健康・予防
その他 2022/06/07

コロナ禍の身体活動低下が生活習慣病に影響!?「7大生活習慣病(7大疾病)」の基礎知識【医師監修】

ここ数年で、ご自身の「健康」について改めて意識された方も多いのではないでしょうか。
厚生労働省の中央社会保険医療協議会の公表資料によると、『世代ごとの最も気になる傷病』のうち、「高血圧症」や「糖尿病」といった生活習慣病にあたる傷病を意識し始めるのは、以下の図表1の通り40歳をこえてからであることがわかります。

図表1:世代ごとの気になる傷病の違い(20歳以上/男女計)

※歯の病気、エラー(不詳)は除いている。

一方、40歳以下の世代では生活習慣病に関する疾病意識が低いことがうかがえます。しかし、生活習慣病は予防に向けた早期の行動改善が有効であり、特定健診の対象となる40歳になる前から意識しておくことが重要です。
そこで今回は、「生活習慣病」をテーマに、その基礎知識や予防・対策について解説していきます。
(以下、医師監修による記事です。)

≪目次≫

生活習慣病とは?
放置するとどうなる?さまざまな疾病を引き起こす生活習慣
死因上位の3大疾病と治療が長期化する7大生活習慣病(7大疾病)
コロナ禍だからこそ意識したい生活習慣病予防のための“生活習慣”

生活習慣病とは?

「生活習慣病」とは、食習慣や運動習慣、飲酒、喫煙、ストレスなどの生活習慣が原因となって引き起こされる疾患の総称です。以前は「成人病」と呼ばれていましたが、成人であっても生活習慣の改善で予防ができることや、成人以外でも発症することなどをふまえ、1996年に当時の厚生省が「生活習慣病」と改称を提唱しました(※1)。

生活習慣病には、該当する疾患の明確な規定はないものの、代表的なものにがんや心疾患(狭心症や心筋梗塞など)、脳血管疾患、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症などがあげられます。
また、歯周病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脂肪肝やアルコール性肝障害など肝疾患の一部も生活習慣が原因となることがあります

放置するとどうなる?さまざまな疾病を引き起こす生活習慣

生活習慣病は、食生活(栄養)、運動、飲酒、喫煙、睡眠などの要因が積み重なることで発症に至り、それが進行すると、生命にも関わる重篤な合併症を引き起こします。

●食生活(栄養)

生活習慣病の発症には食事が大きく関与しています。栄養が偏ったり、摂取エネルギー量過多の状態が続いたり、脂質や塩分が多い食事を続けていたりすると、肥満や高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの発症につながります。また、朝食を抜く、食事の時間が不規則、外食が多いなどの食習慣が生活習慣病のリスクを高めることもわかっています。

●運動

消費するエネルギーよりも食事からの摂取エネルギーが多くなると、脂肪が蓄積して肥満になり、高血圧症や糖尿病、脂質異常症などのリスクが高まります。消費エネルギーと摂取エネルギーのバランスをとるためには、身体活動(生活活動や運動)によって消費エネルギーを増やす必要があります。

●飲酒

過度の飲酒による生活習慣病は、代表的なものにアルコール性肝障害、循環器疾患などがあります。さらに、WHOの2007年の評価では、「口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、大腸と女性の乳房のがんの原因となる」(※2)こともわかっています。厚生労働省が定める「健康日本21(第2次)」では、1日の平均の飲酒量(純アルコール摂取量)が、男性で40g以上、女性で20g以上の人は、生活習慣病のリスクが高まると定義づけています。
なお、飲酒量(純アルコール摂取量)の20gは、アルコール度数5%のビール500mLに該当します(※3)。

●喫煙

喫煙が原因となる生活習慣病の代表ががんです。国立がん研究センターがん情報サービスによると、「がんになった人のうち、男性で30%、女性で5%はたばこが原因」(※4)と考えられており、肺がんをはじめ、口腔、咽頭、食道、胃、膵臓、肝臓、膀胱がんなど、多くのがんの原因になることもわかっています。がんだけでなく、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や脳血管疾患、心疾患などの原因にもなります。

