています。
今後は、もっと日本中の企業、様々な業種の皆様と協力して、国内外でHellosmile活動をしていきたいと考えています。
大井:最後に小巻さんから読者の皆様へメッセージをお願いします。
≪小巻さんからのメッセージ≫
仕事もプライベートも今からという若い女性たちが子宮頸がんの不安に悩んでほしくないと心から思います。そして、キャリアやライフプランの土台は健康です。会社や周りの人からの一言が検診に行ったり、体に興味を持ったりするきっかけになることもあります。
Hellosmileは、これからもメッセージを発信し続けます。ティーペックさんも、ティーペックさんとつながっている会社の皆さんにもHellosmileに関わってほしいです。リーフレット配布など、できることから一緒に盛り上げていきましょう。
――小巻さん、ありがとうございました――
<プロフィール>
小巻亜矢(こまき・あや)
1983年サンリオ入社。結婚退社、出産などを経て、サンリオ関連会社にて45歳で仕事復帰。2015年サンリオエンターテイメント取締役就任。2019年6月より現職。
他、サンリオピューロランド館長、子宮頸がん予防啓発活動「ハロースマイル(Hellosmile)」委員長、NPO法人ハロードリーム実行委員会代表理事、一般社団法人SDGsプラットフォーム代表理事 、松竹株式会社取締役など幅広い分野で活躍中。
<イベントのお知らせ>Hellosmileスペシャルイベントinハーモニーランド
2021年11月6日(土)大分県ハーモニーランドでHellosmileのスペシャルイベントが開催されます。小巻さんトークショー、新浜レオンさんライブなど盛りだくさんの内容になっています。
詳細は特設サイト(https://www.harmonyland.jp/sp/hellosmile/index.html)でご確認ください。
※当記事は2021年10月時点T-PEC Channel(https://t-pec.jp/ch/article/609)で作成されたものを元に、データやイラスト、一部文章を修正したものです。
※当記事内の対談は2021年8月に行われたものです。
※当記事は個人の体験談に基づくものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事が全てのケースにおいて当てはまるわけではありません。