健康経営
喫煙対策 2019/07/05

国よりも東京都の方が厳しい!?改正健康増進法と東京都の受動喫煙防止条例の違い

改正健康増進法と東京都の受動喫煙防止条例について、両者の違いがよく分からないと感じる方も多いかもしれません。実際、改正健康増進法と東京都の受動喫煙防止条例とでは、多くの部分に共通点があります。しかし、一方で違いがあるのも事実です。
今回は、改正健康増進法と東京都の受動喫煙防止条例の違いについて解説します。

東京都の受動喫煙防止条例は、国の改正健康増進法よりも厳しい!?

改正健康増進法の理念と東京都の受動喫煙防止条例の理念は、ともに「非喫煙者や未成年、妊婦の健康を守ろう」という点で一致しています。厚生労働省の発表によると、受動喫煙が原因のひとつとなって死亡したと推定される人数は、おおよそ年間15,000人にのぼっています。また、妊婦や乳児の場合には、受動喫煙によって乳幼児突然死症候群(SIDS)が引き起こされる可能性があることが知られています。これらの悪影響を回避し、全員が快適な生活を送ろうというのが、今回の改正や条例の主旨となります。

これらの受動喫煙防止に関する取り決めを行う背景には、上記の「非喫煙者や未成年、妊婦の健康を守ろう」という思惑のほか、世界保健機関(WHO)が評価しているタバコの対策についての国ごとの政策で、現在、日本は「最低ランク」となってしまっていること、また2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控えていることなどがあります。この東京オリンピック・パラリンピックの舞台となる東京都では、国際オリンピック委員会(IOC)が「タバコのない五輪」を推し進めていることもあり、今回の条例で国の改正健康増進法よりも厳しい基準を設けたとされています。もちろん東京都の条例よりも厳しい国はほかにもありますが、ここには東京都のオリンピック・パラリンピックを成功させようという意気込みが見てとれます。

では、いったいどのような点で、東京都の受動喫煙防止条例と国の改正健康増進法は異なっているのでしょうか。

飲食店の喫煙に関するルール 東京都の受動喫煙防止条例は従業員がいる施設は原則禁煙

今回設けられた規制では、改正健康増進法も東京都の受動喫煙防止条例も、ともに飲食店の喫煙に関してルールを定めています。たとえば改正健康増進法では、客席面積100㎡以下かつ資本金5,000万円以下の場合は、経過措置として現在の喫煙ルールを継続することもできます。改正健康増進法で屋内原則禁煙の対象となるのは全国の約45%の飲食店と推計されています。

しかし一方で、東京都の受動喫煙防止条例では、経営者以外に、ひとりでも従業員がいる飲食店は原則禁煙としています。これは東京都の飲食店の約84%が対象になるとされており、国の基準よりも2倍近い割合の飲食店が対象になります。国の法律では45%が禁煙の対象になるのに対し、東京都の条例では84%ですので、これだけを見ても、東京都の受動喫煙防止条例が厳しいことが分かります。

東京都では、高校生以下の未成年のための施設が全面禁煙

また、東京都の受動喫煙防止条例では、保育所、幼稚園、小中高といった高校生以下の未成年のための施設は全面禁煙となります。これらの施設では、屋外に喫煙所を設けることもできません。

それに対し、国の改正健康増進法では、たしかにこれらの敷地内では禁煙というところは共通しているのですが、屋外に喫煙所を設けることは可能だとしています。つまり、先に述べた東京都の保育所、幼稚園、小中高ではすべての場所でタバコを吸うことが禁止されるのですが、地方では必要な措置が取られた場所に限り、屋外喫煙所の設置ができるということになります。

東京都の罰則金は5万円以下・国の罰則金は50万円以下

ただ、東京都の場合は、違反の際の罰則金(過料)が5万円以下と、国の罰則金よりもだいぶ低い値段に設定されています。国の改正健康増進法に違反した場合は、喫煙者は30万円以下、施設の管理者は50万円以下の罰則金とされているので、この点だけを見れば、東京都の条例の方が、寛容と言えるかもしれません。

以上のように、飲食店の喫煙に関するルール、高校生以下の未成年のための施設での喫煙ルール、また罰則金の多寡に国の改正健康増進法と東京都の受動喫煙防止条例の違いがあると言えます。また、東京都のほかにも、各地で受動喫煙防止条例を設けているところも出てきています。このような流れを見ると、禁煙化の流れは、これからどんどん進んでいくように思われます。

執筆:株式会社ダリコーポレーション 髙山善光(たかやまぜんこう)

<参考>
・東京都福祉保健局「 東京都受動喫煙防止条例」
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kensui/tokyo/kangaekata_public.html
・厚生労働省「既存特定飲食提供施設の考え方及び範囲について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000196749.pdf
・「東京都受動喫煙防止条例(仮称)骨子案について」
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/governor/governor/kishakaiken/2018/04/documents/180420_01.pdf
・東京都福祉保険局「東京都受動喫煙防止条例 全文」
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kensui/tokyo/file/judokistuenboshijorei.pdf
・厚生労働省広報誌特集 「たばこを吸わない人も吸う人も、尊重し合う社会へ」https://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/2018/11_01.html

※当記事の内容は、弊社運営のWebサイト『禁煙の教科書』に2019年7月5日に掲載された当時のものです。