●睡眠

睡眠不足の状態が続くと、食欲を抑える「レプチン」というホルモンと、食欲を高める「グレリン」というホルモンの分泌のバランスが乱れて食欲が増し、肥満や糖尿病、心疾患などの生活習慣病のリスクが上昇することがわかっています。肥満は睡眠時無呼吸症候群のリスク因子であり、さらに睡眠の質が低下する負のスパイラルを招きます

死因上位の3大疾病と治療が長期化する7大生活習慣病(7大疾病)

生活習慣病のうち、入院患者数や死亡要因の上位をしめる「がん」「脳血管疾患」「心疾患」を3大疾病と呼びます。さらに、この3大疾病に、高血圧症による疾患(高血圧症疾患)や糖尿病、肝疾患、腎疾患などを加えた7疾患(*)を指して、「7大生活習慣病(7大疾病)」と呼ばれることもあります。

《関連記事》死亡要因トップの「がん」の現状について解説した記事はこちら

⇒がんの最新データ~コロナ禍で早期がんの診断数が減少!?~【医師監修】
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厚生労働省の「平成29年 患者調査」のデータによると、入院患者の約3人に1人はこの7疾患で入院しており、医療保険の特約になっていることも多いです。
*保険会社様ごとに各疾患名の表記は異なります。

それぞれの疾患の特徴については、以下の図表2で見ていきましょう。

図表2:7大生活習慣病(7大疾病)について

図表2にあげた7大生活習慣病(7大疾病)に共通するのは、発症すると治療期間が長期に及ぶ点です。さらに、脳血管疾患などで後遺症が残ると、治療だけでなく介護も必要になります。

《関連記事》「脳梗塞」を発症された方の治療エピソードはこちら

⇒脳梗塞治療は時間との勝負
https://t-pec.jp/ch/article/466

また、図表2に記載の通り、糖尿病も網膜症や腎症、神経障害に代表されるさまざまな合併症リスクがあります。網膜症は失明、腎症は透析導入の原因になるもので、長期間の治療や介護が必要です。神経障害はしびれなどの感覚異常をはじめとするさまざまな症状を引き起こします。糖尿病が進行すると、小さな傷などをきっかけに足の壊疽(えそ)が起きてしまうことがあり、神経障害によってその痛みに気が付かずに悪化し、切断を余儀なくされることもあります

コロナ禍だからこそ意識したい生活習慣病予防のための“生活習慣”

生活習慣病のほとんどは、長年の生活習慣の蓄積が招くもので、一度発症すると手術や短期間の服薬だけで改善するものではありません。治療期間が長期化するほど医療費はかかり、経済的な負担が大きくなるばかりでなく、仕事や家庭、日常生活に支障をきたすなど、社会的な影響も大きくなります。
しかし、生活習慣病は自ら予防対策を行うことで、発症リスクを大幅に低下させることができるものでもあります。

2020年以降の新型コロナウイルス感染症の流行に伴う外出自粛や在宅勤務が、身体活動の低下を招き、生活習慣病リスクを高めることが危惧されています。

また、健康診断の受診控えや治療の中断などによる生活習慣病の悪化も懸念されています。新しい生活様式のなかでも一人ひとりが予防意識を高めて禁煙や飲酒を控えることはもちろん、食生活の改善や運動不足の解消により、適正体重を維持していくことが重要です。

【生活習慣で意識したいポイント】

●食事のポイント

食事は1日3食を主食、主菜、副菜が揃った献立にします。そのほか、牛乳などの乳製品や果物を1つ摂るとバランスのとれた食事になります。野菜や果物を積極的に摂るとともに、塩分を控えて(健康な日本人の成人男性で7.5g以下、成人女性で6.5g以下)、腹八分目の食事や適正体重(BMI18.5以上25.0未満)を心がけましょう(※6)。

