特集
インタビュー・座談会 2021/08/31

<インタビュー>ティーペックの健康経営の取り組み

(右)大神田 直明
ティーペック株式会社 人事総務部 部長

(左)木藤 加代子
ティーペック株式会社 人事総務部 人事課 マネージャー


「わくわくT-PEC」の運営会社であるティーペック株式会社は、24時間健康相談、受診手配事業、メンタルヘルスカウンセリング等をはじめとした健康経営支援サービスを提供しております。今回、健康経営の取り組みについて、人事総務部・部長の大神田氏と人事総務部・人事課・マネージャーの木藤氏にお話を伺いました。

健康経営に取り組む理由

健康経営の取り組みを推進しているティーペックは、経済産業省と日本健康会議が共同で認定する「健康経営優良法人~ホワイト500~」に5年連続認定され、健康経営のショーケースである「健康経営銘柄2021選定企業紹介レポート」(経済産業省及び東京証券取引所)にも掲載され、「健康経営を進める企業の手本となっている企業」として紹介されました。
健康経営に取り組む理由について、人事総務部・部長の大神田氏に質問したところ、「当社は『誠の幸福とは、心身ともに健康な生涯を送ることにある』と考えており、社員が健康で生き生きと働ける会社を目指しています」という答えが返ってきました。
さらに人事総務部・人事課・マネージャーの木藤氏からは「お客様に健康をお届けする事業を展開している以上、社員自身が健康であるべきと考えています。社員が健康で生き生きと仕事ができる環境があれば、離職率の低減や生産性の向上も期待できます」という話もありました。

ティーペックでは、2013年から健康経営の取り組みを実施しています。代表取締役社長を健康経営統括責任者とした上で、健康経営推進最高責任者(CHO)を設置。健康経営統括推進者や健康経営担当者などの人材を配置し、健康推進体制を整えました。その上で経営トップが「健康経営宣言」を社内外に告知し、会社が健康施策を積極的かつ継続的に実施することを宣言したのです。
大神田氏は「健康促進制度では、①生活習慣病対策、②メンタルヘルス対策、③がん対策、④女性の健康対策、⑤禁煙対策、⑥認知症対策を柱にしました」と説明します。この6つの柱を作ることで、包括的に社員やその家族をサポートする体制を構築したのです。
「具体的な施策としては、法定健診や人間ドックなどの定期健康診断の受診日は特別休暇を付与したり、がん検診オプションは全て会社負担で実施したりしています」(木藤氏)。

健康経営の第一歩は「喫煙ゼロ運動」

このように健康経営に関するさまざまな取り組みを実施しているティーペックですが、健康への取り組みの第一歩として選んだのは「喫煙ゼロ運動」でした。「喫煙は、受動喫煙による健康被害など広範囲に亘って悪影響を及ぼすため、真っ先にクリアすべき課題と考えました」(大神田氏)。
もう1つ、「喫煙ゼロ運動」は、効果を数字で表すことができるという特長があります。「数字なら、達成度合いがわかりやすい。最初の取り組みにふさわしいと判断し、喫煙ゼロ運動から始めることにしました。当初は喫煙者から『タバコをやめるなら会社を辞める』といった声が相次いだのですが、喫煙ゼロ運動を理由とした退職者がでることもなく、結果として3年弱で目標を達成できたんです」(大神田氏)。
ティーペックでは、喫煙者ゼロを達成するために経営者による「社員健康宣言」を行い、喫煙場所の撤去や非喫煙者への健康促進手当の支給、禁煙成功者の表彰などに取り組みました。
「1人で禁煙をするのは非常に大変ですが、集団での取り組みを行ったことで、ピアプレッシャーが有効に働いたのだと思います。また、禁煙に成功した人が表彰される様子を目の当たりにしたり、体験談を聞いたりするのも効果的だったと思います。これまで禁煙にチャレンジできなかった人や挫折した人が、『最後の1人にはなりたくない』、『自分でも禁煙できそうだ』と思い、奮起してくれたようです」(木藤氏)。
大神田氏は「毎月、経営者自らがタバコの害や影響についてのリテラシー教育を行っていたことも有効だった」と話します。「トップの強いコミットメントがあったからこそ、2年9ヶ月という短い期間で目標を達成できた部分も大きかったのでしょう」。

がん治療と仕事の両立

ティーペックでは、禁煙対策以外の取り組みも同時期にスタートしています。
「その中には、福利厚生として提供していた取り組みも多く含まれています。それらを健康促進制度として整理・体系化し、不足していた取り組みを拡充したというのが実状です。体系化したことで社員にとってもわかりやすくなったせいか、利用する社員も増えています」(木藤氏)。
拡充した取り組みの中で、特にユニークなのが「がん治療と仕事の両立」についての支援です。
「ある社員が乳がんになり、2週間ほど入院しました。元気に働いているように見えたのですが、勤怠を確認すると欠勤がある。理由を調査してみると、定期的な検査・治療のために有給を使い切っているということが分かったんです。会社として支援する必要があると考えました」と大神田氏。
そこでティーペックでは、毎月2日まで、半日単位で取得できる「治療休暇」の制度化や、有給休暇を1時間単位で取得できるようにしました。このような制度にすることで、放射線治療や抗がん剤治療などに通っても給与に影響することはありません。
「がんでも働けるということを全社員が理解し、離職者を出さないことが重要と考えています。もちろん治療によって同僚への負担が増えることもあるでしょう。しかし“お互い様”の精神を醸成することで、社員全員が気持ちよく仕事をしていくことができるはず。風通りのいい社風を作っていくことも重要かもしれません」(木藤氏)。

全社一丸となった取り組みを目指す

「これまでは会社主導で健康経営を推進してきましたが、2021年7月からは課長職以上を健康経営推進サポーターに認定。従業員も全て健康経営の担当者とし、全社一丸となって健康経営に取り組む体制を整えています」(大神田氏)。
社員の健康を促進することで社員が生き生きと仕事を行い、離職率の低下にも貢献しています。会社として、社員の健康への投資が企業の成長のエンジンとなっているのです。
「これまで健康経営をしていなかった企業が一気に推し進めようとしても、なかなかうまくいきません。当社の場合、スモールスタートでとにかくやってみたことがよかったのかもしれません。失敗したら、その原因を考え、修正していく。それを繰り返すことで、自社にあった取り組みが育っていきます」(木藤氏)。


※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
※当記事は、2021年8月に作成されたものです。