受動喫煙対策の取組み事例

執筆: 株式会社 ダリコーポレーション 大内かよ
厚労省の調査によると受動喫煙防止対策に取り組んでいる事業所は85.8%。禁煙または、分煙いずれかに取り組んでいると回答した企業は76.2%だ。受動喫煙防止対策に取り組んでいる事業所のうち、喫煙可能区域の掲示や喫煙者に対する健康指導など禁煙・分煙以外の取り組みをしている事業所の割合は44.3%となっており、企業の受動喫煙に対する認識は高まっているように見える。
では、受動喫煙対策に積極的な企業は具体的にどんなことに取り組んでいるのか、健康経営銘柄2017に選定された2企業の実例を見てみよう。
テルモ株式会社の事例
4年連続で健康経営銘柄に選定されたテルモ株式会社は、禁煙推進の一環として、社内で「禁煙外来補助制度」を設け、補助金として上限2万円までを支給。そのほか、産業医による社内禁煙外来、喫煙所の閉鎖、敷地内全面禁煙、禁煙セミナーの開催、禁煙日数を数えられるツールの配布などを行っている。
ブラザー工業株式会社の事例
ブラザー工業株式会社は10年間、禁煙活動をしてきたものの喫煙率が下がらなかったことから、「受動喫煙対策5か年計画」を策定した。禁煙希望者には、禁煙補助薬や禁煙ガム、ニコチンパッチを配布。禁煙外来の費用補助、また、禁煙教室の開催、電話でのフォロー、個別の情報提供などを積極的に行い、喫煙率は2014年度21.6%から2015年度には19.5%に低下したという。
銘柄認定企業の多くが、企業として積極的に受動喫煙対策に取り組んでおり、従業員の喫煙が経営に大きく影響することを理解している。
しかし、これほどまでにコストをかけて対策しなければ、受動喫煙をなくすことは難しいとも言えるだろう。
2019年度からの「健康経営優良法人における受動喫煙対策の必須項目化」により、企業はますます受動喫煙対策の強化を求められている。しかし、健康を守るという観点では発展途上の段階といえる。そもそも、日本の受動喫煙対策の遅れは、屋内対策より先に、屋外対策を進めてきたことや、歩きタバコやポイ捨てなど、健康への害と喫煙マナーの啓蒙を同時進行してきたことなどが要因とも言える。また、海外と比較して日本のタバコの値段が安すぎることも、喫煙者が減らない大きな理由の一つだろう。
しかし、多くの企業は、先を見越して喫煙対策に既に乗り出している。優良企業として事業を存続させていくためには、最低でも認定の基準を満たすレベルの対策はしておく必要がありそうだ。
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執筆: 株式会社 ダリコーポレーション 大内かよ
大学卒業後、医療機器メーカーに独語通訳として入社。その後、産業翻訳業を経て、コピーライターとなる。主に化粧品、健康食品の広告制作およびプロモーションをはじめ、企業のサービスやプロジェクトに関する取材、医療、化学、法律にかかわる専門記事を数多く執筆している。
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参考
・経済産業省 2017健康経営銘柄選定企業レポート
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkoukeieimeigara2017_report24_s.pdf
・経済産業省 2018健康経営銘柄選定企業レポート
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieimeigara_report_2018.pdf
・経済産業省 2019健康経営銘柄選定企業レポート
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/meigara_report2019.pdf
※「健康経営(R)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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提供元:「受動喫煙対策の取組み事例」-禁煙の教科書
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※当記事は、2018年1月時点の弊社運営のWebサイト『禁煙の教科書』で作成されたものを元に、データやイラストのみ一部修正したものです。
※法制度については作成当時のものを参考に作成しており、最新の制度は変更となっている可能性があります。