●運動のポイント

厚生労働省が身体活動や運動に関する基準を定めた「健康づくりのための身体活動基準2013」によると、18~64歳の運動量(スポーツや体力づくり運動で体を動かす量)の基準は、強度が3メッツ以上の運動を週に4エクササイズ以上、具体的には、息が弾み汗をかく程度の運動を毎週60分行うのが良いとしています。

身体活動(生活活動と運動)では、強度が3メッツ以上の身体活動を週に23エクササイズ以上、具体的には、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行うのが良いとされています。これを歩行に換算すると、1日あたり約8000~1万歩程度です。このうち約60分/週を速歩きにすることで目標がクリアできます(※7)。

*メッツ:座って安静にしている状態を1メッツとしたときの身体活動の強度を表す単位
*エクササイズ:身体活動の強度(メッツ)に身体活動の実施時間をかけたもので、身体活動の量を表す単位

図表3:エクササイズに相当する身体活動(例)

まとめ

生活習慣の積み重ねが、将来の生活習慣病リスクを減少させ、健康長寿を目指すことにつながります。また、定期的に健康診断を受けて早期に生活習慣病を発見し、治療を開始することで、生命に影響を及ぼす疾患の発症リスクを抑えることが重要となります。

今回解説したような生活習慣病の予防や対策は、一人で行うことが難しいこともあるかもしれません。そんな時は、ティーペックの24時間健康相談の相談スタッフが生活習慣病に関するご相談、医療機関のご紹介などに対応いたします。
ぜひお客様へご案内ください。

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≪監修者プロフィール≫
医師名:成田亜希子医師
ご略歴:東京都出身、弘前大学医学部卒。国立医療科学院や結核研究所で研修を積み、保健所勤務経験から感染症、医療行政に詳しい。日本内科学会、日本公衆衛生学会、日本感染症学会、日本結核病学会、日本健康教育学会所属。
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〈引用〉
※1:「生活習慣病」e-ヘルスネット、厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-040.html
※2:横山顕「アルコールと癌(がん)」e-ヘルスネット、厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-01-008.html
※3:厚生労働省「健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_02.pdf
※4:国立がん研究センターがん情報サービス「たばことがん もっと詳しく」
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/smoking/tobacco02.html
※5:がん情報サービス「最新がん統計のまとめ」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
※6:厚生労働省「『日本人の食事摂取基準(2020年版)』策定検討会報告書」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
※7:厚生労働省「運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書(平成25年3月)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpqt.pdf

*参考
・厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第413回) 議事次第 年代別・世代別の課題(その2)について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000528279.pdf
・厚生労働省「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_01.pdf
・「栄養・食生活」e-ヘルスネット、厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food
・三島和夫「睡眠と生活習慣病との深い関係」e-ヘルスネット、厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-008.html
・「糖尿病」e-ヘルスネット、厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-048.html
・厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況 第7表 死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei20/dl/11_h7.pdf
・厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/dl/01.pdf
・「糖尿病神経障害」e-ヘルスネット、厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-037.html
・農林水産省「脂質のとりすぎに注意」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_eikyou/fat_care.html
・「身体活動・運動」e-ヘルスネット、厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise
・一般社団法人日本生活習慣病予防協会「生活習慣病とその予防 身体活動・運動不足」
https://seikatsusyukanbyo.com/prevention/exercise.php
・「飲酒」e-ヘルスネット、厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol
・「喫煙」e-ヘルスネット、厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco
・「休養・こころの健康」e-ヘルスネット、厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart
・一般社団法人日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2019」
http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
・農林水産省「『食事バランスガイド』について」
https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/
・公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「生活習慣病予防と運動」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shippei-undou/gan-yobou.html
・「外出自粛・在宅勤務下での身体活動」e-ヘルスネット、厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise-summaries/s-09
・「『新しい生活様式』において体を動かす工夫」e-ヘルスネット、厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-09-001.html
・World Health Organization International guide for monitoring alcohol consumption and related harm. World Health Organization, Geneva, 2000.
http://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/66529/WHO_MSD_MSB_00.4.pdf?sequence=1
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※当記事は2022年5月時点で作成されたものを元に、一部文章を修正したものです。(2023年3月1日更新)